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リュック・ベッソン監督『レオン』映画感想

レオン

最近頻発する子供の誘拐事件に端を発してか、ついにGPS機能付のランドセルと学生服が発売された。特に学生服は防弾チョッキと同じ素材を使ったりと防犯対策も万全だそうだ。恐ろしい時代になったものである。
■あらすじ『孤独な殺し屋レオンは家族を殺された少女マチルダに出会った時、忘れかけていた“愛”を思い出した。それは家族への愛、そして女性への愛。マチルダの復讐を助けるレオンは心の交流を、そして“凶暴な純愛”を深めていく・・・』



先日マイ・ボディガードを見て、久しぶりにレオンを見たくなった。二つの映画を見比べてみるとやはり全然別物である事が分かる。本作は「都会に暮らす孤独な男と少女との純愛」というテーマが際立っており、クライマックスの「切なさ」が見る者の心を激しく揺さぶる正真正銘の傑作だ。

またアクションシーンの迫力もラブストーリーとしては比類無き凄まじさで、特に後半のSWAT部隊との戦闘シーンでは映画にはほとんど出てこないSG550を大量に投入するなどかなりのこだわりを見せている。対するレオンはコンペンセイター付のM92Fのカスタム、しかも黒とシルバーの二挺拳銃で応戦するのだ。

しかしこの映画における最大のポイントは魅力的なキャラクター達であろう。ジャン・レノ演じる殺し屋レオンは冷酷さと純粋さを、ナタリー・ポートマン演じるマチルダはか弱さと気丈さをそれぞれ合わせ持つ。二人の心の交流を丁寧に描く事によって、クライマックスでよりいっそう感情移入できるようになっている。

そして何と言っても特筆すべきはゲイリー・オールドマン演じる麻薬捜査官スタンフィールドのブチ切れ具合だ。この男、麻薬捜査官のクセに常に自分がヤクでラリっているというとんでもない男で、目付きも怪しく挙動不審でエキセントリックな極めて危ないヤツなのである。彼の言動を見ているだけでも面白いというぐらい強烈なキャラクターだ。これら魅力的なキャラクターの生き様を見事に描ききったからこそ、本作は心に残る映画に成り得たのではないだろうか。

しかし何事も良い面ばかりではない。なんせ監督はあのリュック・ベッソンだ。他の作品に比べると比較的まともとはいえ、やはり説得力の無い脚本は相変わらずである。

捕まったマチルダを救出する為に警戒厳重なはずの本部ビルに武装したまま正面から乗り込み、捜査官を射殺して堂々と出てくるという有り得ない描写を平然とやってのけるその図太い神経には脱帽せざるを得ない。他にも、レオンやスタンフィールドがあれだけ派手に殺しまくっているのに、ほとんど他の住民が出てこないなど不自然な描写はいくらでもある。

だがこの映画に関しては話に説得力があろうが無かろうが関係ないのだ。重要な事は「どれだけ登場人物に感情移入できるか、そしてどれだけ感動できるか」という事だ。そういう意味においてこの映画の登場人物の言動は終始一貫しており、不自然さは感じさせない。

彼らの感情の変化に観客は納得できるのである。だからこそ、ラストのレオンとマチルダのやりとりが胸に響き、観る者の心をとらえて放さないのだと思う。