ひたすら映画を観まくるブログ

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岡田准一のアクション指導がガチすぎる件

V6の『愛なんだ 2019』 岡田准一

V6の『愛なんだ 2019』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて先日、V6が出演する『愛なんだ 2019』という番組が放送されたのですが、SNS等では「高校生に対する岡田准一の指導がガチすぎてヤバい!」と話題になりました。

問題のシーンは、とある高校のアトラクション部の「男子部員が少ない」という悩みを解決するために、V6の三宅くんと岡田くんが高校へ潜入する場面。

”アトラクション部”とは、部員たちがオリジナルの特撮ヒーローに扮して様々なアクションを披露することが主な活動内容なんですが、3年生が引退すると男子が3人しかいなくなり、部の存続に関わる大ピンチに!

そこで、彼らを救うためにV6の二人が協力し、「男子が憧れるようなカッコいい映像を作って部員を増やそう」ということになったわけです(いい話だw)。

しかし「まあ相手は高校生だし、そんなに本格的なアクションはやらないだろうな」と思いきや、いきなり岡田くんの本気モードが炸裂!

なにしろ岡田准一と言えば、人気アイドルグループ・V6のメンバーでありながらアクションの練習に打ち込んで日々体を鍛え、カリとジークンドーのインストラクター資格まで習得してしまうほどの格闘技好きですからね。

木村大作監督の時代劇散り椿に出演した際は、見事な刀さばきに木村監督も絶賛し、さらには自分でチャンバラシーンの動き(殺陣)を考えるなど、「主演」だけでなく「殺陣師」としても活躍しました。

散り椿

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また、岡田くんが主演を務めたアクション映画ザ・ファブルでは、マスクを被って顔が全く見えないにもかかわらず、スタントマンがやるような難しいアクションを自ら演じ、劇中のアクションも自分で考案したことからエンドクレジットでは「ファイトコレオグラファー」と表記されています。

そんなアクション大好き&格闘技大好きな岡田准一が高校生にアクションを指導するわけですから、思わずテンションが上がってしまったのでしょう。なんと、アクションの基礎を教える「岡田塾」を開講!

V6の『愛なんだ 2019』 岡田准一

V6の『愛なんだ 2019』より

まず、「アクションをやる上で大事なことは何か?」と生徒に問いかけ、以下の3つを説明しました。

1.ボディ・コントロール
2.相手との距離感
3.カメラ映り

「自分の体の位置、相手との距離をしっかり把握すること。そしてカメラから見て自分がどう映っているか。この3つのポジショニングがとても大事。そこを意識しながら練習できているかどうかがすごく大きい」と力説。

実際に動きを見せる時も、「自分の体がどの位置にあるのか、確実にイメージできていなければならない」「人間の体には、8の字に動く部分が2つある。1つは股関節。もう1つは胸。この2つを連動させることで運動神経がよく見える」などと実践的な解説が続きます。

しかし、あまりにも真剣に指導しすぎて、バラエティ番組なのに笑いは一切ありません(どうやら岡田くん、これがバラエティであることをすっかり忘れていたらしいw)。

でも、一度火がついた”格闘レッスン熱”は、おさまるどころかますます激しくディープになっていきます。「後ろ回し蹴り」の練習をやっている途中で、ムエタイの蹴りって知ってる?」と急にムエタイの説明を始める岡田准一

ムエタイがなんで最強かっていうと、ヒザを回す時、ローキックなのかミドルキックなのか、途中までの軌道が一緒だから分からないんだよ。それがムエタイの凄さで…」

などと夢中になって喋りまくる一方で、どうしていいか分からず呆然とした表情で立ち尽くす高校生たち。それを見て岡田くんが一言、「引いてる?」

V6の『愛なんだ 2019』 岡田准一

V6の『愛なんだ 2019』より

しかし、高校生をドン引きさせるような状況にも臆することなく「どんどんマニアックな技をやっていきます!」と開き直ったかのように自分の大好きな格闘技を伝授する岡田准一

「これはビクトル古賀先生という方が作った”ビクトルスロー”です」と言いながら自ら関節技を披露するものの、あまりにもアニアックすぎてもはや誰もついて来れません(笑)。

その様子を見て、さすがに岡田くんも「ダメですか?」と反省し、結局「選択ミスだった。この技はやめよう」と中止になってしまいました。

そんな感じで、岡田准一からガチ指導を受けた高校生たちは、3週間後の撮影開始まで自主練習に励み、撮影の1週間前に再び岡田くんと合流。

「カッコいい映像を作るためには大勢の協力が必要です。そこで、日本を代表するアクション監督、下村勇二さんに来てもらいました」と紹介されて下村監督が登場。

下村勇二と言えば、『GANTZ』や『アイアムアヒーロー』や『キングダム』など様々な映画でアクションシーンの演出を担当し、岡田くんとは図書館戦争と続編の『THE LAST MISSION』でタッグを組んでいます。

他にも多くの撮影スタッフが集結し、いよいよ本番に向けての最終段階へ突入!そして岡田くんは、皆に向かって”アクションの心構え”を語りかけました。

「アクションをやるということは、攻撃1つ1つを単なる暴力で終わらせるのではなく、芸術まで高めないと観客は見てくれないしスゲェって思ってくれない」

「そこまでの自分の行動に、一手一手にどれだけ責任を持てるか、それが大事なんだ」

その後、アトラクション部の部員たちは下村監督からみっちりとアクションの手ほどきを受け、厳しい練習は本番ギリギリまで続けられました。

そして、ついに迎えた撮影当日。ロケ現場は廃校となった建物を丸ごと貸し切り、アクション監督は下村勇二、襲ってくる敵役は全員プロのスタントマンという豪華さ!

最初のシーンは、「主人公が武器を持った複数の敵を次々と倒していく」というアクションです。テイク1は割と上手くできているように見えたのですが、別室でモニターをチェックしていた岡田くんは不満顔。

V6の『愛なんだ 2019』 岡田准一

V6の『愛なんだ 2019』より

すぐに部屋を飛び出して、「あまり型にとらわれない方がいいよ。型にとらわれすぎて体の動きを綺麗にっていうより、一番気を付けなきゃいけないのはカメラに自分がどう映っているか?ってこと。カメラがどこにいるのかも意識して芝居するのがベストだから」とアドバイスしました。

確かに、テイク1の映像を見ると、敵に攻撃を加えた後の主人公の動きが大きすぎてカメラのフレームから外れてしまい、ほとんど姿が映っていません。これではNGです。

そこでテイク2を撮ることになったのですが、今度は逆にカメラを意識しすぎて動きが小さくなってしまいました。すかさず「もう1回!」と叫ぶ岡田くん。ただしコレ、素人の高校生にはなかなか難しいんじゃないのかな~?と思うんですよね。

なぜなら、プロの役者さんでもアクションをやる時はカメラのフレームから外れる失敗が多く、最初から出来る人は少ないからです。

映画関ヶ原を撮った原田眞人監督によると、「岡田准一はどんなに激しく動いても必ず画面内に自分の姿を収めてくる。常に画角やフレームを意識しているからこそ成せる技で、普通はできない。まさに天才肌の役者だ」と見事なアクションセンスを絶賛していました。

関ヶ原

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つまり「岡田くんが簡単にやってるから他の人も出来るだろう」ってことでは全くないわけで、そんな”天才”と同等の動きを高校生に要求するのは、ちょっとハードルが高すぎるのでは?と思ったんですが、やはり「アクションに対するこだわり」なんでしょうねえ。

その後、現場ではテイク3、テイク4、テイク5…と同じシーンの撮影を何度も繰り返すものの、なかなか岡田くんからOKが出ません。う~ん厳しい!

アクション監督の下村さんも「彼は一生懸命やってるんですよ。いっぱいいっぱいだと思います」と擁護しますが、「もう1回だけ…」と粘る岡田くん。しかし「あと1回!」「これでラスト!」と言いながら何度も何度もリテイクを重ねるうちに、とうとうテイク15になってしまいました。

たぶんスタッフも、まさか高校の部活の「新人勧誘ビデオ」にここまで本気になるとは思ってなかったんでしょう。「まだやるの…?」「いったい何テイクまで続けるんだよ…」みたいな空気が漂い始め、さすがの下村監督も「OKラインをどこかで決めないと終わらないよ!」と若干キレ気味に(まだ撮影の1カット目なのにこんなに粘られたら、そりゃキレるよw)。

V6の『愛なんだ 2019』 岡田准一

V6の『愛なんだ 2019』より

でも、岡田くんは「せっかく皆で1ヵ月近く頑張って練習を続けてアクションも上達したんだから、いい作品にしてあげたい。そのためには妥協したくない」と考えているようで、部員たちも同じ思いでした。

そして、ついにテイク20でアクションが完璧に決まり、動きもカメラのフレームにバッチリ収まっています。「よし、いいぞ!オッケー!」と岡田くんも納得する映像が撮れ、ようやく1カット目が終了(笑)。

しかし、これで終わりではありません。まだまだ撮らなければならないシーンが大量に残っているのです。「急いで次のカットの準備を!」と焦りまくる下村監督。

そんな下村監督の焦りを無視して、その後も一人一人に対する岡田准一の熱心なレクチャーは続き、アクションにこだわりすぎてメチャクチャ時間がかかった(丸2日間!)ものの、どうにか全ての撮影が終わりました。

こうして完成した映像はどのシーンも非常に迫力があってカッコよく、「高校生でもこんなに凄いアクションが撮れるのか!」と驚くほど見事な出来栄えです。素晴らしい!

V6の『愛なんだ 2019』 岡田准一

V6の『愛なんだ 2019』より

なお、ロケ中に岡田くんは高校生たちに以下のようなアドバイスを伝えていたそうです。

「一番大事なのは”感情”なんだよ。アクションをやっている時、その役の感情や気持ちをどれだけ動きに乗せられるか?」

「気持ちが乗っていれば、どんな殺陣でも違いが出せる。どんなに技術が拙くても、気持ちが入ってさえいれば、人の心を打つようなアクションになるんだよ」

う~ん、なんて真面目なんだ(笑)。岡田准一のアクションに対する熱意はまさにホンモノで、だからこそ本格的なアクション映画に出演して欲しいんだけど、「日本は現代アクションの作品が少ないので、なかなかオファーが来ない」と嘆いているようです。実にもったいない!どうか岡田くんのためにもっとアクション映画を作ってあげてください!

 

ザ・ファブル

なぜ日本の実写SF映画はメジャーになれないのか?

戦国自衛隊

映画『戦国自衛隊』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

先日、SNS上で「なぜ日本のSFは滅びたのか?」というツイートが話題になり、「面倒なSFオタクが文句ばかり言ってるからだよ!」とか、「そもそも日本のSFは滅んでなんかいないぞ!」など様々な意見が飛び交いました。

事の発端は『彼方のアストラ』というアニメのレビューに投稿された「批判的な意見」がきっかけだったようです。

その内容は「SF好きは見ない方がいい」「目が腐る」「科学もセンスオブワンダーもなかった」などで、要するに「こんなものはSFとして認められん!」的なツッコミをもの凄い長文で書きまくってたんですよ。

このレビューに対して、「こういう面倒くさいことを言う人がいるから、日本のSFは滅びたんだよ」と苦言を呈す人が現れ、さらにその発言に対し「ちょっと待て!日本のSFが滅びたなんて誰が決めたんだ?」「日本には今でもSFはあるぞ!」などの反論が噴出し、あーだこーだの激論になった…というわけです。

そして、ついには『彼方のアストラ』の作者本人までが参入し、「件のレビューの言いたいことは正しい」「その一方で僕は全ての項目に反論もできる」などとコメントする事態となってしまいました。

彼方のアストラ

まあ個人的には、『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』はSFだと思ってるし、どちらかといえば「細けえことはいいんだよ!」派なので、「あの作品はSFか否か?」みたいな議論は正直どうでもいいんですけどね(笑)。

基本的に日本のSFは、主に小説や漫画やアニメの分野で発展したと思っています。特にアニメにおける普及度たるやすさまじく、『攻殻機動隊』や『AKIRA』などが海外でヒットしたことを含めて世界的にも高く評価され、今や「日本を代表する優良コンテンツ」と呼んでも過言ではないでしょう(たぶん「日本のSFは衰退した!」とか言ってる人たちにとって漫画やアニメは対象外なんだと思う)。

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SF映画”というのは基本的に舶来ものなので、外国の役者やコスチュームや特撮や音楽、さらには”英語である”ことまで含め、全部がワンセットで成立している。日本映画に特有のジャンルがあるように、アメリカ映画にも特有のジャンルがある。日本人にとって、西部劇ができないのと同じぐらいSF映画は難しい。

この押井監督の意見は、たしかに一理あると思います。ただ、「近未来SF」や「宇宙を舞台にしたSF」などはそうかもしれませんが、”SF”にも色んな種類があるわけで、一概に「日本で実写のSF映画は成立しない」とは言えないんじゃないのかな?と。

例えば、地質学者たちから綿密な科学考証を得て、大規模災害をリアルにシミュレーションして見せた『日本沈没』などは、まさに日本を舞台にした、日本人でなければ成立しないパニックSF映画でしょう。

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ここ最近の、実写日本映画における人気ジャンルといえば、圧倒的にラブ・ストーリーが多数を占めています(ラブコメ含む)。もう、「なぜこんなに恋愛映画を作る必要があるんだ!?」と困惑するぐらいの勢いですよ。

その次に多いのが、「主人公の身近な人が重い病気にかかって…」等の、いわゆる「難病もの」ですね(恋愛要素が入る場合もあり)。

その他、「親子の絆」とか「兄弟愛」みたいなものを描いた「人情ドラマ」や、「コメディ映画」、「学園ドラマ」、「サスペンス」、「ホラー」など様々なジャンルが存在する中で、「SF」というジャンルは……ほぼ見当たりません。

もちろん、単発では作られてるんですよ。後は低予算のB級映画とか。それでも少ない。『シン・ゴジラ』のような「怪獣映画」を「SF映画」としてカウントしたがる人もいますけど、SF映画を作ろう!」という明確な意図を持って作られた”純然たるSF映画はほぼ皆無です。

つまり、日本の実写映画における”SFというジャンル”は完全にマイナーな存在であり、ハッキリ言ってジャンルそのものがもはや絶滅状態に近い。

なぜこうなってしまったのか?というと、もちろん予算的な問題も大きいですが、一番の理由は「需要がないから」です。

SF映画を観たい」という観客が大勢いれば、映画会社も少々製作費が高くてもSF映画を作ろうとするでしょう。しかし、残念ながら日本の観客は「日本製のSF映画」にあまり興味がないらしい(というより「アメリカのSFに勝てるはずがない」「SFは海外製で十分」みたいな認識なのかもしれません)。

こういう傾向はSFに限らず、「アクション映画」にも同じことが言えます。海外でも活躍している某アクション監督によると「日本ではアクションものの作品を支えるだけの需要自体が少ない。香港映画などのアクション先進国では(女性も含めて)観客の目も肥えているし、作り手たちのレベルもおのずと上がっていくだけの基盤がある、しかし日本では、肉体を駆使したアクションが好きな人たちはそう多くない。アクション映画を作ってもあまり観客が来ないとなれば、自然と先細りになっていくだろう」とのこと。

最近、『ザ・ファブル』で見事なアクションを披露した岡田准一さんも「『SP』を撮った後に”アクション映画のオファーが来るかな?”と思って期待してたんだけど、全然来なかった(笑)。日本ではアクション映画が少ないですからね」と嘆いていたそうです。

SF映画は、そんなアクション映画よりもさらに状況が悪いのでSFファンは泣くしかない…っていうより、そもそもSFファンは日本の実写SF映画なんかに期待すらしてないのかもしれませんが(苦笑)。

そんなわけで、「日本のSFは滅びたのか?」という議論について個人的には「小説・漫画・アニメなどの分野で日本のSFは目覚ましい発展を遂げているが、実写SF映画に関しては相変わらずマイナーな存在で残念」という見解です。

いや、SFマニアが納得するような、ガチガチにハードな本格SF映画じゃなくてもいいんですよ。設定としてSF要素が入っている程度の「なんちゃってSF」でも僕は全然構いません。何らかのSF的な見どころ(ガジェットとか衣装デザインとかCGとか特撮など)が含まれてさえいれば、それでいいんです。

そういう作品が1年に1本、あるいは2年に1本ぐらいの割合でコンスタントに公開されれば、一般の観客にも”実写SF”というジャンルが徐々に浸透していくのでは…と思ってるんですけどねえ。

なお、ジャンルとしての実写SFは依然として厳しい状況ではあるものの、個別の作品に関しては(過去から現在に至るまで)優れた映画がいくつもあるので、機会があればご紹介したいと思います。

『天空の城ラピュタ』 「ムスカは弾丸を撃ち尽くしていたのか?」という疑問を検証してみた

天空の城ラピュタ

映画『天空の城ラピュタ』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

先日、金曜ロードSHOW!宮崎駿監督の天空の城ラピュタが放送され、なんと17回目の放送にもかかわらず14・5%という安定した視聴率を記録し、根強い人気を見せつけました。

SNS上でも相変わらず盛り上がっていたようで、クライマックスで皆が一斉に「バルス!」と書き込む、通称”バルス祭り”が今回も実施され、「バルス」が世界トレンド1位を獲得したそうです。

さてそんな中、気になるツイートを見つけました。

劇中でムスカは「シータと話をしたい」というパズーの頼みを聞き入れ、「3分間待ってやる!」と許可するんですが、その後、持っていた銃の弾丸を入れ替えるシーンが映るため、「弾を全て撃ち尽くしていたから再装填の時間稼ぎで”待ってやる”と言ったのか」と思っていたんですね。

ところが…

なんと、「ムスカが持っている銃は装弾数が6発のリボルバーだが、劇中では5発しか発砲していない。つまりシリンダーにはあと1発残っており、ムスカは弾丸を撃ち尽くしてはいなかったのだ」ってことらしいのですよ。

えええ~!?マジですか!?弾切れだと思ってたんだけどなぁ。というわけで、本日は色々気になるこの件を検証してみたいと思います。まず、ムスカの銃は本当に装弾数が6発なのか?」について。

ご存知のように『天空の城ラピュタ』は架空の世界が舞台ですから、使われている武器も現実世界のものと完全に一致しているとは限りません。

装弾数が5発の拳銃だって存在するし(日本の警察官が使用しているニューナンブも5発)、「最初から5発しか入っていなかった可能性」もあるわけですよ。なので『ラピュタ』の設定資料を確認してみました。それがこちらです↓

天空の城ラピュタ

ロマンアルバム天空の城ラピュタ』より

う~ん、これを見ると「口径:380 作動:ダブルアクション&シングルアクション 装弾数:6発」となっていて、ほぼ実在するエンフィールド・リボルバーNo.2と同じですね(ちなみに宮崎駿監督はこの銃が気に入っているらしく、『紅の豚』や『ハウルの動く城』など、他の作品にも登場している)。

さて、ムスカの銃が6連発であることは分かりましたが、では実際に6発の弾丸が装填されていたのでしょうか?もしかして、5発しか入っていなかったのでは?…ということが気になったので、排莢するシーンを確認してみました。

天空の城ラピュタ

映画『天空の城ラピュタ』より

おお~、ちゃんと6発の薬莢が描かれてる!もし1発撃ち残しがあるなら、このうちの1つには弾頭がついているはずですが、さすがにそこまでは確認できませんね(笑)。

次にムスカは本当に5発しか撃っていないのか?」について。これも実際に映像を見ながら確認してみましょう。

 

●1発目:パズーに向かって撃つ

天空の城ラピュタ

映画『天空の城ラピュタ』より

●2発目:パズーが走っている時に銃声が聞こえる

天空の城ラピュタ

映画『天空の城ラピュタ』より

●3発目:「王座の間」に入った時に撃つ

天空の城ラピュタ

映画『天空の城ラピュタ』より

●4発目:シータの左のおさげ髪を撃つ

天空の城ラピュタ

映画『天空の城ラピュタ』より

●5発目:シータの右のおさげ髪を撃つ

天空の城ラピュタ

映画『天空の城ラピュタ』より

数えてみると、確かに5発しか撃ってませんねぇ。ということはやはり、ムスカの銃にはあと1発弾丸が残っていたのでしょうか…?

だがしかし!

宮崎駿監督が描いた絵コンテを見ると、ムスカが装弾する場面で「実はもう弾丸が無かった」とハッキリ書いてあるんですよ。

天空の城ラピュタ

天空の城ラピュタ』絵コンテより

絵コンテの役割は、アニメーターやスタッフたちに「このシーンではどんなことが行われているのか」を明確に指示するためのものなので、意味のないことは書きません。

しかもこのシーンの場合、「ムスカ装弾する」とだけ書いてあれば十分に意図が伝わるのに、なぜわざわざ「実はもう弾丸が無かった」などと書いたのでしょうか?

ここからは僕の推測になりますが、もしかすると宮崎監督は「弾切れだった」と示すことでムスカのキャラクター”を表現したかったのかもしれません。

「王座の間」に入って3発撃った後、恐らくムスカは自分の銃が弾切れになったことに気付いていたのでしょう。なので、この時点で素早くリロードすることも可能だったはずです(シータから距離が離れているので反撃される危険性も少ない)。

しかし、「待てよ。すぐにパズーがここへやって来るな…」と考えました。そこでムスカは何をしたか?銃の撃鉄(ハンマー)を「カチッ」と上げたのです(絵コンテにも指示有り)。

天空の城ラピュタ

天空の城ラピュタ』絵コンテより

「銃を撃つ前にハンマーを上げるのは当たり前なんじゃないの?」と思っている人が多いかもしれませんが、実はそうではありません。

エンフィールド・リボルバーNo.2は”ダブルアクション”という機能を持っていて、いちいちハンマーを上げなければ弾丸を発射できない”シングルアクション”とは異なり、引き金(トリガー)を引くだけでハンマーが起き上がり、そのまま引き切ることで発砲できる仕様なのです。

実際、シータを撃つシーンでもムスカはハンマーを上げずに、そのまま次の弾を撃っていました。にもかかわらず、パズーがやって来る直前に限ってわざとハンマーを上げているのです。いったいなぜか?

実はここがムスカの巧妙なところで、パズーが自分に銃を向けることを予想していたムスカは、敢えてハンマーを上げた状態でシータに銃を向け、「お前より私の方が速いぞ!」と”優位性”をアピールしていたのです。

なぜなら、ダブルアクションの状態で撃つよりも、ハンマーを上げた状態(シングルアクション)で撃った方がトリガーのストロークが短いので素早く、しかも確実に弾丸を発射できるからです(銃身もブレにくい)。

宮崎駿監督は、ムスカというやつは自分の銃に弾丸が無いとわかっている状態でも、ここまで冷静沈着にハッタリをかますことができるほど計算高くて狡猾な男なのだ」というキャラクター性を強調するために、わざわざ「実はもう弾丸が無かった」と絵コンテに書いたのでしょう。

さらに言うと、パズーの方も2発しかない弾丸を撃ち尽くして弾切れの状態でした。もちろんムスカはそのことを知りませんが、「パズーは撃ってこない」という確信があったからこそ、「シータと話がしたい」とパズーが要求した時に「(そう言うと思った)」みたいな顔をしながら「3分間待ってやる」と言ったのではないかと(実際は1分ぐらいしか待ってませんがw)。

つまり、このシーンは単純に「銃で撃つぞ!」と脅しているだけではなく、「弾の出ない銃を持った二人の男が、それを悟られないように互いに相手を牽制し合う」という、非常に高度な駆け引き(?)が繰り広げられている様子を表現していたのですよ。

ただ、仮にそうだとすれば「じゃあムスカはどこでもう1発の弾丸を撃ったんだ?」という疑問が残りますよね。そう考えた時、気になるシーンが一つありました。「図2」を見てください。

天空の城ラピュタ

映画『天空の城ラピュタ』より

ここでは、パズーがムスカとシータを追いかけて通路を走っている、まさにその時にどこかで「ガーン!」と銃声が鳴っています。つまり、パズーも観客も見ていない場面でムスカは発砲しているのですよ。

ということは、同じように「パズーも観客も見ていない場面で発砲する」という状況が他にもあったんじゃないだろうか?と。では、いったいそれはどこなのか?

可能性があるとすれば図1から図3の間ですが、もしムスカがシータを追いかけている時に撃ったのなら、パズーにも観客にも銃声が聞こえるはずだしなぁ…。

などと考えていると、1ヵ所だけ聞こえない場面があることに気付きました。それは、パズー自身が発砲した瞬間です。

パズーはムスカに撃たれた後、壁に穴をあけるために”大砲”を撃ちますが、「ドーン!」という大きな衝撃音を響かせているため、この瞬間にムスカが発砲したとしても、その音が聞こえなかった可能性が高いのですよ。

天空の城ラピュタ

映画『天空の城ラピュタ』より

つまり、ムスカはここで6発目(順番的には2発目)の弾丸を撃ったのではないか…?というのが僕の推測です。

もちろん、単純に「宮崎監督が数え間違えただけ(本当は6発撃たせるつもりだったが1発描き忘れた)」という可能性も否定できません。

しかし、エンフィールドNo.2を他の作品に出すほど銃に詳しく、「実はもう弾丸が無かった」とわざわざ絵コンテに書くほど残弾数にこだわっている人が、そんな単純ミスをするとはちょっと考えにくいんですよねぇ。

なので、個人的にはムスカは弾切れの銃で堂々とハッタリをかましていた説」を支持したいと思います(^.^)

 

※追記
ムスカの発砲数について、「元々は6発撃っていたけれど、編集時に尺の都合で発砲シーンを1ヵ所カットしたのでは?」というコメントをいただきました。

確かに『天空の城ラピュタ』には上映時間を短くするためにカットされたシーンがあります。それはゴンドアの谷にいるシータのところへ、ムスカとその部下たち3人が歩いてくるシーンです(Cutナンバー422)。

天空の城ラピュタ

天空の城ラピュタ』絵コンテより

これは、地下の廃坑でパズーとシータが食事(目玉焼き+パン)をしている時に、シータが自分の過去を語る場面なのですが、背景も作画も描き終えフィルムとしてすでに完成している状態でした。

にもかかわらず、映画会社や映像ソフト会社などから「上映時間を2時間以内に収めて欲しい」という要望が宮崎監督のもとに多数寄せられ、仕方なくカットしたそうです。

実は『天空の城ラピュタ』が公開された1980年代当時、最新のメディアとしてレーザーディスク(LD)が登場し、様々な映画やアニメ作品がLD化されていました。

ところが、LDの容量は(CLV方式の場合)1枚につき最大で2時間しかなかったため、2時間を超える映画はディスクが2枚組となり、販売価格も上がってしまう。そのためメーカー側は「何とか2時間以内で!」と強く要望していたそうです。

しかし、宮崎監督は「”切れ切れ”と簡単に言うが、これ以上カットしたら映画がダメになってしまう」と頑なに抵抗し続け、「ナンバー422」以外のシーンは一切カットせず、最終的に『天空の城ラピュタ』は総尺数2時間4分4秒で公開されました。

というわけで、「カットされた場面はこれ以外に存在しない」と記録にも残っている以上、「編集時に発砲シーンをカットしたんじゃないの?」という意見については「恐らくそういうことは無かっただろう」と思います。

 

君をのせて(天空の城ラピュタ)

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