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どうして日本の映画は貧乏なのか?という話

どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。
先日、こういうツイートが話題になっていたので読んでみました。↓

邦画の平均的製作費は1本当たり3.5億円。マッドマックス3分作れない

ざっくり言うと、映画監督の園子温さんが「アメリカや中国の自主制作映画の平均予算は1億円以上。それに対して日本は、商業映画ですらその半額以下。ケタ違いに予算が少ない」とツイートしたことに端を発し、「何でこんなに日本映画は貧乏なの?」と様々な議論が展開された、という内容です。


この件に関して映画評論家の町山智浩さんは、「『マッドマックス 怒りのデスロード』の3分当たりの製作費は約4億円。邦画の平均的製作費は3.5億円。つまり『怒りのデスロード』のわずか3分にも足りない」と日本映画の低予算ぶりを嘆いていますが、「3.5億円」というのはあくまでも平均値であるため、実際はこれよりももっと安い予算で映画を作っている人たちもいるはずです。

もちろん、「製作費が多ければいいというものではない」「少ない予算でも良い映画は作れるはずだ」という考え方もあるでしょう。しかし、園子温さんのような現役の映画監督がこういうコメントをつぶやくこと自体が異例であり、今の日本映画界の厳しい状況を如実に表しているような気がしてなりません。では、そもそもどうして邦画はこんなにお金が少ないのでしょうか?


●日本映画の製作費事情
かつて邦画が活況を呈していた80年〜90年代頃は、『天と地と』(50億円)や『敦煌』(45億円)など、バブリーな超大作映画がいくつか作られていました。その結果「そこそこのヒット」はしたものの、「大儲け」と呼ぶには程遠い成績に終わってしまいます。いったいなぜか?

それは、「興行収入」の内訳に理由があるからです。仮に50億円の費用を掛けて映画を作り、50億円の興行収入があったと仮定しましょう(かなりの大ヒット)。しかし製作費と収益が同じだからといって、”プラスマイナスゼロ”とはなりません。

まず、50億円の興収の内、約半分が映画館の取り分となります。残りの25億円の内、約40%(作品に応じて変動あり)が宣伝費・プリント代として差し引かれ、残りは15億円。さらにここから配給会社が手数料として約30%を徴収します(これもケースバイケース)。結局、映画の制作会社に残るお金は、10億5000万円にしかならないのですよ。

50億円の予算を投じて、儲けは(単純計算で)10億5000万円。これでは、たとえ大ヒットしたとしても上映分だけでは完全な赤字で、テレビの放映権やDVDの売り上げなどの「2次使用料」を加えてもペイできるかどうか?という厳しい状況になってしまうわけです。


●予算の決め方
このような前提を踏まえ、映画の製作費は「作品に投下された資本と人的エネルギーなどの回収効率」から設定されることになります。例えば、全国で同時公開する作品なら、100万人の動員で興行収入の目安はおよそ14億〜15億円。

15億円と言えばそこそこのヒットですが、これに先ほどの計算式を当てはめてペイラインを逆算すると、だいたい3億円程度の予算なら赤字にはならないだろう、ということが分かります(このような判断から、日本映画の製作費は3億円前後のボリュームが最も多くなっているらしい)。

「だったら興収の目標値をもっと上げればいいんじゃないの?」という意見もあるでしょう。しかし、日本で公開される映画の興収には”上限”があるため、あまり極端な数値には設定できないのですよ。例えば、去年公開された邦画作品の成績を見てみると、1位が『妖怪ウォッチ』、2位が『バケモノの子』、3位にようやく実写映画の『HERO』が入っています。


(「日本映画製作者連盟」より)

『HERO』の興収は46.7億円でかなりの大ヒットですが、これでも掛けられる予算はせいぜい10億円ぐらい(実際の予算は分かりませんけど)。つまり、50億円を超えるようなメガヒットは滅多に出ないため、必然的に予算の上限が決まってしまう…というわけです。


●なぜ国内市場限定なのか?
一方、貧乏な邦画に対してハリウッド映画は100億円を超える巨額の予算を実現しているわけですが、それはもちろん海外の市場を見込んでいるからであって、実際、アメリカ国内では赤字でも、海外の収益でプラスになった作品も少なくありません。

ではなぜ、邦画も海外を目指さないのか?というと(言語の問題等もありますが)、そもそも日本のマーケットが大きすぎるからなんです。日本の映画興行収入は世界的に見ても極めて巨大で、かつてはアメリカに次いで世界第2位の市場規模を誇っていました(今は中国に抜かれている)。そのため、無理に日本映画を海外に販売しなくても、国内でヒットすればそれだけで十分にビジネスとして成り立ってしまうのですよ。

極端な話、日本人に馴染みのあるイケメン俳優や人気アイドルや有名タレントばかりをキャスティングし、日本の観客が喜びそうなシナリオを適当に書き上げ、2〜3億円程度の安い予算で作って公開すれば、それだけで結構な収益が見込めるし、上手くいけば大儲けできる可能性すらあるわけです。

そうなると、「海外で認められるような日本映画を作ろう」なんて誰も考えないし、逆にどんどん日本人向けに特化した、ある種”ガラパゴス的な映画”が量産されていったと。その結果、外国人の目から見て「最近の日本映画はつまらない」と批判されるようになってしまったのでしょう。

「邦画のレベルは本当に低い!」 英国配給会社代表が日本映画に苦言


●大きな予算を確保するには
ただ僕個人は、日本映画の全てがつまらないとは思っていないし、邦画が発展する可能性もまだ十分にあると考えています。例えば、最近公開された『アイアムアヒーロー』などは、企画の段階から海外市場を意識し、そのために(邦画としては)巨大な予算を確保して、外国の人も楽しめるような内容を目指して作られました。

その結果、ジャンル映画の祭典として知られるシッチェス・カタロニア国際映画祭で観客賞&最優秀特殊効果賞を受賞した他、世界各国の映画祭で様々な賞を獲得する快挙を成し遂げたのです。もし、従来通りの方法論で作られていたら、ここまでの成果は得られなかったでしょう。

『アイアムアヒーロー』世界三大ファンタスティック映画祭制覇!

つまり、日本映画も海外のマーケットを視野に入れた映画作りにシフトすれば、大きな予算を確保することも不可能ではないわけです(さすがにハリウッド映画には及びませんが)。日本の市場が将来的にどんどん縮小していくことを考えると、海外の観客にも受け入れられる映画作りは、今後の重要な課題の一つと言えるのではないでしょうか。

アイアムアヒーロー

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