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『パシフィック・リム』はなぜ凄いのか?その魅力を徹底解説!


■あらすじ『ある日、太平洋の深海から突如巨大な生命体(KAIJU)が出現し、人類は滅亡の危機を迎える。そこで世界中の英知を結集して人型巨大兵器“イェーガー”が開発された。そんな中、かつてKAIJUとのバトルで兄を失い、失意のうちに戦線を離脱した名パイロット、ローリーが復帰を決意。やがて幼い頃にKAIJUに家族を殺された森マコがローリーとの相性を買われ、ジプシー・デンジャーのパイロットに大抜擢されるのだったが…。日本のマンガやアニメ、特撮作品への造詣も深いギレルモ・デル・トロ監督が、巨大怪獣と人型巨大ロボットとの戦いを圧倒的なスケールで描き出したSFアクション・エンタテインメント超大作!』



もうすぐロードショーが終了しそうなギリギリのタイミングで、ようやく『パシフィック・リム』を観て来ましたよ。いやはや、想像通りの凄まじい映画でしたねえ(笑)。噂によると、全米では壮絶なな勢いでズッコケたようですが「無理もない」と言わざるを得ません(製作費はなんと2億ドル!)。

それぐらい、全編に渡ってギレルモ・デル・トロ監督のオタク・マインドが炸裂しまくった、まさに空前絶後の怪獣映画になっていました。というわけで、個人的に良かった所・悪かった所を色々書いてみますよ。

まず、怪獣にしてもロボットにしても、出し惜しみをしてないところがいいですね。海外のモンスター映画って、『キングコング』とか『ジュラシック・パーク』とか、なかなか肝心の怪獣(や恐竜)が出て来ないじゃないですか?チラチラと不気味な雰囲気をチョイ出ししてじらす感じが鬱陶しいというか、僕なんか「もったいぶらずにさっさと見せろ!」っていつも思うんですけど。

でも、『パシフィック・リム』はそんなセコい見せ方はしてません。もう、映画が始まっていきなり巨大怪獣がドーン!ですよ。豪快にゴールデン・ゲート・ブリッジをぶっ壊すシーンからドラマが始まり、初っ端からテンションMAX!

そして、怪獣を倒すために巨大ロボが出撃するシーンも即登場!かっこいいパイロットスーツに身を包んだ主人公が兄と共にコクピットへ乗り込み、かっこいい器具を装着するやいなや、轟音を響かせながら巨大ロボットがズシンズシンと動き出す!

いや〜、素晴らしい!何が凄いってこの映画、アクションシーンの多さが尋常じゃない。前半はアバンタイトルからひたすらバトルばっかりで、後半はずーっとロボと怪獣のド突き合いですからね。もー、お腹いっぱいです!

しかも、操縦方法がパイロットの動きをそのままトレースするマスタースレイブ方式(別名ジャンボーグA方式)なもんだから、バトルシーンに力にも入りまくり!「うおりゃあああ!」とパイロットが振り下ろした拳に連動してロボットのパンチが怪獣を直撃!物凄い勢いで吹っ飛ぶ巨体!

普通に考えれば戦闘機や戦車みたいに操縦レバーやスイッチを使って動かした方が効率はいいはずです。しかし、パイロットがシートに座ってレバーをガチャガチャ動かしているだけではここまでの臨場感は出せません。パイロットの動きとロボットが完全に同調しているからこそ、”本人が懸命に怪獣と戦っている一体感”が再現できるのですよ。

また、「マスタースレイブ方式では細かい操作が面倒」→「音声入力システムだ!」という流れで、主人公が必殺技を叫ぶ行為を正当化しているところもグッジョブ!昔『マジンガーZ』を見ていた頃、兜甲児が「ロケットパ〜ンチ!」とか「光子力ビ〜ム!」などといちいち叫んでいて、当時は「そういうものだ」という認識しかなかったんですが、良く考えたら叫ぶ必要はないわけですよね。

でも、「もしかしたら『マジンガーZ』には音声入力システムが導入されてたのかも…?」と。そういう発想で、かつての”王道ロボットアニメ”の作劇を現代に復活させたデル・トロ監督の功績は、もっと褒め称えられるべきなんじゃないでしょうか。

さらに、「複数のパイロットが意識を一つに統一して巨大ロボットを操縦する」という設定や、巨大な怪獣と壮絶なバトルを繰り広げるというストーリーは『ゲッターロボ』。男と女がペアになって巨大ロボを操縦するスタイルは『マグネロボ ガ・キーン』。頭部と体がドッキングするシステムや腹部の形状は『鋼鉄ジーグ』に似ているなど、『パシフィック・リム』には日本製ロボットアニメからの影響が数多く見受けられるのですよ。ついでにもう一つ、「切り札の核爆弾を失った主人公が、最後の手段として自分が操縦している巨大ロボの動力を爆破する」というクライマックスは、『トップをねらえ!』の最終話で「ブラックホール爆弾を起爆できなくなった主人公が、自分が操縦しているガンバスターの動力を使って爆破するシーン」を彷彿させるような名場面だと思いました。また、巨大なモノをちゃんと巨大に描いている点もよかったですねえ。この映画に登場する怪獣って、日本の怪獣に比べると圧倒的にデカいんです。まあ、日本は着ぐるみなので大きさに限界があるけど、ハリウッドは大金をかけたフルCG製ですからね。そりゃ当然差があるのはわかりますよ。

ただ、『パシフィック・リム』はロボットのディテールや周囲に飛び散る水飛沫、あるいは怪獣が出現する時のアングルや空間の見せ方など、細かい部分までこだわって作り込んでいる点が、より巨大感を強調している。そこがイイ!

それから、カイジュウがしっかり”怪獣”として描かれているのも良かった。例えば、ハリウッド版ゴジラが「放射能を浴びて突然変異したイグアナ」という設定に変えられていたように(エメゴジの方ね)、向こうではモンスターを単なる”巨大生物”として描く傾向があります。でも、日本人(ただし怪獣映画ファン)に言わせるとそれは違う!と。

ゴジラはあくまでも”怪獣”であって、あらゆる生命体を超越した存在なんですよ。それを誰よりも理解しているデル・トロは、日本の怪獣映画に出てくる着ぐるみ怪獣の質感を改変することなく、そのままスケールアップさせました。”デカい着ぐるみ”って感じの物体がノッシノッシと動き回る迫力が圧巻で、まさに「破格の製作費を継ぎ込んで怪獣映画を撮ったらこうなるんだ!」という見本みたいなビジュアルになってます。

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ギャレゴジもちゃんと”怪獣映画”になっていたのが良かった

※その他、ネタバレありで気になった個所を列挙してみましたよ。


●実はライディーンだった?
映画を観るまでは「実写版のゲッターロボ」だと思ってたんですが、「何者かによって作られ、人類を滅ぼすために攻撃してきていた」という怪獣の設定を考えると「実写版の勇者ライディーン」の方が近いような気もしました。「操縦者の動きに合わせてロボットが動く」というシステムはライディーンも採用していたし、海から怪獣がやってきて海上で戦うところもライディーンっぽい。次回作は是非「実写版ライディーン」でお願いします(^.^)

●腕の剣はガリアンが元ネタ?
ジプシー・デンジャーの腕からシャキーン!とソードが飛び出して来た時は驚きましたねえ。クライマックスの海中戦では怪獣を一刀両断で倒してしまうし、かなり強力な武器と思われます。こんなの持ってるなら、さっさと使えよ!と言いたくなりますけど、まあそれはともかく、この剣ってちょっと変わった構造をしてるんですよね。複数のパーツが集まって1本の剣の形になるという。これは、『機甲界ガリアン』の蛇腹剣ではないのかと。アニメオタクのデル・トロ監督は『機甲界ガリアン』も見てたんでしょうか?

●でも一番影響を受けたのは『機動警察パトレイバー』だった!
押井守と言えば世界的にも有名なアニメーション監督ですが、『タイタニック』や『アバター』などを撮ったジェームズ・キャメロン監督は熱烈な押井守ファンで、『機動警察パトレイバー2 the Movie』を観て感激のあまり、気に入ったシーンを『トゥルー・ライズ』で引用するほどでした。

そんなキャメロン監督は、ギレルモ・デル・トロ監督にも「『パトレイバー』は素晴らしいアニメだ!君も観ろ!」と熱心に薦めていたらしい。その結果、『パトレイバー』を観たデル・トロ監督もキャメロンと同様に衝撃を受け、『パシフィック・リム』を作る際の参考にしたそうです(以下、デル・トロ監督のインタビューより)。

パシフィック・リム』でもっとも影響を受けているのは、間違いなく押井さんの『機動警察パトレイバー』だ。彼はアニメにリアルな戦術的感覚を持ち込んだ。僕たちもその要素をとても重要視したんだよ。



●日本語吹き替えが凄い!
巨大ロボと巨大怪獣が全力で戦う場面が見どころの『パシフィック・リム』ですが、実は「日本語吹き替え版に力を入れている」という点においても他に類を見ない画期的な作品なのですよ。

杉田智和林原めぐみ玄田哲章古谷徹池田秀一三ツ矢雄二千葉繁浪川大輔など、多数のベテラン人気声優が集結した素晴らしすぎる配役に映画ファンも声優ファンも大興奮!「字幕版よりもむしろ吹き替え版で観るべきだ」と絶賛されたそうです。

なお、本作でヒロインのマコ役を演じた菊地凛子さんは、日本人の俳優であるにもかかわらず、なぜか林原めぐみさんに声を吹き替えられていて物議を醸しました(芦田愛菜ちゃんは自分の声なのにw)。


●ガイズラー博士がJ・J・エイブラムスに似すぎている件
環太平洋防衛軍の科学士官として怪獣退治に使命を燃やすニュートン・ガイズラー博士。初登場時から「誰かに似てるな〜」と思ってたんですよ。で、家に帰って『スター・トレック イントゥ・ダークネス』の番宣を観てたら「あっ!この人だ!」と。J・J・エイブラムス監督にそっくり!

最初は「たまたまそう見えるだけかな?」と思ったんですが、ガイズラー博士を演じたチャーリー・デイ自身があまりJ・J・エイブラムスに似ていないことから、明らかに意識して”似せている”と思われます。

考えてみたら、J・J・エイブラムスもデル・トロに勝るとも劣らない熱狂的なゴジラ・ファンで、日本に来た際は秋葉原ゴジラ関連グッズを買い漁り、ゴジラが作られた東宝スタジオをわざわざ見学しに行くなど、筋金入りのゴジラオタクとして知られています。

挙句の果てには、ゴジラをモチーフに本格怪獣映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』を作ってしまうほどのハマリぶり。なので、ギレルモ・デル・トロ監督もシンパシーを感じて彼を登場させたのではないでしょうか?きっとそうに違いない!

原子力だから大丈夫?
物語後半、怪獣が放った強力な電磁波攻撃によりイェーガーがダウン。しかしジプシー・デンジャーだけは原子力で動くタイプだから問題無い!これって、OVA版『ジャイアントロボ』の「クリーン・エネルギー(シズマドライブ)を積んだ機器は全てダウンしたがジャイアントロボだけは原子力エネルギーだから大丈夫だ!」という展開と全く一緒ですよね(『ジャイアントロボ』は海外でも大ヒットしたので、デル・トロ監督も見ている可能性があるかも?)。

まあそれはいいんだけど、日本製の巨大ロボ(コヨーテ・タンゴ)に乗っていたパイロットが放射能漏れで被爆した」という設定は、さすがに今の日本の状況を考えるとちょっとどうかと思いましたよ(^_^;)

また、菊地凛子の演技が完全に芦田愛菜ちゃんに負けているとか、夜のシーンばかりで画面が見づらいとか、怪獣の個体が区別しにくいとか、菊地凛子の日本語がヘタすぎるとか、日本製イェーガー(コヨーテ・タンゴ)の活躍シーンがほとんど無いとか、ラスボスが意外とショボかったとか、結局ロン・パールマンは何しに出てきたんや?とか、色々不満点もありました(不満点多いなw)。

だがしかし!「巨大ロボ VS 巨大怪獣」という日本のアニメでしか実現不可能と思われていた題材を、ここまで忠実に実写で再現して見せたギレルモ・デル・トロ監督の”オタク愛”には脱帽せざるを得ないし、ロボットアニメ好きと怪獣映画好きにとっては”大好物の作品”と言って間違いないでしょう。

ただ同時に、この映画を観た多くのロボットアニメ好きと怪獣映画好きは悔しい思いを抱いたはずです。「どうして日本でこういう映画が作られないんだよ!」と。たしかに、過去には日本のSFアニメや特撮番組に影響を受けたハリウッドの映画監督たちが数々の優れた作品を生み出し、日本製コンテンツがいかに優れているかを証明しました。

ロボコップ』は『宇宙刑事』シリーズのパクリだし、『マトリックス』は完全に『攻殻機動隊』フォロワー、ザック・スナイダー監督が撮った『エンジェル・ウォーズ』に至っては、「日本のサブカルチャーに対するリスペクトのみで作られている」と評しても全く過言ではありません(ちなみに、『マン・オブ・スティール』のアクションシーンは、ゆうきまさみの『鉄腕バーディー』から着想を得ているらしい)。それなのに、なぜ本家本元の日本ではこのテの映画が実現できないのか?と。

もちろん、「制作規模やバジェットが比較にならない」ってのは根本的な問題としてあるでしょう。しかし最大の原因は、日本人自身がそういうオタク文化の優秀さを認めていないからではないでしょうか?

今でこそ”オタク”という言葉が一般社会に浸透し、『ガンダム』や『エヴァ』などの話題で普通に会話ができるようになりましたが、数年前までは「いい年した大人がロボットアニメなんか見るなんて!」という風潮が強く、会社で『ガンダム』の話などしようものなら、たちまち”オタク=暗いヤツ”みたいなレッテルを貼られ、「あの人キモいよね〜」と後ろ指を指されていました。

このような認識は、『ガンダム』や『エヴァ』が一般的なコンセンサスを得た現代においても本質的には変わっておらず、依然としてロボットアニメや怪獣モノや特撮番組は”幼稚で低レベルなもの”としか思われていないのが実状です。そのいい例(悪い例?)が、現在公開中の実写版『ガッチャマンでしょう。

タツノコプロが制作した『科学忍者隊ガッチャマン』は、「正義を愛する5人組のヒーローが悪の組織ギャラクターをやっつける」という単純明快なSFアニメです。確かに、いかにも子供向けアニメでリアリティは無く、今の大人が鑑賞するには厳しい内容かもしれません。しかし、子供の頃に感じた”かっこいい!”という感覚は不変であり、その”かっこいいビジョン”を実写映像化することは決して不可能ではないはずなのです。

にもかかわらず、実写版『ガッチャマン』は「リアリティを追求する」という命題のもと、基本設定やストーリーが大きく変更され、オリジナル版とは似ても似つかぬ愚作に成り果ててしまいました(観客からも批判が殺到)。

これは、製作者たちがオリジナルのかっこ良さを信じていなかったからです。「原作は子供向けのアニメだから、そのままではダサい」とか、「一般の人にも受けるように現代風なアレンジを加えて、デザインや内容を変えてしまおう」など、作り手側にこの程度の認識しかなかったから、実写版『ガッチャマン』はあんな出来栄えになったのですよ。

それに対して『パシフィック・リム』は、全く恥ずかしげもなくオリジナルへの愛が全開です。だって巨大ロボが繰り出す必殺技なんて、明らかに『マジンガーZ』のロケットパンチじゃないですか。普通の感覚なら「子供向けのロボットアニメを実写化するって、バカか?」と即却下されてしまうでしょう。

でもデル・トロ監督は”リアリティ”とか”一般受け”などという常套手段に逃げず、真正面から正々堂々と”巨大ロボ VS 巨大怪獣”をやってのけました。それが実現できたのは、「自分がかっこいいと感じたものは、誰が何と言っても絶対にかっこいいんだよ!」と心の底から信じているからなのです。

それに対して、日本人の多くがいまだに「アニメや特撮はダサいもの」「映画化したって誰も観やしない」と思い込んでいる。この違いが、日本で『パシフィック・リム』のような映画が作られない最大の要因なのではないでしょうか。

しかし僕は声を大にして言いたい!作り手側が自分の国のコンテンツに誇りを持てなくてどーすんだよ!と。自分が本気で「かっこいい!」と信じているからこそ、そこに驚きや感動が生まれるんじゃないのか?メキシコのオタク監督にできて日本人にできないはずがない!だからお願い!もっと”オタク文化の素晴らしさ”を信じてくださいッ!

※追記
なんと、『パシフィック・リム』の続編の製作が決定したようです!残念ながら監督はギレルモ・デル・トロではなく、テレビドラマ版『デアデビル』のスティーヴン・S・デナイトになるようですが、『パシフィック・リム2』が観られるのは嬉しいですね。果たして次回はどんな物語になるのでしょうか?続編の公開まで楽しみに待ちたいと思います(^_^)


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