ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

町山智浩、実写版『SPACE BATTLESHIP ヤマト』を熱く語る


本日、BS-TBSSPACE BATTLESHIP ヤマトが放送されます。名作アニメ『宇宙戦艦ヤマト』を実写化した本作は、主演の古代進役に木村拓哉、ヒロインの森雪役に黒木メイサ、監督に『永遠の0』や『寄生獣』の山崎貴を迎え、製作費20億円をかけた本格SF超大作として公開前から話題になりました。

しかし、公開後の反応は賛否両論…というか否の方が圧倒的に多く、全国のヤマトファンから「こんなのヤマトじゃねえ!」とのクレームが殺到したようです。僕も劇場で観たんですか、確かに諸手を上げて絶賛するには厳しい出来栄えであったと言わざるを得ません(結構頑張ってはいるんですけどねえ)。

そんな『Space battleship ヤマト』について、映画評論家の町山智浩さんポッドキャストで詳しく解説していたので聞いてみました(劇場公開時にアップしていたもの)。町山さんと言えば、古今東西あらゆる映画について造詣が深く、雑誌や様々なメディアを通じて独自の映画論を発信している強者です。最近では実写版『進撃の巨人』にスタッフとして関わるなど、ますます活動の幅を広げている様子。

そんな町山さんが『SPACE BATTLESHIP ヤマト』について語るとなれば、さぞかし辛口のコメントを炸裂させているに違いない…と思いきや、予想に反して高く評価していたのでビックリ仰天!しかも、「素晴らしい!感動したッ!」みたいなことまで言ってるのですから意外すぎます。どうやら町山さんはバリバリのヤマト世代らしく、発言の端々にヤマトに対する愛情が溢れ返ってるんですよ。

ただ、解説内容は面白いんだけどトークが長い(1時間以上ある!)。時々本筋と違う話に脱線するし、おまけに途中で町山さんの頭の中で脳内変換された「妄想ヤマト」が出てくるもんだから、益々長くなっているのです。

その「妄想ヤマト」を聞いていると、実写版ヤマトはこうであって欲しいというファンの願望みたいなものがヒシヒシと伝わって来て「ああ、この人は本当にヤマトのことが大好きなんだなあ」ということが実感できますよ。おそらく、『Space battleship ヤマト』を高評価してる人達って、みんな自分の頭の中で「足りないもの」を補完しながら観てるんじゃないんでしょうか(笑)。

というわけで、以下に町山さんの解説の中から、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』について語っている部分のみを抜粋してみました。長いのでだいぶ要約していますが、だいたいこんな感じの内容です。↓

はい、というわけでね、実写版『宇宙戦艦ヤマト』と言いますか、キムタク版ヤマトと言いますか(笑)、観ましたよ、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』。まあ、観てですね、最初は「なんだよ、キムタクかよ。ふざけんじゃねーよバカヤロー!」って感じでね。「日本の大事なアニメを金儲けのためにグシャグシャにしやがって!」「俺のヤマトを汚すんじゃねえ、コノヤロー!」「古代進がそんな喋り方するわけねえだろ!お前、キムタク以外の演技できねーのかよ!」とか思いながら観てたわけですよ最初は。


森雪が酒を飲むシーンも、どういう意図なんだか(笑)。まあ、男らしさを表現しようとしてんのかな、よく分かりませんけど、酒飲むシーンでそれを表現するって「違うだろ!」とかそんなこと思いながら、まあ観てたんですけど……悪くなかったですよ。これを合格じゃないと言っちゃうとですね、もう誰もこういう映画を作れなくなっちゃうんじゃないかと。これぐらいは合格ってことにしとかないと、「何を作ってもゴチャゴチャ言われるんだったら、俺もうやらねえよ!」みたいな。そういう気がしましたね。


僕らの世代はもう、色んな映画を観てきたんですよ。市川崑の実写版『火の鳥』とかね。あれはひどかったですねえ。木に矢が刺さるシーンで、矢のスピードが異常に遅いという。黒澤明が矢を射るシーンを撮るために本物の矢を撃たせた時代から、はるかに後退してるんですね(笑)。凄いイライラするような映画だったんですけど、まあ他にも『さよならジュピター』とか『ガンヘッド』とか『惑星大戦争』とか、ヒドいSF映画をいっぱい経験してるわけですよ。もう散々ガックリさせられました。


でも宇宙からのメッセージはガックリこなかったんですよ。それはどうしてか?その辺が『SPACE BATTLESHIP ヤマト』にイラつかなかった理由と重なってくると思うんですけど。『宇宙からのメッセージ』は、やっぱり深作欣二監督が偉大だったんですね。観客が何に燃えるか、よく分かってるんですよ。つまり、映画がダメかどうかの理由は完成度じゃないんですよ。細かいところで矛盾があるとか、そんなのはどうでもいいんですよ。「ここは俺が気合いを入れたんだ!絶対お前らの心を掴むところなんだ!」という意気込みで作った場面があるかどうかなんです。



映画自体がどうしようもなくても、本当に心をグッと掴まれる場面があればそれでいいんですよ。それはAVと同じで「抜きどころ」なんですね。AVなんて、1時間半のうち、面白い場面がどれぐらいあるかっていうと、面白い場面だけで作ろうなんて不可能じゃないですか?でも、抜きどころさえバッチリあればいいわけですよね。それがあるかどうかなんですよ。よく「脚本の出来が悪い」「役者の演技がヘタだ」「特撮がひどい」とか言われるけど、そういうことじゃないんですよ!大事なのは「抜きどころ」があるかどうかなんです!


そういう意味では、今回の『SPACE BATTLESHIP ヤマト』は「抜きどころ」があったんですよ。いや、もちろんヘンなシーンもいっぱいありますけどね。でもそれは原点のヤマトが持っている傷でもあるんですよ。例えば、ヤマトって昔の戦艦を宇宙に飛ばしてるだけだから、3次元的に戦えないとかね。船底部に全く武装が無いから第三艦橋と呼ばれるところがむき出しになっていて、いつもここが破壊される、という問題が一つ。


あと、乗組員が全員日本人なんですよね。「地球を守る」と言ってるのに日本人しか出て来ないのは何故なんだ?とか。色々あるわけですけど、それはもともとのアニメ版からある問題なわけで、そこを突っ込んでもしょうがない。むしろ、今回の実写版では、そういう問題をある程度修正しようとしている努力が見られるんですね。その辺がすごくいいなと思いました。


あと、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』は「色んな映画からパクってる!」と言われてるんですけど、有名なのは『ギャラクティカ』とか『ID4』とか『スタートレック』の新しいヤツとかね。まあ色々言われてますけど、これはいいんじゃないの?こういう、現在のSF映画を全く観ないで映画を作るよりよっぽどいいよ。


僕、アニメの『ヤマト復活篇』を観たんですけど、これがほとんど拷問だったんですよ(笑)。「現在の宇宙SF映画を知らないんじゃないの?」というぐらい酷かったから。「『スター・ウォーズ』以降のSF映画を観てないんじゃないの?」って感じで。観た人は分かると思うけど、『ヤマト復活篇』には抜きどころが無いんです。いつまで経っても楽しくならないんですよ。「いつまで続くの?」「もうカンベンして!」とか思いながら観てましたもん(笑)。それに比べて『SPACE BATTLESHIP ヤマト』は、現在のSF映画をちゃんと勉強しているという点では非常にいいと思いますよ。



あと、「グルグル問題」というのがあってですね。これはまあ、僕が勝手にそう呼んでるだけなんですが、例えば山崎貴監督の『リターナー』だっけ?あれは『マトリックス』をパクったと言われてるんだけど、『マトリックス』だってそもそも『攻殻機動隊』をパクってるわけですからね。ウォシャウスキー監督がジョエル・シルバーというプロデューサーに『攻殻機動隊』のビデオを見せて、「これの実写版を作ります」と言ってゴーサインをもらったわけですから。


しかも日本へ来た時に、押井守監督にきちんと挨拶してるんですよ、ウォシャウスキーは。そういう、日本のアニメにリスペクトを持って映画化した作品が『マトリックス』で、それをまた日本で『リターナー』がパクるという、要するに同じネタをグルグル回してるだけなんですよ。


バトルスター・ギャラクティカ』だってオリジナルじゃないですよね。あれはもともと『宇宙空母ギャラクティカ』というテレビ番組があって、それが『超時空要塞マクロス』に影響を与えたんです。そのマクロスは、アメリカに輸出されて大ヒットしたんですよ。もう、日本の100倍ぐらい大ヒットしてですね、タイトルは『ロボテック』っていうんですけど、その影響で『バトルスター・ギャラクティカ』が作られたわけですからね。


宇宙空間で煙を出しながらミサイルが飛んでいくなんてありえないわけですから。あれは完全にマクロスの影響ですよ。それをまた日本でパクるという。要はグルグルとお互いに影響を与えあってるんですよ。だからもう、「あのシーンはあの映画のパクりだ!」とか、そういうことをいちいち指摘してもしょうがないんですよ。



というわけで、ここから『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の内容について話しますけど、まず古代進役のキムタクがどこからどう見てもキムタクなんですね(笑)。もう、最初からいつものキムタク演技が爆発してるわけですよ。これはただのキムタクだろうと(笑)。でも、「実は意味があってやってたんだな」というのが、後半になって分かってくるんですよ。


で、クライマックスシーンは『スターシップ・トゥルーパーズ』や『エイリアン2』なんかで観たような場面が一杯出てきてまた「パクリだ!」とか言う人がいるんですけど、別にいいじゃないですか、かっこいい場面の寄せ集めでも。というか、それを否定したら、タランティーノはどうやって生きていけばいいの?タランティーノは過去の映画のかっこいい場面をパズルのように繋ぎ合わせて、その繋ぎ合わせの絶妙さが彼の映像作家としての腕なんですから。それを否定しちゃダメでしょ?


というか、昔から映画っていうのはみんなそうなんですよ。皆が名作だと思ってる映画も、過去の映画や文学や芝居の繋ぎ合わせなんですよ。まあ、それがきちんと出来ているかどうかは異論があると思いますが(笑)。とりあえず頑張ってるじゃないかと思いました。


マイケル・ベイとかの演出よりは全然いいと思いますよ。少しタメがあるから。マイケル・ベイは全くタメが無いんですよ。『トランスフォーマー』で一番問題なのは、ロボットが変形する時にきっちり見せないんですね。日本の巨大ロボットのアニメを見ても分かる通り、要は歌舞伎なんですよ。歌舞伎役者と同じように、見得を切るわけです。


変形して合体して巨大ロボになってカッコ良くポーズを決めるまでをじっくり見せる。で、その間に敵は待ってるんですよ(笑)。冷静に考えるとおかしいんだけど、それが日本のアニメのカッコ良さなんですよ。つまり様式美なんですね。マイケル・ベイはその辺が分かってないから、変形シーンが早すぎて何がどうなってんのか全然わからない。


要するに、快感がある方を優先させなきゃ面白くないんです。リアリティと様式美だったら、観客にとって快楽がある方を重視していけばいいんですよ。もちろん映画によっては、リアリティを選んだほうが快感がある場合もあるので、それはその時の判断ですけど。快楽原則でいいんですよ、映画なんだから。


で、このクライマックスでメチャクチャ泣けるシーンがあってですね。その前に、前半部分で太陽系をワープで飛び出すから地球と通信するのが最後になると。皆が家族と通信するシーンがあるんですね。で、古代進は家族が死んじゃって通信する相手がいないから、アナライザーっていう小型のコンピュータと会話するんですよ。



キムタクが「お前だけだな、いつも俺のそばにいてくれるのは」みたいなことを言うわけですよ。結構いいシーンなんですけど、ガミラスの惑星に突入して周りを敵に囲まれて大ピンチになった時、このアナライザーが戦闘用ロボットに変形して古代たちを助けるんですよ。「私にかまわず先に行って下さい!」って。


「ここは私が戦います!」とか言いながら、アナライザーが皆を守って戦死していくんですよ。この場面は泣けましたねえ。僕はこういうのに弱いんですよ。ここは「うおおお!」と思いましたね。ここで「うおおお!」と思わないんだったら、もうヤマトファンじゃないんじゃないの?というぐらい感動しました。ただ、ここでキムタクが「アナライザー!」と叫ぶだけなんで、何かもうちょっとリアクションが欲しかったですねえ。


あと、もう一つ良かった場面は、さっき古代が変わると言った部分ですけど、第三艦橋に古代を尊敬する後輩が乗ってるんですよ。ところが、第三艦橋が敵の自爆兵に捕まって爆破されそうになるんです。これはもう、第三艦橋を切り離すしかないと。ここは非常に重要なシーンで、キムタクが「○○じゃ〜ん!」とか言ってるいつものキムタクから変化していく最初の試練なんですよ。つまりこれはキムタクの成長物語なんですね。ここを分岐点として、キムタク古代は大きく成長していくわけですよ。


それまでのキムタクは、森雪を助けるために平気で命令違反を犯すような男だったんですが、乗組員を助けるために自分の部下を殺すことができるのか?ということを試されてるわけですよ。しかもアニメ版の第三艦橋は無駄に壊されてたんだけど、ここではキャラクターの内面を描く上で非常に意味のある使われ方をしている。そこがとても良かったです。


で、色々あってガミラスの本拠地を爆破するために、真田さんが自爆スイッチを押すわけですが、ここもねえ、良かったんですよギバちゃんが!この人もヤマト世代ですよね。もう本当に、真田さん完璧でしたね。喋り方や声の感じを、声優の青野武さんに似せてるんですよ。「古代、俺はお前を弟のように思っていたぞ」。『さらば宇宙戦艦ヤマト』の名シーンですけど、そっくりなんですよ。これでいいじゃないですか!これぞリスペクトですよ!さすがギバちゃん!と感激しました。


で、最後は破動砲を撃てなくなったヤマトがガミラス艦に突っ込んでいくという『さらば宇宙戦艦ヤマト』みたいな終わり方になるんですが、ここで敵が攻撃してこない。じっと待ってるんですよ(笑)。まあこの辺もお約束なんで、お別れの会話をしてる間にも敵がバンバン攻撃してると想像してください(笑)。



あと、キムタクと黒木メイサがエッチするシーンで怒ってる人がいるけど、こんなとこで怒ってどうすんだって。あそこは、敵地に突っ込んで死にに行く場面であって、人間、死ぬ前に種を残そうとするのは本能でしょ!『日本沈没』の彼(草なぎ剛)みたいに、そういう場面でできない、しないっていうのは、同じSMAPでもねえ、そんなんだから酔っ払って裸になっちゃうんだよ(笑)。そこで女から「抱いて」と言われたら「おう!」って抱かなきゃダメでしょ!


だから、あそこでキムタクがメイサを抱いたのは正しいんですよ。だって、昔は特攻に行く前にみんな女を抱いたんだから。当たり前じゃない、そんなの!アメリカ映画でも色んな戦争映画がありますけど、これから戦争に行く兵士は、やっぱり女を抱きますもん。


ただ、あのシーンがいまいち盛り上がってなかったってのはあるよね。あそこは、森雪の方から古代に迫って行った方が良かったかも。森雪が強引に古代にキスするって方向に持って行けば不自然じゃなかったかもね。そうすると、森雪の男勝りな部分も生きてくるじゃないですか?


そして、最後は攻撃を受けてボロボロになったヤマトに古代が一人だけ残って、ガミラス艦に特攻するわけですね。その姿を、脱出艇に乗ってヤマトを脱出した他の乗組員たちが見てるわけですよ。で、誰かが「古代艦長代理に敬礼!」と言うと、皆ヤマトに向かって敬礼するんですね。その時、バックに「真っ赤なスカーフ」が流れるんですよ。「あの娘がふっていた〜♪真っ赤な〜スカーフ〜♪」。もう全然映画と違うじゃねえかって話なんだけど、いいんですよ!俺の頭の中ではこうなってるんだから(笑)。そんな話聞かせてどうすんだ!って人もいるかもしれませんが(笑)。


でも、本当に悪くなかったですよ。真田さんで泣けたし。アナライザーで泣けたし。ちゃんと島にも見せ場があったし。あとは、森雪の黄色のツナギをきちんと見せていたらねえ。なんていうか、昔からSF映画には子供を連れて行ってるお父さんへのサービスがあったんですよ。『恐竜100万年』のラクウェル・ウェルチとか。必ずそういうのがあったんですけど。それを忘れちゃいけませんよ。それを忘れたら映画はお終いです。お母さんへのサービスはキムタクでいいんだから。キムタク、今回胸とかいっぱい見せてるし(笑)。だから、森雪の黄色のツナギさえあれば完璧だったんだけど(笑)。


というわけで、『Space battleship ヤマト』に対する評価を自分の願望も交えながら熱く語りまくっていた町山さんですが、後半はその妄想がどんどん加速して、映画とは全然違う『俺ならこう撮る実写版ヤマト』的な脳内ストーリーを「さも観てきたかのように」喋りまくっているのが面白かったです。こういうヤマトファンはいっぱいいそうな気がしますね(笑)。なお、全文を聞きたい人は町山さんのポッドキャスト「キムタク版Space Battleship ヤマトを観た!」からどうぞ。前編と後編に分かれていて、後編はアニメ『宇宙戦艦ヤマト』について更に熱く語っています。本当に好きなんだなあ(笑)。


●人気記事一覧
これはひどい!苦情が殺到した日本語吹替え版映画ワースト10
まさに修羅場!『かぐや姫の物語』の壮絶な舞台裏をスタッフが激白!
日本映画のレベルが低くなったのはテレビ局のせい?
町山智浩が語る「宮崎アニメの衝撃の真実」
「映像化不可能」と言われている小説は本当に不可能なのか?


このブログについて(初めての方はこちらをどうぞ)
トップページへ