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クリスマスなので今敏監督の『東京ゴッドファーザーズ』を観た

東京ゴッドファーザーズ

東京ゴッドファーザーズ


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて本日は年に一度のクリスマス!というわけで今敏監督の東京ゴッドファーザーズを久々に観てたんですが、やっぱいい映画ですね~。

公開されたのが2003年だからもう17年前の作品になるんですけど、何度観ても面白いし、作画的にも非常にクオリティが高く、全く古さを感じさせません。

内容を簡単に説明すると、「ギン・ハナ・ミユキという3人のホームレスが、あるクリスマスの夜に一人の赤ん坊を拾い、その子を親の元へ送り届けるために東京の街を彷徨っていると様々な偶然に巻き込まれ…」という、笑いあり涙ありの娯楽アニメです。

3人の主人公たちにはそれぞれ秘められた過去(背景)があり、ストーリーの進行と共にそれらが少しずつ明らかになっていくわけですが、今敏監督は本作を「回復の物語」と表現していてるんですね。

娘と離れ離れになったギンや元ドラァグクイーンのハナ、そして家出少女のミユキが、赤ん坊を助けようと懸命に行動するうちに色んな偶然が重なり、やがて自分たちが失ったものを”回復”していく…。本作はその過程を描いた物語なのです。

”偶然”といえば、今敏監督は映画を制作する際は偶然にこだわっているようで、『東京ゴッドファーザーズ』公開前のインタビューでミユキ役に女優の岡本綾をキャスティングした理由について、以下のように語っていました。

たまたま立ち寄った本屋さんで偶然見つけた本に岡本さんのグラビアが載っていて、「あ、きっと(ミユキ役は)この人なんだろうな…」と。僕はそういう感覚を大事にしてるんです。映画には、そういう偶然が必要なんですよ。

あと、アニメの声優さんによくある「いかにもマンガのキャラクター」っぽい喋り方ではなくて、ある意味突き放したような、低い声でブツブツ喋る話し方が欲しかったんです。とにかく、ミユキって不平不満が多い子なんで(笑)。

 また、岡本さん以外にもギン役の江守徹さんやハナ役の梅垣義明など、主人公3人にプロの声優ではなく俳優やコメディアンを起用していて、それぞれが非常に上手いんですよね。この辺も本作の魅力の一つでしょう。

東京ゴッドファーザーズ

東京ゴッドファーザーズ

なお、『東京ゴッドファーザーズ』のスタッフにはスタジオジブリのアニメーターや、過去に宮崎駿作品に関わった腕利きの原画マンが多数参加しており、作画のクオリティが凄まじく高くなっている点も見どころです(以下、アニメーター名&関わったジブリの作品名)。

 

小西賢一(『平成狸合戦ぽんぽこ』、『耳をすませば』、『もののけ姫』、『ホーホケキョ となりの山田くん』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

安藤雅司(『おもひでぽろぽろ』、『紅の豚』、『海がきこえる』、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『耳をすませば』、『On Your Mark』、『もののけ姫』、『ホーホケキョ となりの山田くん』、『千と千尋の神隠し』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

井上俊之(『魔女の宅急便』、『おもひでぽろぽろ』)

・濱洲英喜(『ホーホケキョ となりの山田くん』、『千と千尋の神隠し』、『ギブリーズ episode2』、『ハウルの動く城』、『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『借りぐらしのアリエッティ』、『コクリコ坂から』、『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

橋本晋治(『千と千尋の神隠し』、『ギブリーズ episode2』、『ゲド戦記』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

山下高明(『千と千尋の神隠し』、『思い出のマーニー』)

本田雄(『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『コクリコ坂から』、『風立ちぬ』、『思い出のマーニー』、『毛虫のボロ』 ※現在は宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』の作画監督を務めている)

・古屋勝悟(『海がきこえる』、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『ホーホケキョ となりの山田くん』、『千と千尋の神隠し』、『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『借りぐらしのアリエッティ』、『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

・賀川愛(『風の谷のナウシカ』、『天空の城ラピュタ』、『火垂るの墓』、『魔女の宅急便』、『おもひでぽろぽろ』、『紅の豚』、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『もののけ姫』、『ホーホケキョ となりの山田くん』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『借りぐらしのアリエッティ』、『コクリコ坂から』、『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

・大塚伸治(『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』、『魔女の宅急便』、『おもひでぽろぽろ』、『紅の豚』、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『耳をすませば』、『On Your Mark』、『もののけ姫』、『ホーホケキョ となりの山田くん』、『猫の恩返し』、『ハウルの動く城』、『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『借りぐらしのアリエッティ』、『コクリコ坂から』、『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

 

このように、『東京ゴッドファーザーズ』はジブリ作品に関わったアニメーターが数多く参加していて(別に「絵柄がジブリっぽくなった」というわけではありませんが)、今敏監督の前2作(『PERFECT BLUE』と『千年女優』)がリアルなキャラクター造形だったのに対し、どちらかと言えば漫画的にデフォルメされたキャラが増えています。

今敏監督によると、「これまでのリアルな路線を継承しつつ、同時に漫画表現が本来持っている力を回復しようという狙いがあった」とのこと。

その言葉通り、作画監督とキャラクターデザインを務めた小西賢一さんも「打ち合わせの時に今敏監督から”表情の誇張や動く際に絵の伸縮を加味したい”と言われたので、過去2作品に比べると今回は漫画っぽくなってますね」と語っていました。

東京ゴッドファーザーズ

東京ゴッドファーザーズ

こうして出来上がった『東京ゴッドファーザーズ』は、キャラクターの表情が目まぐるしく変化し、デフォルメされた大げさな芝居が物語の喜劇性をさらに増幅させ、動きを見ているだけでも面白くて楽しい!

その一方、背景に描かれている東京の街並みや風景は極めてリアルで写実性に富んでおり、デフォルメされたキャラとの相性が気になるところですが、今敏監督は「むしろそういうギャップこそが狙いでもあり、緻密に描き込まれた美術背景は”奇跡”や”偶然”が連鎖する物語に説得力と重みを与えてくれるはずだ」と語っています。

確かに、もしこれが全員リアルなキャラクターだったら、次々と巻き起こる偶然を「ご都合主義だ!」と感じたかもしれないし、背景までマンガチックだったら「単なるお笑いアニメ」と思われたかもしれません。

リアルな情景と漫画的なキャラクターが同居する不思議な世界観。それこそがまさに本作の大きな特徴であり、奇跡のストーリーを楽しむために最適な構成と言えるでしょう。

というわけで、クリスマスには名作『東京ゴッドファーザーズ』!観てない人はぜひ一度ご覧ください(^.^)



この実写版がすごい!漫画実写化邦画ベストテン

アイアムアヒーロー

映画『アイアムアヒーロー』より


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
そろそろ年末が近づいてきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

さて、この時期になるとワッシュさんのブログ(「男の魂に火をつけろ!」)で「映画ベストテン」の企画が開催されてまして、当ブログも毎年お世話になってるんですけど、今年のテーマは「漫画実写化邦画ベストテン」に決まったようです。

washburn1975.hatenablog.com

要は「漫画原作の日本映画からベストな作品を10本選ぶ」ってことなんですが、う~ん…なかなかムズいお題ですな~(笑)。

ちなみに「漫画の実写化」っていうと世間では割とネガティブな印象が蔓延しているようで、つい先日も「『鬼滅の刃』が実写化決定?」みたいな記事が出た途端にネットがザワつきました(笑)。

まあ、たしかに近年の日本映画はヒットした漫画を実写化するパターンが非常に多く、人気俳優やアイドルを主役に据えて安易に作られた実写版に批判が殺到することもありますが、「いやいや決して全ての実写化がダメなわけじゃないぞ」と。

過去から現在に至るまで漫画を実写化した映画は数多く作られ、「その中には出来がいいものも結構あったりするんだぞ」と。そんなわけで、本日は「これ割と上手く実写化してるんじゃね?」と思った日本映画を選出してみましたよ(^.^)

 


1.『ピンポン』(2002年 曽利文彦監督)
松本大洋の原作を実写化した卓球映画ですが、必ずしも実写化しやすい漫画ではありません。むしろ、個性的すぎるキャラクターや独特の世界観など「これをどうやって実写化するの?」と悩むような題材でしょう。

しかしながら、出来上がった映画は配役もストーリーも音楽も実に見事な完成度で、原作ファンからも高く評価されたのです。特に窪塚洋介ARATA井浦新)、中村獅童大倉孝二竹中直人夏木マリなど出演者たちの熱演が素晴らしかったなあ(よく見たら佐藤二朗染谷将太も出てたのねw)。

ピンポン

プライム会員は追加料金なしで視聴可

2.『DEATH NOTE デスノート』(2006年 金子修介監督)
金子修介監督と言えば『平成ガメラ』三部作が有名ですが、本作もなかなかの出来栄えですよ。当時はまだ珍しかった”前後編二部作”で公開され、2作合わせて80億円を超える大ヒットを記録!原作とは異なるラストも話題になりました(ミサミサ役の戸田恵梨香も可愛いw)。

3.『るろうに剣心』(2012年 大友啓史監督)
90年代にアクション俳優を目指して香港へ渡り、ドニー・イェンの元で様々なアクション映画に関わった谷垣健治。そんな谷垣さんが”アクション監督”として参加した本作は全編に渡って超絶アクションが満載で、日本映画のアクションレベルを一気に引き上げました。

監督を務めた大友さんも『るろうに剣心』を実写化する際に「日本のチャンバラ活劇と香港アクションのテイストを組み合わせたら凄い映画になるんじゃないか?」と考え、徹底的にアクション性を追求。その結果、従来のチャンバラの概念を超越した”新感覚時代劇”が誕生したのです(来年公開される新作も楽しみ!)。

4.『クローズ ZERO』(2007年 三池崇史監督)
当たり外れが多い三池監督作品の中でも”大当たり”の部類に入るでしょう(笑)。いわゆる”ヤンキー映画”ですが、小栗旬山田孝之など当時の若手人気俳優のリアルなケンカシーンが話題になりました。特に大勢のキャラクターが入り乱れて戦うクライマックスの大乱闘シーンがド迫力!

クローズZERO

プライム会員は追加料金なしで視聴可

5.『カイジ 人生逆転ゲーム』(2009年 佐藤東弥監督)
デスノート』で圧倒的な存在感を見せつけた藤原竜也が、本作でも主人公のカイジを熱演しています。しかも「ちょっとやりすぎでは?」と思えるほどの激しい演技で観客の心を鷲掴み、「どいつもこいつも狂ってやがるッ!」「キンキンに冷えてやがる!」「この美味さ…悪魔的だあぁぁ~!」などの名台詞まで生み出して、今では芸人にモノマネされるほど有名に(笑)。

6.『アイアムアヒーロー』(2016年 佐藤信介監督)
昔から「ゾンビ映画」というものは”低予算の代名詞”みたいな印象があり、日本でも(ビデオ作品等で)様々なゾンビ映画が作られてきましたが、本作は「十分な予算をかけたゾンビ映画」という点でも画期的でしたね。

ゾンビをリアルに見せるための特殊メイクや、人体破壊シーンもCGを使って迫力を増すなど、細かい部分まで丁寧に作り込まれた映像が素晴らしかったし、オリジナルでこういう映画を作ろうとしても、ここまでスケールの大きなゾンビものはまず実現不可能でしょう。

そういう意味では、人気漫画を原作としたことで多くのスポンサーが付き、大泉洋有村架純長澤まさみなど有名俳優のキャスティングも可能になったわけですから、まさに「漫画の実写化として大成功」と言えるんじゃないでしょうか。

アイアムアヒーロー

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7.『ヒメアノ~ル』(2016年 吉田恵輔監督)
ビル清掃員として働く岡田(濱田岳)と、次々と殺人を重ねるサイコキラー森田(森田剛)。接点が無さそうな二人の人生が交錯する時、衝撃的な事件が…というサスペンス映画ですが、森田剛の不気味な存在感も最高でメチャクチャ面白い!「漫画の実写化なんて…」などという先入観にとらわれず、ぜひ一度観て欲しい。

8.『逆境ナイン』(2005年 羽住英一郎監督)
「試合中、野球部のメンバーが主人公ともう一人を残して全員ダウン」など、破天荒すぎる原作を忠実に実写化した笑撃の野球映画です。なお、主人公がトラックに轢かれるシーンを自ら演じた玉山鉄二が撮影中に手を負傷してしまい、そのことを知った作者の島本和彦は「あんなシーン描かなければよかった!」と激しく後悔したらしい(笑)。

9.『恋の門』(2004年 松尾スズキ監督)
「石に固執する主人公とコスプレ好きのヒロインを描いたラブストーリー」という、何だかよく分からない原作を実写化した何だかよく分からない映画なんですが(笑)、ハチャメチャな世界観がもの凄く魅力的なんですよ(平泉成大竹しのぶイデオンのコスプレをしてるとか、衝撃シーンも満載ですw)。

10.『バクマン。』(2015年 大根仁監督)
いわゆる「漫画家マンガ」をストレートに実写化した気持ちのいい青春物語。「サイコー(佐藤健)とシュージン(神木隆之介)の配役が逆じゃね?」との意見もあったけど、実際に観たらあまり気になりませんでした(サカナクションが担当した主題歌「新宝島」もカッコイイ!)。

バクマン。

プライム会員は追加料金なしで視聴可

というわけで、僕が選んだベストテンはこんな感じです。

1.ピンポン
2.DEATH NOTE デスノート
3.るろうに剣心
4.クローズ ZERO
5.カイジ 人生逆転ゲーム
6.アイアムアヒーロー
7.ヒメアノ~ル
8.逆境ナイン
9.恋の門
10.バクマン。

なお、これら以外にも『テルマエ・ロマエ』、『ちはやふる』、『デトロイト・メタル・シティ』、『海街diary』、『翔んで埼玉』、『キングダム』、『帝一の國』、『3月のライオン』、『アルキメデスの大戦』、『宮本から君へ』、『スミスソウ』など、評価の高い実写化作品は色々あると思うので、機会があればぜひ観て欲しいですね(^.^)

 

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『トップをねらえ!』劇場公開記念(制作エピソードまとめ)

トップをねらえ!

トップをねらえ!


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて、昨日からTOHOシネマズ池袋やTOHOシネマズ梅田ほか全国の劇場で『新世紀エヴァンゲリオン』でお馴染みの庵野秀明さんのアニメーション監督デビュー作トップをねらえ!が公開されています。

トップをねらえ!』といえば1988年に発売されたOVAで、SF・巨大ロボット・美少女・スポ根・パロディなど様々な要素をぶち込んだ斬新なコンセプトが話題となり、アニメファンから絶大な支持を獲得しました。

本作は2006年に再編集&再アフレコし、続編の『トップをねらえ2!』と共に映画館で公開されたんですけど、今回の上映ではOVA版全6話をBlu-ray Boxのリマスター原版にて公開する模様。

ただし、音声はリマスター版の5.1chサラウンドではなく、1988年当時の2chオリジナル音声になるようで、その理由は「再アフレコした若本規夫さんの演技があまりにもコッテリしすぎているから」だそうです(笑)。

オオタコーチ役の若本さんは、88年の収録時点では渋くて落ち着きのある演技だったんですが、その後ナレーション等の仕事を重ねるうちにどんどんクセが強くなり、やがて「ぶるああぁぁぁ!」などとネットでネタにされるほど個性的な声になっていきました。

そして数年後に『トップをねらえ!』の再アフレコを行った際、収録現場で「どぅ~だい?俺の芝居、前よりも良くなっただろぉ~う?」とネットリした口調で話しかけてきた若本さんに対し、アマノカズミ役の佐久間レイさんは「私の好きなコーチはそんな人じゃなかったです!」と一喝したらしい(笑)。

というわけで本日は『トップをねらえ!』の制作にまつわるエピソードをいくつかまとめてみましたよ。


●キャラクターデザインは二転三転
トップをねらえ!』のキャラクターデザイナーは、当初は『エヴァンゲリオン』の貞本義行が担当する予定だったが諸般の事情で降板。その他、『幻夢戦記レダ』のいのまたむつみや『ガルフォース』の園田健一、『超音戦士ボーグマン』の菊池通隆などが候補に挙げられていた。

その中で、庵野監督は当時まだ新人だった菊池通隆を強く推していたものの、スポンサーのバンダイから「そんなヤツは知らん!」と一蹴されてしまい、結局『超時空要塞マクロス』の美樹本晴彦に決定したらしい(ちなみに原画で参加した貞本は「『王立宇宙軍』の直後だったので美樹本キャラがなかなか上手く描けなくて困った」とのこと)。


●音楽はパクリのオンパレード?
音楽を担当したのは『サクラ大戦』や『OVERMANキングゲイナー』のOPなどで有名な田中公平だが、「あんな屈辱的な仕事は生まれて初めてで、もう二度とやりたくない」と当時を振り返っている。いったい何があったのか?

実は、『トップをねらえ!』の音楽はほぼ全てが既存の楽曲をパク…いやマネしたものだったのだ。発注の仕方も特殊で、なんと庵野監督がヴァンゲリスの『炎のランナー』のテープを渡して「これと同じような曲を作ってください」などとオーダーしていたらしい。

もちろん、そのままパクるとまずい事になるので、「そっくりだけどちょっと違う音楽」を作るわけだが、聴き比べてみればどれぐらいそっくりか分かるだろう。

 

・『炎のランナー』(ヴァンゲリス

・『トップをねらえ!』(田中公平

 

ちなみに、第5話の「ノリコとお姉さま」の合体シーンで流れる『Fly High』は、当時、樋口真嗣が大ファンだった「うしろ髪ひかれ隊」(「おニャン子クラブ」から派生したユニット)の『ほらね、春がきた』という曲が元ネタらしい(こっちはあまり似てないが)。


●オッパイに対するこだわりがすごい
庵野秀明は『トップをねらえ!』の制作において、「オッパイの描き分け」に強いこだわりを見せていた。「ユングは外国人なので巨乳!必ず乳輪をデカくすること!」など、一人一人のキャラクターに対して明確な指示を出し、「オッパイの動き」にも徹底したリアリティを求め、走ったり飛んだりした時に「自然な揺れ方」を実現するようアニメーターに要請した。

さらに、オッパイの形や大きさでキャラの違いを表現しようと本気で考えていた庵野監督は、企画会議の席上で「アニメのオッパイって全部同じ形になるじゃないですか?でもそんなはずはない!本当は一人一人オッパイの形は違うんですよ!それを表現しなきゃダメなんです!」と力説したらしい。

その様子を間近で見ていた樋口真嗣は「さすがに着眼点が違うなと思いましたね。なるほど、オッパイか…と。そりゃ普通の人は考えないわ(笑)」と感心したそうだ。なぜ庵野監督がここまでオッパイにこだわっていたのかは知る由もないが、驚くべき執着心と言えるだろう。


●アニメ界に衝撃を与えた「乳揺れ」
貞本義行といえば業界屈指の乳揺らしアニメーターとしてその名を轟かせた有名人で、『DAICONⅣ』でバニーガールの乳を揺らして以来、「乳を揺れさせたら右に出る者無し」という不動の地位を確立。その後も数々の作品で順調に乳を揺らし続け、以降のアニメシーンに絶大な影響を与えた”乳揺れのカリスマ”だ。

もちろん、『トップをねらえ!』でもその超絶的な乳揺れテクニックは如何なく発揮されており、第1話でノリコがブルンブルンと豪快にオッパイを揺らしながら歩いてくるカットはアニメ界全体に衝撃を与え、日本中のアニメファンの度肝を抜いた。

トップをねらえ!

トップをねらえ!

しかし、すっかり”おっぱいアニメーター”のレッテルを貼られてしまった貞本だが、本人は極めて不本意だという。「確かにあのシーンは僕が原画を描きましたが、歩けば胸ぐらい揺れるだろうという程度で、動きの指示も簡単にしか入れてなかったんですよ。でも、動画の人が凄くこだわって何度も修正してたので、その力が大きかったのかもしれません」とのこと。

また、当時の作画スタッフの中に現在”おっぱいアニメの第一人者”として名高いうるし原智志が参加していたことに関しても、「彼はそれまで普通のアニメーターだったんですが、あの頃から胸を動かすことに燃えるようになったそうです。おかげで、”人生を狂わせた張本人”みたいに責められましたよ(苦笑)」とのこと。色んな人に影響を与えてるなぁ。


●演技指導も全力で
トップをねらえ!』は庵野秀明の商業アニメ初監督作品だったため、あらゆる部分において非常に気合いが入っている。というより、むしろ入り過ぎてしまったのだ。

通常、アニメのアフレコ作業は音響監督が現場を仕切り、監督は声優の演技に対してダイレクトに口出ししないものだが、庵野監督は録音スタジオの中まで入り込み、どんどん口出ししていったという。

ガンバスターが数々の必殺技を放つ場面では「ダブルバスターコレダァァァァァーッ!」などと日髙のり子の目の前で監督自ら模範演技を披露し、あまりにも本気で叫びすぎたせいで立ちくらみを起こして倒れそうになるほどだったらしい。

また、日高の方も全身全霊でタカヤノリコを演じ切り、収録が終わってスタジオから出て来た日高を見た川村万梨阿ユングフロイト役)は「のり子ちゃんの口からエクトプラズムが出ていた」と証言している。

トップをねらえ!

トップをねらえ!

なお、『トップをねらえ!』の収録が全て終わった後、庵野監督が『となりのトトロ』でサツキの声を担当していた日髙のり子に「宮崎さんはどんな風にダメ出ししてました?」と尋ねたところ、「宮崎監督は録音スタジオの中には入って来ません」「要件は全て音響監督さんを通して伝えられました」と答えたため、「え~!?直接言わないの!?」「しまったぁ!」とショックを受けていたらしい。


ヘアヌードがリアルすぎてアウト!
第2話「不敵!天才少女の挑戦!!」ではノリコやカズミが風呂に入っているシーンが出てくるのだが、なんとユングフロイトのヘアが丸見えになっている(金髪なのでブラシ処理)。これはおそらく日本のアニメーションで最初に表現されたヘアヌードと思われ、当時の業界関係者を驚愕させた。

さらに第5話「お願い!!愛に時間を!」では、ついにノリコまでがヘアヌードに!しかし実際の画面にはヘアは映っていない。実は、最初に完成した入浴シーンではヘアまでしっかり作画されていたのだが、「ヘア丸出しフィルム」を納品したところ、「いくらなんでもこれはマズいだろ!」とクレームがついてしまったのだ。当時のプロデューサーだった高梨実氏は以下のように語っている。

第5話は実際にヘアが描いてあるフィルムが納品されたんです。しかも、細部まで大変リアルに描きこまれていて、ノリコが湯船から立ち上がる時にヘアから風呂の水が滴り落ちるという描写までありました。しかし、当時は今とは基準が違っていたし、僕らの見解ではNGということになって修正をお願いしたんですが、そこで「こんなに闘争的にならなくてもいいんじゃないの?」というぐらい庵野さんと揉めたんですよ。初監督作品ですから力がこもっていたというのは分かるんですが、正直、あんなにヘアにこだわる人だとは思いませんでした(苦笑)。

このヘア有りバージョンは一度撮影されアフレコまで行われたものの、結局「使えない」と判断され、完成したフィルムでは作画からやり直したものに差し替えられてしまった。残念!


●ヤクザが激怒!逃げる樋口真嗣
トップをねらえ!』の全ての作業が完了した夜、庵野秀明樋口真嗣らスタッフたちは六本木で打ち上げを行った。それまでのストレスを吹き飛ばすかのように酒を飲みまくる樋口真嗣。その帰り、ベロベロに酔っぱらったスタッフの一人がいきなり路上に停めてあったベンツの上に乗って騒ぎ始めた。すると突然「何やっとんじゃゴルアァ!」と怒号が鳴り響き、怖いおっさんに追いかけられるという大事件が勃発!気が付くと樋口真嗣もスタッフと一緒に必死で逃げていたらしい、トホホ。

 

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