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アマプラで観られるオススメ映画15選

プリデスティネーション

映画『プリデスティネーション


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて、今日から4連休という人も多いと思いますが(政府は積極的に「Go To トラベルキャンペーン」を推奨しているものの)、まだまだ新型コロナの影響は色濃く、相変わらず予断を許さない状況が続いています。

さらに天気の状態も微妙な感じなので、「外出は控えようかなあ…」と考えている人もいるんじゃないでしょうか?というわけで本日は連休を家ですごす人向けに、Amazonプライムビデオで観られる映画(プライム会員は見放題)の中から、いくつかオススメ作品を取り上げてみますよ。

 

●『プリデスティネーション
バーテンダーに自分の身の上を語るジョン。それは恐ろしく奇妙な物語の幕開けだった!というロバート・ハインラインSF小説『輪廻の蛇』を原作としたタイムトラベルもので、注目すべきはキャラクター。登場人物の言動に注意して観ていると、ラストに「あっ!」と驚く展開が待ち受けています。

●『ナイトクローラー
テレビ局に特ダネ映像を売って金を稼ぐ男の話なんですが、ジェイク・ギレンホール演じる主人公がとにかくイヤなやつなんですよ。ウケる映像を撮るためなら何でもやるという、まさに人間のクズ。普通の映画なら「絶対に主人公にやっつけられる側だろ」ってタイプなんですけど、そうならないところが本作の特徴なんですね。あまりにもクズすぎて「逆に清々しく感じてしまう」という実に奇妙な映画です(笑)。

●『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
第二次大戦時、解読不可能と謳われた最強の暗号「エニグマ」。その難関に挑む天才数学者アラン・チューリングの物語で、ベネディクト・カンバーバッチがアランの成功と苦悩を熱演。実話ベースであるが故に、歴史的整合性や劇中の同性愛描写を批判する人もいたようですが作品自体の評価は高く、最終的にアカデミー脚色賞など数多くの賞を受賞しました。

●『イエスタデイ』
交通事故に遭遇した主人公が昏睡状態から目覚めると、そこは「ビートルズが存在しない世界」だった!という奇想天外な物語を、『トレインスポッティング』などのダニー・ボイル監督が鮮やかに描き出す痛快コメディ。エド・シーランが本人役で出演していて、しかも結構出番が多い。ちなみに、この世界にはなぜかコカコーラも存在しません(ペプシのみw)。

●『ハッピー・デス・デイ』&『ハッピー・デス・デイU2
「ヒロインが謎の殺人鬼に何度も殺される」というタイム・ループ要素を加えたホラーです。トム・クルーズ主演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』みたいに、何度も同じ日を繰り返すたびにどんどん経験値が蓄積されていく展開が面白い。

さらに興味深いのが続編で、パート2でありながら視点やテイストが異なり(ホラーというよりSFコメディ?)、しかも前作との繋がりもしっかり描かれているため、『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』的なノリで楽しめますよ。ぜひ1と2を連続でご覧ください。

●『ボーダーライン』&『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ
メキシコの麻薬カルテルを殲滅すべく、FBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は極秘任務を就くが、そこで恐ろしい現実を目の当たりにする…という、『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーブ監督が描く衝撃の社会派サスペンス!

本作も『ハッピー・デス・デイ』と同じく1と2を連続で観ることをオススメしたいんですが、2では主人公が変わってるんですよね。1で”謎のコロンビア人”として登場したベニチオ・デル・トロが主役になり、残酷で陰鬱なストーリーがますます凶悪になっています(デル・トロの顔が怖すぎるw)。

●『七つの会議』
香川照之及川光博片岡愛之助赤井英和北大路欣也などキャストの顔ぶれが『半沢直樹』と被りますが、それもそのはず、原作は池井戸潤の同名小説、さらに監督も『半沢直樹』と同じく福澤克雄!なので『半沢直樹』的な企業ドラマが好きな人は特に楽しめるんじゃないでしょうか。

●『アップグレード』
謎の組織に襲われ最愛の妻を失い、重傷を負った主人公のグレイは、「STEM」と呼ばれる特殊なチップを体内に埋め込む手術を受け、凄まじい身体能力を手に入れた。”アップグレード”したグレイは妻を殺害した組織に戦いを挑む!

監督のリー・ワネルは、サイコスリラー映画『ソウ』で”バスルームに閉じ込められた若者アダム”を演じていた人なんですが、同時に『ソウ』シリーズの脚本も書いてるんですよね。本作では監督・脚本・製作を務め、低予算ながらもテンポのいいSFアクション映画に仕上がっています。

●『暁に祈れ』
タイで麻薬に溺れていたイギリス人のビリーが、ある日”史上最悪”と名高い刑務所に収監される…という実話を元にした映画なんですけど、刑務所の描写がとにかく酷い!殺人や暴行は日常茶飯事で、夜中にビリーが目を覚ますと隣の囚人が大勢の男たちにガンガン尻を責められているとか、イヤすぎるエピソードが満載です。撮影現場は本物の刑務所で、出演している囚人も大半が本物というリアリティの極め方もエグい!

内容的には、劣悪な環境に放り込まれたビリーが、ムエタイを通じて自己を主張し、囚人たちの中で成り上がっていく様を描いたサクセス・ストーリーと言えなくもないんですが、刑務所の描写が恐ろしすぎてそっちの印象しか残りません(笑)。

●『女神の見えざる手
銃規制法案を成立させるために銃擁護派団体に立ち向かうロビイストの姿を描いた物語。主人公のエリザベス(ジェシカ・チャスティン)は決して正義のためだけに戦っているのではなく、あくまでもプロとしての信念を貫こうとする、その揺るぎない姿勢が素晴らしい。なお、ジェシカ・チャスティンが出演している映画には傑作が多く、『モリーズ・ゲーム』や『ゼロ・ダーク・サーティ』などもオススメですよ。

●『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
1994年の「ナンシー・ケリガン襲撃事件」でフィギュアスケート界に衝撃を与えたトーニャ・ハーディング。本作はそんなトーニャの波乱万丈な半生を描いた物語なんですが、主人公を含め、登場人物がもれなくダメ人間です(笑)。マーゴット・ロビーもいいんですけど、特にトーニャの母親役を演じたアリソン・ジャネイの嫌~な感じが最高でした(笑)。

●『デス・ウィッシュ
チャールズ・ブロンソンの『狼よさらば』のリメイクですが、初老のブルース・ウィリスが演じているため「頑張って戦ってる感」がさらに強調されている点がグッド。なお、監督が『ホステル』のイーライ・ロスなので、主人公が敵を殺すシーンなどが結構グロい感じになっています。苦手な人はご注意ください。

●『スパイダーマン:ホームカミング
トム・ホランドが演じるスパイダーマンとしては初の単独主演映画になるんですけど、その前にMCUの『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で初登場し、ストーリー的にはその続きになるため、先に『シビル・ウォー』を観ておいた方がいいかもしれません。

本作のピーター・パーカーは過去のキャラ(トビー・マグワイアアンドリュー・ガーフィールド)に比べると幼く未熟ですが、トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)が指導者的な立場で登場したり、ベテランのマイケル・キートンが強敵として立ち塞がったり、「大人たちに鍛えられて成長していくヒーロー」という側面が強調され、そこも魅力になっていると思います。

紙人形みたいなCGアニメ!『ミニパト』について解説してみた

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて先日、当ブログにて劇場アニメ機動警察パトレイバー2 the Movieが生まれるまでのエピソードを書いたところ、「そんな裏話があったとは知らなかった!」「もう一度『パト2』を観たくなった」など多くの反響をいただき、誠にありがとうございました(前回の記事はこちら↓)。

type-r.hatenablog.com

というわけで本日は、劇場版の3作目となるWXIII 機動警察パトレイバーについて記事を書こうか…と思ったのですが、その前に『WXIII』と同時上映されたミニパトについて書いてみます。いや、『WXIII』もいい映画なんですけど、押井守監督が全く絡んでないので、先に押井さんが脚本を書いた『ミニパト』をやってしまおうかなと(笑)。

この『ミニパト』、一応は劇場アニメなんですが、かなり特殊な形態なんですよね。まず、12分~14分ぐらいの短編映画が3本で計38分なんですけど、公開時は1話・2話・3話のうち、どれか1本だけを週替わりで『WXIII』と併映する「シャッフル上映」という方式でした。

そのため、3本全てを映画館で観るには最低でも3回観に行かなければならないという、なかなかハードルの高い状況だったのです(全部で38分しかないんだから、3本まとめて上映すれば良かったのに…)。

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

また内容もかなり特殊で、2~3頭身ぐらいにデフォルメされた特車二課のメンバーたちが、「厚紙で作った人形」みたいなペラペラの姿で現れ、リボルバーカノンやレイバーについてひたすら語りまくるという、何ともシュールな映像なんですよ(しかも”ストーリー”らしきものは特になし)。

さらにこの「人形劇」のように見えるアニメを作るために、スタッフは実際に紙で大量の人形を作って割り箸に貼り付け、自分で喋りながら人形を動かし(つまり”本物の人形劇”を実演!)、それをビデオに撮ってその動きを元に3DCGを作成する……という恐ろしく手間のかかる手法を採用しました。

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

このような紙人形劇は「ペープサート(PAPER PUPPET THEATER)」と呼ばれ、使用した人形は頭部・胴体・腕・脚などがそれぞれ可動する仕組みになっており、「最低限の動きで最大の効果が得られるように工夫されている」とのこと。いや~、すごいですねえ!

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

もっとすごいのは、プロダクションI.Gのアニメーターの西尾鉄也さんがほぼ一人で全てのキャラを描いたことでしょう(実際の映像はCGですが、元になる絵をほとんど西尾さんが描いたため、クレジットでは”原画”ではなく”作画”となっています)。

しかも西尾さんは、第2話の絵コンテも自ら描き、なんとビデオ撮影時には自分で紙人形を操作しながらシバシゲオのセリフまで喋るという大活躍ぶり!押井監督は「まるで西尾の自主制作アニメだな」と笑っていたそうです(なお、本番では声優の千葉繁さんがアフレコしたんですけど、熱演しすぎて口の中を4カ所切ったらしいw)。

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

そんな感じで、とてもアニメの制作現場とは思えないような光景なんですが、いったい何故こんな奇妙なアニメが作られたのか?というと……そう、発案者は押井守さんです(笑)。押井さんは昔からこういう「パタパタアニメ」を作りたかったらしく、「パトレイバーなら成立するだろう」と考えて実行したらしい。

ミニパト』を作ったのは、ああいうスタイルを試してみたかったのが最大の理由なんですよ。パトレイバーという枠の中でなら商品として成立するだろうと。あの形式が成立するのなら、やってみたいことがあったので、それでやってみたんですよね。 (「機動警察パトレイバー クロニクル」より)

では、こういうパタパタアニメで押井さんがやってみたかったことは何かといえば、パトレイバーの世界に登場する架空の銃やロボットについて「リアリティ的にはどうなのか?」を検証することだった模様。

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

例えば第1話「吼えろ リボルバーカノン!」では、後藤隊長が出て来て「リボルバーカノンみたいな武器が実際にあったらどうなる?」「設定では口径20ミリとなっているが、どう考えてもおかしいのでこっそり37ミリに修正された」など、銃に関する知識や蘊蓄を延々と語りまくってるんですよ。

どうやら押井さん的には銃火器の設定にリアリティがないことが不満だったらしく、後に実写版の『機動警察パトレイバーを撮った時も、「37ミリ執行実包、まあ実弾のことですが、実はこれ弾頭の実径じゃない」などと『ミニパト』の続きみたいな話(エピソード2「98式再起動せよ」)を作っているのです。

しかも、『ミニパト』では「リボルバーカノンの弾頭は超大型のホローポイント弾」と説明していたのに、実写版では「弾頭のように見えるがこれは樹脂製の被帽(キャップ)で、標準装備のダブルオーバックに軟鉄製の37ミリ弾が9発装填されている(要するに散弾)」などと設定を微妙に変更してるんですよね(こだわりがすごいw)。

実写版『機動警察パトレイバー』

実写版『機動警察パトレイバー

そして第2話「あヽ栄光の98式AV!」も同様に押井監督のこだわりが炸裂しており、当時のロボットアニメを取り巻く環境をメタ的に振り返りつつ、「他のロボットアニメとの差別化」や「リアリティの追及」などを千葉繁さん演じるシバシゲオが例の調子で喋る喋るw

……とまあ、ここまではいいんですが、最後の第3話「特車二課の秘密!」はちょっとテイストが異なってるんですよ。

榊原良子さん演じる南雲しのぶが、非常に淡々としたトーンで特車二課と後藤隊長の秘密を暴露するという、一見シリアスな雰囲気を漂わせながらも彼女の口から語られるその内容は……ハゼ!

「そう、ハゼです」

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

予算不足により逼迫した特車二課の財政事情と食糧難。それを解決するために編み出された後藤隊長の起死回生の策はなんと”ハゼ”だった!という、南雲しのぶの衝撃の告白が見どころのエピソードなんですけど、押井さんからこの脚本を受け取った神山健治監督は仰天したらしい。

ウンチクものでいきましょうよって言ったのは自分だったので、ある程度は予想できてたんですが、3本目だけは正直ドギモを抜かれましたね。俺も西尾くんも口アングリって感じで(笑)。あのネタを一体どうすりゃいいんだ?って、「またもや押井さんにカマされたな」と(笑)。 DVD『ミニパト』の特典映像より

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

どうやら第3話だけは神山さんも完全に想定外だったらしく、押井さんが書いた奇抜すぎる脚本をどうやってアニメ化するか、頭を抱えたそうです。ただ、「アフレコ現場では榊原良子さんがノリノリで演じていた」とのことで、かなり面白い感じに仕上がっていましたよ。

というわけで、本日は『ミニパト』をご紹介しました。いちおう劇場アニメなんですが、短編&特殊な形態ゆえに『パト1』や『パト2』など他の劇場版に比べるとあまり知られていないかもしれません。ただ、パトレイバーファン的には興味深い内容なので、機会があればぜひ一度ご覧ください。

なお、今回採用された「紙の人形劇風CGアニメーション」は、発案者である押井さんの名前から「オシメーション」と名付けられたんですけど、現在に至るまで『ミニパト』以外には採用されていないようです(^^;)

 

※追記
よく調べたら、2006年公開の立喰師列伝にこの手法が使われてましたね。ただし「絵」ではなく、演じる「人間」をデジカメで撮影し、その写真を割り箸に貼り付けて人形劇にしたもので、「スーパーライヴメーション」命名されていたようです。

 

『機動警察パトレイバー2 the Movie』はこうして生まれた

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて先日、当ブログにて劇場版『機動警察パトレイバー』が生まれるまでのエピソードを書いたところ、「『パト2』も大好きです」「『パト2』の記事が読みたい!」など多くの反響をいただきました。ありがとうございます!

というわけで本日は、続編となる劇場アニメ機動警察パトレイバー2 the Movieが生まれるまでの経緯について詳しく解説してみたいと思います(前作のエピソードはこちらの記事をどうぞ↓)。

type-r.hatenablog.com

まず、劇場版『機動警察パトレイバー』が1989年7月に公開された後、同じ年の10月からTVシリーズが始まりました。しかし実はこれ、もの凄くバタバタと決まった企画だったようです。

鵜之澤伸プロデューサーによると、「元々テレビ局側で準備していた番組がダメになって、急に放送枠が空いたような印象だった」「オンエアは10月なのに、連絡が来たのが5月だった」というぐらい突然の話だったらしい。

大急ぎでスタッフを集めようとするものの、押井さんは「TVアニメの監督はもうやりたくない」と参加を拒否。出渕さんと高田さんはデザインのみ、ゆうきまさみさんも漫画の連載で忙しい…みたいな感じで、結局ヘッドギアのメンバーでガッツリ関わることになったのは伊藤和典さんだけ。

しかもOVA版や劇場版を制作したスタジオディーンにも「うちはTVシリーズなんて出来ないよ」と断られてしまい、鵜之澤プロデューサー曰く「監督はいないし、制作スタジオも未定。決まっていたのは放送枠だけ」という悲惨な状況だったらしい。

それでもどうにか日本サンライズ(現サンライズ)に引き受けてもらい、監督も吉永尚之さんに決まって一安心……かと思いきや、一人だけ関わることになった伊藤和典さんは大変な苦労を強いられたようです。以下、伊藤さんのコメントより。

うん、大変だったよ。毎週毎週すさんでいってるのが自分でもわかったからね(笑)。『パトレイバー』の場合は最初にOVAがあって、映画があって、息つく暇もなくTVシリーズだったでしょ?しかも制作が決まってからオンエアまで、ほとんど時間がなかったからね。せめて準備に半年は欲しかった。

そもそもTVシリーズって最初は2クールの予定だったんですよ。それが、いつの間にか4クールになって、それが終わると今度は新しいOVAをやるからって、どんどんゴールを先延ばしにされて疲弊していくばっかり…。結局、僕の30代はほぼ全期間を『パトレイバー』に費やしてました(苦笑)。

(「機動警察パトレイバー クロニクル」より)

 こうしてTV版や新OVA版が作られた後、いよいよ劇場版の2作目となる『機動警察パトレイバー2 the Movie』の制作が始まるんですけど、その制作方法は前作とはかなり異なっていたようです。

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

1作目の場合は、ヘッドギアのメンバー全員が何度もディスカッションを繰り返し、それぞれの意見やアイデアを脚本に取り入れ、しかも押井さんが考えていたオチはやらせないという(笑)、そういう体制で作られたため、ある意味「非常にバランスのいい映画」に仕上がっていました。

ところが続編の『パト2』は全く逆で、ほとんど押井監督と伊藤さんだけで内容が決められ、他のメンバーはあまり関与できなかったらしいのです。以下、ゆうきまさみさんのコメントより。

まあ、今回は押井さんと伊藤さんが「自分たちが映画を作るというのは、こういうことなんだ」と言って、僕やブッちゃん(出渕裕)とかの意見はあまり取り上げてもらえませんでした。仕方がないから僕の方はひたすらサブキャラを描いて、ラフを送ってOKをもらって…ということの繰り返しだったような気がしますね。

最初のシナリオに入る前の打合せで、「こうしたらいいんじゃないの?」という案を出していて、押井さんも初めは入れるつもりで絵コンテを切ってたらしいんだけど、そうしたら尺がえらく伸びちゃった。要するに、押井さんのやりたい部分だけでもう尺がいっぱいになっちゃって、コンテの段階で40分ぐらい落とさざるを得なかったらしいんです。そのカットされた中に、僕とかブッちゃんのアイデアも入ってたんですね。

(「PATLABOR DIGITAL LIBRARY Vol.02」より)

 ちなみに「カットされたシーン」というのは、主に第2小隊のメンバーが登場する場面で、野明や遊馬や太田たちが久しぶりに集まって酒を飲む…みたいな展開になるはずだったらしい。

ゆうきさんによると、「初めてパトレイバーを観る観客にもわかりやすいように、特車二課のメンバーを集めて顔見せしておいた方がいいだろうと思って、いくつかそういうシーンを考えていたんですけどね」とのこと。

たしかに、『パト1』に比べると『パト2』は野明や遊馬たちの活躍場面が少なく、OVA版やTV版に慣れ親しんだパトレイバーファンにとっては少々不満を感じる内容だったことは否めません。

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

ただし、メカデザインの出渕裕さんは「押井さんも最初はその辺(第2小隊のキャラクター)を拾ってやる気はあったんだと思いますよ。でも、尺の問題で泣く泣く切ったんじゃないかな」と説明していました。

また、押井監督自身も野明や遊馬たちが語り合っている場面を描きたかったらしく、以下のようにコメントしています。

第2小隊の連中に3年の間に何が起こったのか、なぜ後藤の招集に応じるのか、その辺の事情を説明するシーンが本当はもっといっぱいあったんだけど、尺の都合で切っちゃったんだよ。第2小隊の同窓会とかね。みんなが鍋を囲んで愚痴垂れまくってるシーンとか、実はコンテまで切ったんだけど、やむなく全部カットした。映画って2時間って尺があるから、やっぱり何でもかんでもはできないなってさ。

(「機動警察パトレイバー 泉野明×ぴあ」より)

このように、押井監督は決して第2小隊のメンバーをないがしろにしていたわけではなかったようですが、とは言え、ゆうきさんや出渕さんの意見よりも自分のやりたいことを優先していたのも事実でしょう。

さらに、『パト2』の脚本は伊藤和典さんが書いたのですが、伊藤さんによると「ストーリーはほとんど押井さんが一人で考えた」とのこと(以下、伊藤さんのコメントより)。

パト2』に関して言えば、設定なんかも含めて、ほぼ押井さんが決めてましたね。押井さんがあらかじめかなり詳細なプロットを用意していたので、脚本家の自分はただそれになぞって書くだけでした。後藤と荒川が川下りしながら長台詞の会話をするシーンなんかも、押井さんから「ちょっと語りたいことがあるから、場面だけ用意しておいて」ってオーダーがあったので、僕はただその場面を脚本内に配置しただけですから。実際のセリフも全部押井さんが書いたものです。

(「機動警察パトレイバー 泉野明×ぴあ」より)

このように、色んな人の意見を丁寧に取り入れた1作目とは打って変わって、『パト2』は押井守監督の主義・主張を全面的に反映させた結果、極めて作家性の強い内容になっているのです。では、押井監督自身はどのような気持ちで『パト2』に取り組んでいたのでしょうか?

パトレイバー2』の制作は最初から波乱含みでしたね。お互いに牽制し合って、誰が主導権を握るんだ?って感じで。ただそれは、ハッキリ言って最初から勝負はついていた。つまり、伊藤くんと僕が組んだ時点で「戦争ものをやろう」って。バンダイの方も、最初のOVAでやったクーデター話(5話・6話)がお気に召していたみたいだから、一応の内諾は取れてたんです。あとは、伊藤くんと早々に共同戦線を張って、泣こうが喚こうがストーリーの大枠を決めちゃって、これでもう勝つ構図はできていたわけですよ。

まあ、こんなことばかりやっていてもしょうがないんだけど、映画を成立させるためには政治力というか力関係というか、戦略が大事なわけ。早い段階で勝負を決めておかないと、スタートしてからケンカを始めると、お互いに消耗戦になった挙句に損はするしボロボロになってしまう。問答無用で抜きざまに一閃しないと。相手がもんどりうってるうちに、ことを進めちゃわないとダメなわけですよ(笑)。まあ、そういった意味では作戦勝ちでもあったし、ヒドいことをやったなとは思うんだけど、今回は全く聞く耳を持たなかったというか、何を言ってきても受け付けなかった。

(「押井守全集 THE SEVEN DOGS' WAR」より)

 どうやら押井監督の中には「1作目みたいな状況にはしないぞ!」という強い思いがあったらしく、「ファンサービスのための映画を作りたいとは、これっぽっちも思っていなかった」「シリーズを支えてきてくれたファンの心理を思えば”裏切り”と呼ばれてもしょうがないんだけど、1本の映画として考えた場合は、キャラクターと心中するわけにはいかないというのが僕の立場だった」と述べています。

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

では、そこまでして押井守監督が『機動警察パトレイバー2 the Movie』で描きたかったものは何か?というと、”戦争”なんですね。もっと言うと「戦争とは何か?平和とは何か?という本質的な問いかけ」をアニメを通じて描こうとしていたのです(以下、押井監督のコメントより)。

1作目はアクション性を全面に押し出した娯楽映画だったけど、2作目は全然違う種類の映画で、ある種の”ポリティカル・フィクション”を目指したんですよ。登場人物と観客との間に常に一定の距離を保ちつつ、緊迫感や予兆みたいなもので物語を引っ張っていこうと。アニメでそういうことが可能なのかどうなのかってことも試してみたかった。きっかけは湾岸戦争ですね。僕らの世代は戦争の記憶といえばベトナム戦争なんだけど、今の若い人たちにとっては湾岸戦争だろうと。ちょうど映画の準備をしていた時期に湾岸戦争が勃発して、アニメで戦争を描くにはいい機会だと思ったんです。

ベトナム戦争湾岸戦争の大きな違いは何かっていうと、「モニターの向こうにしか戦争がない」ってことなんですね。いま世界中で戦争が行われているのに、日本だけが敢えてそういう現実から目を逸らそうとしている。あくまでもモニターの向こう側の出来事であって自分たちには関係ない…と。そういう人たちに強烈な一撃を食らわせようとする犯人のイメージがまずあって、それが柘植行人という男なんです。

(「BSアニメギガ とことん押井守」より)

 『機動警察パトレイバー2 the Movie』に事件の首謀者として登場する柘植行人は、東京を舞台に架空の戦争を仕掛けて日本中を混乱の渦に巻き込みます。彼の行動とそれに抗う人々との攻防が本作の見どころなわけですが、押井監督は柘植よりもむしろ荒川茂樹の方に「共感を覚える」とのことで、後藤と荒川の会話シーンは特に力を入れていたらしい。

「戦争だって?そんなものはとっくに始まってるさ。問題なのは如何にケリをつけるか、それだけだ」(『パト2』本編の荒川茂樹のセリフより)

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

押井監督は本作で「戦争とは何か?平和とは何か?」を描くために様々な文献を読み漁って勉強し、その結果『パト2』はロボットアニメとは思えぬほど哲学的で難解な要素が強くなったわけですが、伊藤和典さんは完成した映画を観て「これは映画として成立しているのか?」「押井さんの”戦争研究論文”にしか見えない」と感じたそうです。

たしかに、ほとんど動かない画面の中で渋いオッサンたちが戦争について延々と語り続ける場面は、レイバーの派手なアクションを期待した観客にとっては退屈に映ってしまうかもしれません(個人的にはこういう長台詞や世界観が大好きなんだけど、ダメな人もいるでしょうね)。

だがしかし!『パト2』で描かれているのは”戦争論”だけじゃないんですよ。もう一つの重要なドラマの柱、それが南雲しのぶの恋愛エピソード」です。どうやら押井監督は本作において”ラブストーリー”としての側面も見せたかったらしく、伊藤さんにそう伝えていたようです(以下、伊藤さんのコメントより)。

押井さんは照れながらも「一応これは恋愛映画である」と(笑)。柘植としのぶの関係…強いて言えばその辺を描くのが難しかったですね。最後に手錠をかける時、互いに手が触れあった瞬間に、それまでの時間の空白を飛び越えるような何か、それを観客も了解できるような何かが欲しいということで、いろいろ考えたんだけど…。二人が手を絡ませた後で、しのぶが自分の手首にも手錠をかけるでしょ?あれは自分も共犯者なんだっていうことを了解しているのだと、そういう雰囲気が観た人にちゃんと伝わっているか?というと、僕としてはあまり自信がないんですよ。

(「PATLABOR DIGITAL LIBRARY Vol.02」より)

しのぶと柘植の恋愛感情をどのように描けばいいのか、伊藤さんは悩んだようですが、映像をよく見ると「二人の関係性」を匂わせるようなカットがいくつか存在します。例えば、冒頭の「レイバーから出てきてヘルメットを脱ぎ、顔を上げる」という柘植の動きと、終盤のしのぶの動きが全く同じなんですね(わざと作画のタイミングや構図まで合わせている)。ここで、元恋人同士だった二人の心情を表現しているわけです。

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

さらに押井監督は、この二人に後藤を加えた三角関係(メロドラマ)を想定していたらしく、以下のように語っていました。

後藤っていうのは、良くも悪くも”正義の人”なんですね。公務員だって言ってるけど、結局は正義の側なんです。そしてもう一人、しのぶっていう女性がいて、警視庁きっての才媛と言われた彼女がなぜか埋め立て地に島流しになってて、何につまずいたかっていうと”男”なんですね。男がつまずくのは女だし、女がつまずくのは男なんですよ。そういう、後藤としのぶと柘植の三角関係というか、メロドラマ的な要素を加えることで多少マイルドにするっていう。だからこれは、戦争の映画であると同時に、しのぶさんの映画でもあるわけです。そういう意味では、意図としても手段としても大人の映画になったんじゃないかな。

(「BSアニメギガ とことん押井守」より)

そして、そんな南雲しのぶを演じた声優の榊原良子さんも、本作のアフレコで大変苦労したようです(以下、榊原さんのコメントより)。

私はアフレコの前日まで、眠れないぐらいに悩んでたんです。特に、元恋人の柘植と何年振りかで出会うラストシーン。そこで交わされる会話が、全く”元恋人同士の会話”じゃないんですよ。「何なのこれ!?」って思わず言いたくなるような内容で(笑)。哲学を論じているみたいで「どうしたらいいんだろう?」と思って、台所の床に尻もちをついて、前にある食器棚のガラス戸を見ながら、タバコをふかして一生懸命考えたんです(笑)。自然にこのセリフが出て来るにはどうやって自分の中に取り込んでいったらいいんだろう?と真剣に悩みました。

(「機動警察パトレイバー2 the Movie サウンドリニューアル版」の特典ブックレットより)

榊原さんは押井監督と何度も話し合いを重ね、どうにかアフレコは完了したものの、自分の演技については納得していなかったらしく、数年後にサウンドリニューアル版の収録で録音し直した際、しのぶの話し方や雰囲気などを変えて演じたそうです(聞き比べてみるのも面白いかも)。

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

こうして『機動警察パトレイバー2 the Movie』は完成し、1993年に全国の劇場で公開されました。結果は、配給収入1億8千万円で大ヒットとは言えないものの、観た人の評価は高く(特に押井守ファンの評価が非常に高く)、後に発売されたビデオやLDも売れてプロデューサーは一安心。

また、滅多に他人の作品を褒めない宮崎駿監督も『パト2』を観て、「とても見応えがあった。まず映像的に感心した。こういうジャンルで押井さんと競合するのは絶対にやめようと思った」「語り口の巧みさという点でも本当に抜きん出ていたと思う」とベタ褒め(柘植に関しては文句を言ってましたがw)。

さらに、海外の映画関係者の間でも話題となり、ジェームズ・キャメロンギレルモ・デル・トロなど有名な監督たちが大絶賛!特にジェームズ・キャメロンは『トゥルーライズ』を作る際に『パトレイバー2』のワンシーンを参考にするなど、様々なクリエイターに影響を与えました。

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

というわけで『機動警察パトレイバー2 the Movie』は、1作目とは内容もイメージも全く異なる映画に仕上がったものの、どちらの作品も非常に完成度が高く、いまだに多くのファンから愛されているのは素晴らしいことだと思います。

なお、『パト2』を作り終えた感想を聞かれた押井守監督は、「自分の思い通りの映画が作れたので満足している」「でっかいウンコを全て出し切った感じでスッキリした」と答えたそうです(^.^)