どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さて、本日8月8日は映画監督の押井守さんの誕生日です(1951年生まれなので今年で70歳になるわけですね)。
押井監督といえば『攻殻機動隊』や『機動警察パトレイバー』などの監督として海外でもその名が知られ、当ブログも過去に何度か取り上げてるんですが、本日は誕生日ということもあり、改めて押井守さんについて書いてみたいと思います。
●映画に詳しい
まず押井監督を語る際に何から語るか?といえば、やはり「映画にメチャクチャ詳しい」という点でしょう(アニメの話なども最終的には全部これに絡んでくるのでw)。とにかく映画に関する蘊蓄や情報量が膨大なんですが、いったいどうしてそんなに詳しいのか?
子供の頃から父親に連れられて映画館に入り浸っていた押井さんは、大学生になると映画研究会に入って自主制作映画を撮るようになりますが、同時にありとあらゆる映画を観まくりました。その数、なんと年間で1000本!
今ならネット配信の見放題とか、映画を観る手段はたくさんありますが、当時(1970年代)はレンタルビデオすらない時代ですから1000本観るのは大変です。
そこで押井さんは下宿先の近くにあった6館の映画館を全て巡回し、家に帰れば「日曜洋画劇場」などTVで放送している映画も片っ端から観まくっていたらしい(まさに映画浸けの毎日w)。
しかも恐ろしいのは「面白そうな映画や好きな映画ばかりを選んで観ていたわけではない」という点なんですよ。
押井さんに言わせると「名作や傑作だけ観ていても映画の本質を見極めることは出来ない。愚作や駄作を観ることによって”快感原則”と呼ばれるものの正体が見えてくる。だからカンフー映画が流行った頃はカンフー映画を死ぬほど観た。ジャンルを問わず、全部観ることが大事なのだ」とのこと。もはや”修行”じゃないですか(笑)。
しかも観るだけでなく、その日に観た映画の内容を細かく考察・分析し、自分の感想や評価なども含めて大学ノートにギッシリ書き記していたというのだから凄すぎる!どんだけ映画にのめり込んでたんだよ!
そんな押井さんがアニメを作るわけですから、当然ながら一筋縄でいくはずがありません。ジャン=リュック・ゴダールやアンドレイ・タルコフスキーなどの影響を公言している通り、意味ありげな長台詞とか、眠気を誘う風景描写とか、初心者が敬遠しそうな要素が満載です(笑)。
なので、初めて押井守監督の作品を観る人には劇場版『機動警察パトレイバー』をオススメします。押井監督自身は「出渕裕やゆうきまさみにアレコレ言われてやりたいことをやれなかった」とボヤいていますが(笑)、アクションありサスペンスありの”万人が楽しめる娯楽映画”として非常に高い完成度であることは間違いないでしょう。
これが気に入ったら、続編の『機動警察パトレイバー2 the Movie』や士郎正宗原作の『攻殻機動隊』、『イノセンス』などもぜひご覧ください。なお、間違っても『天使のたまご』を真っ先に観ないように。あれは”上級者向け”です(笑)。
●宮崎駿と仲が悪い?
押井守さんは大学を卒業後、タツノコプロに入って『ヤッターマン』や『ガッチャマンⅡ』などを担当し、スタジオぴえろに移籍した後は『ニルスのふしぎな旅』や『うる星やつら』を手掛け、劇場版第1作『うる星やつら オンリー・ユー』で監督デビュー。
そして劇場版第2作目の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を監督した後、スタジオぴえろを辞めてフリーになりました。ちょうどその頃、宮崎駿監督が個人事務所「二馬力」を設立したので、押井監督は毎日そこへ通っていたそうです。
「押井さんと宮崎さんって何を話すんだろう?」と気になりますが、意外と宮崎さんは押井さんが演出したTVシリーズの『うる星やつら』なども観ていたようで、「第86話の”波の作画”が良かった」とか、そんなことも話したりしていたらしい。
また、『ルパン三世 カリオストロの城』に次ぐ劇場版ルパンの第3作目を依頼された宮崎さんは、その企画を押井さんに任せたそうです(残念ながら「実はルパンは存在しなかった」という押井さんの案が受け入れられずに頓挫)。
さらに監修、脚本が宮崎駿、監督が押井守という「東京を舞台にした冒険ファンタジー」の企画などもあったようですが、これまた諸般の事情でボツになってしまいました。
こんな感じで押井さんと宮崎さんはしばらく一緒に仕事をしてたんですが、両方とも知識が豊富で理屈っぽくて口数が多いもんだから、よく”言い争い”が起きていたという(笑)。まあ、毎日会話していれば意見がぶつかることもあったでしょうけど、そういう日々を繰り返していたある日、犬の飼い方をめぐって激しい口論が勃発!
押井さんは大の犬好きで「犬は必ず家の中で飼うべきだ」と主張したところ、宮崎さんは「犬は犬、人間とは違う。俺は外で飼ってるけど何の問題も起きてないよ」と反論したそうです。それを聞いた押井さんは「犬は何万年も人間と共に生きてきた唯一の動物で、本来人間と共生しないと生きていけないんだ。外で飼うなんて信じられない!」と猛反発。
しかし宮崎さんも負けずに「押井さんの言う犬は”幻想の犬”だよ。犬を部屋の中で飼うなんてバーチャルリアリティじゃないか」と全く理解を示しません。そしてとうとう押井さんが「でも僕は家を建てて畳敷きの部屋で犬を飼う」と言い返したら、宮崎さんも「俺はそんな犬のションベン臭い家になんか行きたくねえや!」と言っちゃったんですね(この時、二人とも酔っ払っていたらしいw)。
それ以来、押井さんは「宮さんとは決別した」などと公言し、スタジオジブリに何かの用事で行くことがあっても「宮さんに会わないようにさっさと帰る」とか(笑)。ただ、「二馬力の頃に散々話をしたんで、今更もう話すことなんて無いんですよ」ともコメントしており、決して仲が悪いわけではないようです。
●実写映画について
押井守監督はアニメーション作品以外に実写映画も撮っていますが、世間ではあまり評価されていません。理由は……まあ観れば分かると思います(苦笑)。
押井監督によると「アニメは画面に映る全ての情報をコントロールできるが、それ故に作り手側の想定を超えるようなものがなかなか出て来ない」「実写はコントロールが難しい反面、想定外の素晴らしい画を撮れる可能性がある。そこが面白い」とのこと。
しかし、綿密な計画を立てることで(ある程度は)計算通りに進むアニメ制作とは異なり、実写の現場は「アクシデントに対する素早い判断」が重視されます。
そのため押井さんは、「実写の撮影は常に臨機応変。現場で何が起きるか分からないので絵コンテを描いても無駄。事前にきっちり計画を立てても意味がないので、行き当たりばったりで撮るしかない」と持論を述べています。
『ケルベロス-地獄の番犬』の撮影で台湾へ行った時も「生きるだけで精一杯だった。交通事故は日常茶飯事だしスタッフは全員下痢になったし、入院したやつまでいた」「気付いたら知らないオッサンがファインダーをのぞいてたり、もうメチャクチャだったよ」とのこと。
そして「途中から真面目に撮るのが嫌になり、クランクインして3日目で”脚本通りに撮ったってしょうがねえや!”と諦め、あとはただのロードムービーになった」そうです。
そんな感じで撮った映画がどういう内容になっているのかは実際に観ていただくとして(笑)、押井監督の実写映画は基本的にこうですからあまりオススメは出来ません。
ただ、そんな中でも敢えて一つ選ぶとすれば、『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』になるでしょうか。この作品はアニメ『機動警察パトレイバー』の数年後(?)を描いたストーリーで、アニメ版とよく似た名前の人が出て来ますが同じではない…というちょっとややこしい設定になっています。
しかし、実寸大のパトレイバーや特車二課の建物をわざわざ作ったり、CGやアクションシーンにも割とお金をかけたり、日本映画としてはかなり贅沢な撮影をやっているので見どころは多いと思います。