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映画『ロング・キス・グッドナイト』ネタバレ感想/解説/評価


■あらすじ『8年前に過去の記憶を全て失ったサマンサ(ジーナ・デイビス)は、小学校の教師を務めながら夫と8歳の娘と幸せに暮らしていた。ところがある日、交通事故に遭った衝撃で記憶の一部が蘇る。そのわずかな記憶の中では、全く違う自分が存在していた!一方、彼女の存在を知ったある組織が動き出し、謎の武装集団に襲われる。しかし、サマンサの体が無意識に反応し、逆に相手を皆殺しにしてしまった。不安に陥った彼女は愛する彼女に分かれを告げ、私立探偵のヘネシーサミュエル・L・ジャクソン)と共に、失われた記憶を取り戻す旅に出た…。』



本日、BSプレミアムにて『ロング・キス・グッドナイト』が放映されていたので久しぶりに観てみた。『ロング・キス・グッドナイト』は、「記憶を無くした米国政府諜報機関の秘密工作員が次々と襲ってくる敵を倒しながら、謎に包まれた自分自身の正体を徐々に解き明かしていく」という、まあ要するに「ジェイソン・ボーンの女版」みたいな物語である(笑)。

ちなみに本作の脚本はオークションにかけられ、なんと400万ドルで落札されたことでも話題になった。公開当時は「ハリウッド史上最高落札価格の脚本!」と大々的に報じられ、高額のシナリオに注目が集まったらしい。しかし蓋を開けてみれば「いったいどこに400万ドルの価値があるんだろう?」と皆首を傾げたという。

それもそのはず、なんと監督のレニー・ハーリンが現場で勝手に脚本を書き直していたのである。ハーリン曰く、「監督ってものは、どんな脚本でも常に自分らしさを付け加えたくなるものなのさ」とのこと。いやいや!だったら400万ドルも出して買う意味が無いだろw

というわけで、内容的には少々アレだが、この映画、とにかくアクションだけは凄まじい!スピード感抜群のカーチェイスや迫力満点の銃撃戦、そして「火薬の量を間違えてるんじゃないの!?」と思わずのけ反る大爆発シーンなど、エクストリームにも程があるムチャな展開の連続だ。しかも危険極まりないそれらのアクションを、スタント無しでほぼ本人が演じているのだから恐れ入る。

3階の窓からガラスを突き破って飛び降りるシーンでは、クレーンに吊るされたジーナ・デイビスが15メートル下のエアバッグへ落下。その他、駅構内における壮絶なガンアクション、地上30メートルのシャフト上での格闘、巨大な石油運搬車とヘリコプターのチェイス、さらには横転した運搬車上をサーファーのように疾走するジーナの姿など、全て本人たちによる驚異のスタントの数々がカメラに収められたのだ。これらのアクションについて、共演したサミュエル・L・ジャクソンは次のように語っている。

「この映画には、本当の人間の心の葛藤が描かれている。だからこそ出演を決めたんだ。しかし、窓から2人が落下して湖に飛び込むシーンで、実際に自分がそれをやるんだって知らされた時は、本当に信じられなかったよ。あのシーンは今までの撮影の中で、いや、これまでの人生において最も辛いことだった。気温マイナス9度の日に、氷が張った湖の水に頭まで浸かった時には、1ガロンのアイスクリームを一気に食べたように頭がガンガンしたよ。しかもテイク3まで撮ったんだからね!」

う〜ん、役者さんは大変だなあ(笑)。ちなみに、この凄まじい映画を撮ったフィンランド生まれのレニー・ハーリン監督とはどんな人物なのか?その経歴を簡単に見てみよう。

13歳の時に映画監督を志し、ヘルシンキ大学へ進学して映画の勉強をはじめたハーリンは、在学中にドキュメンタリー、CM、産業映画などを次々と製作し、21歳で早くもテレビ番組を演出するようになる。そして24歳で劇場用映画の製作を決意、チャック・ノリスの息子マイク・ノリスを主人公に『死線からの脱出』を85年に完成させるものの、「政治的な理由により国内では上映禁止」という不遇な処置が下されてしまった。

デビュー作からいきなりずっこけてしまったレニー・ハーリンだが、不幸なアクシデントにもくじけること無く、単身渡米して三流ホラー映画『プリズン』を撮影。

次に『エルム街の悪夢4』を監督すると、これが運よく大ヒット!とんとん拍子に出世し続け、あっという間に超メジャー映画『ダイハード2』の監督に大抜擢される。

たった2本のホラー映画しか実績の無い若手監督が、なぜ大ヒット映画の続編をまかされたのかはさっぱり分からないが、『ダイハード2』でもレニー・ハーリンはやりたい放題だった。

”大雪の中で戦う”という設定なのに現場で全く雪が降らなかったため、巨大な人工降雪機を購入して強引に雪を降らせたり、雪の中で長時間のアクションを強要して、「お前とはもう二度と一緒に仕事をしないからなッ!」とブルース・ウィリスを激怒させたり、とにかく無茶苦茶な撮影現場だったらしい。しかし、そんな状況でも『ダイハード2』はメガヒットを記録し、ハーリンの評価は右肩上がりに高まっていった。

イケイケ状態のレニー・ハーリンは続いてシルベスター・スタローン主演の『クリフハンガー』を撮り、これまた世界中で大ヒット!もはやその勢いは止まるところを知らず、完全に一流監督の仲間入りを果たしたかに思われた。
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しかし、調子に乗り過ぎたハーリンは、自分の嫁さん(ジーナ・デイビス)を主演に製作した『カット・スロート・アイランド』で、ギネスブックに載るほどの大赤字を叩き出し、ついに映画会社を倒産させてしまったのである。起死回生を狙ったハーリンは、嫌がる嫁さんを再び主役に引っ張り出し、アクション映画『ロング・キス・グッドナイト』を撮影。だが、これまた全米が震撼するほどの見事なコケっぷりを披露し、嫁さんと離婚した挙句に莫大な借金まで背負うハメに(個人的には、『ロング・キス・グッドナイト』って最高に面白い映画だと思うんだけどねえ)。その後、『ディープ・ブルー』『ドリヴン』『マインドハンター』『エクソシスト・ビギニング』などを監督するものの、どれもこれも清々しいぐらいにヒットせず、かつての輝かしい地位からは完全に脱落してしまった。最新作の『ザ・ヘラクレス』(2014)に至っては、「とても大人が作った作品とは思えない」「映画史に残る失敗作だ!」などの酷評が相次いだらしい。普通、映画がヒットしなければ監督としての仕事は無くなる。これはまあ、エンターテイメントの世界では当然のことだろう。特にハリウッドでは、「2作品続けて客が入らないと次回作を撮らせてもらえない」と言われるぐらい厳しいそうだ。

ところがレニー・ハーリンの場合は、これだけコケる映画を連発しているにもかかわらず、なぜかその後も新作映画を撮り続けているのである。いったいどうしてなのか?その理由は全くわからないが、まあとりあえず、レニー・ハーリンにはこれからもハッタリ全開のド派手なアクション映画をバンバン撮り続けてもらいたい。


※追記


そんなレニー・ハーリン監督だが、なんと2016年に中国で映画製作会社を立ち上げ、「今後はハリウッドではなく、永久的に北京を主な活動拠点として映画を作っていく」と発表したのである。

もともとレニー・ハーリンはロサンゼルスに「ミッドナイト・サン・ピクチャーズ」という会社を持っていたのだが、同じ名前の会社を中国に設立し、中国の人材を活用しながら「中国と海外の共同制作」を目指したい、とコメント。

そしてジャッキー・チェン主演のアメリカ・中国・香港合作映画『スキップ・トレース』を制作し、なんとジャッキー映画史上最高のオープニング記録を樹立!全世界で1億8000万ドルの大ヒットを叩き出したのである。

さらにレニー・ハーリン監督は、中国を舞台にした巨大スケールのアクション・ファンタジー映画『Legend of the Ancient Sword(原題)』を撮る予定で、「私はこれからもハリウッドの要素を取り入れた斬新な中国映画を作り続けるだろう」と述べている。

ハリウッドでは失敗続きのレニー・ハーリンだったが、どうやら中国で新たな活路を見出したらしい。中国の映画業界はいま景気がいいので、大胆かつ破天荒なレニー・ハーリンの作風と上手い具合に合致したのかもしれないなあ。


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