ひたすら映画を観まくるブログ

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なぜ日本の実写SF映画はメジャーになれないのか?

戦国自衛隊

映画『戦国自衛隊』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

先日、SNS上で「なぜ日本のSFは滅びたのか?」というツイートが話題になり、「面倒なSFオタクが文句ばかり言ってるからだよ!」とか、「そもそも日本のSFは滅んでなんかいないぞ!」など様々な意見が飛び交いました。

事の発端は『彼方のアストラ』というアニメのレビューに投稿された「批判的な意見」がきっかけだったようです。

その内容は「SF好きは見ない方がいい」「目が腐る」「科学もセンスオブワンダーもなかった」などで、要するに「こんなものはSFとして認められん!」的なツッコミをもの凄い長文で書きまくってたんですよ。

このレビューに対して、「こういう面倒くさいことを言う人がいるから、日本のSFは滅びたんだよ」と苦言を呈す人が現れ、さらにその発言に対し「ちょっと待て!日本のSFが滅びたなんて誰が決めたんだ?」「日本には今でもSFはあるぞ!」などの反論が噴出し、あーだこーだの激論になった…というわけです。

そして、ついには『彼方のアストラ』の作者本人までが参入し、「件のレビューの言いたいことは正しい」「その一方で僕は全ての項目に反論もできる」などとコメントする事態となってしまいました。

彼方のアストラ

まあ個人的には、『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』はSFだと思ってるし、どちらかといえば「細けえことはいいんだよ!」派なので、「あの作品はSFか否か?」みたいな議論は正直どうでもいいんですけどね(笑)。

基本的に日本のSFは、主に小説や漫画やアニメの分野で発展したと思っています。特にアニメにおける普及度たるやすさまじく、『攻殻機動隊』や『AKIRA』などが海外でヒットしたことを含めて世界的にも高く評価され、今や「日本を代表する優良コンテンツ」と呼んでも過言ではないでしょう(たぶん「日本のSFは衰退した!」とか言ってる人たちにとって漫画やアニメは対象外なんだと思う)。

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SF映画”というのは基本的に舶来ものなので、外国の役者やコスチュームや特撮や音楽、さらには”英語である”ことまで含め、全部がワンセットで成立している。日本映画に特有のジャンルがあるように、アメリカ映画にも特有のジャンルがある。日本人にとって、西部劇ができないのと同じぐらいSF映画は難しい。

この押井監督の意見は、たしかに一理あると思います。ただ、「近未来SF」や「宇宙を舞台にしたSF」などはそうかもしれませんが、”SF”にも色んな種類があるわけで、一概に「日本で実写のSF映画は成立しない」とは言えないんじゃないのかな?と。

例えば、地質学者たちから綿密な科学考証を得て、大規模災害をリアルにシミュレーションして見せた『日本沈没』などは、まさに日本を舞台にした、日本人でなければ成立しないパニックSF映画でしょう。

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ここ最近の、実写日本映画における人気ジャンルといえば、圧倒的にラブ・ストーリーが多数を占めています(ラブコメ含む)。もう、「なぜこんなに恋愛映画を作る必要があるんだ!?」と困惑するぐらいの勢いですよ。

その次に多いのが、「主人公の身近な人が重い病気にかかって…」等の、いわゆる「難病もの」ですね(恋愛要素が入る場合もあり)。

その他、「親子の絆」とか「兄弟愛」みたいなものを描いた「人情ドラマ」や、「コメディ映画」、「学園ドラマ」、「サスペンス」、「ホラー」など様々なジャンルが存在する中で、「SF」というジャンルは……ほぼ見当たりません。

もちろん、単発では作られてるんですよ。後は低予算のB級映画とか。それでも少ない。『シン・ゴジラ』のような「怪獣映画」を「SF映画」としてカウントしたがる人もいますけど、SF映画を作ろう!」という明確な意図を持って作られた”純然たるSF映画はほぼ皆無です。

つまり、日本の実写映画における”SFというジャンル”は完全にマイナーな存在であり、ハッキリ言ってジャンルそのものがもはや絶滅状態に近い。

なぜこうなってしまったのか?というと、もちろん予算的な問題も大きいですが、一番の理由は「需要がないから」です。

SF映画を観たい」という観客が大勢いれば、映画会社も少々製作費が高くてもSF映画を作ろうとするでしょう。しかし、残念ながら日本の観客は「日本製のSF映画」にあまり興味がないらしい(というより「アメリカのSFに勝てるはずがない」「SFは海外製で十分」みたいな認識なのかもしれません)。

こういう傾向はSFに限らず、「アクション映画」にも同じことが言えます。海外でも活躍している某アクション監督によると「日本ではアクションものの作品を支えるだけの需要自体が少ない。香港映画などのアクション先進国では(女性も含めて)観客の目も肥えているし、作り手たちのレベルもおのずと上がっていくだけの基盤がある、しかし日本では、肉体を駆使したアクションが好きな人たちはそう多くない。アクション映画を作ってもあまり観客が来ないとなれば、自然と先細りになっていくだろう」とのこと。

最近、『ザ・ファブル』で見事なアクションを披露した岡田准一さんも「『SP』を撮った後に”アクション映画のオファーが来るかな?”と思って期待してたんだけど、全然来なかった(笑)。日本ではアクション映画が少ないですからね」と嘆いていたそうです。

SF映画は、そんなアクション映画よりもさらに状況が悪いのでSFファンは泣くしかない…っていうより、そもそもSFファンは日本の実写SF映画なんかに期待すらしてないのかもしれませんが(苦笑)。

そんなわけで、「日本のSFは滅びたのか?」という議論について個人的には「小説・漫画・アニメなどの分野で日本のSFは目覚ましい発展を遂げているが、実写SF映画に関しては相変わらずマイナーな存在で残念」という見解です。

いや、SFマニアが納得するような、ガチガチにハードな本格SF映画じゃなくてもいいんですよ。設定としてSF要素が入っている程度の「なんちゃってSF」でも僕は全然構いません。何らかのSF的な見どころ(ガジェットとか衣装デザインとかCGとか特撮など)が含まれてさえいれば、それでいいんです。

そういう作品が1年に1本、あるいは2年に1本ぐらいの割合でコンスタントに公開されれば、一般の観客にも”実写SF”というジャンルが徐々に浸透していくのでは…と思ってるんですけどねえ。

なお、ジャンルとしての実写SFは依然として厳しい状況ではあるものの、個別の作品に関しては(過去から現在に至るまで)優れた映画がいくつもあるので、機会があればご紹介したいと思います。