ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

アニメを観ながら宗教について考えてみる

本日、読売新聞を読んでいたら興味深い記事を見つけたので抜粋します。

●「日本アニメ 宗教観反映」
日本発のアニメーションはこの10年、世界の注目を集めてきた。情報化が進んだ近未来社会を描くSFやファンタジーが目立つが、日本の宗教文化を色濃く反映しているのも特徴だ。昨年5月の仏・カンヌ国際映画祭

日本のアニメとしては初めてコンペ部門に出品されたイノセンスの上映が終わると映画人やファンが全員立ち上がり、長い拍手を送った。「理解してもらえるか不安だった」という押井守監督も笑顔で応えていた。各国100以上のメディアから取材が殺到したという。

原作は士郎正宗の漫画攻殻機動隊だ。舞台は2030年ごろの設定で、体内に情報端末を埋め込み、身体のパーツを人工の「義体」と交換した内務省公安9課『攻殻機動隊』隊員が、児童人身売買犯やテロリストと戦う。

人間が機械と化していく中で捕まえきれない謎の存在として浮上してくるのが「ゴースト」だ。これは「魂」、あるいは日本的な信仰に根ざす「御霊(みたま)」のことらしい。

攻殻機動隊』に関して関西学院大教授の奥野卓司(54)(情報人類学)はこう解釈している。「1960年代放送の『鉄人28号』では人間がロボットを遠隔操作、79年放映開始の『機動戦士ガンダム』では人間がロボットの中に入って操縦した。

攻殻機動隊』はさらに進んで「人間とロボットとの境があいまいになった。“私”とは何かが見えにくい中、生きた人間の根拠として魂が求められている」。『攻殻機動隊』では人間の意識や記憶が身体を脱し、情報ネットに乗る。その時、魂はどこに行くのだろうか。テレビシリーズの神山健治監督(39)は「ゴーストとは何か、人それぞれが考えてほしい」と話している。

また、東京・飯田橋では先月、連続講演会「『彩・選・単』塾 アニメ宗教学講座」(主催・NPOちんじゅの森)が開かれ、約30人の市民が参加。ここでも「魂」がキーワードになった。慶応大講師の正木晃(52)(宗教学)が取り上げたのは03年に米・アカデミー賞を受賞した千と千尋の神隠し宮崎駿監督)。主人公の千尋が迷い込むのが道具神やオシラサマ、水神らが集まる異界の温泉郷だ。

「あらゆるものに魂が宿るアニミズム的世界です。八百万(やおよろず)の神を信じてきた日本人にはわかりやすいでしょう」。講師の言葉に聴衆がうなずく。千尋は水の上を走る電車に乗ってもう一つの異界を訪ねる。乗客は影だけ。電車の正面には「中道」の文字がある。

「美しいけど怖い」と若い女性が感想を述べる。正木講師は「その通り。中道は仏教でこの世とあの世の間です。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を踏まえて死者の世界を描いている」と説明した。この映画が欧米で支持されたのは、「彼らの文化の古層にもアニミズムがあるから。聖人崇拝や魔女、土着神信仰がそうです」。

さらに神戸・甲南女子大学の島田博司・教育研究センター所長(46)は、授業でSFアニメ新世紀エヴァンゲリオン庵野秀明総監督)を話題にしている。主人公の少年シンジらが人造人間エヴァンゲリオンに搭乗して正体不明の敵「使徒」を迎撃する。その一方で全人類を単一の存在にまとめる「人類補完計画」が進む。

主客を一体化させて煩悩を捨て去ろうという仏教的な考えを戯画化しているように見える。母を失い、父からも愛されなかったシンジは、自尊感情が低く、他人を恐れる。同じくエヴァンゲリオンに乗る少女アスカも、甘えと自立心の間で揺れる。「実際、日本の若者の自尊感情は低く、対人関係や自立の悩みも深い。切実なテーマなんです」と島田所長。

映画版の最後、シンジは「人類補完計画」を拒み、荒れ果てた地球でアスカと二人、再出発する。旧約聖書「創世記」のアダムとイブを連想させる場面だ。アニメの世界に取り入れられた宗教的な世界観から、若者たちは何をくみ取ったのだろうか。(読売新聞より)



大学の偉い先生たちが、よってたかって真剣に『イノセンス』や『エヴァンゲリオン』などを解釈している点が面白いが、「アニメ」と「宗教」を絡めて考察している点もなかなか興味深い。共通するキーワードは“魂”らしい。何もかもが機械化されていく現代社会において、“人”としての拠り所を何に求めているのだろうか。