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【放送禁止?】『ルパン三世 ルパンVS複製人間』でカットされたシーンを調べてみた

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さて昨日、金曜ロードSHOW!でルパン三世 ルパンVS複製人間が放送されました(先日亡くなったモンキー・パンチ先生の追悼ということで、急遽オンエアが決まったらしい)。

簡単にあらすじを紹介すると、ルパン三世次元大介石川五エ門峰不二子・銭形警部など毎度”お馴染みの面々”が、人類の滅亡を目論む謎のクローン人間「マモー」と戦う…というストーリーです。

本作はルパン三世の劇場用アニメ第1作として1978年に公開されたんですが、その後テレビで放送される際に色々と「問題になる場面」があったため、何カ所もカットされてるんですよね。

こういうパターンは昔のアニメで割と多く、例えば『巨人の星』の場合は「僕の父は日本一の日雇い人夫です」とか「父ちゃんは野球キチ〇イだ」などのセリフが差別用語放送禁止用語と見なされ、再放送時にカット(無音処理)されました。 

また、『あしたのジョー』に至っては「めっかちのおっちゃん」「カタワ」「おし」など差別用語のオンパレードに加え、”ドヤ街”や”バラック小屋”などの舞台設定自体が放送コードに引っかかるため、今では再放送すら出来ない状況だそうです。

こういう事情で過去の名作アニメが見られないのは「もったいないな~」と思うんですが、実は法律によって「放送禁止用語」というものが規定されているわけではなく、基本的に放送局側の”自主規制”によって「不適切な言葉かどうか?」が判断されてるんですよね。

つまり「どんな表現をカットするか(何をもって不適切とするか)」は各テレビ局のさじ加減次第…ってことなんですけど、じゃあ『ルパン三世 ルパンVS複製人間』ではどういうシーンがカットされたのでしょうか?ちょっと確認してみましたよ。


●次元と五ェ門が口論するシーン
マモーにアジトを破壊されたことにより、ルパンたち3人が言い争いを始めるシーンで、次元が五ェ門に「ヒステリックにわめくな、このキチ〇イ!」と怒鳴るセリフが放送コードに引っかかったらしくカットされています(まあ、これは普通にアウトでしょうねw)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●砂漠をさまようシーン
アジトを壊されたルパンたちは、徒歩で広大な砂漠を横断して一軒の小屋に辿り着くんですが、その行程が丸ごとカットされていました(約3分間)。

ただしこのシーン、途中でマモーが「お前らに勝ち目はないぞ」的な警告を示す場面などはあるものの、特に放送禁止になりそうな個所は見当たりません(TVの放送時間の都合?)

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ルパンの脱出シーン
マモーに捕まって鳥カゴみたいな牢屋に入れられたルパンが、見張りを騙して脱出するシーンがカットされていました(この辺もたぶん尺の都合と思われます)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ナポレオンに遭遇するシーン
マモーの敷地内をウロついていたルパンが「あの~、ちょっとお尋ねしますが…」と言ってナポレオン(のクローン)に話しかけるシーンがカット。

でも、その後ヒトラーに出会って「ハイル・ヒットラー!」と言うシーンはカットされてないのに、なぜナポレオンだけカットされたのでしょう?「尺の都合」なら両方カットすればいいはずだし、敢えてヒトラーの方を残す理由が分かりません(不思議ですねぇ)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●マモーと初対面した際のセリフ
ルパンがマモーと初めて会った時のセリフが「ここは精神病院でもなければ仮装パーティーでもない」 → 「ここは仮装パーティーではない」に修正されています(”精神病院”というワードがダメだった?)。

●研究室&試験管ベイビーのシーン
科学者たちが研究室でクローンの実験をしているところにルパンが忍び込み、「どうやら正体が見えてきたな…」とつぶやくシーンがカット。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

さらに、別の部屋へ入ったルパンは大量の巨大試験管に浮かぶ赤ん坊のクローンを目撃しますが、オンエア版では丸ごとカットされていました。

しかし、その後マモーとの会話でルパンが「瓶詰めの赤ん坊さえ見なきゃな!」と言っているため、セリフの意味が通じなくなってるんですよね。

個人的には「ここをカットしちゃダメだろ」と思うんですけど、テレビ局側の判断で「映してはマズい」と自主規制したのかなぁ?

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ルパンとマモーの会話

マモー「彼の相手をしているのは古代中国の哲人だよ」
ルパン「と思い込んでるパラノイアか」
マモー「彼は本物だ!」

というやり取りの後に「じゃあ本物のパー?」というルパンのセリフがあったのですが、カットされています(「パー」もダメなのか…)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ルパンの頭の中をのぞくシーン
「これがルパンの全てさ!」と叫んだマモーがルパンの深層心理を暴こうとするシーンは、女性の裸の画像や不二子のヌードなど「不適切な場面」が満載!当然カットですw

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

さらに、劇場公開時にタイアップしていた「テレパッチ」という駄菓子のCMが映っているため全面的にカットされています(そりゃそうだw)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

ちなみに「テレパッチ」とは、ザラメのような粒状で口に入れるとパチパチと音を出しながら激しく弾けるという、何とも不思議なお菓子のことです(味は甘いオレンジ)。

その仕組みは、粒の中に炭酸ガス入りの小さな空洞が複数仕込まれ、唾液で溶けると中のガスがパチパチ音を出すというもの(米ゼネラルフーズ社から味の素ゼネラルフーズが販売ライセンスを取得した)。

昭和54年(1979年)の発売当時は刺激的な食感が子供たちにウケて大ヒットしたんですが、その後発売された「ドンパッチ」では弾ける威力がパワーアップしすぎてしまい、「子供が口の中をケガした」などの苦情が寄せられるほどだったとか(真偽のほどは分かりませんがw)。

そんなテレパッチのCMナレーションを務めていたのが山田康夫さんだったため、本作でタイアップすることになったのでしょう(なお、現在は類似の商品としてパチパチパニックが販売されています)。

●画面がチカチカと点滅するシーン
元の映像では、マモーが装置の出力を上げると画面全体が激しく点滅してるんですが、放送では点滅が少なくなり、シーン自体も短くカットされていました(いわゆる「ポケモンショック」の影響でしょうね)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●驚くマモーのセリフ
その”点滅シーン”でマモーが驚きながら叫ぶ際、元のセリフでは「なんということだ!ルパンは夢を見ない!空間!虚無!それは白痴の、あるいは神の意識に他ならない!」となっていました。

しかし、テレビ放送版では「なんということだ!ルパンは夢を見ない!空間!虚無!それは神の意識に他ならない!」という具合に、セリフの一部がカットされています。

「白痴(はくち)」とは重度の知的障害を意味する呼び方で、現在では差別用語に該当するためカットされたのでしょう。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●銭形警部の食事シーン
ボロボロになった銭形警部が警視総監と日本料理店「花子」に入って食事をするシーンは「銭形くん、もっとゆっくり食べたまえ」「申し訳ありません、このところ何も口にしていなかったもので…」などの会話も含めて全部カット。

さらに、「総監!わたしは幸せ者です~!」と号泣しながらドンブリ飯をかき込む銭形の姿など、結構面白い場面が多いんですけど、残念ながらTV版では放送時間の都合でカットされたようですね。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より


というわけで、金曜ロードショーで放送された『ルパン三世 ルパンVS複製人間』がどんな風にカットされているのか調べてみたんですが、「放送禁止用語」または「不適切な表現」が7ヵ所ぐらいで、あとは尺の都合でカットされたと思しき場面が数ヵ所ありました。

全体的な印象を見てみると、丸ごとカットした場面に関しては、シーンとシーンとの繋がりが不自然だったり他のシーンと辻褄が合わなかったり、多少の違和感があることは否めません。

一方、セリフに関しては、該当する放送禁止用語だけをカット(無音処理)すると『巨人の星』みたいに”妙な間”が空いて不自然なセリフになりがちなんですけど、本作では非常に丁寧に編集していて、ほぼ違和感を感じませんでした(いい仕事してるw)。

 

あと意外だったのは、峰不二子の全裸シャワーシーンや”乳首ポッチン”が完全ノーカットで放送されたことですね。昔ならともかく、今のご時世では何らかの形で自主規制されるだろうと思っていたのに、「ああいう表現はOKなのか?」と。

視聴者も衝撃だったらしく、このシーンが放送された直後、SNS上では「あっ!乳首が見えた!」「映しても大丈夫なの?」「懐かしいのう。昔は地上波でも堂々と乳首を出していた時代があったのじゃよ…」など様々な反応が飛び交いました。

某テレビ局の関係者曰く、「金曜ロードショーは過去に何度も『ルパン三世』を放送してきて大変お世話になってますからね。モンキー・パンチ先生の追悼番組として『ルパンVS複製人間』を放送する以上、不二子のヌードをカットするわけにはいかなかったのでしょう」とのこと(金ロー、頑張ったなあw)。

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

とは言うものの、最近は地上波の表現規制がどんどん厳しくなっており、本作みたいに40年以上前の作品などは現在の基準に合わないシーンも多く、ある程度カットされることは避けられません。

そのせいで「昔よくテレビで放送されていた映画が、最近は全然オンエアされなくなっちゃったなあ」と寂しく感じている映画ファンもいるでしょう。個人的には、ホラー系の映画が全く放送されなくなったのは残念ですねえ(ホラーもTV局が自主規制しているらしいので)。

 

なお、『ルパンVS複製人間』のスタッフ欄には「監修:大塚康生」とクレジットされていますが、当時の大塚さんは宮崎駿監督の『未来少年コナン』で忙しく、本作にはほとんどタッチできなかったそうです。

唯一手掛けたのが冒頭シーンで、「ルパンの死刑を知らされた銭形警部が絶望して警視庁を退職し、実家の寺へ帰って寺男として生活している」という”あらすじ”を大塚さんが考え、実際に作画もされました。

ところが、最終的にこのシーンはカットされ、「ルパンの検視報告中になぜか仏像が映る」という中途半端な形で大塚さんのアイデアが残ってしまったそうです。なるほど、それであんなところに仏像が出てたのか!

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

銭形がルパンに向かって「貴様の骨にこの手で戒名を刻んでやるぞ!」と叫んでいたのも”お寺の息子”だったからなのね(さすがに分かりにくいw)。

ちなみに海外版予告編には、本編からカットされた「山寺で暮らしている銭形」のシーンが少しだけ入っているそうです。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より