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押井守監督『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』ネタバレ映画感想


■あらすじ『20世紀末、”レイバー”と呼ばれる人型ロボットの急速な普及に伴う”レイバー犯罪”の増加を見据え、警視庁は警察用レイバーを擁する部隊-警視庁警備部特科車両二課(特車二課)パトロールレイバー中隊-を設立。だが現在、レイバーの衰退によって特車二課の活躍の場は縮小し、組織は解隊の瀬戸際に瀕していた。そんな折、自衛隊の最新鋭戦闘ヘリ”グレイゴースト”がテロ集団に強奪されるという事件が発生。レインボーブリッジへのミサイル攻撃を皮切りに、首都1000万人を人質として無差別な戦闘を開始する。しかもテロ集団は、かつて東京に戦争を引き起こそうとした自衛隊員・柘植行人のシンパであり、柘植の成し得なかった計画の再現を狙っているらしいのだ。旧型レイバー”98式AVイングラム”を持つ特車二課が最後の砦となる中、果たしてグレイゴーストの暴挙を止めることはできるのか?今、それぞれの守るべきものを賭けて、決戦の火蓋が切って落とされる!』



さて、昨日に引き続き本日はいよいよTHE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』の感想を書いてみたい。この映画は押井守監督の劇場アニメ機動警察パトレイバー2 the Movieの続編(後日譚)という位置付けであると同時に、『パト2』の内容をほぼそのままトレースしたような、まさに『実写版パト2』と呼ぶべき映画である。

したがって、『パト2』のファンは「あのハードでシリアスな世界観がどれだけ再現されているのか?」と期待と不安にドキドキしながら劇場へ足を運んだに違いない(僕もそう)。結論から言うと、決して期待を上回ってはいないが、大きく下回ってもいなかった。

これは、押井守監督の実写作品としては画期的なことである。なんせ、常に観る者の期待を裏切り続けてウン十年の押井監督、「どうせ今回もまた、会話シーンが長いだけで爆睡必至な映画じゃねーの?」と多くの人が思っていたことだろう。

ところが意外!ちょっと面白いよコレ!もちろん「大傑作」とか「皆にオススメ」などと言うつもりは全く無いが、少なくとも過去に製作してきた作品の中では格段に面白かった。いや〜、押井監督の実写映画を観て眠くならなかったのは初めてだよ(笑)。

まず、何と言っても実寸大のパトレイバーを実際に作ったことが英断だと思う(しかも2機!)。動くシーンはCGなので、それ以外の場面もCG合成で済ませることは可能だったはずだが、敢えてフルスケールのイングラムや運搬用トレーラー、整備するための格納庫まで作ってしまったのが素晴らしい。以下、押井守監督のインタビューより。

「レイバーを作っちゃえば、何かが変わると思ったんですよ。物があることの説得力というのは、実写でしか実現できないものなので。もちろん、全部CGでやるという選択肢もあったんだけど、CGでやるということは、結果から逆算してものを作ることなんですね。そうすると、当初イメージした以上の画にはならないんです。それだと、たぶん観る側にとっても想像の範疇に収まってしまう。ロボットってでっかいものなんだ、動くと凄いんだってことを、どうやって説得するか?それは実際に実物を作るのが一番いい。結果はどうなるか分からないけど、とにかく実寸で作っちゃおうと。

ただ、完成して実際にデッキアップするまで、たぶんみんな不安で一杯だったと思う。作らないとどう見えるか分からないから。実際に人間の目の高さから見上げた時にどう見えるかっていうのは、そりゃCG上でシミュレーションすることは出来るんだけど、空気感までは分からないんですよ、絶対。果たしてこれが立ち上がった時にどう見えるのか、クレーンで上から眺める時にどれぐらいの高さに見えるのか、コックピットに乗った時にどんな世界が見えるのか。それは実際に作るしかないんですよ」 (「キネマ旬報2014年4月下旬号」より)

こうして製作された8メートルのイングラムは映画の撮影だけでなく、九州、広島、姫路、神戸、京都、大阪、東京、横浜、名古屋、仙台など、日本各地を訪問して「トレーラーからのデッキアップを見せるイベント」に駆り出され、宣伝活動でも大活躍したのだ。

さらに『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』ではイングラムだけでなく、なんと敵の戦闘ヘリコプターまで実物大で作ってしまったのだから恐れ入る!今回、陸上自衛隊が極秘に開発していた次世代型戦闘ヘリAH-88J2改「グレイゴースト」が何者かに盗まれテロに使用される…というストーリーで、当然ヘリアクションもあるだろうとは思っていたのだが、まさかフルスケールの模型を作ってしまうとは!

おそらく日本映画では初の試みであり、海外でもほとんど前例がないだろう。なぜなら、例えば『ブルーサンダー』などの場合は既存のヘリ(SA341)を改造して架空のヘリを作り出していたのに対し、本作では全くのゼロベースから1機丸ごと作っているのだ。しかも、レーザーカットマシーンで部品を一つずつ切り出し、それを手作業で組み立てたというのだから凄すぎる!

こうした「実物大プロップ」を画面に配置することで、『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』は虚構のフィールドに見事な臨場感を生み出している。CGはたしかに便利で予算の節約には役立つが、「現物がそこにある」という説得力までは生み出せない。さらにグレイゴーストと戦う自衛隊のヘリ(AH-1コブラ)は、陸上自衛隊の全面協力によって本物のヘリを登場させているのだ。架空のドラマにリアリティを付加するには、実物大や本物を使うのがやはり一番ということなのだろう。

一方、内容の方は、劇場アニメ『パト2』を実写でトレースしたとは言え、かなりスケールが縮小しているというか、ポリティカル・フィクションとしての強度が弱まっているのが残念。それは登場人物の心情に最も端的に表れ、テロリスト側も警察側も「行動原理が見えにくい」というところが難点と思われる。

パト2』でテロの首謀者だった柘植行人は、首都東京を舞台に架空の戦争状態を作り出す目的でテロを仕掛けていたのだが、今回の敵は11年前に柘植が起こした事件を”再現”することだけが目的のようで、そこに彼ら独自の信念みたいなものはほとんど感じられなかった。せっかく吉田鋼太郎みたいな渋い役者をキャスティングしているのに、物凄く薄っぺらいキャラクターになっていたのがもったいない。

さらに、戦闘ヘリのパイロットの灰原零(森カンナ)に至っては、自衛隊内部に彼女のデータが存在せず、とっくの昔に死亡していたことが判明する。つまり”灰原零”という人間なんて初めから存在しなかったということ…?それって、押井監督が『ルパン三世』でやろうとしてたネタじゃん!本当にこういうの好きだねえ(苦笑)。

対する特車二課の面々も、「嫌ならやめてもいいんだよ」という後藤田隊長に「嫌です」と言わない理由が見当たらないというか、そもそもレイバーで戦闘ヘリと戦うって無理があり過ぎるというか(笑)、納得できない部分が多々あった。アニメ版の『パト2』は、バラバラになっていた特車二課のメンバーが集結する場面一つ見ても感動的に描けていたのになあ…。

あと、個人的に気になったのは、どうも高島礼子演じる高畑慧のキャラが南雲しのぶとかぶっているような気がしてしょうがないんだよねえ。もちろん、キャラそのものは全然違うんだけど、喋り方というか声のトーンが良く似ているのだ(後藤田にかかってきた電話がどちらの声か一瞬わからないほど)。しのぶさんに榊原良子を使うなら、もっと違うタイプの女性キャラを出した方が良かったのでは?

それから、先日開かれたイベントで押井守監督が「後でディレクターズカット版を公開します!」と発言してるんだけど、普通、ディレクターズカット版ってブルーレイなどのソフトを発売する際に収録するものじゃない?まあ、劇場で公開するパターンも過去にあったが、まだ映画館で上映しているこの時期に言わなくても…。「だったらそっちを見せてくれよ!」って心境になるじゃん。

……という具合に『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』には不満点が少なくない。むしろ一般的な感覚で判断するなら、確実に”ダメ映画”の範疇に入ってしまうだろう。

だがしかし!「『パト2』を実写で映画化してくれないかな〜」と妄想し続けて早22年、僕にとっては「ついに願いが叶った!」という喜びの方がマイナス面よりも遥かに大きいわけで、まさか実現するとは夢にも思ってなかった企画が実現した!その時点で概ね満足しちゃってるのだ(笑)。

普通、自分の好きなアニメが実写化された場合、その出来栄えに納得できなければ腹が立つものだろう。だが、監督が押井守と決まった時点で、自分の中のハードルを思い切り下げまくったのが功を奏したのかもしれない。

しかも『パト2』をベースにしつつ、活劇的に盛り上がる場面も入れているのが素晴らしい。つまり『パト1』的なエンタメ要素もしっかりと加えているのだ。あの押井守が、ちゃんとお客さんのことを考えてくれている!これは、当たり前のようで実は大変なことなんだよ!

なぜなら、当初、押井守が描いていた『パト1』の絵コンテでは、「方舟の中で98式と零式が戦って終わり」だったという。それを見たゆうきまさみ出渕裕が「カタルシスが無い!」と反発して、ラストの展開を強引に変更させたという。

当時、押井監督は「人に言われてコンテを変えたのは初めてだ」とブツブツ文句を言っていたようだが、まさかそれを実写版で自ら実践するなんて…ようやく心を入れ換え真人間になってくれたのだろうか(笑)。

ともあれ、今まで『紅い眼鏡』から『アサルトガールズ』に至るまで押井監督の実写映画を全て鑑賞し、退屈のあまり発狂しそうになった身としては、今回はガンアクションあり、ヘリアクションあり、(少ないけど)パトレイバーアクションもあり、意外なほど真っ当な正統派活劇に仕上がっていることに驚きつつ、最後まで退屈することなく楽しめた。これを「つまらない」と言うのであれば、もう押井守の実写映画は観れないよ!

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