ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

韓国映画『ラスト・プレゼント』ネタバレ映画感想

ラスト・プレゼント

■あらすじ『ヨンギ(イ・ジョンジェ)は才能はあるが売れないコメディアンだ。妻のジョンヨン(イ・ヨンエ)はそんなヨンギの才能を誰よりも信じ、子供服のショップを経営しながら夫を支えていた。とはいうものの、TVには出れず場末のクラブへの出演に甘んじている夫にジョンヨンはついキツイ言葉を投げつけてしまう。2人は口論が絶えず、いつしか寝室も別々に。だが、ある日ヨンギはジョンヨンが重い病に冒されている事を知ってしまった。そんな折、ようやく彼はTV番組「お笑い王」の勝ち抜き戦に出場し、順調に決勝に進んでいく事ができた。その番組を見て嬉し涙を浮かべるジョンヨン。しかし2人の幸せな時間はあまりに残り少なかった。そしてジョンヨンがヨンギに贈った“最後のプレゼント”とは・・・!?韓国では公開前から史上最高の感涙映画と評された、まさに完全無欠の純愛ドラマ!』



日本でも大ヒットした『冬ソナ』をきっかけに、史上空前の「純愛ブーム」をもたらした韓国映画。もはや韓国のショービズ界において“純愛”は欠かす事の出来ないキーワードであるらしく、どの映画を見ても呆れるほどメロドラマの宝庫となっている。

ラブストーリーのみならず、社会派ドラマや激しいアクション映画、果てはSF映画に至るまで驚くほどベタな恋愛要素が盛り込まれ、古典的な悲恋やクサいほど甘いロマンスが照れやてらいもなく堂々と真正面から描かれているのだ。

もちろん繊細な初恋ドラマでノスタルジーを誘ったり、都会派のロマンスでトレンドを刺激したりと、愛の形や語りの手法もびっくりするほどバラエティに富んでいる。どうやら韓国の映画人たちは“観客を泣かせる”という命題に全身全霊をかけて取り組んでいるらしく、どの映画もありとあらゆる手段を使って「泣かせよう!」としているのだ。

そんな“号泣レベル”が極めて高い韓国映画の中においても、本作の号泣度は群を抜いて凄まじいと言わざるを得ない。設定を聞くだけでオチまで分かるような明快さと、反則スレスレのベタな泣かせ要素を「これでも食らえ!」と言わんばかりに思う存分ぶちまける手法は、かつての大映ドラマを髣髴とさせる。

では一体、『ラスト・プレゼント』にはどれだけの“泣かせ要素”が盛り込まれているのか、ちょっと検証してみた(以下ネタバレしてます)。


★泣かせ要素その1:奥さんの不幸ぶりが凄い
妻ジョンヨンは幼い頃から天涯孤独で親の顔も知らずに育ってきた。ヨンギに結婚を申し込まれた時も、“孤児だから”と彼の両親は猛反対。とうとう勘当同然に家を飛び出し、やっと夫婦になれたものの、生まれた子供はあっという間に死んでしまう。さらに夫は全くやる気が無いばかりか、詐欺師に騙されて店の権利書まで持ち出す始末。挙句の果てには医者も見離すほどの重病にかかってしまうのだ。まさに不幸を絵に描いたような転落人生である。

★泣かせ要素その2:難病
“ヒロインが重い病気にかかる”というシチュエーションも純愛映画における定番中の定番だ。本作もジョンヨンが難病を患っている事が号泣指数を大幅にアップさせている。ちなみに恋愛映画で最も多い病気は白血病とガンであるが、本作では妻の具体的な病名が全く出てこない。いったい何の病気なんだ?

★泣かせ要素その3:回想シーン
主人公の過去に、後の伏線となる重要なエピソードが隠されている展開も恋愛映画には多い。本作では、ジョンヨンが持っていた古い写真を見つけたヨンギが、その写真から彼女の初恋の相手を探し始める。その回想シーンの中でジョンヨンの小学校時代が描かれていくのだが、そこには意外な事実が隠されていた・・・!

★泣かせ要素その4:写真
恋愛映画の号泣アイテムとして、頻繁に登場するのが写真である。結婚に猛反対していたヨンギの両親が、孤児だったジョンヨンと一緒に“家族写真”を撮るシーンは、本作の名場面の一つだろう。父親が、どうしていいか分からずにモジモジしているジョンヨンの手をそっと優しく握る場面で、観客の涙腺が一気に緩む。

★泣かせ要素その5:伝聞
手紙やメモ、インターネットといった伝聞系アイテムも恋愛映画には欠かせない要素の一つだ。本作ではヨンギが詐欺師に託す“ジョンヨンが会いたがっている人のリスト”がそれに当たる。リストにまつわるエピソードは詐欺師2人のサブストーリーとしてコミカルに進行するのだが、これがクライマックスの号泣の引き金となってくるのだ。

★泣かせ要素その6:脇役
ヨンギに近づく詐欺師二人組み。しかし実は結構お人よしで、ジョンヨンの病気をヨンギより先に知ってしまい、それを教えてあげるばかりか彼女の初恋の相手を探すハメになる。彼らの活躍が、重くなりがちな物語にユーモアを与えているのだ。

★泣かせ要素その7:プレゼント
タイトル通り、クライマックスにはジョンヨンからヨンギにあてた“最後の贈り物”が登場する。あまりにも意外なプレゼントに、どんなに屈強な観客であろうとも号泣させられてしまう事は間違いない。まさに一撃必殺の号泣アイテムである。


以上のようにこの映画は、考え付く限りの“泣かせ要素”を片っ端から箇条書きにして、それを全てぶち込んで作ったとしか思えないぐらいベタに次ぐベタの連続なのだ。しかしここまで開き直って見せられては、あざとさを通り越してむしろ清々しささえ感じてしまう。「何が何でも泣かせてやるぜ!」という製作者たちの執念が、見る者の心をガッチリつかんで放さないのだ。

中でも最大のポイントは、いかにも薄幸そうなジョンヨンを演じるイ・ヨンエの凄まじいばかりの演技力である。最終的には、彼女の姿を見ているだけでも涙が滲んでくるほどだ。これぞまさに“究極の号泣兵器”であると言えよう!