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マニアが選ぶ、おすすめSF映画ベスト10


『男の魂に火をつけろ!』さんのブログで毎年開催されている年末恒例のランキング企画「好きな映画ベストテン」ですが、今年のテーマは「SF映画」に決まったようです。

「男の魂に火をつけろ!〜SF映画ベストテン〜」

この企画は映画ファンの間で人気が高く、当ブログも数年前から参加させていただいております。

さて今年はSF映画ですか〜。去年のホラー映画は観ている本数が少なくて選考に苦労しましたが、今年は大丈夫そう。なんせ僕はSF映画大好きだから!「好きなSF映画は?」と聞かれてすぐに思い浮かぶのは、『スター・ウォーズ』、『ブレードランナー』、『2001年宇宙の旅』、『マトリックス』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など、これだけでもうベスト5が埋まってしまう有様。後は、『エイリアン』とか『未知との遭遇』とか『ターミネーター』とか名作・傑作を適当に挙げていけば、ベストテンなんてすぐに決まっちゃうよ!楽勝〜!

……と、ここまで考えてふと気付いたのは「なんか、つまんないランキングだなあ…」ってこと。いくらSF映画が幅広いジャンルに跨っていると言っても、アンケートで上位に食い込むような有名タイトルはほぼ固定されているんじゃないかなーと思うんですよね(少なくとも上に挙げたような映画は絶対に他の人のベストにも入ってるはず)。つまり、今更僕が「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、超面白いです!」とか書いてもあまり意味が無いし、敢えて書くようなことも無いわけですよ、う〜ん…。

ということで、路線変更。「あまり世間の評価は高くないけど個人的に大好きなSF映画ベストテン」を挙げてみることにしました(一般的な知名度が極めて低いSF映画10作品と言ってもいいかもしれないw)。「へえ〜、こんなSF映画があったんだ。知らなかったなあ」的な感覚で読んでいただければ幸いです。尚、あくまでも「好きな映画ベストテン」であり、必ずしも「面白い映画ベストテン」ではないということをご理解・ご了承ください(笑)。普通に面白いSF映画を求めている人にはあまり参考になりませんので悪しからず(^_^)



●第10位:『ダークエンジェル』

1990年代、ジャン=クロード・ヴァン・ダムと並んで”ポスト・シュワルツェネッガー”と称されたドルフ・ラングレン主演のSFアクション。

初主演作『レッド・スコルピオン』の日本公開時におけるキャッチコピー”人間核弾頭”が、その怪物的な存在感を見事に象徴していたが、主演4作目に当たる『ダークエンジェル』は、それまでの怪物イメージとは一転し、初めて彼の”人間的な魅力”を引き出した記念すべき一作である。

最大の見せ場はもちろん凶悪エイリアンとのバトルシーンなんだけど、実はそれ以上に本作を面白くしている要素が、意外なほどにチャーミングなラングレンのキャラクターなのだ。

ラングレン演じる刑事ケインは、連日連夜の張り込みで恋人との間に亀裂が生じ、囮捜査で相棒が殺され、おまけに凶悪エイリアンによる連続殺人事件まで発生するという、「いったい俺が何をした?」と己の不運を呪いたくなるような酷い状況に翻弄されていた。そんな、人生最悪の事態に直面した”人間核弾頭”のやけくそ気味な活躍が妙な親近感を醸し出し、想定外の可笑しさを生み出しているのである。

更に、捜査の合間に繰り広げられる相棒のFBI捜査官:スミスとの凸凹コンビぶりが、”バディ・ムービー”としての面白さを付加している点も見逃せない。スミスを演じているのは全米ショービズ界では有名なコメディ畑出身のブライアン・ベンベン。

デカいラングレンと対照的なベンベンは、見るからにお笑い担当の役回り。最初はお互いにけん制し合いながらも、次第に絶妙なコンビネーションを発揮していく様は、『リーサル・ウェポン』や『ラッシュアワー』に代表されるバディ・ムービーの典型パターンだが、そこにSF的なギミックを絡ませることで、全く新たなコンビ刑事ドラマを作り出すことに成功している。

しかし、ネットで検索してもヒットするのはジェシカ・アルバが主演した同名のテレビドラマの方ばかりという状況を考えると、世間の評価が高いとか高くない以前に、たぶん誰もこの映画を観たことがないんだろうなあ。


●第9位:『JM』(原題:「Johnny Mnemonic」)

本作は、SF作家ウィリアム・ギブスンによる同名の短編小説「Johnny Mnemonic(邦題:「記憶屋ジョニィ」)」を原案としたSF映画だが、まあ正直なところ胸を張って「面白い!」とは言い難いんだよね(笑)。ただ、SF映画史的には価値があると思っている。それは『マトリックス』より4年も前にキアヌ・リーブスを主役としたサイバーパンクSFを描いている点だ。

バーチャル・リアリティのSF設定や個々のガジェットなどにも時代を先取りしすぎた感が見られ、「本作があったからこそ『マトリックス』が生まれた」と言えなくもないだろう。では、この映画の見所はどこか?と言えば、それはズバリ前半の30分である。

ジョニーは仕事の為に、指定されたホテルへ向かう。そこで彼は脳の記憶容量をアップする為にある装置を受け取るのだが、その装置を使ってアップされた容量は160ギガバイト。え、たったそれだけ?まあアップする前は80ギガバイトだったので一応倍にはなっているわけだが、今までいったいどんな情報を運んできたのだろうか?

そして依頼主が待っている部屋に入ると、ジョニーは自らを“スミス”と名乗る(ここでの彼は“ネオ”ではない)。部屋のTV画面にはなぜか川尻善昭のアニメが映っており、しかも『妖獣都市』ではなく、敢えて続編の魔界都市:新宿』をチョイスしているあたりに、ロバート・ロンゴ監督のただならぬオタク・マインドを感じずにはいられない。

ジョニーは凄まじい激痛を伴って、160ギガの容量に無理矢理320ギガの情報をダウンロードする(壊れるぞ!)。さらにジョニーがトイレで鼻血を出している間に、ヤクザが殴り込みをかけてくる。敵の武器はなんと“光線のムチ”だ。

ライトセーバーのムチ・バージョン”という画期的なテクノロジーで、ヴィジュアル的には非常にインパクトがあるものの、どういう原理なのかはさっぱり分からない。物凄い切れ味であらゆるものを切断しまくるが、油断してると勢い余って自分の体も切れそうだ。ジョニーはヤクザをあっさり倒して逃げ出し(ヤクザ弱すぎ!)、バレバレのカツラを被った変装でまんまと脱出に成功…とまあ前半の見どころはこんな感じである。

更に、共演はなんと世界の北野武この当時は第54回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞する前だったから、まだ世界的な注目度はそれほど高くなかったはずだけど、『戦場のメリークリスマス』を観て感激したロバート・ロンゴ監督が強く出演を希望したらしい。サイバーパンクな未来世界でも相変わらずアウトレイジなヤクザを演じているところが流石である。

その他、ドルフ・ラングレン、アイス・T、ウド・キアディナ・メイヤーなど、癖のある役者が勢揃い。そしてビジュアル・コンサルタントとして『ブレードランナー』のシド・ミードが参加、セットやメカデザインを監修している。個人的には、許容量を遥かに超えるデータを自分の脳にぶち込んだキアヌが、鼻血を出しながら変なポーズで心を落ちつかせようとするシーンが大好きだ。

尚、劇中でキアヌ・リーブスが「シャツをクリーニングに出したい!東京の帝国ホテルみたいなサービスで!」と絶叫する場面があるが、これは以前帝国ホテルに泊まった際、あまりにも丁寧なサービスに感激したキアヌがアドリブで入れたセリフらしい。


●第8位:『HINOKIO

邦画からも1本選んでおこう。この映画は「事故で母親を亡くしたショックで引き籠りになった少年が、父の設計した遠隔操作ロボット”ヒノキオ”を操って仲間たちとの親交を深めていくうちに”絆”の大切さを覚え、やがて大人へ成長する」というSF青春ストーリーである。

特筆すべきはヒノキオの描き方で、フルCGと実物大の模型を巧みに組み合わせ、あたかもそこに本物のロボットが存在しているかのように見せており、その映像効果が抜群に素晴らしい(監督の秋山貴彦が元々VFX畑出身なので特撮に詳しいのだそうだ)。

さらに、合成方法もSF映画でよく使われるブルーバック合成ではなく、本物の背景を使用したマスク合成を使っているところがポイント。このおかげで、違和感が少ない極めてリアルな映像を創り出す事に成功しているのだ。ただし合成が膨大な作業量となるため、ポストプロダクションのスタッフにはかなり嫌がられたらしい(笑)。

そしてもう一つの特徴が、『新世紀エヴァンゲリオン』の影響だ。主人公は、他人との接触を避けて自分の殻に閉じこもっている内向的な少年。彼は父親が作ったロボットを操縦する事によって、自分自身の存在価値を示そうとする。既にこの世にはいない母親の影。父親に対する不信感。操縦装置はエントリープラグのコクピットみたいなデザインで、ヘッドセットの形も『エヴァ』と似ている。

「感覚フィードバックシステム」とは要するに「シンクロ率」の事だろう。腹からコードを引っ張り出して充電するシーンに至っては、文字通りアンビリカル・ケーブル(へその緒)そのものである。そして、不思議な少女の声を演じているのが声優の林原めぐみ!おそらく製作者側も意図していたと思うが、『エヴァ』も“コミュニケーション”を主題の一つとしていたアニメだったので、自然に似てしまった可能性も否定できない。

あと、テーマソングの「Tomorrow,s way」がすごくイイ!これはシンガーソングライターYUIのデビュー2曲目で、切ないけれど、どこか懐かしくて温かい楽曲は作品世界と完全にマッチしており、鑑賞後の余韻を実に爽やかなものにしてくれる。僕はエンディングでこの曲がかかった瞬間、グっときたよ。

それから、ブレイクする前の多部未華子堀北真希が出演している点も見逃せない。どちらもメチャクチャ可愛いっす!ちなみに、堀北真希はこの時17歳の高校生だったのだが、平然と小学生を演じているのがマジで凄え(笑)。


●第7位:『バーチュオシティ

本作は、サイバースペースに人間が入り込んでバトルを展開する物語をCG満載で描いた『バーチャル・ウォーズ』のブレッド・レオナード監督が、その3年後に発表したSFアクションである。『トレーニングデイ』のデンゼル・ワシントンと『グラディエーター』のラッセル・クロウ。今をときめく2大アカデミー賞俳優初共演という、やたらと豪華なキャスティングが見所の一つだ。

しかし、冒頭シーンからいきなり妙なジャポニズムに満ち溢れていて腰が砕けそうになる。異常に丈が短い着物を着て、フトモモ丸出しで歩き回る”ゲイシャ”(芸者)たちや、目にも止まらぬハイスピードで寿司を食いまくるラッセル・クロウなど、突っ込みどころが満載すぎる(笑)。

カタカナで「アキラ」と書かれたハチマキを装着して暴れ回るラッセルに至っては、もはやオスカー俳優の片鱗などどこにも見えず、単なるアニメオタクと成り果てているのだ。実はこのオープニングは“コンピュータが作り出した仮想現実”なのだが、そのあまりにも勘違いが甚だしい世界観にはド肝を抜かれる事間違い無し!

そして何と言っても特筆すべきは、シドを演じるラッセル・クロウの傍若無人な悪役ぶりだ。どんなに銃で撃たれても全くダメージを受けず、ためらう事無く次々と人を殺し、“エネルギー補給”のためにガラスをバリバリと貪り喰らう!あらゆる凶悪犯罪者の思考をインプットされた、言わば究極の悪人を実に嬉しそうに演じているラッセル・クロウの怪演は必見だ。でも、『シンデレラマン』の優しいお父さん役より、こっちの方が観ていてしっくりくるのはナゼだろう(笑)。

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●第6位:『スクリーマーズ』

本作は、フィリップ・K・ディックの短編SF小説『変種第二号』を元に、クリスチャン・デュゲイ監督、ピーター・ウェラー主演で作られた近未来SF映画である。ディックと言えば、『ブレードランナー』や『トータル・リコール』など、これまでにも様々な作品が映画化されてきたが、本作はその中で最も原作の本質を忠実に再現した作品としてファンの間で評価が高いらしい。

もともと脚本を書いたダン・オバノンがディックの大ファンで、特に少年時代に読んで恐怖に震えた『変種第二号』には思い入れがあるという。オバノンは『トータル・リコール』でも脚本を手掛け、「無限に崩壊する現実」や「人間の存在理由」など、ディック独自のSF的テーマ性を上手く映像化している。

主役のピーター・ウェラーは「『ロボコップ』の人」として有名だが、本作では謎の”スクリーマーズ”に対抗すべく、生身の人間として大活躍。しかし、本作のテーマを考えた場合、敢えて非人間的な『ロボコップ』の役者をキャスティングした可能性は否定できない。

スクリーマーズとは、そもそも防衛用に軍が開発した兵器にすぎなかったのだが、驚異的な自己修復機能を与えられたため、急速に進化を開始。ついには人間そっくりの姿にまで辿り着こうとしていた。いったい誰が人間で、誰が人間になりすましたスクリーマーズなのか?物語は極限のパラノイア状態で突き進み、やがて衝撃の真相が明かされる…!クライマックスにおけるどんでん返しの連続はまさに圧巻!


●第5位:『クラスオブ1999』

タイトルに1999とあるように、製作された1990年時点では近未来SFアクション映画だった本作は、新任教師と不良たちの闘争を描き話題となった学園バイオレンス『処刑教室』の正当な続編である。特徴は、生徒たちと戦う教師たちが全員高性能アンドロイドという点だ(99年にこんなテクノロジーがあったとはw)。

この映画、なぜかアクションシーンに異常とも言えるほどの気合が入っていて、特にクライマックスの大戦闘シーンでは戦争映画さながらの派手な銃撃戦が繰り広げられ、とても「学園モノ」とは思えぬほどの凄まじいド迫力を生み出している。

それもそのはず、本作の監督はアーノルド・シュワルツネッガー主演の大傑作アクションコマンドーで観客の度肝を抜きまくったマーク・L・レスターなのだ。その畳み掛けるようなスペクタクル&バイオレンス描写の素晴らしい手腕を(よりによってこんな映画で)惜しみなく発揮しているのである。「何事においても手を抜かない」という崇高な姿勢にはただただ敬服するしかない。最終的には校舎も吹き飛ぶほどの大爆発が炸裂し、『コマンドー』も真っ青の完全な”戦争映画”に変貌するのだ。

また、校長先生の役でスタンリー・キューブリックの名作『時計仕掛けのオレンジ』で主役を務めたマルコム・マクダウェルが出演している。結構名の知れた俳優のはずだが、この他にも『キャット・ピープル』や『ブルーサンダー』にも出演しており、どうやらあまり出る作品を選ばない人のようだ。しかし、まさか『実写版・北斗の拳』にまで出ていたとは…(少しは選んだ方がいいと思うぞw)。 またクエンティン・タランティーノお気に入りのパム・グリアが”科学のロボ先生”役で不気味な色気を振りまいている。涙ぐましい熱演だが、彼女のキャリアには1ミリのプラスにもならないという事だけは確実だろう。以上のように初めからB級と割り切って見れば、意外と見所の多い映画である。『ターミネーター』や『コマンドー』のようなバイオレンス・アクション映画が好きな人限定でオススメしたい。


●第4位:『スーパーガール』

スーパーマンの従妹だからスーパーガールという、ストレートかつ単純明快なネーミングが素敵なアメコミヒロインの劇場映画。おそらく『スーパーマン』よりも製作費は安かったと思われるが、パインウッドスタジオ内の7つの巨大なサウンド・ステージに、アルゴシティの街並み、幻想的な幽界、現代のアメリカ高校、遊園地などが作られた。更に、スタジオの外にはシカゴ郊外の風景を丸ごと再現したというのだから只事ではない。電球一つに至るまで本物が使用され、一つの広大な町がリアルに出現したのである。

また、敵の魔女を演じたのはオスカー女優のフェイ・ダナウェイ。スーパーガールを導くゾルター役には、『アラビアのロレンス』で主人公T・E・ロレンスを演じたピーター・オトゥールなど、ベテラン俳優の参加も話題になった。更に音楽は、『猿の惑星』、『オーメン』、『エイリアン』など、数々の名作に携わったジェリー・ゴールドスミスが担当している。しかも、明らかにジョン・ウィリアムズの作風を意識しながら、微妙に異なるスコアを作っているところが凄い(オープニングクレジットもそっくりだ)。『スーパーマン』のパチモンなのに、何度も聞いていると段々本物よりかっこ良く聞こえてくるから不思議だよなあ(笑)。↓

そして、本作で最も特筆すべきポイントが「飛行シーン」の素晴らしさである。もちろん『スーパーマン』にも空を飛ぶシーンは出てくるが、本作では非常に幻想的かつロマンチックに描かれているのだ。中でも、スーパーガールが初めて地球にやってきた時にフワフワと空中を漂うシーンが最高に美しく、ワイヤーワークを使った飛行場面としては映画史に残る名シーンだと思う。

尚、『マン・オブ・スティール』の続編に「スーパーガールが登場するかも」という噂が流れて密かに期待してたんだけど、ワンダーウーマンに決まったと聞いてガッカリ。どうも、他のアメコミヒーローに比べてスーパーガールの評価が不当に低いような気がして仕方がない。本家の『スーパーマン』は何度も再映画化されてるのに、どうしてこの映画はリメイクされないのか納得できんぞ!


●第3位:『ミッション:8ミニッツ

「主人公が時間を遡るタイムトラベル」はSF映画の定番だが、本作はその中でも同じ時間を何度も繰り返す「ループもの」と呼ばれるジャンルだ。この設定自体は他の作品でもよく見受けられ、特別目新しいものではない。映画では『恋はデジャヴ』、『バタフライ・エフェクト』、『時をかける少女』など。小説では『リプレイ』(ケン・グリムウッド)、『ターン』(北村薫)、『七回死んだ男』(西澤保彦)など、類似の作品は数多い。マンガでは『ジョジョの奇妙な冒険:第4部』の1エピソードに似ている。吉良吉影のスタンド(キラークイーン)が放つ「バイツァ・ダスト」という能力によって、「同じ日の同じ朝」を何度も何度も繰り返すストーリーが本作にそっくりだった。

ただし、他の作品に似てるからダメ!ってことは決してない。この映画の見どころはそういうSF設定や犯人捜しだけではなく、「死ぬ前の数分間」を何度も体感することにより、主人公が「生きるとはどういう事か?」を考え、更に「人はどう生きるべきか?」という問いに主人公なりの答えを出す、その真摯な姿をしっかり描いているところが素晴らしいのだ。

月に囚われた男』も同様だが、ダンカン・ジョーンズ監督はSF映画を使ってこういうテーマを表現するのが本当に上手い。まあたしかに、並行世界などのSF概念に詳しくなければ、本作の内容を正しく理解するのは難しいかもしれない。しかし、その複雑な設定を読み解いた先に、美しく整合されたドラマや劇中行為の論理性、そして主人公の生きざまに対する感動を強く覚えるはずだ。超オススメ!

★僕の感想はこんな感じ → 『ミッション:8ミニッツ』のネタバレ解説


●第2位:『ヒドゥン』

第16回アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭にて、『ロボコップ』を押さえてグランプリを獲得したB級SFアクション映画。「移送途中の凶悪宇宙人をうっかり逃がしてしまった正義の宇宙人が、地球に隠れた犯罪者を捕まえるために地球人の体を借りて怪獣と戦う」という、『ウルトラマン』そのまんまなストーリーラインがボンクラ魂を熱く震わせる快作だ(元ネタはハル・クレメントの『20億の針』か?)。カイル・マクラクランの無表情な演技が恐ろしいほど宇宙人役にマッチし、コメディ映画じゃないのに想定外の面白さを醸し出している。

とのかく、冒頭の銀行強盗のシーンからいきなりテンションはマックス!凄まじい勢いでカーチェイスが始まり、特殊メイク担当のケビン・イェーガーが手掛けたモンスターや、LA市警察官たちの人間ドラマや、ヘビメタ好きの敵宇宙人や、とてつもない銃撃戦や、どんなに銃で撃たれても死なないおっさんや、友情や家族愛など、見どころも盛りだくさん。

縦横無尽に動き回るカメラワークがスピード感を盛り上げ、善良な市民達(&一匹の犬)が、凶悪エイリアンに体を乗っ取られた途端、極悪非道な風貌に変化するというホラー風味の作劇も素晴らしい。最初から最後まで観客をハラハラドキドキさせ続け、ちょっぴり切ない終わり方で幕を閉じる、まさに「娯楽映画の王道」と呼ぶに相応しい傑作SF作品であると断言しよう!


●第1位:『リベリオン

「オイオイなんだよ、『リベリオン』て?」というのが大方の映画ファンの意見ではないだろうか。その意見はたぶん正しい。正しいが僕の中では紛れも無くこの作品がSF映画ナンバー1なのだ。自身最大のヘビーローテーションDVDが本作であることからも、その傾倒ぶりがうかがえる。『リベリオン』といえば言うまでも無く最強の近接格闘術ガン=カタが最大の見所となるわけで(ガン=カタの説明はコチラ)、そのスタイリッシュにも程がある超絶的なアクションシーンは、当時日本中のボンクラたちのハートを鷲掴みにした。

銃を構える多くの敵の前に平然と姿をさらし、相手の弾丸をギリギリでかわしつつ、素早く両方の袖口から銃を取り出す主人公。剣のように両手に銃を構え、歌舞伎のように見得を切り、優雅かつダイナミズム溢れる所作で引き金を弾く!まるで舞を舞うかのような美しい動きと、両手のハンドガンから撒き散らされる“死と破壊”という名の壮絶なるカタルシス!血とバイオレンスが鮮やかに描き出す、震えるほどのエモーション!それら凄絶なアクションに彩られた知的なストーリーも見所の一つだろう。そこには現在に対する風刺と人間というものの洞察力に満ち溢れ、なにより崇高なヒロイズムと燃え上がるようなエクスタシーが問答無用に香り立つ!








ブレイクする前のクリスチャン・ベイルの端正な佇まいや、「そっと踏んでほしい、私の大切な夢だから…」とイェーツの詩を詠むショーン・ビーンの切なげな表情など、アクション映画にしては意外なほど繊細なイメージが漂う『リベリオン』。

近未来の設定なのに製作費がたったの2000万ドルしかなかったため、悲しくなるほど画面がビンボー臭い『リベリオン』。『バットマン・ビギンズ』のパンフレットに、「内容的には面白いが興行的には全くヒットしなかった映画」などと余計な情報を書かれた『リベリオン』。

ヒロインが微妙に老けている『リベリオン』。そのヒロインを演じたエミリー・ワトソンフィルモグラフィーから、何故か『リベリオン』の出演経歴だけが抹消されてしまった『リベリオン』。僕はそんな『リベリオン』が大好きだッ!

★僕の感想はこんな感じ → 『リベリオン』映画感想


ちなみに、「好きな王道SF映画」で選ぶなら、『スター・ウォーズ』、『ブレードランナー』、『エイリアン』、『エイリアン2』、『ターミネーター』、『ターミネーター2』、『マトリックス』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『2001年宇宙の旅』、『猿の惑星』、『カプリコン1』、『スキャナーズ』、『プレデター』、『未知との遭遇』、『E.T.』、『ギャラクシー・クエスト』、『インセプション』、『アビス』、『ジュラシック・パーク』、『ロボコップ』、『インデペンデンス・デイ』、『スターシップ・トゥルーパーズ』、『遊星からの物体X』、『第9地区』、『スーパーマン』、『アイアンマン』、『AKIRA』、『攻殻機動隊』、『天空の城ラピュタ』、『風の谷のナウシカ』、『王立宇宙軍オネアミスの翼』『機動警察パトレイバー』あたりになりますね。あ〜、完全に10個超えてるわ(笑)。


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SFマニアたちによる「未来に遺したいSF映画3本」や話題になったべストSFの楽しみ方などを収めた、「マニアックだけどわかりやすい」永久保存版のSFムックです。
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