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映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ネタバレ感想/評価


■あらすじ『世界が崩壊して45年。核戦争によって大地は荒れ果て、大気は汚れ、そして文明は滅んだ。秩序は失われ、狂気と暴力に支配された世界の中で、わずかに生き残った人類は水や食料を求めて争いを繰り返している。そんな中、一人の男がスーパーチャージャーV8インターセプターに乗って彷徨っていた。彼の名はマックス・ロカタンスキー(トム・ハーディ)。かつては警官として使命に燃えていたマックスは、最愛の妻や子供を殺されて以来、生きる望みを失い、あての無い旅を続けていた。しかし、武装集団ウォー・ボーイズに襲われたマックスは、車を大破された上に拉致されてしまう。連れ去られた場所は、イモータン・ジョーが支配する恐怖の独裁帝国だった。しかし、ウォー・ボーイズの隊長を務めるフュリオサ(シャーリーズ・セロン)がイモータン・ジョーを裏切り、5人の女たちと共に逃亡を企てる。怒り狂ったイモータン・ジョーは軍団を率いて追跡を開始。その途中、マックスは巨大な武装トレーラー:ウォー・タンクに乗って”緑の地”を目指すフュリオサと出会う。行く手には凶悪な盗賊が待ち受け、背後からはイモータン・ジョーが迫る中、彼らは再び自由を手にすることが出来るのか?今、荒野に凄まじい戦闘の炎が上がる…!』



6月20日に全国666スクリーンで公開され、オープニング2日間で動員17万4807人、興収2億6478万4500円を叩き出したマッドマックス 怒りのデス・ロードは、公開から早1ヵ月になるというのにいまだ勢いが衰えず、現時点でランキング6位、累計興行収入は11億円を突破しているそうだ。

その理由は”驚くべきリピート率の高さ”である。普通の会話では、「映画を観た」 → 「どうだった?」となるものだが、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の場合は「観た」 → 「何回?」というやり取りになるらしい。つまり、2D版を観ると3D版が観たくなり、4DX、MX4D、極上爆音上映という具合にどんどん回数が増えていく”中毒性”があるようなのだ。

ちなみに「極上爆音上映」とは、立川シネマシティのみで公開されている独自の音響スタイルで、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のためにわざわざ数百万円もする高性能ウーファーを追加購入したことで話題になり、連日多くのマッドマックス・ファンが詰め掛けているとのこと。観客だけでなく、劇場側もいい感じで狂ってるなあ(「極上爆音上映」の詳細は以下の記事からどうぞ↓)。

映画館に革命を!立川シネマシティ「極上爆音上映」の野心

当然、観た人の評価も絶賛の嵐で、「すごい!」「サイコー!」と皆ベタ褒めしている。映画評論家の町山智浩さんは「今までの『マッドマックス』も凄かったが、今まで以上にバカ!完全に狂ってる!」と褒めているのかいないのか、とにかく興奮ぎみのコメントを連発。「まるで『エル・トポ』と『ホーリー・マウンテン』が時速100キロの戦車で攻めてくるような映画だ!」って意味わからんぞ(笑)。

また、漫画家のすぎむらしんいち氏は試写会の後、昂ぶった気持ちを抑え切れず、「すしざんまい」で長時間語りまくり、それでもまだ飽き足らず、家で『マッドマックス2』を観ながら朝まで語りまくったという。最終的には「ここまでやってもらってもう何も言うことはねえ!ありがとうジョージ!」とジョージ・ミラー監督に最大の賛辞を送ったそうだ。

さらに玉袋筋太郎も、「観る前に抱いていたさまざまな不安を、ジョージ・ミラー監督は全て吹き飛ばしてくれた!」と、これまた大絶賛。「USJでは絶対にアトラクション化不可能な狂った人間。そして車検なんか糞くらえな危険車両がまかり通る、こんなマッドマックスな世界を俺は待っていたんだ!」とテンション上がりっぱなしである。

そこまで大絶賛されてるなら、今さら僕が何か書いてもしょうがないだろうとも思ったんだけど、やはり自分なりの感想を書いておきたい。結論から言えば『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は「最高にカッコよくて最高にバカな映画」だった(バカ映画とは違う)。

ストーリー性はほぼ皆無で呆れるほどシンプル。「捕まっていた場所から逃げ出し、再び同じ場所に戻ってくる」という、たったそれだけの物語だ。昔から「映画のあらすじは単純なものほど良い」と言われているが、こんなに単純なプロットは初めて見たよ(1行で書けるぞ!)。気が狂った荒くれ男どもが、あたり一面砂漠だらけの不毛な荒野をバイクや車で暴走しまくるという、本当にそれだけの映画であり、普通だったら「そんなのが面白いの?」って感じだろう。

だがしかし!単純だからと言って「底が浅い」なんてことは全くない。その奥には人間に対する深い洞察が満ち溢れ、荒んだ世界で力強く生き抜く女性の逞しさや、愛する女のために命を懸ける男の姿、そして無口な主人公の燃え上がるようなダンディズムが香り立つ。まさに、観る者のハートを振るわせる熱いメッセージが目一杯詰まっているのだ!

そして、『マッドマックス』と言えばもちろんカーアクションなわけだが、これまたモノ凄い出来栄え!まず出てくる車がどれもこれも狂ってる!1台のボディにキャデラックが2台乗っていたり、バカでかいタンクローリーの運転席がなぜかメルセデスベンツだったり、もう何が何だか分からないよ!

ちなみに、マックスの愛車といえばV8気筒スーパーチャージャー搭載の「インターセプター・ブラック・パーシュートスペシャル(フォード・ファルコンXB・GTクーペ改)」であるが、せっかく冒頭から「やったあああ!マックスがインターセプターに乗ってる〜!」と感激していたのに、ろくなカーチェイスもしないまま、敵に襲われてあっさり大破!

その後も「いや、きっとマックスが愛車を取り戻してかっこいい走りを見せてくれるに違いない!」という期待も虚しく、ヘンな武器を満載した暴走車両に改造され、「レイザーコーラ」という炭酸飲料水みたいな名前を勝手につけられ、ウォーボーイズの車として散々酷使させられた挙句、何だかよく分からないうちにぶっ壊れてしまった。完全に出オチじゃないか!まあ、確かに『マッドマックス2』でもあっさり爆破されてたけどさあ…

●インターセプター(ビフォアー)


●レイザーコーラ(アフター)


そんな得体の知れない改造車たちが、群れを成して砂漠を爆走する映像の凄まじさ!この凄まじいカーアクションを撮るため、当初の撮影予定地だったオーストラリアのブロークンヒルに150台の改造車が搬入された。ところが、荒涼とした砂漠を撮影しようと思ったら、大雨による影響で緑の大草原が広がり、想定していた映像を撮れなくなったらしい。そのため、急遽計画を変更し、150台の車両を含むあらゆる機材や物資を解体し、オーストラリアからアフリカのナミビアへ輸送したという。

スタッフは大変な苦労を強いられたわけだが、苦労の甲斐あって「本当の砂漠を膨大な数のイカレたマシンがガンガン走り回る」という、決してCGでは再現できないリアリティ溢れまくりのド迫力映像がゲットできたのだ。しかもダブルネック・ギターに火炎放射器をくっ付けて演奏しながら火を吹いてるヤツや、長い棒の先にしがみついて「ビョ〜ン」となりながら攻撃してくるヤツや、頭のおかしいキャラが大集結!

つまり『マッドマックス 怒りのデスロード』は、マシン、キャラクター、世界観全てがクレイジーな映画で、まさに「まともな奴ほど feel so bad 正気でいられるなんて運がイイ」という内容であるにもかかわらず、その全てが絶妙なバランスで配置された結果、驚くほどの感動をもたらすことに成功した奇跡の映画なのだ。うおおお!これだよ!これこそがオリジナルの資質を正しく受け継いだ真の『マッドマックス』なんだよ!

正直、突っ込みどころは無数にある。だが、この映画の素晴らしさは、おかしな場面を「おかしい」と感じる暇さえ与えず、スピード感溢れるアクションの連続で、ひたすら観客をスクリーンへ釘付けにし続けている点であろう。このパワフルな作劇には驚嘆せざるを得ない。それも、70歳のジョージ・ミラー監督が!オリジナル版から30年も経ってるのに!

例えば、『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』から16年ぶりに『ファントム・メナス』が公開された時、オリジナル版のジョージ・ルーカスが自らメガホンを取ったのに、観客の落胆ぶりは酷いものだった。つまり、オリジナル版の監督が撮ったからいいのではなく、あくまでもジョージ・ミラー監督の技量が優れていたからなのだ。

正直、『マッドマックス』の続編と聞いて(正確には続編じゃないんだけど)、多くのファンは『サンダードーム』の続きみたいな映画になるのでは?と思っていたに違いない。一度方向性が変わると、普通の監督なら新しい方のスタイルを発展させようとするからだ。ところがなんと、新作の『マッドマックス』は完全に原点に立ち返っているのである。しかも、以前よりも遥かにパワーアップして!

今回、本家本元のジョージ・ミラー監督が描き出した驚天動地のヴィジュアルは、間違いなく『マッドマックス2』の世界観を拡大解釈したものだろう。そして『マッドマックス2』から”マッド”の部分だけを抽出し、さらに思い切り濃縮し、純粋な「暴力と狂気が全てを支配する正真正銘のバイオレンス・カーアクション映画」として現代に甦らせた。それが『マッドマックス 怒りのデス・ロード』なのである。面白くないわけがないだろう!



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