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チャウ・シンチー主演『カンフーハッスル』感想

カンフーハッスル
カンフーハッスル

■あらすじ『しがないチンピラのシン(チャウ・シンチー)はヤクザにあこがれて豚小屋砦と呼ばれる貧困地区でカツアゲを決行、逆にコテンパンにやられてしまう。しかしそこに偶然ヤクザのメンバーが通りかかったため、ついに全面戦争が勃発してしまった!想像を絶するカンフー・バトルが今、炸裂する!』


カンフーハッスルはとにかく猛烈に「バカバカしい&下らない」映画である。ストーリーに整合性は無く、描写にリアリティは微塵も感じられない。完全にマンガの世界だ。なので少林サッカーを見て「これはダメだ!」と感じた人には全く受け入れられない映画かもしれない。しかしナンセンスな笑いが好きな人、そしてカンフーが好きな人には非常にオススメの映画である。

ただし、最大の問題は「さえないオッサンやオバサンしか出て来ない」という点だろう。これは「一見みすぼらしく見えるオッサンやオバサンが実は全員カンフーの達人だった」という設定のためだ。しかも驚くべきことに、それを演じている役者達がかつてブルース・リー等のカンフー映画で大活躍していた本物の「カンフーの達人」なのである。

中でも大家の奥さんを演じるユン・チウは、当初友人の付き添いで『カンフーハッスル』のオーディションに来ていただけで出演する気は全く無かったらしい。ところが、会場の隅でタバコを吸いながら新聞を読んでいるその姿を見たチャウ・シンチーは「僕のイメージにぴったりだ!」と強引に口説き落とし、なんと28年ぶりにカムバックすることになったという。

中でも特筆すべきは「究極の殺し屋・火雲邪神」を演じたブルース・リャンだろう。ザンバラ髪のハゲ頭に、だらしなくオヤジシャツとシマシマパンツを身に付け、足元はサンダル履きという異様な風体の中年男性。一見してホームレスにしか見えないこの怪しすぎるオッサンこそ、70年代に「香港映画界最強の男」とまで呼ばれた伝説のカンフーマスターだったのである!

20年間に渡って70本以上のカンフー映画に出演した後引退していたのだが、「ブルース・リャンの大ファン」というチャウ・シンチーの熱烈な出演依頼によって、今回15年ぶりにスクリーン復帰を果たしたのだ。

ただし「バカバカしさ」の点で言えば『少林サッカー』の方が上かもしれない。『少林サッカー』は少林寺拳法とサッカーをドッキングさせるという発想自体がすでにバカバカしかったのだが、本作はストレートにカンフーだけで勝負している。

しかもカンフー映画の大ファンであるチャウ・シンチーは意外と真面目に”本格的カンフー映画”に挑んでおり、「さすが長年あたため続けてきた夢の映画だけあって、気合の入れ方が違う」ということがよく分かる。

だが、それが良い方向ばかりに作用しているとも言いがたい。「ありえねー!」というキャッチコピーを掲げながらも、実際には『少林サッカー』の方が遥かに「ありえねー映画」だったと思う(ぶっ飛び具合が中途半端なのが惜しまれる)。

さらにチャウ・シンチーの活躍場面が予想以上に少ないのも困った問題だ。途中まで完全に主役がオッサンやオバサンになっているので、この辺にもう少し工夫があればもっと面白い映画になったかもしれない(ちょっと残念だなあ)。

ちなみに、シンチーは「日本のマンガは好きですか?」というインタビュアーの質問に「はい。特に『浦安鉄筋家族』と『グラップラー刃牙』と『ドラゴンボール』が大好きです」と答えているのだが、「まさにそのまんまの映画じゃん!」と言うしかなかったw