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『ルパン三世 カリオストロの城』はこうして作られた(小ネタまとめ)

ルパン三世 カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて本日、金曜ロードショールパン三世 カリオストロの城が放送されます(なんと今回で17回目!)。巨匠:宮崎駿監督の劇場長編デビュー作として1979年に公開され、大胆なアクションや魅力的なキャラクターなど、優れた内容が後のクリエイターに多大な影響を与えました。

まあ、本作に関しては超有名作品なのでみんな良く知っているでしょうし、このブログでも何度か取り上げているので、今回は『カリオストロの城』に出て来た表現の元ネタとか、トリビア的なエピソードをいくつかまとめてみたいと思います(過去の記事はこちらをどうぞ↓)。

type-r.hatenablog.com


●ルパンと次元の走り方
映画冒頭、カジノから逃げるルパンと次元の走り方に見覚えがないでしょうか?実はこれ、『未来少年コナン』で描かれた「コナンとジムシーの走り方」と同じなんですね。

ルパン三世 カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城

未来少年コナン

未来少年コナン

宮崎駿監督はこの走り方がお気に入りのようで、『ルパン三世((TV第2シリーズ)』第145話『死の翼アルバトロス』などでも同様の走り方を再現しています。

ただし、『カリオストロの城』では格段にレベルアップしており、わずか数秒の短いシーンながらも非常に複雑な作画が描かれました。この場面を担当したアニメーターは『天空の城ラピュタ』で作画監督を務めた丹内司さんですが、なんと「完成まで45日もかかった」とのこと。スゲー!


●崖を駆け上がるフィアット
ルパンたちが乗っているフィアット500がほぼ垂直の崖を駆け上がるシーンを見て、「さすがに誇張がすぎるだろう」と感じた人がいるかもしれません。しかし大塚さんによると、「宮崎さんはちゃんと理屈を考えている」「あのチンクチェントはノーマル仕様ではなく、たった700キロの車体にスーパーチャージャー付きのエンジンを積んでいるから、あの動きができたんだよ」とのこと。

ちなみに、このカーチェイスを担当した友永和秀さんは『さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち』の戦闘シーンや、劇場版『銀河鉄道999』の「ハーロックが体を揺らしながら歩いてくるカット」などを手掛けた凄腕アニメーターなんですが、車の免許を持ってないんですよね。

なので、宮崎監督からこのシーンを依頼された時は「しまった、車かぁ…どうしよう」みたいな気持ちだったそうです。しかし、そんな友永さんを無視して宮崎さんは「この時C2Vは時速60kmで走ってるとすると秒速は16mぐらい。この車体は2.5mだからこれに対するBGのフォロースピードは…」などともの凄い勢いで喋りまくり、友永さんは呆然としていたらしい(笑)。

なお、このカーチェイスに関しては「1970年に公開された『小さな目撃者』というサスペンス映画に影響を受けたのでは?」との説があります。『小さな目撃者』にもカーチェイスが出てくるんですが、「よく似た構図の激しいデッドヒート」や「ヒビが入ったフロントガラスを素手で叩き割る」など、『カリオストロの城』っぽい場面がチラホラと…。もしかして宮崎駿監督はこれを参考にしたのでしょうか?

カリオストロの城と小さな目撃者

カリオストロの城と小さな目撃者

カリオストロの城と小さな目撃者

カリオストロの城と小さな目撃者


クラリスを描かせてもらえなかった大塚さん
カリオストロの城』で作画監督を担当したのは、長年に渡って宮崎さんと仕事を共にしてきたベテランアニメーターの大塚康生さんです。ただし、大塚さんはメカの作画が得意で宮崎さんからも絶大な信頼を得ているんですが、一つだけ苦手なものがありまして…

それは「美少女」が描けないこと。

カリ城の前、『未来少年コナン』で大塚さんがヒロインのラナを描いたらひどいブスになってしまい、宮崎監督が「もう大塚さんにはラナを描かせない!」と激怒したという有名なエピソードがあるぐらい、大塚さんは美少女が苦手なのですよ(本人曰く「僕は峰不二子みたいな”大人の色気がある女性”が好きなんです」とのこと)。

そんなわけで、『カリオストロの城』でも「大塚さんはクラリスを描いちゃダメ!」と言われてしまい、『赤毛のアン』で原画を描いた篠原征子さんが多くの場面でクラリスを担当、実質的な”クラリス作監”となりました。なお、大塚さんは後に「とうとうクラリスには触らせなかったよな、ミヤザキの奴め!」と愚痴っていたらしい(笑)。

ルパン三世 カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城


●パスタを食べるシーン
ルパンと次元がパスタ(ミートボールスパゲティー)を奪い合う有名なシーンは、田中敦子さんというアニメーターが作画したんですが、田中さんはこのシーンを描くために女友達を何人か連れてレストランへ行き、「パスタを奪い合って食べてちょうだい」と指示して、その様子を観察したそうです(食事代は”取材費”として会社に請求したらしいw)。

ちなみに田中さんはもともと食べることが大好きで、海外旅行に行っても風景を撮らずに食べ物の写真ばかり撮ってるぐらいの”食いしん坊”だそうです(なので、『ハウルの動く城』でも「ベーコンエッグを作るシーン」などの食事シーンを担当している)。

 

●時計塔の元ネタは幽霊塔
クライマックスの舞台としてルパンとカリオストロ伯爵が激しいバトルを繰り広げる時計塔は、黒岩涙香が書いたミステリー小説『幽霊塔』が元ネタです。これは宮崎監督自身も「本作の原点」と認めており、江戸川乱歩によってリライトされた『幽霊塔』の表紙も描いています。

 

時計塔の巨大な歯車の描写や不気味な表現など、『幽霊塔』から受けた影響は一目瞭然!さらにこの本には宮崎監督がフルカラーで描き下ろした解説マンガや絵コンテなどが十数ページも載っていて、非常に読み応えがありますよ。


カリオストロ伯爵の顔
眠っているクラリスを見つめるカリオストロ伯爵の顔を描いたのはアニメーターの河内日出夫さんですが、ちょっと気色悪い感じに描かれていたので、大塚さんが「直した方がいいかな?」と宮崎監督に相談したところ、「いや、このままにしておこう。伯爵の”何とも言えないいやらしい感じ”がよく出てるよ」と答えたため、修正されなかったそうです。

ルパン三世 カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城

ちなみに、外から帰って来たカリオストロ伯爵が歩きながら服を着替えるシーンは、リチャード・レスター監督が撮った『三銃士』(1973年)にも「鷹狩りから帰って来たバッキンガム公爵が歩きながら服を脱ぎ、周りの召使が次々と着替えさせていく」というそっくりなシーンが出て来ます(宮崎監督、『三銃士』を観たのでしょうか?)。

●結婚式のシーン
カリオストロ伯爵とクラリスが結婚式を挙げるシーンは、「三船敏郎が主演した映画『大盗賊』(1963年)のワンシーンを引用しているのでは?」と言われているそうです。確かに似てますねえ(笑)。

ルパン三世 カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城

大盗賊

大盗賊


●『長靴をはいた猫』からの引用
ルパンが城の屋根から「ピョ~ン」とジャンプするシーンは、東映動画時代に宮崎駿さんが原画を担当した『長靴をはいた猫』の引用です(動きも構図も全く同じ!)。

ルパン三世 カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城

長靴をはいた猫

長靴をはいた猫

また、ルパンがクラリスを抱きかかえながら時計塔から落下するシーンも、『長靴をはいた猫』のクライマックスを彷彿させますね(他にも「城の中で繰り広げられるドタバタアクション」など、『長靴をはいた猫』の類似シーンは数多い)。

ルパン三世 カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城

長靴をはいた猫

長靴をはいた猫

このように、『カリオストロの城』では意識的に『長靴をはいた猫』を模したシーンが描かれていますが、その理由を大塚さんは「制作スケジュールが厳しくて、新しいことを考えている余裕が全くなかったから」と語っています。

さらに宮崎監督自身も、「『カリオストロの城』に関しては東映動画時代の”大棚ざらえ”なんですよ。新しく付け加えたものなんて何もない。だから昔から僕の仕事を見ていた人たちが失望したっていうのは、よくわかるんですよね」と自己批判しています。

ただ、当時『カリオストロの城』に参加した作画スタッフは経験の浅い若手が多かったため、「東映時代に培われたアニメーションの技法を若いアニメーターたちに伝授する」という意図もあったようです。


●『どうぶつ宝島』からの引用
アニメーションで「水」を表現するのは非常に難しく、昔から様々な技法が生み出されていますが、『カリオストロの城』における水の表現も実に見事です。しかし、これまた作り手側にとっては忸怩たる思いがあったようで…

大塚さん曰く「新しい技法なんてありませんよ。そんなことを試している余裕が無かったので。だから、『パンダコパンダ』や『コナン』や『どうぶつ宝島』などで実験済みの技術を再利用してるんです。水の透明感なども含めて、全部過去の作品の応用なんですよ」とのこと。

とは言え、ルパンと次元が水路から潜入しようとするシーンでは、セルと背景の組み合わせだけで見事に水の動きや存在感を表現していて「上手いなあ!」と感心せずにはいられません(ルパンが水の流れに逆らって必死に平泳ぎしているシーンは、『どうぶつ宝島』にもありましたねw)。

ルパン三世 カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城

どうぶつ宝島

どうぶつ宝島


●『やぶにらみの暴君』からの引用
1952年に公開されたポール・グリモー監督の長編アニメ『やぶにらみの暴君』は、当時まだ学生だった高畑勲さんや宮崎駿さんなど後のクリエイターたちに絶大な影響を与えました。

特に宮崎監督は「城の構造が素晴らしい。主人公たちが長い階段を駆け下り、地下の町に逃げ込むことで王宮全体の存在感を強く印象付けている」と感激し、これをきっかけに「もしかすると観客は平面ではなく、上下の移動(縦運動)の方が感覚的に理解しやすいのでは…?」と思い付いたそうです。

その後、アニメの仕事に就いた宮崎さんは『未来少年コナン』や『カリオストロの城』や『千と千尋の神隠し』などで次々と高低差を活用したアクションを描き、「上下の移動」にこだわった場面を作り続けています。まさに「宮崎スタイル」を生み出した原点と言えるでしょう(城のデザインも似てるw)。

ルパン三世 カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城

やぶにらみの暴君

やぶにらみの暴君


●カットされたシーン
本作は制作期間の短さも特筆すべきで、大塚さんによると「7月から11月までのわずか4ヵ月ほどで作らなければならなかった。作業内容を考えると、おそらく日本の長編アニメ史上の最短記録をマークしたのではないか」と語っています。

しかし、そのせいで作画の時間が足りなくなり、宮崎監督は「シーンの大幅なカット」を余儀なくされました。特に後半部分(Cパート、Dパート)では「オートジャイロを使った派手な空中戦」や「時計塔での大アクション」などを予定していたにもかかわらず、残念ながら全てカット。

事前に描かれたイメージボードを見ると、「クラリスを救出したルパンと銭形がオートジャイロに乗ってカゲたちのジャイロと戦う」みたいなスカイアクションを考えていたようですが、宮崎監督は「これを描いていたら公開日まで間に合わない!」と泣く泣く決断したんでしょうねえ…。

ルパン三世 カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城

だがしかし!例え大幅にカットされていたとしても、『カリオストロの城』の面白さが揺らぐことは全くありません。凄い映画はカットされても凄いんですよ!というわけで、『ルパン三世 カリオストロの城』は今も昔も変わらず傑作であり続けると思います(^.^)