ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

宮崎駿と鈴木清順がルパン三世をめぐって対立していた?

ルパン三世『死の翼アルバトロス』

ルパン三世『死の翼アルバトロス』


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて本日、金曜ロードショーで『ルパン三世』のアニメ化50周年を記念し、「”みんなが選んだルパン三世”第1弾TVシリーズセレクション」が放送されます。

ルパン三世』といえば、もはや説明不要の大人気キャラですが、そんなルパンの中で最も好きなTVアニメのエピソードは何か?というアンケートを取ったところ、以下の4作品が選ばれました。

・第1位 PART2 第155話(最終回) 『さらば愛しきルパンよ』

・第2位 PART1 第1話 『ルパンは燃えているか・・・・?』

・第3位 PART5 第24話(最終回) 『ルパン三世は永遠に』

・第4位 PART2 第145話 『死の翼アルバトロス』

2位は記念すべきファーストシーズンの第1話、3位は2018年に放送されたPART5の最終話ですが、なんと1位と4位が共に宮崎駿監督の演出回なのですよ。

当時の宮崎監督はNHKで『未来少年コナン』、劇場アニメとして『カリオストロの城』を作っていましたが、世間的にはまだまだ無名に近い存在でした。

しかも『カリオストロの城』が全くヒットしなかったせいで監督の依頼が全然来なくなり、宮崎さんによれば「ほとんど業界から干されていた」とのこと。

そんな時に舞い込んだのが、TVシリーズ新ルパン三世』の仕事でした。『カリオストロの城』を作ったテレコムは東京ムービーの子会社で、「宮崎駿とテレコムの手が空いている」と知った東京ムービーが仕事を振ってくれたのです。

しかし、これに対して不満を抱いたのがTVシリーズのスタッフでした。なぜなら、『カリオストロの城』のシナリオはもともと第2シリーズ『新ルパン三世』のシナリオを監修している鈴木清順監督とそのチームが書いていたからです。

鈴木清順といえば『殺しの烙印』、『ツィゴイネルワイゼン』、『陽炎座』、『夢二』、『ピストルオペラ』、『オペレッタ狸御殿』などアバンギャルドな作風で知られる世界的にも名高い映画監督です。

殺しの烙印

※プライム会員特典

そんな鈴木監督がなぜ『ルパン三世』に関わることになったのか?経緯はよく分かりませんが、ルパン第1シリーズと第2シリーズのシナリオを書いていた大和屋竺鈴木清順を中心とした脚本家グループ「具流八郎」のメンバーだったので、恐らくその関係なのでしょう。

ところが、宮崎さんが『カリオストロの城』の監督に決まった際、鈴木清順監督のシナリオを完全に無視して、全く別のストーリーを作ってしまったのです。これでは、元のチームにとって面白いはずがありません。

そのため、宮崎監督がTVシリーズの仕事に加わると聞いたスタッフは、「また宮崎駿に脚本をいじられ、改悪され、メッタクソなものを作られるような気がした」「こちらの狙っているルパンとは全く違ったものが出来るに違いない」と感じたらしい。

その予感は的中し、すでに最終回までのシナリオが全て完成していたにも関わらず、宮崎監督は「読んでみたが、どの脚本にも食指が動かない」と難色を示し、自分で書くことになったのです。

こうして『死の翼アルバトロス』のストーリーが出来上がり、絵コンテも完成。東京ムービーの会議室で打ち合わせが行われることになりました。

打合せには、宮崎駿監督と鈴木清順監督、そしてTVシリーズのシナリオ担当者が2名ほど参加していたそうです。

その席で、鈴木監督は宮崎監督の絵コンテを見ながら「何を描きたかったのか伝わってこないし、判らない」と指摘したらしい。

それを聞いた宮崎監督は一瞬顔色が変わり、ちょっと複雑な表情を見せつつ「テレビなんてこんなもんです」と応えたそうです。

その応えに、今度はTVシリーズのシナリオ担当者の顔色が変わり、打ち合わせ室は一気に緊張感に包まれ…

という話が『私の「ルパン三世」奮闘記―アニメ脚本物語』という本に書かれているエピソードです。著者の飯岡順一氏は『ルパン三世TVシリーズの脚本家なので、当然ですが宮崎監督のことを快く思っていません(むしろ恨み節たっぷりw)。

だから、この本に書かれている内容はかなり”鈴木清順監督寄り”の主張になってるんですよね(そこはちょっと注意すべき点でしょう)。

しかし、外から突然やってきた監督に自分たちの作り上げたストーリーを否定され、好きなように脚本を書き替えられ、挙句の果てに「今までのルパンはニセモノだった」という最終回(「さらば愛しきルパンよ」)まで作られたら、そりゃあ腹が立つだろうな…とは思います(笑)。

まぁ、どこまで事実に即しているのか分かりませんが、当時の関係者による証言の一つとしては興味深く読めました。