ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

クリスマスなので今敏監督の『東京ゴッドファーザーズ』を観た

東京ゴッドファーザーズ

東京ゴッドファーザーズ


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて本日は年に一度のクリスマス!というわけで今敏監督の東京ゴッドファーザーズを久々に観てたんですが、やっぱいい映画ですね~。

公開されたのが2003年だからもう17年前の作品になるんですけど、何度観ても面白いし、作画的にも非常にクオリティが高く、全く古さを感じさせません。

内容を簡単に説明すると、「ギン・ハナ・ミユキという3人のホームレスが、あるクリスマスの夜に一人の赤ん坊を拾い、その子を親の元へ送り届けるために東京の街を彷徨っていると様々な偶然に巻き込まれ…」という、笑いあり涙ありの娯楽アニメです。

3人の主人公たちにはそれぞれ秘められた過去(背景)があり、ストーリーの進行と共にそれらが少しずつ明らかになっていくわけですが、今敏監督は本作を「回復の物語」と表現していてるんですね。

娘と離れ離れになったギンや元ドラァグクイーンのハナ、そして家出少女のミユキが、赤ん坊を助けようと懸命に行動するうちに色んな偶然が重なり、やがて自分たちが失ったものを”回復”していく…。本作はその過程を描いた物語なのです。

”偶然”といえば、今敏監督は映画を制作する際は偶然にこだわっているようで、『東京ゴッドファーザーズ』公開前のインタビューでミユキ役に女優の岡本綾をキャスティングした理由について、以下のように語っていました。

たまたま立ち寄った本屋さんで偶然見つけた本に岡本さんのグラビアが載っていて、「あ、きっと(ミユキ役は)この人なんだろうな…」と。僕はそういう感覚を大事にしてるんです。映画には、そういう偶然が必要なんですよ。

あと、アニメの声優さんによくある「いかにもマンガのキャラクター」っぽい喋り方ではなくて、ある意味突き放したような、低い声でブツブツ喋る話し方が欲しかったんです。とにかく、ミユキって不平不満が多い子なんで(笑)。

 また、岡本さん以外にもギン役の江守徹さんやハナ役の梅垣義明など、主人公3人にプロの声優ではなく俳優やコメディアンを起用していて、それぞれが非常に上手いんですよね。この辺も本作の魅力の一つでしょう。

東京ゴッドファーザーズ

東京ゴッドファーザーズ

なお、『東京ゴッドファーザーズ』のスタッフにはスタジオジブリのアニメーターや、過去に宮崎駿作品に関わった腕利きの原画マンが多数参加しており、作画のクオリティが凄まじく高くなっている点も見どころです(以下、アニメーター名&関わったジブリの作品名)。

 

小西賢一(『平成狸合戦ぽんぽこ』、『耳をすませば』、『もののけ姫』、『ホーホケキョ となりの山田くん』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

安藤雅司(『おもひでぽろぽろ』、『紅の豚』、『海がきこえる』、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『耳をすませば』、『On Your Mark』、『もののけ姫』、『ホーホケキョ となりの山田くん』、『千と千尋の神隠し』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

井上俊之(『魔女の宅急便』、『おもひでぽろぽろ』)

・濱洲英喜(『ホーホケキョ となりの山田くん』、『千と千尋の神隠し』、『ギブリーズ episode2』、『ハウルの動く城』、『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『借りぐらしのアリエッティ』、『コクリコ坂から』、『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

橋本晋治(『千と千尋の神隠し』、『ギブリーズ episode2』、『ゲド戦記』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

山下高明(『千と千尋の神隠し』、『思い出のマーニー』)

本田雄(『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『コクリコ坂から』、『風立ちぬ』、『思い出のマーニー』、『毛虫のボロ』 ※現在は宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』の作画監督を務めている)

・古屋勝悟(『海がきこえる』、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『ホーホケキョ となりの山田くん』、『千と千尋の神隠し』、『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『借りぐらしのアリエッティ』、『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

・賀川愛(『風の谷のナウシカ』、『天空の城ラピュタ』、『火垂るの墓』、『魔女の宅急便』、『おもひでぽろぽろ』、『紅の豚』、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『もののけ姫』、『ホーホケキョ となりの山田くん』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『借りぐらしのアリエッティ』、『コクリコ坂から』、『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

・大塚伸治(『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』、『魔女の宅急便』、『おもひでぽろぽろ』、『紅の豚』、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『耳をすませば』、『On Your Mark』、『もののけ姫』、『ホーホケキョ となりの山田くん』、『猫の恩返し』、『ハウルの動く城』、『ゲド戦記』、『崖の上のポニョ』、『借りぐらしのアリエッティ』、『コクリコ坂から』、『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』)

 

このように、『東京ゴッドファーザーズ』はジブリ作品に関わったアニメーターが数多く参加していて(別に「絵柄がジブリっぽくなった」というわけではありませんが)、今敏監督の前2作(『PERFECT BLUE』と『千年女優』)がリアルなキャラクター造形だったのに対し、どちらかと言えば漫画的にデフォルメされたキャラが増えています。

今敏監督によると、「これまでのリアルな路線を継承しつつ、同時に漫画表現が本来持っている力を回復しようという狙いがあった」とのこと。

その言葉通り、作画監督とキャラクターデザインを務めた小西賢一さんも「打ち合わせの時に今敏監督から”表情の誇張や動く際に絵の伸縮を加味したい”と言われたので、過去2作品に比べると今回は漫画っぽくなってますね」と語っていました。

東京ゴッドファーザーズ

東京ゴッドファーザーズ

こうして出来上がった『東京ゴッドファーザーズ』は、キャラクターの表情が目まぐるしく変化し、デフォルメされた大げさな芝居が物語の喜劇性をさらに増幅させ、動きを見ているだけでも面白くて楽しい!

その一方、背景に描かれている東京の街並みや風景は極めてリアルで写実性に富んでおり、デフォルメされたキャラとの相性が気になるところですが、今敏監督は「むしろそういうギャップこそが狙いでもあり、緻密に描き込まれた美術背景は”奇跡”や”偶然”が連鎖する物語に説得力と重みを与えてくれるはずだ」と語っています。

確かに、もしこれが全員リアルなキャラクターだったら、次々と巻き起こる偶然を「ご都合主義だ!」と感じたかもしれないし、背景までマンガチックだったら「単なるお笑いアニメ」と思われたかもしれません。

リアルな情景と漫画的なキャラクターが同居する不思議な世界観。それこそがまさに本作の大きな特徴であり、奇跡のストーリーを楽しむために最適な構成と言えるでしょう。

というわけで、クリスマスには名作『東京ゴッドファーザーズ』!観てない人はぜひ一度ご覧ください(^.^)