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『アーヤと魔女』は面白い?つまらない?(ネタバレ解説)

宮崎吾朗監督『アーヤと魔女』

宮崎吾朗監督『アーヤと魔女』


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さて先月、8月27日に宮崎吾朗監督の最新作『アーヤと魔女』が公開されました。

映画『アーヤと魔女』は、『ハウルの動く城』の原作者として知られるダイアナ・ウィン・ジョーンズの児童小説をベースに作られ、魔女の家で暮らすことになった孤児アーヤの生活を描いたアニメーション作品です。

宮崎吾朗監督にとっては2011年の『コクリコ坂から』以来、10年ぶりの劇場アニメ(ただし元々はNHKで放送された番組)ということでファンからも期待されていた本作ですが、残念ながら状況はあまり芳しくないようですねぇ。

『アーヤと魔女』のオープニング興行収入は5800万円で初登場8位スタート。公開3日間で累計7400万円、観客動員数は5万6000人を記録しました。

これがどれぐらいの成績なのか、いまいちピンと来ないかもしれませんが、例えば吾朗さんの初監督作品ゲド戦記の場合、初登場時のランキングは第1位で初日2日間の興行収入は約9億円、観客動員数は約67万人という”堂々たる大ヒット”でした(最終的な興収はなんと78億円!)。

また、劇場2作目となるコクリコ坂からの初登場時のランキングは第3位、公開初日の3日間で興収は約6億円、観客動員数は約45万人を記録しています(最終的な興収は45億円でまたもや大ヒット)。これらに比べると『アーヤと魔女』は…

まあ今回はコロナ禍ということもあり単純に比較はできませんが、それでも『コクリコ坂から』の10分の1程度という低い数字はさすがに看過しがたく、さらに370館以上もの上映館数を考えると”爆死状態”と言っても過言ではありません。

ちなみに、同じく370館で公開されたワイルド・スピード ジェットブレイク』の場合は、土日2日間で興収5億5300万円、観客動員35万2000人を記録し初登場1位。

細田守監督の『竜とそばかすの姫』もほぼ同じくらいの公開規模ですが、土日2日間で興収6億8000万円、観客動員45万9000人という好成績を叩き出し、2位以下に大差をつけて初登場1位を飾りました。

こうして見てみると、『アーヤと魔女』の興行収入がいかに少ないかが分かるでしょう。当然ながら今年公開された映画(上映館が370館越えの作品)の中では現時点で最低の成績となり、ジブリの歴代興行収入でもワーストを記録したそうです。

さらに2週目以降も全く下げ止まる気配を見せず、9月5日までの累計興収は1億6000万円、観客動員数は13万3000人。ランキングの方は早くも”圏外”になってしまいました(わずか2週目で圏外まで落ちるとは…)。3週目も累計1億9000万円という低い数字は変わらず、関係者の間では「最終興収は3億円以下なんじゃ…?」と言われている模様。

宮崎吾朗監督『アーヤと魔女』

宮崎吾朗監督『アーヤと魔女』

このように、大ヒットとは程遠い状況の『アーヤと魔女』ですが、実際に観た人の評価はどうなのか?というと、これまた微妙な感じに…

「ストーリーがつまらない」「主人公に共感できない」「母親役の声優の演技がひどい」「ファンタジー要素が少なくて面白くない」「3DCGが普通すぎてジブリアニメの良さが全く出ていない」「終わり方が中途半端」など、辛辣な意見が数多く見受けられます。

一方、ポジティブな意見としては「ストーリーがシンプルで分かりやすい」「主人公のキャラクターが斬新」「映像がきれい」「音楽が素敵」「エンディングで映る手描きのイラストが良かった」など、一応褒めてはいるもののあまり内容と関係ないような…。

と思ったら、一人だけ絶賛している人がいました。それが宮崎吾朗監督のお父さん、宮崎駿監督です!

「試写を観たら面白かった」「吾朗はちょっと無理なんじゃないかと思ってたけど、思いのほか健闘してて」「大したもんですよ」「みんなの感想も良かったし」「面白いと単純に言えるのは良いことなんですよ、本当に」「元の作品が持っているエネルギーをちゃんと伝えてると思うんだよね」などと息子の作品を褒めまくり!

ゲド戦記』の時はボロカスに貶してたのに、今回はうって変わって大絶賛しているのです。あまりにも褒めすぎてて、ちょっと気持ち悪いぐらいですよ(「一体どうした、宮崎駿!?」とビックリしましたw)。

ちなみに、僕の個人的な感想としては「決してつまらなくはないけれど、特別に面白くもない」って感じでしたねぇ(宮崎駿さん、ごめんなさいw)。

今回スタジオジブリが初挑戦した3DCGは悪くなかったです。ただ、ディズニーやピクサーなど世界中で3DCGのアニメが作られている昨今、強豪ひしめく中で差別化を図るのはかなり難しいんじゃないでしょうか。

今の段階では「悪くない」という程度で、「ジブリの3DCGはディズニーやピクサーよりもこの部分が圧倒的に勝っている」みたいな”優位性”が見えづらいからです(ぶっちゃけ「普通じゃね?」と思ったしw)。

また、キャラクターに関しても主人公はそれまでのジブリヒロインには見られない”ズル賢さ”みたいな特徴があって面白かったんですが、他のキャラは割と類型的であまり魅力を感じません。

そしてストーリーの方も、「原作を忠実に再現したい」という思いは伝わって来るものの、「尻切れトンボ」的なラストシーンも含めてどうにも中途半端なんですよね。

このように、ストーリーも映像も非常に丁寧に作られているにもかかわらず、それが面白さに上手く繋がっていなくて、全体的に「可もなく不可もない雰囲気」が漂ってるんですよ。

一体なぜこうなってしまったのか?あくまでも想像ですが、本作に対する宮崎吾朗監督の「なるべく平穏にすませたいという姿勢」が関係しているのではないかと…

例えば「終わり方があっけない」という批判がありましたけど、これは原作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズさんが『アーヤと魔女』の出版後に亡くなってしまったことが影響しているためで、ほぼ原作通りなのです。

吾朗監督自身もインタビューで「原作を読むとストーリーが完結していない感じがあるけれど、無理に膨らまそうとすると別な作品になってしまうので…」と答えており、脚本を担当した丹羽圭子さんにも「原作に忠実に書いてくれ」と指示したらしい。

しかし、小説として書かれた原作とアニメーション作品とではメディアの表現形式が全く違うので、たとえ原作通りに作ったとしても面白いアニメーションになるとは限りません。

父の宮崎駿監督はそのことを十分に理解しているからこそ、同じダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの原作ハウルの動く城をアニメ化する際に自分なりの解釈を加え、設定やストーリーを大きく変更してみせたのです。

もちろん、それによって逆に原作の魅力が損なわれてしまうかもしれないし、「映画の出来が悪ければ原作ファンから非難される」というリスクだってあるでしょう(実際『ハウル』も「ワケが分からん」という批判が多かったし)。

でも、だからと言って「原作通りに作ればファンから怒られることはないんだし、そっちの方が無難だろう」みたいな気持ちで作った映画が(いや、吾朗監督はそんな気持ちで作ってないでしょうけど)、面白い作品になるとは思えません。

宮崎吾朗監督『アーヤと魔女』

宮崎吾朗監督『アーヤと魔女』

まあ、厳密に言うと全く変えてないわけじゃなくて、いくつか設定は変更してるんですけどね。例えば、原作ではアーヤの母親の背景があまり描写されていなかったため、「元ロックバンドのヴォーカル」という過去を付け加え、さらに「ベラ・ヤーガとマンドレークも同じバンドのメンバーだった」という設定にしたそうです。

この変更によってちょっと「面白くなりそうな雰囲気」は出てるんですよ。

ただ、宮崎吾朗監督はインタビューで「ストーリーを改変するのではなく、あくまでもキャラクターの背景を深掘りするため」と答えてるんですよね。だから、せっかく面白そうな設定を付け加えても、それがストーリーに活かされていないのです。その辺が残念でしたねぇ。

どうせなら、3人がバンドをやっていたエピソードをもっと膨らませて、そのことがアーヤの心情に何らかの影響を与える…みたいな展開にすれば、ドラマが変化してさらに面白い結末になったかもしれないのにもったいない!

おそらく吾朗さん的には「そこまで原作を変えたくない」と考えていたのでしょう。確かに、あまりにも変えすぎると別の物語になってしまうというのは分かるんですが、もしかすると”過去の経験”も影響しているんじゃないだろうか?と。

吾朗監督は以前、『ゲド戦記』のストーリーを大きく改変したことで原作者のアーシュラ・K・ル=グウィンさんから「これは私の『ゲド戦記』ではない。宮崎吾朗の映画だ」と言われた経験があるのです。

さらに「『となりのトトロ』のような繊細さも、『千と千尋の神隠し』のような豊かなディテールもない」「物語のつじつまも合ってない」などと厳しく批判されていました。

なので、吾朗監督の中に「あまり原作を変えすぎるのは良くない」という思いがあったのかもしれません。しかし、本人が「完結していない(中途半端だ)」と感じているものを、そのままアニメ化するってどうなのよ?と思うんですよね。「監督としてそれでいいのか?」と。ここはやはり、吾朗監督なりの解釈でキチンとした結末を描くべきだったんじゃないかなぁ。

宮崎吾朗監督『アーヤと魔女』

宮崎吾朗監督『アーヤと魔女』

ちなみに、アニメーション監督の押井守さん宮崎吾朗さんの過去の作品について以下のようにコメントしています。

吾朗くんにはフェティッシュが足りなさすぎる。そのせいで人間関係やその描写も、全てがサラッとしすぎちゃったんだよ。アニメーションの監督になるために必要不可欠な条件は”フェティッシュ”なの。フェティッシュなしに、画を動かして映画を作るなんて面倒くさい仕事、出来るわけないじゃない。アニメーションの監督には、もれなくフェティッシュがあるんだよ。

宮さんの場合はメカと美少女。でもそれは、宮さんに言わせれば劣情じゃなくて正当な美意識。そうやってリエーターの趣味嗜好や欲望がまんま出てしまうのがアニメーションなんだよ。沖浦(啓之)の場合で言えば足首の太い女の子だし、僕で言うと女性の手足が好きだから、ついそっちを描いてしまうとかだよね。だから、アニメーションはフェティッシュの形式とも言えるんですよ。

押井守著『誰も語らなかったジブリを語ろう』より)

なるほど、確かに言われてみれば宮崎吾朗監督の作品を観て”フェティッシュ”を感じることってほとんど無いんですよねぇ。

細田守監督の場合は”ショタ”とか”ケモナー”など、非常に分かりやすくフェチが丸出しになってるし(笑)、庵野秀明監督の場合は必ず特撮テイストを入れるなど、監督の多くが自作に趣味嗜好をブチ込んでくるものですが、吾朗監督だけそういう特徴が見えにくい。ちょっと珍しいですよね。

もし仮に、押井監督の言う通り「フェティッシュがアニメーションの監督になるために必要不可欠な条件」だとするならば、その辺が宮崎吾朗監督作品に対して「いまいち物足りない」「悪くはないが、特別に良くもない」と感じてしまう要因なのかもしれません。

 

アーヤと魔女 サウンドトラック

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庵野秀明と松本人志の初対談

『庵野秀明+松本人志 対談』

庵野秀明松本人志 対談』


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて、今月20日からAmazonプライムビデオにて庵野秀明松本人志 対談』という動画が配信されてるんですが、皆さんご存知でしょうか?

この動画はタイトル通り、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を作った庵野秀明さんと「ダウンタウン」の松本人志さんが初めて対談したドキュメンタリーです。

”意外”といえば意外な組み合わせですが、かたやアニメ業界、かたやお笑い業界で共に”天才”と称された二人ですから「一体どんな会話を交わすんだろう?」と興味が湧きますよねぇ。

ちなみに庵野さんは1960年生まれ、松本さんは1963年生まれで3歳ぐらいの年の差はあるものの、ほぼ同世代ということで子供の頃に見ていたTV番組などは割と一致しているらしい。

というわけで、本日は『庵野秀明松本人志 対談』を観た所感などをざっくり書いてみたいと思います(以下ネタバレしているので、未見の人はご注意ください)。

庵野秀明+松本人志 対談

プライム会員は追加料金なしで視聴できます

まず、松本さんが開口一番「僕は初対面の人と喋るのがメチャクチャ苦手で、ましてや相手が庵野さんですから、相当まずい状況ですよね」と話しかけると、「ええ、すぐに滞ると伝えてあります」と答える庵野さん(庵野さんも人見知りが激しそうだからなぁw)。

実際、序盤は会話もぎこちなくて、お互いに距離感を探りながら話しているのが丸わかりでしたが、話題が”アニメ”になると徐々にエンジンが回り始めます。

マジンガーZの最終回で、ズタボロにやられるマジンガーZを見てエロスを感じたんですよ」と語る松本さんに「ええ、そういうのよく分かります」「僕もウルトラマンがやられている場面とかにエロスを感じました」と即答で返す庵野さん(分かるのかw)。

 

一方、話題が”お笑い”になると「僕、あまりお笑い番組とか見ないんです」とややトーンダウン。「奥さんがお笑い大好きなので一緒に『M-1』とか見ることもありますが、人と笑いのツボが違うらしくてあまり笑えないんですね」とのこと(ただし年末の『笑ってはいけない』シリーズは見ているらしい)。

なお、松本さんが「子供の頃に『8時だヨ!全員集合』は見てました?」と訊ねると、「裏番組のキカイダーキューティーハニーを見ていたのでほとんど見てません」「だから月曜日に学校へ行くと友達と話が合わなくて…」とコメント。

この辺は「ああ、庵野さんらしいな」という感じで違和感がないですね(ちなみに『キューティーハニー』の前には『デビルマン』が放送されており、当時の子供たちはどっちを見るかで悩んでいた)。

 

そして仮面ライダーの話になると、ますます庵野さんのテンションがアップ!「『仮面ライダー』は最初の方の暗い雰囲気が好きでした」「2号ライダーが出て来て明るくなった話も好きなんですけど、雰囲気は旧1号ライダーの暗い感じが好きですね」と語りまくり(笑)。

松本さんが「ニセ仮面ライダーとかも凄かったですよねぇ」と問いかけると「6人しかいないのが残念でしたが、あれは面白かったですね」と答え、「今までやられた怪人たちが全員復活する展開も良かった」という話には「ただ、あっという間にやられるのが納得いかない」「なぜ再生怪人はこんなに弱いんだろう」と答える庵野さん(どんどんマニアックな話になっていくw)。

 

続いて話題はウルトラマンへと移りました。松本さんが「もちろんウルトラマンも好きだけど、俺はどちらかと言えばウルトラセブン派なのよ」と話し始め、「特に実相寺昭雄監督と(脚本家の)金城哲夫さんがタッグを組んだ回が秀逸ですよね?」と訊ねると庵野さんも「はい」と賛同(第8話「狙われた街」のこと)。

ここで松本さんが自らの特撮知識を披露しようとしたのか「僕気付いたんですけど、”キングジョー”っていう名前は金城さんから採ったんじゃないか」と持論を述べたところ、庵野さんが「…と言われていますが、実は本編では”ペダン星人の怪ロボット”としか言ってないんですよ」「後から雑誌などでキングジョーという名前が載るようになったんです」と細かく訂正。

それを聞いて松本さんは「そうだったんですか!?」「庵野さん詳しいですね~!」と感心していました(そりゃ、特撮の知識で庵野さんにかなうわけがないw)。ちなみにキングジョーの名前の由来は「金城さん」「金城さんの父のあだ名」「戦艦のキング・ジョージ」という3つの説があるそうです。

 

そしていよいよ『シン・ウルトラマンの話題になり、松本さんが「シン・ウルトラマンにはカラータイマーが無いそうですけど、”3分区切り”はもう無いってことですか?」と訊ねると、「実は『ウルトラマン』の本編では一度も制限時間が3分とは言ってないんですよ」「『帰ってきたウルトラマン』の第1話で初めて”ウルトラマンは3分しか戦えない”という設定が出てきたんです」と庵野さん。

それを聞いて、またしても「ええー!?」と松ちゃんビックリ(笑)。ちなみに、なぜカラータイマーを無くしたのかについては「ウルトラマンには元々カラータイマーが無く、後から付けたと聞いていたので本来の姿に戻したかったんです」とのこと。

さらに調子が乗ってきた庵野さんは「『ウルトラマン』で好きなエピソードはザラブ星人ですね(第18話「遊星から来た兄弟」)」「仕事で人類を滅ぼしに来たという設定が凄くいい」「ウルトラマンが”にせウルトラマン”にチョップした時、マスクの固い部分に当たって本当に痛がってるんですけど、その痛そうな動きが大好きなんです!」などマニアックな逸話を次々に披露すると松ちゃん大爆笑(笑)。

しかし、「バルタン星人と戦う時に、1回振り向いてからスペシウム光線を撃つのがいいんですよ」「あれはマスクの視界が限られていたため、指示がよく分からなくてチラッと監督の方を見たらその映像がそのまま使われたらしいのですが、ああいう”予定にはないアドリブ的な動き”が好きなんです」など細かすぎる特オタトークを続けていると、さすがの松ちゃんも呆れ顔に(たぶん「この人すげえな…」とか思ってるんだろうなぁw)。

 

その他、”映画作り”の話題ではお互いに苦労しているポイントを話し合ったり、庵野さんが「自分のやりたいことよりも”お客さんが喜ぶかどうか”を優先している」「出資者の意見は聞かなければならない」などと主張すると、松本さんが「真面目ですね~」と感心したり、様々な会話が繰り広げられました。

ただ、全体的な印象としては庵野さんも松本さんもお互いに気を遣っている様子が見受けられ、最後まで”突っ込んだ話”になり切れなかった気がするんですよね。特に松本さんはかなり遠慮している感じでほとんど自分のことは話さず、庵野さんの”聞き役”に回っている場面が多かったような…。

あと、松本さんのリアクション自体もいまいち噛み合ってないシーンがあったりしたので(緊張してた?)、もう少し話しやすい環境を設定していれば良かったんじゃないかな~と思いました(松本さん的には「この人の話を聞いた方が面白いな」と判断し、敢えて庵野さんに多く喋らせていたのかもしれませんが)。

というわけで、終始ギクシャクしたやり取りが続くなど若干残念な部分もあったんですけど、この二人が対談する機会は滅多にないので非常に貴重な映像であることは間違いないでしょう。とても面白かったです(^.^)

押井守監督のエピソードを色々書いてみた

押井守監督

押井守監督


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて、本日8月8日は映画監督の押井守さんの誕生日です(1951年生まれなので今年で70歳になるわけですね)。

押井監督といえば『攻殻機動隊』や『機動警察パトレイバー』などの監督として海外でもその名が知られ、当ブログも過去に何度か取り上げてるんですが、本日は誕生日ということもあり、改めて押井守さんについて書いてみたいと思います。


●映画に詳しい
まず押井監督を語る際に何から語るか?といえば、やはり「映画にメチャクチャ詳しい」という点でしょう(アニメの話なども最終的には全部これに絡んでくるのでw)。とにかく映画に関する蘊蓄や情報量が膨大なんですが、いったいどうしてそんなに詳しいのか?

子供の頃から父親に連れられて映画館に入り浸っていた押井さんは、大学生になると映画研究会に入って自主制作映画を撮るようになりますが、同時にありとあらゆる映画を観まくりました。その数、なんと年間で1000本!

今ならネット配信の見放題とか、映画を観る手段はたくさんありますが、当時(1970年代)はレンタルビデオすらない時代ですから1000本観るのは大変です。

そこで押井さんは下宿先の近くにあった6館の映画館を全て巡回し、家に帰れば「日曜洋画劇場」などTVで放送している映画も片っ端から観まくっていたらしい(まさに映画浸けの毎日w)。

しかも恐ろしいのは「面白そうな映画や好きな映画ばかりを選んで観ていたわけではない」という点なんですよ。

押井さんに言わせると「名作や傑作だけ観ていても映画の本質を見極めることは出来ない。愚作や駄作を観ることによって”快感原則”と呼ばれるものの正体が見えてくる。だからカンフー映画が流行った頃はカンフー映画を死ぬほど観た。ジャンルを問わず、全部観ることが大事なのだ」とのこと。もはや”修行”じゃないですか(笑)。

しかも観るだけでなく、その日に観た映画の内容を細かく考察・分析し、自分の感想や評価なども含めて大学ノートにギッシリ書き記していたというのだから凄すぎる!どんだけ映画にのめり込んでたんだよ!

そんな押井さんがアニメを作るわけですから、当然ながら一筋縄でいくはずがありません。ジャン=リュック・ゴダールアンドレイ・タルコフスキーなどの影響を公言している通り、意味ありげな長台詞とか、眠気を誘う風景描写とか、初心者が敬遠しそうな要素が満載です(笑)。

なので、初めて押井守監督の作品を観る人には劇場版機動警察パトレイバーをオススメします。押井監督自身は「出渕裕ゆうきまさみにアレコレ言われてやりたいことをやれなかった」とボヤいていますが(笑)、アクションありサスペンスありの”万人が楽しめる娯楽映画”として非常に高い完成度であることは間違いないでしょう。

これが気に入ったら、続編の『機動警察パトレイバー2 the Movie』や士郎正宗原作の『攻殻機動隊』、『イノセンス』などもぜひご覧ください。なお、間違っても天使のたまごを真っ先に観ないように。あれは”上級者向け”です(笑)。

天使のたまご

プライム会員は追加料金なしで視聴可


宮崎駿と仲が悪い?
押井守さんは大学を卒業後、タツノコプロに入って『ヤッターマン』や『ガッチャマンⅡ』などを担当し、スタジオぴえろに移籍した後は『ニルスのふしぎな旅』や『うる星やつら』を手掛け、劇場版第1作うる星やつら オンリー・ユー』で監督デビュー。

そして劇場版第2作目のうる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーを監督した後、スタジオぴえろを辞めてフリーになりました。ちょうどその頃、宮崎駿監督が個人事務所「二馬力」を設立したので、押井監督は毎日そこへ通っていたそうです。

「押井さんと宮崎さんって何を話すんだろう?」と気になりますが、意外と宮崎さんは押井さんが演出したTVシリーズの『うる星やつら』なども観ていたようで、「第86話の”波の作画”が良かった」とか、そんなことも話したりしていたらしい。

また、『ルパン三世 カリオストロの城』に次ぐ劇場版ルパンの第3作目を依頼された宮崎さんは、その企画を押井さんに任せたそうです(残念ながら「実はルパンは存在しなかった」という押井さんの案が受け入れられずに頓挫)。

さらに監修、脚本が宮崎駿、監督が押井守という「東京を舞台にした冒険ファンタジー」の企画などもあったようですが、これまた諸般の事情でボツになってしまいました。

こんな感じで押井さんと宮崎さんはしばらく一緒に仕事をしてたんですが、両方とも知識が豊富で理屈っぽくて口数が多いもんだから、よく”言い争い”が起きていたという(笑)。まあ、毎日会話していれば意見がぶつかることもあったでしょうけど、そういう日々を繰り返していたある日、犬の飼い方をめぐって激しい口論が勃発!

押井さんは大の犬好きで「犬は必ず家の中で飼うべきだ」と主張したところ、宮崎さんは「犬は犬、人間とは違う。俺は外で飼ってるけど何の問題も起きてないよ」と反論したそうです。それを聞いた押井さんは「犬は何万年も人間と共に生きてきた唯一の動物で、本来人間と共生しないと生きていけないんだ。外で飼うなんて信じられない!」と猛反発。

しかし宮崎さんも負けずに「押井さんの言う犬は”幻想の犬”だよ。犬を部屋の中で飼うなんてバーチャルリアリティじゃないか」と全く理解を示しません。そしてとうとう押井さんが「でも僕は家を建てて畳敷きの部屋で犬を飼う」と言い返したら、宮崎さんも「俺はそんな犬のションベン臭い家になんか行きたくねえや!」と言っちゃったんですね(この時、二人とも酔っ払っていたらしいw)。

それ以来、押井さんは「宮さんとは決別した」などと公言し、スタジオジブリに何かの用事で行くことがあっても「宮さんに会わないようにさっさと帰る」とか(笑)。ただ、「二馬力の頃に散々話をしたんで、今更もう話すことなんて無いんですよ」ともコメントしており、決して仲が悪いわけではないようです。


●実写映画について
押井守監督はアニメーション作品以外に実写映画も撮っていますが、世間ではあまり評価されていません。理由は……まあ観れば分かると思います(苦笑)。

押井監督によると「アニメは画面に映る全ての情報をコントロールできるが、それ故に作り手側の想定を超えるようなものがなかなか出て来ない」「実写はコントロールが難しい反面、想定外の素晴らしい画を撮れる可能性がある。そこが面白い」とのこと。

しかし、綿密な計画を立てることで(ある程度は)計算通りに進むアニメ制作とは異なり、実写の現場は「アクシデントに対する素早い判断」が重視されます。

そのため押井さんは、「実写の撮影は常に臨機応変。現場で何が起きるか分からないので絵コンテを描いても無駄。事前にきっちり計画を立てても意味がないので、行き当たりばったりで撮るしかない」と持論を述べています。

ケルベロス-地獄の番犬』の撮影で台湾へ行った時も「生きるだけで精一杯だった。交通事故は日常茶飯事だしスタッフは全員下痢になったし、入院したやつまでいた」「気付いたら知らないオッサンがファインダーをのぞいてたり、もうメチャクチャだったよ」とのこと。

そして「途中から真面目に撮るのが嫌になり、クランクインして3日目で”脚本通りに撮ったってしょうがねえや!”と諦め、あとはただのロードムービーになった」そうです。

そんな感じで撮った映画がどういう内容になっているのかは実際に観ていただくとして(笑)、押井監督の実写映画は基本的にこうですからあまりオススメは出来ません。

ただ、そんな中でも敢えて一つ選ぶとすれば、THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』になるでしょうか。この作品はアニメ『機動警察パトレイバー』の数年後(?)を描いたストーリーで、アニメ版とよく似た名前の人が出て来ますが同じではない…というちょっとややこしい設定になっています。

しかし、実寸大のパトレイバーや特車二課の建物をわざわざ作ったり、CGやアクションシーンにも割とお金をかけたり、日本映画としてはかなり贅沢な撮影をやっているので見どころは多いと思います。