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細田守監督『おおかみこどもの雨と雪』ネタバレ感想


■あらすじ『大学生の花は相手が“おおかみおとこ”とは知らずに恋に落ちてしまう。しかし、“おおかみおとこ”であることを打ち明けられても花の気持ちは変わらなかった。やがて2人の間には、人間とおおかみの2つの顔を持つ“おおかみこども”、姉の“雪”と弟の“雨”が生まれる。そして雪と雨が人前でおおかみにならないよう注意しながら、家族は都会の片隅でひっそりと、しかし幸せに暮らしていた。そんなある日、父親の“おおかみおとこ”に突然の死が訪れる。花は悲しみに暮れながらも、子どもたちを一人で育てるために決意を新たにし、緑豊かな山あいの村へと移り住む。大自然の中でのびのびと成長していく雪と雨。だが、2人には重大な選択のときが迫っていた。「時をかける少女」「サマーウォーズ」の細田守監督が、母親と子どもたちとの絆と成長を美しい自然の風景とともに丁寧な筆致で描き出すファミリー・ファンタジー・アニメーション!』



細田守監督作品『おおかみこどもの雨と雪』が大ヒットしています。7月21日に全国381スクリーンで封切られて以来、順調に成績を伸ばし続け、8月6日時点で動員135万人、興収16億8000万円を記録。細田監督の前作『サマーウォーズ』(動員126万人、興収16.5億円)を早くも上回る好調ぶりで、大ヒット御礼舞台あいさつが行われたほどでした。

その後も勢いは衰える気配を見せず、8月19日現在も尚、興行ランキング2位という好成績を維持し続け、収益は既に21億円を突破しています。しかも、まだまだ記録を伸ばせそうな余裕すら感じさせ、凄いとしか言いようがありません。いったいなぜ、本作はこれほどまでに大ヒットしているのでしょうか?

時をかける少女』や『サマーウォーズ』はSF映画的な設定を用いていたのに対し、今回は”狼男”が存在する世界を描いたファンタジー映画になっています。作品の主題は「子育て」であり、夫と死に別れてシングルマザーになった主人公:花が、たった一人で二人の子供を育てる苦労を描いた本作。ファンタジーというフィルターを通じて、細田守監督が訴えようとしたことは何か?以下、インタビュー記事より抜粋。

「たとえば今この現代の中で、子供を産んで育てることがいかに大変か、今は子供を産み育てることにちょっと勇気がいる時代ですよね。そういう中で、僕の友人達が子供を産もう、育てようとしているのが、とてもヒロイックに見えた。すごく大変な思いをしながらも頑張って子育てをしているお父さんお母さんたちを憧れの目で見たい、そういう気持ちがあったんです。」


「映画の中で、狼男と恋をして子供を宿したが故に、主人公の花は本当に誰にも頼れない立場になってしまう。だけど、こういうことはファンタジーの世界だけじゃない。現実の社会でも、お母さんたちは”子供を守れるのは自分しかいない”って思ってるんじゃないかな。自分の代わりになる人はいないという覚悟をみんな持っている。」


「それは見方によっては孤高なのかもしれないけど、でもやっぱり人は独りじゃ生きていけないっていうか。色んな人の助けというか、子育ての助けじゃなくても生活の助けはどこかで必要だと思うし、それによって彼女は救われるんですね。」

晩婚化や少子化、離婚やシングルマザーの増加など、子供を産んで育てることが当たり前ではなくなりつつある現代社会。だけど、そんな”子育て受難”の時代だからこそ、子供を産み育てることの尊さを訴えたい。そして懸命に子育てしているお父さん・お母さん達へエールを送りたい。そういう想いが映画から伝わってきます。

ただし、絶賛ばかりではなく、批判的な意見も結構あるようで、中でも多いのが「育児場面にリアリティがない」「全てが綺麗事すぎる」というものでした。それもそのはず、細田監督自身には子供がおらず、子育ての経験が全く無かったのです!もし細田監督に子供がいたら、おそらくこういう内容にはならなかったでしょう。もっと当事者に近い目線から、母親の苦労や悩みをリアルに描いていたかもしれません。

しかし、逆説的ですが子育ての経験が無いからこそ、こういう映画を作る事ができた、とも言えるんじゃないでしょうか。本作で描かれている子育て場面や親子像はあくまでも「こうであって欲しい」という監督自身の願望にすぎませんが、だからこそ理想化された彼らの関係性は寓話の中で美しく輝き昇華するのです。そして、こういう映画がヒットしているということは、世間が「こういう寓話」を求めていることの証明でもあるのでしょう。

ちなみに、細田守さんの作品は毎回背景のクオリティが異様に高いことでも有名ですが、本作でもまた見事な背景を描き出し、観る者全てを圧倒していました。美術監督を務めた大野広司さんは『魔女の宅急便』や『走れメロス』などの背景を手掛けたベテランです。

今回、大野さんは細田監督と打ち合わせをした後、ロケハンのためにまず都内各所を廻り、次に田舎の風景を確認するため富山県を訪れました。そして、撮った写真を元に建物の3DCGを作成し、見たい角度を自由自在に設定して様々な背景を描いていったそうです。

また、本作の背景画はほとんど手描きですが、今回デジタル技術を使った本邦初の試みが導入されました。なんと、手描きの背景画をそのまま動かそうというのです!

通常、アニメーションで画面内の草木などを動かす場合、作画担当者が背景画の上にもう一枚絵を重ねて動画で動かすため、絵の質感が異なってしまうことは避けられません。ところが、細田監督が「背景の絵をそのまま動かしたい」などととんでもない事を言い出したためスタッフは大パニック!

「どうしよう?」と悩んだスタッフはまず背景画をスキャナーでPCに取り込みました。そして、描いてある草花を一本一本切り取り、CGで作製したモデルにテクスチャーとして貼り付け、風に揺られて動く様子をシミュレーションし、それをまた背景画に合成してようやく完成。

言うのは簡単ですが、本作で使用された背景画は1153枚にも及んだため、美術担当者は大変な苦労を強いられることになったそうです、トホホ。しかし、このような苦労の末に作りだされた数々の背景美術は、従来のアニメーションでは表現できなかった「動く背景」を実現し、よりリアルな自然描写を可能にしました。スゲー!

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