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「平成で一番面白かった映画」といえば?過去30年を振り返ってみた

平成に公開された映画

平成に公開された映画

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
いよいよあと2日で「平成」が終わってしまいますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

さて、間もなく新しい元号「令和」に変わるということで、世間では「平成〇〇〇ランキング!」的なものが流行っているようですけど、当ブログでは敢えて”ランキング”とか”ベストテン”形式ではなく、単純に「平成の30年間に公開された映画」をザックリと年代順に振り返ってみたいと思います。

もちろん全部の作品を書くわけにはいかないので、中でも特に話題になった映画や個人的に印象に残った作品などを取り上げ、”感想”なり”思い出”なりを語ってみようかなと。いや~、30年間でずいぶん色んな映画が公開されましたね~。

 


●平成元年(1989年)
まず、記念すべき(?)平成最初の年に公開された映画としては、『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』、『レインマン』、『魔女の宅急便』、『バットマン』、『ブラック・レイン』、『ゼイリブ』、『告発の行方』、『カクテル』。

さらに『ワーキング・ガール』、『男たちの挽歌2』、『機動警察パトレイバー the Movie』、『リーサル・ウェポン2/炎の約束』、『恋人たちの予感』、『007 消されたライセンス』、『ニュー・シネマ・パラダイス』など色々ありますが、特に印象に残っているのはダイ・ハードですね。

第1作目からいきなりもの凄い完成度で映画ファンの度肝を抜きまくった『ダイ・ハード』は、ブルース・ウィリス出世作であると同時に、その後のアクション映画に絶大な影響を与え、シリーズ化されて計5本の続編が作られるなど、公開から30年以上経ってもなお「傑作」との呼び名が高い超人気作品です。

というか「もう30年も前の映画なのか…」と今さらながら驚きますねぇ(^^;)

●平成2年(1990年)
続いて平成2年。この年は角川映画天と地と興行収入92億円の大ヒットを記録し、ジョン・マクレーンが再び活躍する『ダイ・ハード2』や、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFアクション映画『トータル・リコール』、切ないラブストーリーの『ゴースト/ニューヨークの幻』。

さらに野球を通じて家族の絆を描いた『フィールド・オブ・ドリームス』、CGを駆使して斬新な映像を生み出した『アビス』、B級モンスター映画の傑作『トレマーズ』、音楽もヒットした『プリティ・ウーマン』など話題作多し。

そんな中でもダントツに面白かったのは、バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』と『PART3』ですね。ご存知、マイケル・J・フォックス主演の大ヒット作の続編ですが、まさかの前後編という構成にビックリしました。

当時はシリーズものでも1話完結が基本で、映画のラストに「次回へ続く!」と出る映画なんてほとんどなかったからです。今みたいにネットで情報を集めることも出来ないし、「続きはどうなるんだ!?」と気になってしょうがなかったですよ本当に(^^;)

●平成3年(1991年)
平成3年は、今でもクリスマスの定番としてテレビで繰り返し放送されている『ホーム・アローン』、アカデミー賞作品賞を獲得した『ダンス・ウィズ・ウルブズ』、アンソニー・ホプキンス演じるレクター博士が観る者に強烈な印象を与えた『羊たちの沈黙』などが公開されました。

しかし、この年に一番ヒットしたのは、ジェームズ・キャメロン監督のターミネーター2です!シュワちゃん演じる殺人マシン:ターミネーターとの戦いを描いた前作から数年後、少年へと成長したジョンと母親サラ・コナーに再び魔の手が迫る!

僕は公開時に映画館で鑑賞し、ド迫力のアクションシーンや自由自在に変身する敵ターミネーターのCG表現など、衝撃映像が満載で大興奮したのを覚えています。個人的にはこれがナンバーワンかな~。

●平成4年(1992年)
ティム・バートン監督の趣味が炸裂したバットマン リターンズ、安定感抜群のディズニーアニメ『美女と野獣』、コメディ色が強くなった『リーサル・ウェポン3』、ホイットニー・ヒューストンが歌う主題歌「オールウェイズ・ラヴ・ユー」も大ヒットした『ボディガード』など。

さらに『エイリアン3』、『氷の微笑』、『紅の豚』、『ユニバーサル・ソルジャー』、『ミンボーの女』など色んな映画が公開された平成4年ですが、個人的にはオリバー・ストーン監督のJFKが良かったかなと。

ケビン・コスナートミー・リー・ジョーンズケヴィン・ベーコンゲイリー・オールドマンマイケル・ルーカーシシー・スペイセクドナルド・サザーランドなど、錚々たる俳優が集結し、ケネディ大統領暗殺事件の真相に挑む人々の姿をドラマチックに描いた超大作です。

JFK (字幕版)

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●平成5年(1993年)
平成5年は、押井守監督の大傑作機動警察パトレイバー2』シルヴェスター・スタローンが久々に大作アクションに返り咲いた『クリフハンガー』、クエンティン・タランティーノ監督が注目されるきっかけとなった『レザボアドッグス』など。

そんな中で最大の話題作は、なんと言ってもスティーブン・スピルバーグ監督のジュラシック・パークでしょう。それまでは人形アニメや着ぐるみ等でしか見ることができなかった恐竜の動きを、フルCGでリアルに再現した画期的な作品です(特撮も使ってますが)。

「『ジュラシック・パーク』以降は、映画の表現方法が完全に変わった」と言われるほど業界に与えた影響はすさまじく、本作をきっかけとして急激にCGの使用頻度が増大しました。そういう意味でも「平成を代表する一作」と言っても過言ではないと思います。

●平成6年(1994年)
この年に公開された映画は、スピルバーグ監督が初のオスカーを獲得した『シンドラーのリスト』、高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』、キャメロン監督とシュワちゃんが再びコンビを組んだ『トゥルーライズ』、アカデミーで脚本賞、カンヌではパルムドールを受賞した『パルプ・フィクション』など。

そんな平成6年で僕が一番好きな映画は、キアヌ・リーブス主演の『スピード』です。公開時は映画館で観たんですが、あまりの面白さに3回連続で観てしまいました(当時は入れ替え制じゃなかったので)。

まだアクション俳優的なイメージが付く前のキアヌ・リーブスが激しいアクションに挑む意外性や、『ダイ・ハード』や『リーサル・ウェポン』シリーズのカメラマンとして優れた映像を撮り続けて来たヤン・デ・ボンの監督デビュー作としても話題になった本作。

エレベーター、バス、地下鉄など、次々と場面(乗り物)を変えながら展開していく独特のアクション構成は冒頭からラストシーンまでサービス精神に満ち溢れ、某映画評論家に「抜きどころしかないAVみたいだ」と言わしめたほどです(笑)。

●平成7年(1995年)
この年は、リュック・ベッソン監督の大ヒット作『レオン』、いまだに名作との誉れ高いショーシャンクの空に、人気シリーズ第3弾『ダイ・ハード3』、押井守監督の名前が全米(のオタク)に知れ渡った『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、トム・ハンクス主演の『フォレスト・ガンプ/一期一会』や『アポロ13』など話題作が多いんですが…

個人的にはガメラ 大怪獣空中決戦』を強く推したい!監督:金子修介特技監督樋口真嗣、脚本:伊藤和典の3人がそれぞれのスキルをいかんなく発揮した本作は、停滞していた”怪獣映画”というジャンルに新しい命を吹き込んだ革新的な作品なのですよ。

今見ると、着ぐるみ感満載の怪獣の表現はやや古臭く感じるかもしれませんが、後に「平成ガメラ三部作」と称されることからも、平成を代表する映画の一つと呼んで差し支えないでしょう。

●平成8年(1996年)

平成8年の映画では、アル・パチーノロバート・デ・ニーロの共演が話題になった『ヒート』や人気スパイシリーズの第1弾『ミッション:インポッシブル』、前作よりもさらに戦闘シーンがリアルになった『ガメラ2 レギオン襲来』、ピクサーが作り上げたフルCGアニメーショントイ・ストーリー』、そして『ザ・ロック』や『インデペンデンス・デイ』など大作映画も目白押し。

その中でも、特にデヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』が衝撃的でしたねぇ。主人公の刑事に扮したブラッド・ピットが奇妙な事件を捜査するサスペンス映画なんですが、ラストの展開があまりにも凄すぎて…(なお、同じ年に公開された『ユージュアル・サスペクツ』も必見です)。

●平成9年(1997年)
平成9年最大のヒット作といえば……そう!宮崎駿監督のもののけ姫と、ジェームズ・キャメロン監督のタイタニックです。正確に言うと、興行成績の1位は『もののけ姫』で、12月に公開された『タイタニック』は平成10年の1位にカウントされてるんですが、公開された年は同じです。

当時は日本の歴代興行収入第1位となる193億円を叩き出し、「高倉健主演の『南極物語』以来、14年ぶりに記録が更新された!」とニュースになったんですけど、5カ月後に公開された『タイタニック』がそれを上回る大ヒットで二度ビックリしましたね。まさかこんなに早く日本新記録が破られるとは(笑)。

なお、個人的は庵野秀明監督の新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』と『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にが最も印象的でした。映画館で初めて”あのラスト”を観た時の衝撃と、劇場内に充満する「なんなのコレ…?」という異様な雰囲気はたぶん一生忘れないと思います(笑)。

●平成10年(1998年)
Jホラーブームの先駆けとなった『リング』が公開された平成10年は、割と批判され気味のハリウッド版『GODZILLA』の他、『スターシップ・トゥルーパーズ』や『エイリアン4』や『ザ・グリード』など、モンスター系の映画が多かったですね。

あとは『ディープ・インパクト』と『アルマゲドン』という似たような内容の映画が同時期に公開されて観客を混乱させたり、『踊る大捜査線 THE MOVIE』の大ヒットでTVドラマの映画化が流行ったり…。

ちなみに、この年の映画で僕のおすすめはプライベート・ライアンです。スピルバーグトム・ハンクスのコンビは毎回期待を裏切らないんですが、今回は特に冒頭(オマハ・ビーチ)の戦闘シーンが凄すぎてトラウマになりそうでした(苦笑)。

●平成11年(1999年)
平成11年のヒット作は、何と言ってもスター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナスでしょう。ジョージ・ルーカス監督作の人気シリーズが16年ぶりに復活するとあって、世界中のファンが大興奮!もちろん、僕も観に行きました。結果は……まあ敢えて言いませんけれども(笑)。

他に話題になった映画としては、M・ナイト・シャマラン監督のシックス・センスが最強ですね。なんせ当時は映画ファン以外にもその評判が広まり、「『シックス・センス』観た?」と聞かれて「観てない」と答えようものなら話に参加できなかったぐらいですから(笑)。

その他、平成ガメラ三部作完結編の『ガメラ3 邪神覚醒』や、デヴィッド・フィンチャーブラッド・ピットの『ファイト・クラブ』、娯楽要素が満載のアドベンチャー映画『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』など面白い映画は色々ありましたが…

この年の1位を選ぶなら、やはりマトリックスしかないでしょう!ハリウッド俳優が自ら挑んだカンフーアクション、人物の周囲をカメラがグルッと回り込むマシンガン撮影バレットタイム)など、見たこともない斬新な映像を次々と繰り出し、映画界に「革命」を起こした衝撃作です。まさにエポックメイキング!

●平成12年(2000年)
平成12年のヒット作は、人気シリーズ第2弾のミッション:インポッシブル2』や、スティーヴン・キング原作&フランク・ダラボン監督のグリーンマイルなど。特に『グリーンマイル』は予告編でスピルバーグが「4回号泣した」とコメントするなど、大いに話題となりました。

その他、『トイ・ストーリー2』、『アイアン・ジャイアント』、『アメリカン・ビューティー』、『マグノリア』、『X-MEN』、『ギャラクシー・クエスト』など様々な映画が公開されましたが、中でも特筆すべきは『シュリ』

今でこそ韓国映画は当たり前のように受け入れられていますが、当時はまだ韓国のアクション映画が日本でヒットするなんて思いもよらず、本作以降に『冬のソナタ』などの”韓流ブーム”が到来しました。ある意味、韓国作品がヒットするきっかけになったと言っていいかもしれません。

●平成13年(2001年)
2001年9月11日。この年、アメリカで同時多発テロが発生しました。この事件によって米国は大混乱に陥り、新作映画の公開延期や主要都市で劇場が閉鎖されるなど、映画業界にも多大な影響が出たそうです。

例えばサム・ライミ監督のスパイダーマンは、当初クライマックスで世界貿易センタービルを舞台に大規模なアクションを繰り広げる予定でしたが、大幅なシナリオの変更を余儀なくされたとか。

また、アクションスターのジャッキー・チェンは、ちょうどこの日、新作映画『Nosebleed』のワンシーンをビルの屋上で撮影する予定になっていました。ところが、脚本の完成が遅れたため直前でキャンセルに(おかげでジャッキーは命拾いしたという)。

そして、長くファンから愛されることになる人気シリーズの第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』と、同じく長寿シリーズとなる『ワイルド・スピード』もこの年に公開。あとは『ジュラシック・パークIII』、『ハンニバル』、『A.I.』なども話題になりました。

なお、ゲームメーカーとして有名なスクウェア・エニックス(当時はスクウェア)が映画界に参入して来たのもこの年で、140億円以上の製作費を投じて劇場版『ファイナルファンタジー』を作ったものの、世界的規模で大コケし、ギネスブックに載るほどの赤字を叩き出したことでも知られています、トホホ。

そんな平成13年、日本の映画史に残る超ウルトラメガヒット作が登場しました。宮崎駿監督の長編8作目千と千尋の神隠しです。有名すぎて特に語ることもないんですけど、308億円という前代未聞の大記録を叩き出し、日本歴代興行収入第1位を達成!18年経った現在でもこの凄まじい記録は破られていません。

●平成14年(2002年)
平成14年のヒット作は、新シリーズ2作目のスター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃、超大作ファンタジー映画『ロード・オブ・ザ・リング』、ピクサーの長編アニメ『モンスターズ・インク』、ジョージ・クルーニーブラッド・ピットマット・デイモンなど豪華キャストが集結した『オーシャンズ11』、シリーズ2作目『ハリー・ポッターと秘密の部屋』など。

その他、サム・ライミ監督が有名なアメコミを映画化した『スパイダーマン』、トム・クルーズが近未来で戦う『マイノリティ・リポート』、捧腹絶倒なアクション映画『少林サッカー』、松本大洋の人気漫画を実写化した『ピンポン』など話題作多数。

そんな中で印象的だったのは、リドリー・スコット監督が実際にソマリアで起きた戦闘をドラマ化したブラックホーク・ダウンです。米軍の汎用ヘリコプターUH-60 ブラックホークが撃墜され、敵地のど真ん中に取り残された兵士たち。そのリアルな姿と戦場の臨場感がハンパない!

●平成15年(2003年)
平成15年の大ヒット作といえば、踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』です。この映画は173億円というとてつもない興行収入を叩き出し、2003年の興収第1位のみならず、なんと実写邦画の歴代第1位の座を獲得しました(いまだにこの記録は破られていない)。

そして、大ヒットした『マトリックス』の続編となる『マトリックス リローデッド』と『マトリックス レボリューションズ』も日本を含め世界中で大ヒット(ただし、作品の評価は賛否両論わかれましたがw)。

あと、印象に残った映画としてはジョゼと虎と魚たちが良かったです。妻夫木聡池脇千鶴上野樹里、そして悪い意味で有名になってしまった新井浩文が出演している恋愛ドラマで、ハリウッド映画に比べると規模は非常に小さいですが、色々と考えさせられる場面が多く、いつまでも心に残る作品ですよ。

その他、『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』、『ターミネーター3』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』、『ワイルド・スピードX2』、『ボーン・アイデンティティー』、『キル・ビルVol.1』、『ラストサムライ』、『X-MEN2』など大作映画が目立ちましたね。

そんな大作映画に紛れてひっそりと公開されたリベリオンっていう映画、皆さんご存知でしょうか?まあ、たぶんほとんどの人は知らないでしょう。なにしろ、主演を務めたクリスチャン・ベイルが『バットマン ビギンズ』のプロモーション時に「昔『リベリオン』という映画に出演したんだよ。誰も知らないだろうけどね」とコメントしたぐらいですから(苦笑)。

しかし知名度こそ低いものの、『リベリオン』はすごい映画なんですよ!”ガン=カタ”と呼ばれるオリジナルの格闘術を駆使して、超至近距離から飛んで来る大量の弾丸を華麗に避けつつ、両手に構えた拳銃で次々と敵を倒していくその姿は、まるで舞いを舞うような美しさ&圧倒的なカッコよさ!これぞスタイリッシュ・ガンアクション映画の決定版です!

●平成16年(2004年)
平成16年にヒットした映画は、ダントツで宮崎駿監督のハウルの動く城です。前作の『千と千尋』よりは落ちたものの、196億円という凄まじい興行成績で他を圧倒!

洋画では、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』や『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』などが世界中でヒットしましたが、日本では世界の中心で、愛をさけぶが大ヒット!若者の間で”セカチュー・ブーム”が巻き起こりました。

あと、是枝裕和監督の『誰も知らない』で主演を務めた柳楽優弥が、第57回カンヌ国際映画祭にて日本人初の最優秀主演男優賞を獲得したことも話題になりましたね。

他にも『いま、会いにゆきます』、『スウィングガールズ』、『下妻物語』、『海猿 -ウミザル-』、『花とアリス』など日本映画が注目されたんですが、「史上最悪の実写化」としていまだに批判されている実写版『デビルマンが公開されたのもこの年です(笑)。

そして、押井守監督が『攻殻機動隊』の続編として作った『イノセンス』、「CG・ワイヤー・スタントマンを一切使いません!」のキャッチコピーでアクション映画ファンの心を掴んだ『マッハ!!!!!!!!』なども忘れ難いんですけど、個人的にはスパイダーマン2が至高でした。

●平成17年(2005年)
この年に公開されてヒットした洋画は、新三部作完結編のスター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐スピルバーグトム・クルーズの『宇宙戦争』、ティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場』、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』など。

邦画では、昭和レトロブームの火付け役となったALWAYS 三丁目の夕日ネット掲示板2ちゃんねるから生まれた『電車男』、バンド活動に打ち込む女子高生たちの姿を瑞々しいタッチで描いた『リンダ リンダ リンダ』、戦艦大和の乗組員の生き様を力強く活写した『男たちの大和/YAMATO』などが話題に。

その他、『ボーン・スプレマシー』、『バットマン ビギンズ』、『キング・コング』など色々ありましたが、劇場版『機動戦士Ζガンダム -星を継ぐ者-』と『機動戦士ΖガンダムII -恋人たち-』には驚かされました。まさかテレビ放送終了から19年も経って劇場版が作られるとは!

なお僕が印象的だったのは、クリント・イーストウッド監督のミリオンダラー・ベイビーです。「年老いたボクシングトレーナーと若き女性ボクサーが織り成す愛と感動のスポーツドラマ」かと思いきや…。いや~、すごいラストだったなあ(汗)。

●平成18年(2006年)
平成18年に公開された洋画では、シリーズ2作目『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』、トム・ハンクスが世界を駆け巡ってイエス・キリストに関する謎を解くダ・ヴィンチ・コード、シリーズ3作目『ミッション:インポッシブル3』など。

邦画では、人気漫画を実写化した『LIMIT OF LOVE 海猿が70億円を超える大ヒット!同じく漫画原作の『デスノート 前編』と『デスノート 後編』がどちらもスマッシュヒットを記録、さらに宮崎駿の息子の宮崎吾朗の初監督作品『ゲド戦記』が77億円のメガヒットを記録しました。

その他、『THE 有頂天ホテル』や『日本沈没』などが相次いで50~60億以上のヒットを記録し、全体としては21年ぶりに国内興行収入で邦画が洋画を上回ったそうです(この時期から邦画の成績がどんどん高まっていった)。

あとは、『X-MEN: ファイナル ディシジョン』、『ブロークバック・マウンテン』、『機動戦士ΖガンダムIII -星の鼓動は愛-』など色々ありましたが、個人的に良かったのは韓国映画グエムル-漢江の怪物-』です。「日常風景の中に怪物が普通に映り込んでいる」という映像がインパクト大でした(笑)。

●平成19年(2007年)
洋画では、3作目のパイレーツ・オブ・カリビアンワールド・エンド』がシリーズ最高の109億円の特大ヒット。続いて『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』が94億円の大ヒット、さらに『スパイダーマン3』、『ダイ・ハード4.0』、『ロッキー・ザ・ファイナル』などの続編が相次いでヒットした平成19年。

邦画では、木村拓哉主演の人気ドラマの劇場版『HERO』が80億円を超える大ヒットを記録!また、周防正行監督が『Shall we ダンス?』以来10年ぶりに撮った新作映画『それでもボクはやってない』が話題になりました。

アニメでは、庵野秀明監督が前作から10年ぶりにエヴァを再映画化したヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が話題になり、20億円のヒットに。

その他、『トランスフォーマー』、『ボーン・アルティメイタム』、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』など色々ありつつ、個人的にはギレルモ・デル・トロ監督の切ないファンタジーパンズ・ラビリンスを推しておきます。

●平成20年(2008年)
洋画では、インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国が57億円、ジョン・ウー監督が三国志の”赤壁の戦い”を描いたアクション大作『レッドクリフ PartI』が50億円を超える大ヒット。

邦画では、宮崎駿監督の長編10作目崖の上のポニョが155億円のメガヒットを記録した他、人気ドラマの劇場版『花より男子ファイナル』が78億円、第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』が65億円、ガリレオシリーズの劇場版『容疑者Xの献身』が49億円など、邦画の強さが際立った年でした。

一方、バットマンシリーズの続編『ダークナイト』が全米で驚異的な大ヒットを記録したり、マーベルがMCUの第1弾となる『アイアンマン』を公開するなど、この辺からアメコミ映画が活気づいてますね。

その他、『ノーカントリー』、『クローバーフィールド/HAKAISHA』、『インクレディブル・ハルク』など色々あった中で、印象的だったのはランボー/最後の戦場』です。映画館で観たんですが、あまりにも壮絶なアクションシーン(というか殺戮シーン?)に「何だ、この映画は!?」と衝撃を受け、いまだに「何だったんだ、あの映画は…?」という気持ちが拭えません(笑)。

●平成21年(2009年)
洋画では、『タイタニック』で世界最高の興行収入を打ち立てたジェームズ・キャメロン監督が、なんと新作のSF超大作アバターで自身の記録を更新し、156億円という凄まじい成績を叩き出しました。

また、シリーズ6作目の『ハリー・ポッターと謎のプリンス』は80億円、『レッドクリフ Part II -未来への最終決戦-』が56億円のメガヒットを記録。

さらにこの年はマイケル・ジャクソンが急死し、ソニー・ピクチャーズが急遽ドキュメンタリー映画マイケル・ジャクソン THIS IS IT』を作って公開したところ、世界中で爆発的なヒットとなり、日本でも52億円の好成績を収めました。

邦画では、人気ドラマの劇場版『ROOKIES -卒業-』が86億円、『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』が41億円、『20世紀少年 第2章 最後の希望』が30億円、さらに『20世紀少年 最終章 ぼくらの旗』が44億円を売り上げるなど、「漫画の実写化」が絶好調!

そして、庵野秀明監督のヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』は、以前のストーリーをそのままなぞるのかと思いきや、新キャラ:マリを登場させるなど意外な展開の連続でエヴァファンも大歓喜!しかし、まさか『Q』があんなことになるとは…(苦笑)。

その他、『ターミネーター4』、『トランスフォーマー/リベンジ』、『サマーウォーズ』、『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』、『ワイルド・スピード MAX』、『愛のむきだし』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』など。

そんな中で僕が好きな映画はクエンティン・タランティーノ監督のイングロリアス・バスターズです。第二次世界大戦を舞台に、ナチス壊滅秘密部隊「バスターズ」の活躍を描いた痛快アクションで、特にランダ大佐を演じたクリストフ・ヴァルツの存在感がすごい!

●平成22年(2010年)
洋画では、ティム・バートン監督のアリス・イン・ワンダーランドが118億円の大ヒット。そして、シリーズ完結編となる『トイ・ストーリー3』が108億円の大ヒットを記録し、有終の美を飾りました。

また、クリストファー・ノーラン監督のインセプションは、「特殊な装置を使って他人の夢の中へ入り込む」という『ドラえもん』みたいな話を、レオナルド・ディカプリオがもの凄く真面目に演じたことにより、過去に類のない独特なSF映画として成立させた点が素晴らしかったです。

その他、キャスリン・ビグローが女性として史上初のアカデミー監督賞を受賞した『ハート・ロッカー』や、南アフリカにおけるアパルトヘイト政策の実情をSF映画に反映させた『第9地区』、かつてのアクション映画のヒーローたちを復活させた『エクスペンダブルズ』なども良かった。

邦画では、『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』が73億円、『THE LAST MESSAGE 海猿-UMIZARU-』が80億円、『借りぐらしのアリエッティ』が93億円のメガヒットを記録。ついでに木村拓哉主演の『SPACE BATTLESHIP ヤマト』も41億円の大ヒットを記録しています。

そんな大ヒット作がひしめく平成22年で、あまりヒットしなかったけど印象に残った映画といえばキック・アスですね。主人公のキック・アスより、クロエ・モレッツ演じるヒット・ガールの方に注目が集まったような気もしますが(笑)、アメコミ愛に溢れたいい映画でした。

平成23年(2011年)
平成23年は、3月11日に東日本大震災が発生したことで、日本中が大混乱に陥りました(しばらく自粛ムードが漂い、経済的にも影響が…)。

そんな中、洋画では前後編で公開されたハリー・ポッターと死の秘宝』が2作合わせて166億円の大ヒットを記録し、2001年から始まった人気シリーズがついにフィナーレを迎えました。

また、シリーズ4作目となる『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』は89億円の好成績を収めて相変わらずの人気の高さを見せつけ、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』が54億円、『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』も43億円と絶好調。

邦画では、宮崎吾朗の監督2作目『コクリコ坂から』が44億円、三谷幸喜監督の『ステキな金縛り』が43億円、そして奥浩哉の人気漫画を実写化した『GANTZ』が前後編合わせて62億円の大ヒットを記録しています。

なお、この年は2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」が、60億kmの旅を終えて地球に戻ってきたことも話題となり、『はやぶさ/HAYABUSA』などはやぶさ」関連の映画が4本も公開されました(作りすぎやろw)。

その他の公開作品は『ソーシャル・ネットワーク』、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』、『SUPER8/スーパーエイト』、『ワイルド・スピード MEGA MAX』、『猿の惑星:創世記』、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』など。

ちなみに僕のおすすめは、同じ8分間を何度も何度も繰り返す男の姿を描いたミッション:8ミニッツです。地味だけどいい映画ですよ。

平成24年(2012年)
洋画では、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルクらマーベル・ヒーローが一堂に集結したアベンジャーズが公開され、36億円の興行収入を達成。「日本よ、これが映画だ!」という強気のキャッチコピーも話題になりました。

また、ヴィクトル・ユゴーの同名小説を原作とした有名なミュージカル『レ・ミゼラブル』が、ヒュー・ジャックマンラッセル・クロウアン・ハサウェイら豪華ハリウッドスターによって映画化され、59億円の好成績を獲得。

そして、ゲームの映画化でありながら大人気を博し、続編も作られたバイオハザード・シリーズの5作目『バイオハザードV リトリビューション』が38億円の大ヒット。

さらに『アメイジングスパイダーマン』が32億円を稼いだ他、『ダークナイト ライジング』、『プロメテウス』、『ドラゴン・タトゥーの女』、『バトルシップ』、『007 スカイフォール』など超大作が次々と公開されました。

一方、邦画は『BRAVE HEARTS 海猿-UMIZARU-』が73億円のメガヒット、『テルマエ・ロマエ』が60億円、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』が59億円、ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qが53億円、『おおかみこどもの雨と雪』が42億円と、完全に洋画を上回ってますねえ。

他にも、『ALWAYS 三丁目の夕日'64』が34億円、『るろうに剣心』が30億円など、平成24年は年間興行成績トップ10のうち、7本を邦画が占める結果となりました。日本映画強し!

そんな中、「イランに取り残されたアメリカ人外交官を救出するため、CIAが架空のSF映画をでっちあげる」というウソみたいな本当の話を映画化した『アルゴ』は、第85回アカデミー賞で作品賞を受賞するなど高く評価されました。非常に面白いので未見の人はぜひどうぞ。

●平成25年(2013年)
洋画では、フルCGアニメ『モンスターズ・インク』の続編となるモンスターズ・ユニバーシティが90億円のメガヒットを記録した他、熊のぬいぐるみが活躍するコメディ映画『テッド』が43億円、サンドラ・ブロックが宇宙を漂流する『ゼロ・グラビティ』が32億円を獲得。

あとは、『ダイ・ハード/ラスト・デイ』、『アイアンマン3』、『ワイルド・スピード EURO MISSION』、『パシフィック・リム』、『ワールド・ウォーZ』、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』などハリウッドの大作映画が多数。

邦画では、宮崎駿監督の長編11作目風立ちぬが120億円と相変わらずの強さを見せ、『永遠の0』が88億円、『真夏の方程式』が33億円、『そして父になる』が32億円、『かぐや姫の物語』が25億円という成績でした。

なお、個人的に印象に残った作品としては、キャスリン・ビグロー監督のゼロ・ダーク・サーティです。ジェシカ・チャステイン演じるCIA分析官のマヤがウサーマ・ビン・ラーディンの行方を追って奔走するという、実話を元にしたサスペンスで非常に見応えがありました。

平成26年(2014年)
この年最大の話題は、ディズニーのフルCGアニメアナと雪の女王が興収255億円という圧倒的な勢いでトップを独走し、主題歌の「レット・イット・ゴー~ありのままで~」が日本中を席巻したことでしょう(ニュースでも報じられました)。

同じくディズニーのベイマックスが92億円、さらにディズニーの名作アニメ『眠れる森の美女』を実写でリメイクした『マレフィセント』は、アンジェリーナ・ジョリーが妖精マレフィセントを演じて65億円の大ヒットを記録(ディズニー恐るべし!)。

一方邦画では、子供たちの人気者ドラえもんをフルCGで映画化した『STAND BY ME ドラえもん』が84億円の大ヒットを記録した他、実写版『るろうに剣心/京都大火編』が52億円、『るろうに剣心/伝説の最期編』が44億円、『テルマエ・ロマエII』が44億円など、漫画の実写版が目立ちました。

その他、『GODZILLA ゴジラ』『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『アメイジングスパイダーマン2』『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』『ホビット 竜に奪われた王国』『X-MEN: フューチャー&パスト』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『トランスフォーマー/ロストエイジ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』『インターステラー』『ゴーン・ガール』など、非常に充実した年でしたねえ。

なお、あまりヒットはしなかったんですが、マーティン・スコセッシ監督のウルフ・オブ・ウォールストリートも最高にキレてて面白かったです。特に「ドラッグでヘロヘロになったレオナルド・ディカプリオ」が素晴らしすぎる(笑)。

平成27年(2015年)
洋画では、『エピソード3/シスの復讐』から10年ぶりに公開された新作スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が116億円の大ヒット(ファンの評価も『エピソード1』より良かったようですw)。

さらに、『ジュラシック・パークIII』から14年ぶりに公開された続編ジュラシック・ワールドが95億円、ディズニーの名作アニメを実写化した『シンデレラ』が57億円、『ミニオンズ』が52億円、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』が51億円、『インサイド・ヘッド』が40億円…という具合に、この年は洋画が巻き返しを図るかのように次々とヒットしましたねえ。

他にも、第87回アカデミー賞で最多9部門にノミネートされ、作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞の4部門を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』とか、第88回アカデミー賞で衣装デザイン賞や美術賞など6部門を受賞したマッドマックス 怒りのデス・ロードなど、見逃せない映画が多数公開されました。

その他、『アメリカン・スナイパー』、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』、『キングスマン』、『アントマン』、『ジョン・ウィック』、『クリード チャンプを継ぐ男』なども話題に。

一方邦画は、細田守監督の『バケモノの子』が59億円、『HERO』が47億円、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』が32億円、『ビリギャル』が28億円、『暗殺教室』が28億円、『バクマン。』が17億円、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』が17億円…という感じで洋画に比べると若干控えめな成績でしたね。

なお、個人的にはデミアン・チャゼル監督、マイルズ・テラー主演の『セッション』が良かったです。ドラム演奏に打ち込む主人公と、鬼のような指導者テレンス・フレッチャー(J・K・シモンズ)とのやり取りが狂気に満ち溢れ、一瞬たりとも目が離せません!

平成28年(2016年)
この年、日本の映画界が大騒ぎになるほどの大ヒット作が登場しました。そう、新海誠監督の君の名は。です。前作『言の葉の庭』が1億5千万円程度の興行成績だったので、打ち合わせ会議では「今回は20億円ぐらいいきたいよねー」などと話していたようですが、いざ公開すると250億円の超ウルトラメガヒットで関係者も仰天!

なんと日本国内の歴代興行収入ランキングで4位、日本映画では『千と千尋の神隠し』に次いで第2位という凄まじい記録を樹立し、大変な話題になったのです。これには新海監督も相当ビックリしたらしく、「ちょっと何が起きているのかよくわからない」とコメントするほどでした。

そしてもう一つ、庵野秀明監督のシン・ゴジラもヒットしましたねえ。『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野監督が、日本が誇る怪獣王ゴジラを撮ったらどうなるのか…という期待と不安が入り混じった気持ちで観に行ったらまさかの大傑作!83億円のメガヒットを記録しました。

さらに、片渕須直監督のこの世界の片隅にも、当初は小規模公開だったにもかかわらず口コミで評判が広まり、徐々に上映館数が増えていき、驚異のロングラン上映によって異例とも言うべき大ヒットに繋がったのです。

一方洋画では、『ズートピア』が77億円、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が73億円、『ファインディング・ドリー』が68億円、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が46億円、『バイオハザード: ザ・ファイナル』が43億円、『オデッセイ』が35億円、『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』が28億円など、邦画に負けない好調ぶり。

その他、『ブリッジ・オブ・スパイ』『ヘイトフル・エイト』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『スポットライト 世紀のスクープ』『レヴェナント: 蘇えりし者』『ハドソン川の奇跡』『ジェイソン・ボーン』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『デッドプール』『ドント・ブリーズ』『X-MEN: アポカリプス』など話題作が公開。この年は邦画・洋画含めて映画業界全体が盛り上がってましたね。

シン・ゴジラ

●平成29年(2017年)
洋画では、ディズニーの長編アニメーション作品『美女と野獣』の実写リメイク美女と野獣が124億円を記録し、スター・ウォーズ/最後のジェダイが75億円、『怪盗グルーのミニオン大脱走』が73億円など。

そして、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』、『モアナと伝説の海』、『SING/シング』、ラ・ラ・ランド、『ワイルド・スピード ICE BREAK』などがそれぞれ40億~60億円の大ヒットを記録しました。

また、MCUは『ドクター・ストレンジ』、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』、スパイダーマン:ホームカミング、『マイティ・ソー バトルロイヤル』の4作品が、DCEUは『ワンダーウーマン』と『ジャスティス・リーグ』の2作品が公開されました。

なお、この年は『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が22億円のスマッシュヒットを記録した他、『新感染 ファイナル・エクスプレス』やゲット・アウトなど、ハリウッド超大作以外の”小規模なホラー映画”が話題になったことも印象に残っています。

その他、ベイビー・ドライバー、『ザ・コンサルタント』、『沈黙 -サイレンス-』、『マグニフィセント・セブン』、『キングコング:髑髏島の巨神』、『ムーンライト』、『メッセージ』、『LOGAN/ローガン』、『ハクソー・リッジ』、『ジョン・ウィック:チャプター2』、『ダンケルク』など話題作がズラリ。

一方邦画では、実写版『銀魂』が38億円、『君の膵臓をたべたい』が35億円、『メアリと魔女の花』が33億円、『DESTINY 鎌倉ものがたり』が32億円と、やや物足りない感じですね。

●平成30年(2018年)
さて、いよいよ平成30年です。洋画では、伝説的ロックバンド「クイーン」のフレディ・マーキュリーを主人公にしたボヘミアン・ラプソディが異例のロングランヒットで127億円を稼ぎ出し、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が81億円、『グレイテスト・ショーマン』が52億円。

そして、『リメンバー・ミー』、『インクレディブル・ファミリー』、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』、『ボス・ベイビー』などがそれぞれ30億~50億円の興行収入を獲得しています。

また、スティーブン・スピルバーグ監督のレディ・プレイヤー1は、『AKIRA』の金田バイクやガンダムなどを劇中に登場させ、日本のファンにアピールしたことでも大いに話題となりました。

さらに邦画では、人気ドラマを映画化した『劇場版コード・ブルー/ドクターヘリ救急救命』が93億円の大ヒットを記録した他、是枝裕和監督の万引き家族が第71回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞し、興行収入46億円を達成。

その他、実写版『銀魂』の続編『銀魂2 掟は破るためにこそある』は38億円、木村拓哉二宮和也の共演が注目された『検察側の罪人』は30億円、細田守監督の新作『未来のミライ』が29億円のヒットになりました。

しかし、平成30年で最も話題になった映画と言えば、やはりカメラを止めるな!でしょう。たった300万円で作った超低予算ゾンビ映画、しかも当初の上映はわずか2館のみという厳しい状況にもかかわらず、SNSで評判が広まり、上映館数も350館以上に拡大し、観客動員数はなんと210万人を突破!興収31億円を超える大ヒットとなったのです。スゲー!

というわけで、平成元年から平成30年に公開された映画をザックリと振り返ってみたんですけど、ヒット作を中心に印象に残った映画だけを取り上げても、30年分となると分量がすごいですね。こんなに記事が長くなるとは思いませんでした(笑)。

当然、これ以外にも面白い映画はまだまだたくさん公開されているので、興味がある人は今回のゴールデン・ウィークに平成の名作映画をゆっくりとご覧になってみてはいかがでしょうか。

 

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【放送禁止?】『ルパン三世 ルパンVS複製人間』でカットされたシーンを調べてみた

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さて昨日、金曜ロードSHOW!でルパン三世 ルパンVS複製人間が放送されました(先日亡くなったモンキー・パンチ先生の追悼ということで、急遽オンエアが決まったらしい)。

簡単にあらすじを紹介すると、ルパン三世次元大介石川五エ門峰不二子・銭形警部など毎度”お馴染みの面々”が、人類の滅亡を目論む謎のクローン人間「マモー」と戦う…というストーリーです。

本作はルパン三世の劇場用アニメ第1作として1978年に公開されたんですが、その後テレビで放送される際に色々と「問題になる場面」があったため、何カ所もカットされてるんですよね。

こういうパターンは昔のアニメで割と多く、例えば『巨人の星』の場合は「僕の父は日本一の日雇い人夫です」とか「父ちゃんは野球キチ〇イだ」などのセリフが差別用語放送禁止用語と見なされ、再放送時にカット(無音処理)されました。 

また、『あしたのジョー』に至っては「めっかちのおっちゃん」「カタワ」「おし」など差別用語のオンパレードに加え、”ドヤ街”や”バラック小屋”などの舞台設定自体が放送コードに引っかかるため、今では再放送すら出来ない状況だそうです。

こういう事情で過去の名作アニメが見られないのは「もったいないな~」と思うんですが、実は法律によって「放送禁止用語」というものが規定されているわけではなく、基本的に放送局側の”自主規制”によって「不適切な言葉かどうか?」が判断されてるんですよね。

つまり「どんな表現をカットするか(何をもって不適切とするか)」は各テレビ局のさじ加減次第…ってことなんですけど、じゃあ『ルパン三世 ルパンVS複製人間』ではどういうシーンがカットされたのでしょうか?ちょっと確認してみましたよ。


●次元と五ェ門が口論するシーン
マモーにアジトを破壊されたことにより、ルパンたち3人が言い争いを始めるシーンで、次元が五ェ門に「ヒステリックにわめくな、このキチ〇イ!」と怒鳴るセリフが放送コードに引っかかったらしくカットされています(まあ、これは普通にアウトでしょうねw)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●砂漠をさまようシーン
アジトを壊されたルパンたちは、徒歩で広大な砂漠を横断して一軒の小屋に辿り着くんですが、その行程が丸ごとカットされていました(約3分間)。

ただしこのシーン、途中でマモーが「お前らに勝ち目はないぞ」的な警告を示す場面などはあるものの、特に放送禁止になりそうな個所は見当たりません(TVの放送時間の都合?)

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ルパンの脱出シーン
マモーに捕まって鳥カゴみたいな牢屋に入れられたルパンが、見張りを騙して脱出するシーンがカットされていました(この辺もたぶん尺の都合と思われます)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ナポレオンに遭遇するシーン
マモーの敷地内をウロついていたルパンが「あの~、ちょっとお尋ねしますが…」と言ってナポレオン(のクローン)に話しかけるシーンがカット。

でも、その後ヒトラーに出会って「ハイル・ヒットラー!」と言うシーンはカットされてないのに、なぜナポレオンだけカットされたのでしょう?「尺の都合」なら両方カットすればいいはずだし、敢えてヒトラーの方を残す理由が分かりません(不思議ですねぇ)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●マモーと初対面した際のセリフ
ルパンがマモーと初めて会った時のセリフが「ここは精神病院でもなければ仮装パーティーでもない」 → 「ここは仮装パーティーではない」に修正されています(”精神病院”というワードがダメだった?)。

●研究室&試験管ベイビーのシーン
科学者たちが研究室でクローンの実験をしているところにルパンが忍び込み、「どうやら正体が見えてきたな…」とつぶやくシーンがカット。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

さらに、別の部屋へ入ったルパンは大量の巨大試験管に浮かぶ赤ん坊のクローンを目撃しますが、オンエア版では丸ごとカットされていました。

しかし、その後マモーとの会話でルパンが「瓶詰めの赤ん坊さえ見なきゃな!」と言っているため、セリフの意味が通じなくなってるんですよね。

個人的には「ここをカットしちゃダメだろ」と思うんですけど、テレビ局側の判断で「映してはマズい」と自主規制したのかなぁ?

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ルパンとマモーの会話

マモー「彼の相手をしているのは古代中国の哲人だよ」
ルパン「と思い込んでるパラノイアか」
マモー「彼は本物だ!」

というやり取りの後に「じゃあ本物のパー?」というルパンのセリフがあったのですが、カットされています(「パー」もダメなのか…)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ルパンの頭の中をのぞくシーン
「これがルパンの全てさ!」と叫んだマモーがルパンの深層心理を暴こうとするシーンは、女性の裸の画像や不二子のヌードなど「不適切な場面」が満載!当然カットですw

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

さらに、劇場公開時にタイアップしていた「テレパッチ」という駄菓子のCMが映っているため全面的にカットされています(そりゃそうだw)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

ちなみに「テレパッチ」とは、ザラメのような粒状で口に入れるとパチパチと音を出しながら激しく弾けるという、何とも不思議なお菓子のことです(味は甘いオレンジ)。

その仕組みは、粒の中に炭酸ガス入りの小さな空洞が複数仕込まれ、唾液で溶けると中のガスがパチパチ音を出すというもの(米ゼネラルフーズ社から味の素ゼネラルフーズが販売ライセンスを取得した)。

昭和54年(1979年)の発売当時は刺激的な食感が子供たちにウケて大ヒットしたんですが、その後発売された「ドンパッチ」では弾ける威力がパワーアップしすぎてしまい、「子供が口の中をケガした」などの苦情が寄せられるほどだったとか(真偽のほどは分かりませんがw)。

そんなテレパッチのCMナレーションを務めていたのが山田康夫さんだったため、本作でタイアップすることになったのでしょう(なお、現在は類似の商品としてパチパチパニックが販売されています)。

●画面がチカチカと点滅するシーン
元の映像では、マモーが装置の出力を上げると画面全体が激しく点滅してるんですが、放送では点滅が少なくなり、シーン自体も短くカットされていました(いわゆる「ポケモンショック」の影響でしょうね)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●驚くマモーのセリフ
その”点滅シーン”でマモーが驚きながら叫ぶ際、元のセリフでは「なんということだ!ルパンは夢を見ない!空間!虚無!それは白痴の、あるいは神の意識に他ならない!」となっていました。

しかし、テレビ放送版では「なんということだ!ルパンは夢を見ない!空間!虚無!それは神の意識に他ならない!」という具合に、セリフの一部がカットされています。

「白痴(はくち)」とは重度の知的障害を意味する呼び方で、現在では差別用語に該当するためカットされたのでしょう。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●銭形警部の食事シーン
ボロボロになった銭形警部が警視総監と日本料理店「花子」に入って食事をするシーンは「銭形くん、もっとゆっくり食べたまえ」「申し訳ありません、このところ何も口にしていなかったもので…」などの会話も含めて全部カット。

さらに、「総監!わたしは幸せ者です~!」と号泣しながらドンブリ飯をかき込む銭形の姿など、結構面白い場面が多いんですけど、残念ながらTV版では放送時間の都合でカットされたようですね。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より


というわけで、金曜ロードショーで放送された『ルパン三世 ルパンVS複製人間』がどんな風にカットされているのか調べてみたんですが、「放送禁止用語」または「不適切な表現」が7ヵ所ぐらいで、あとは尺の都合でカットされたと思しき場面が数ヵ所ありました。

全体的な印象を見てみると、丸ごとカットした場面に関しては、シーンとシーンとの繋がりが不自然だったり他のシーンと辻褄が合わなかったり、多少の違和感があることは否めません。

一方、セリフに関しては、該当する放送禁止用語だけをカット(無音処理)すると『巨人の星』みたいに”妙な間”が空いて不自然なセリフになりがちなんですけど、本作では非常に丁寧に編集していて、ほぼ違和感を感じませんでした(いい仕事してるw)。

 

あと意外だったのは、峰不二子の全裸シャワーシーンや”乳首ポッチン”が完全ノーカットで放送されたことですね。昔ならともかく、今のご時世では何らかの形で自主規制されるだろうと思っていたのに、「ああいう表現はOKなのか?」と。

視聴者も衝撃だったらしく、このシーンが放送された直後、SNS上では「あっ!乳首が見えた!」「映しても大丈夫なの?」「懐かしいのう。昔は地上波でも堂々と乳首を出していた時代があったのじゃよ…」など様々な反応が飛び交いました。

某テレビ局の関係者曰く、「金曜ロードショーは過去に何度も『ルパン三世』を放送してきて大変お世話になってますからね。モンキー・パンチ先生の追悼番組として『ルパンVS複製人間』を放送する以上、不二子のヌードをカットするわけにはいかなかったのでしょう」とのこと(金ロー、頑張ったなあw)。

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

とは言うものの、最近は地上波の表現規制がどんどん厳しくなっており、本作みたいに40年以上前の作品などは現在の基準に合わないシーンも多く、ある程度カットされることは避けられません。

そのせいで「昔よくテレビで放送されていた映画が、最近は全然オンエアされなくなっちゃったなあ」と寂しく感じている映画ファンもいるでしょう。個人的には、ホラー系の映画が全く放送されなくなったのは残念ですねえ(ホラーもTV局が自主規制しているらしいので)。

 

なお、『ルパンVS複製人間』のスタッフ欄には「監修:大塚康生」とクレジットされていますが、当時の大塚さんは宮崎駿監督の『未来少年コナン』で忙しく、本作にはほとんどタッチできなかったそうです。

唯一手掛けたのが冒頭シーンで、「ルパンの死刑を知らされた銭形警部が絶望して警視庁を退職し、実家の寺へ帰って寺男として生活している」という”あらすじ”を大塚さんが考え、実際に作画もされました。

ところが、最終的にこのシーンはカットされ、「ルパンの検視報告中になぜか仏像が映る」という中途半端な形で大塚さんのアイデアが残ってしまったそうです。なるほど、それであんなところに仏像が出てたのか!

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

銭形がルパンに向かって「貴様の骨にこの手で戒名を刻んでやるぞ!」と叫んでいたのも”お寺の息子”だったからなのね(さすがに分かりにくいw)。

ちなみに海外版予告編には、本編からカットされた「山寺で暮らしている銭形」のシーンが少しだけ入っているそうです。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

 



このモブシーンがすごい!『風立ちぬ』で宮崎駿監督がこだわった表現とは?

宮崎駿監督『風立ちぬ』

宮崎駿監督『風立ちぬ』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

昨日、金曜ロードSHOW!で宮崎駿監督の劇場アニメーション風立ちぬが放送されました。本作は宮崎監督にとって11作目の長編映画ですが、制作中に東日本大震災が発生し(2011年3月11日)、そのことが作品内容にも影響を及ぼしているそうです。

ちょうど「関東大震災のシーン(1923年9月1日)」の絵コンテを描き終えた直後に地震が起きたため、「このままこの場面を映画に出して良いのだろうか…?」「今後どういうアニメを作ればいいのだろう…」と宮崎監督も悩んだらしい。

そして2011年6月30日、宮崎駿監督はスタジオジブリの大会議室にスタッフ全員を集め、次のように語りました。

今後、我々はもっと物質的にも時間的にも窮迫した中に生きなきゃいけなくなると思うんです。その時に自分たちは何を作るのか?少なくとも、そういったことが十分予想される時に、前と同じようにファンタジーを作って、女の子がどうやって生きるかとか、そんなことでは済まないだろうと思いました。 

風立ちぬ』というのは実は、激しい時代の風が吹いてくる、吹きすさんでいる、その中で生きようとしなければならない、という意味です。それが、この時代の変化に対する自分たちの答えでなければならないと思います。

 宮崎駿監督は震災から逃げずに向き合うことを決意し、そのためには「よりリアルな情景を描かなければダメだ」と考えたようです。

また、震災シーンの作画を担当したアニメーターの稲村武志さんも、本作について次のように語っています。

どう描こうかということについて随分悩みましたね。記憶がすごく新しいじゃないですか?3月に地震があって、『コクリコ坂から』が終わってすぐ入るという形だったんですけど、これはちょっと嘘はつけないなと。映像としてだけでなく、感覚的なところもきちんと描かねばならないと思いました。

そして宮崎監督は、映画『風立ちぬ』でこれまで以上に「ある場面」にこだわりました。それは”大勢の群衆(モブシーン)”をしっかりと描くことです。

もちろん、今までの宮崎アニメでもモブシーンは描かれていましたが、「背景に大勢の人がいる」という状況を伝えるための、ある程度”効率的に描くこと”を計算した作画でした。

しかし今回の『風立ちぬ』では、「一人一人の人物をしっかり描く」ということが命題の一つになったのです。以下、宮崎監督のコメントより。

群衆というのはどういうものかって言ったら、”主人公じゃない情けない人たち”じゃなくて、”世の中を支えている重要な人たち”だから、ちゃんとした人間たちを描かなきゃダメなんだ。

つまり、モブシーンとは「その他大勢の人」ではなく、一人一人が個性を持った人間なんだということを観ている観客に伝えられるぐらい丁寧に描け!という意味です。

これがどれぐらい大変なことかお分かりいただけるでしょうか?例えば、マンガの見開きページに50人程度のキャラクターを描いた場合を想像してみてください。

1ページ描くだけでも大変なことがわかると思いますが、アニメの場合はさらにキャラを動かす…つまり同じような絵を少しずつ形を変えながら何百枚も描ねばならないのです(3秒程度の以下のカットを描くのに1年3カ月もかかったらしい)。これはキツい!

宮崎駿監督『風立ちぬ』

宮崎駿監督『風立ちぬ』より

ただでさえモブシーンはアニメーターの負担が大きいので、普通は少しでも手間を減らすために動かないキャラがいたり「引き」でごまかしたりするんですが、本作では全てのキャラを動かし、全てのキャラに演技をさせているのです。

以下のカットはキャラが小さすぎてよく見えませんが、実際は4つぐらいのパートに分けて絵を描き、それを一つの画面に合成してるんですよ(だから一人一人の人間がしっかり描かれている!)。

宮崎駿監督『風立ちぬ』

宮崎駿監督『風立ちぬ』より

なんとも凄まじい作画ですが、こういうことをやっているとどうなるか?アニメーターが死にます。いや、比喩じゃなくて本当に”命の危険”があるんです。

作業自体の大変さもさることながら、フリーのアニメーター(動画マン)は一枚200円ぐらいの単価で動画を描いているため、手間のかかるシーンが増えれば増えるほど収入が減ってしまうのですよ。つまり、最終的にはお金が無くなって食べ物を買えなくなるという事態に…。

昔、『機動戦士ガンダム』で「フラミンゴの群れ」を描いた板野一郎さんは、一枚の絵を描くのに時間がかかり過ぎて収入が激減し、見かねた先輩アニメーターからカップラーメンやコーラを差し入れてもらって、どうにか飢えをしのいでいたそうです。

機動戦士ガンダム

機動戦士ガンダム』より

なので『風立ちぬ』のモブシーンは一切外部のアニメーターに発注せず、全てジブリ社内の動画スタッフが担当することになりました(ジブリのアニメーターは月給制なので飢え死にする心配がないからw)。

しかし、想像を絶する作業量にベテランアニメーターたちから「心が折れそうだ」との悲鳴が続出!若手動画マンの一人の大橋実さんも「普通ならキレて辞めてもおかしくないレベル」などと壮絶すぎる現場の状況を語っていました。

また、動画検査を担当した舘野仁美さんは、本作の中で一番思い入れが強いカットとして「関東大震災直後の上野広小路のモブシーン」を挙げ、以下のようにコメントしています。

これ全部動いてるんです。出来上がりを見てゾクッとするようなカットなんですよ。これ全部アニメーターが手で描いたんですから。かわいそう…。原画を見るだけで涙が出ちゃいそうになる…。宮崎さんも「本当によくやったね」って褒めてくださったカットです。長年この仕事をしてきて、一番すごいカットの一つだと思います。

一方、こういう大変な手描き作画に対し、「CGでやればいいじゃん!」と言う人もいるでしょう。しかし、「歩くだけ」などの単純な動きのパターンならともかく、これだけ多くのキャラに異なる芝居をさせることは、いかにCGと言えども簡単ではありません。

さらに「一人一人の個性を感じさせるような丁寧な演技を描く」ということに関しては、今もなお手描きの作画に分があると思われ、多くのアニメ監督も「アニメーターに負担を強いることは理解しているけれど、出来れば手描きでやりたい」と考えているようです。

ただ、現実にモブシーンを手描きで制作するには様々な問題があるんですよね。

ベルセルク 黄金時代篇』のモブシーンは、当初”手描き”で作画する予定だったらしく、アニメーターの恩田尚之さんが実際に原画を描いていたのですが、それを動画スタジオに回したところ、「こんな大変なカットは中割り出来ない」と断られ、結局CGになったそうです(せっかく描いた原画も全部ボツ)。

ベルセルク黄金時代篇 Blu-ray BOX

 

というわけで、『風立ちぬ』を観る際は是非とも「モブシーンの凄さ」にも注目してご覧ください(^.^)