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スタッフ大混乱!『トイ・ストーリー2』の制作現場を襲った史上最悪の悲劇とは…?

『トイ・ストーリー2』

トイ・ストーリー2


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

本日、金曜ロードSHOW!でトイ・ストーリー2が放送されます。本作は大ヒットCGアニメ『トイ・ストーリー』の続編として1999年に公開され、全世界で4億8000万ドル以上の興行収入を叩き出し、CGスタジオ「ピクサー」の名前をより一層世間に知らしめました。

その後、2010年には『トイ・ストーリー3』、2019年には『トイ・ストーリー4』が公開されていずれも大ヒットを記録し、改めて人気の高さを印象付けたのです。

さて、そんな『トイ・ストーリ』シリーズ、実は制作中に毎回トラブルが勃発していることでも有名で、中でも『トイ・ストーリー2』に起きた悲劇たるや、「あれほど酷いアクシデントは聞いたことがない」とハリウッド中で話題になるほど凄まじかったそうです。いったいどんな恐ろしい事故が…?

というわけで本日は、『トイ・ストーリー2』の制作中にスタッフたちを襲った「とんでもない悲劇」について書いてみますよ(^_^)


1998年のある日、ピクサーではシリーズ最新作『トイ・ストーリー2』の制作がいよいよ佳境を迎え、全スタッフが最後の調整作業に追われていました。当時、ピクサーの最高技術責任者だったオーレン・ジェイコブ氏も、ウッディのデザインについて同僚と打ち合わせをしていたそうです。

ところが…

オーレン氏がウッディのデータをチェックしていると、40個あったファイルが突然4個にまで減ってしまったのです。「え?」と驚いていると、他のファイルもオーレン氏の目の前で次々と消え始めたではありませんか!

「うわあああ!」

慌ててパソコンを操作するオーレン氏ですが、データの消失は止まりません。この端末はメインサーバーに繋がっているため、「あっちで何か異常が起きたのかも…」と考えたオーレン氏は急いでメインサーバーがあるマシンルームへ電話し、「データが消えてるぞ!どうなってるんだ!?」と問い合わせました。

しかしマシンルームの担当者も状況がわからずオロオロするばかりで、完全にパニック状態。そこでオーレン氏は「今すぐ電源を引っこ抜け!」と指示しましたが、何百台ものクライアントがサーバーに接続されているため、急に電源を切ることなど不可能です。

「一体どうすればいいんだ…」

そうこうしているうちにマスターシステムがダウンし、各CG制作者のPCも一斉にフリーズ。ここで全作業をストップせざるを得ない状況に陥ってしまいました。メインマシンは数時間後に復旧したものの、その時点で『トイ・ストーリー2』の全データのうち約90%が消失していたそうです。なんてこった…

後でわかったことですが、データ消失の原因は当時ピクサーで導入していた開発環境のLinuxで「rm(remove)コマンド」を実行したためでした。

「rm(remove)コマンド」とは、HDD内のファイルやディレクトリを削除するためのコマンドで、今回の事故ではスタッフの誰かが同プロジェクトのルートレベルでうっかり「参照しているディレクトリ以下の全てのファイルを消去するコマンド」を実行してしまったらしいのですよ。

まあ『天空の城ラピュタ』に例えると「バルス」みたいなもので、まさに”滅びの呪文”と言えるでしょう。まさかこんなにあっさり全データが吹っ飛んでしまうとは…恐ろしい!しかし、すでに映画の公開日が決まっているため嘆いている時間はありません。

オーレン氏はすぐさまピクサーのトップを集めて緊急会議を開き、今後の対応策について議論。そこで決まったのは「犯人捜しなどせず、どうやって作品を完成させるか、その方法を探すことだけに集中しよう」というものでした。気持ちを切り替え、作業に取り掛かるスタッフたち。

まず考えたのは「データの復元」です。我々が使っているパソコンでも「うっかり大切なファイルを消してしまった」というミスは良くあると思いますが、HDDから完全にデータを削除しても、専用のソフトを使えば復元できる可能性があるのですよ。

ただし、必ず復元が成功するとは限らず、場合によっては元に戻せないケースも少なくありません。今回の『トイ・ストーリー2』の場合は……残念ながら復元できなかったようです(泣)。

そこで次の手段は「バックアップ」を確認すること。こういうCG作品を作る際は、常にバックアップを取っていることが基本ですよね。そこでデータ消失から約48時間後には、バックアップからデータを復旧することに成功。「良かった~!」と思いきやなんと…

ピクサーで保存していた最新のバックアップデータは2カ月も前のもので、しかも使用しているバックアップ・ソフトウェアや検証用ソフトウェアが、エラーを適切に処理していなかったことが判明したのです(つまり全く使えない!)。

「終わった……何もかも……」

オーレン・ジェイコブ氏は膝から床に崩れ落ち、スタッフたちの間にも絶望的な空気が広がりました。「また1から全てのデータを作り直さなければならないのか…」「でも絶対に公開日には間に合わないぞ…」と。

しかし、ここで運が良いことに、1人のスタッフが自宅のPCにデータを保存していたことが判明し、データ消失の2週間前のバックアップを復旧することに成功したのです(たぶん社外へデータを持ち出すことは本当はダメなんだろうけど、この時ばかりは全員感謝していた模様w)。

そして、ここからスタッフ総出の突貫作業が開始されました。その内容は「2カ月前のデータ」と「2週間前のデータ」と「スタッフのローカルに保存されていたデータ」に共通するデータを選別し、一つ一つ目視で比較して検証すること。ぐわあああ!キツい!

約3万もあるデータを一つ一つ検証する作業は熾烈を極め、月曜日から日曜日まで全員が交代しながら続けたそうです。このデータを元にして制作チームは(完璧とまではいかないものの)ほぼ全てのデータを復旧し、ようやく「作品完成まであとわずか」という段階まで持ち直しました。

だがしかし…!

彼らの悲劇はこれだけでは終わらなかったのです。ジョン・ラセターがやって来て完成間近の『トイ・ストーリー2』を確認したところ、なんと「作り直し」の決断を下したのですよ!えええ!?せっかくここまで復旧したのに!そもそも何故、ジョン・ラセターはこのタイミングでそんな決断を?

実は『トイ・ストーリー2』は当初、劇場作品ではなく「ビデオ作品」として制作する予定でした。そこでピクサーの共同創業者エド・キャットムルは、二人のベテラン・アニメーターを監督に抜擢して『トイ・ストーリー2』の制作を任せていたのです(ジョン・ラセターは当時『バグズ・ライフ』の仕事が忙しくて関われなかった)。

しかし、初監督のアニメーターには荷が重かったのか、どうにも出来栄えが良くなかったらしい。試写室から出て来たジョン・ラセターは開口一番「大惨事だ!」と猛烈に批判。「物語は空っぽで簡単に先が読める上に緊張感がなく、ジョークも全く笑えない。こんなものをピクサーの新作として公開するわけにはいかないよ!」と猛抗議したそうです。

そこで『バグズ・ライフ』の仕事を終えたばかりのジョンが自ら脚本の修正に乗り出し、数日後には物語の見直しを完了。そしてピクサーの全社員を集めて新しくなった『トイ・ストーリー2』の内容を説明すると、みんなから拍手がわき起ったらしい(当然ながら元の監督は降板)。

ただ、問題は「本当に今から全部作り直すのか?」ということでした。この時点で公開日まで7カ月を切っており、常識的に考えればとても間に合いそうにありません。しかも、ディズニー側はこの件について特に問題視していなかったのですよ。

ジョン・ラセターが批判した最初のバージョンをディズニーの幹部たちに見せたところ、「別にいいんじゃない?出来はそんなに悪くないし、今から作り直している時間もないだろう。それに、所詮は”続編”じゃないか」と言われたそうです。それを聞いてアンドリュー・スタントンジョン・ラセターの右腕と称されたベテラン・クリエイター)は「いえ、絶対にやり直します!」とキッパリ言い切ったらしい(よっぽど悔しかったんだろうなあ…)。

なお、意外なことに当時ピクサーを所有していたスティーブ・ジョブズも『トイ・ストーリー2』の修正に賛成だったそうです(スティーブ曰く「ディズニーは”どうせ出来るわけがない”と思ってるんだろ?だったら連中をギャフンと言わせてやろうじゃないか!」)。

こうして全面的な手直しが決まった『トイ・ストーリー2』ですが、それから約6カ月間、スタッフは不眠不休の熾烈な作業を余儀なくされ、ほとんど家にも帰れず、家族の顔もろくに見ることが出来なかったそうです。

そして限界を超えて働き続けた結果、スタッフたちの疲労はどんどん蓄積され、残り数カ月となった頃には心身ともにボロボロに成り果てていました。そんなある日、疲れ切ったスタッフの一人が幼い我が子を車の後部座席に乗せて出勤(この時点で意識が朦朧としていた)。彼は途中で子供を託児所に預けるつもりだったのです。

ところが、会社に着いて仕事を始めて数時間後、奥さんから「子供が託児所にいないみたいだけど…」という電話がかかってきて、ようやく「あっ!車に乗せっぱなしだった!」と気付き、慌てて駐車場へ見に行ったら高温の車内でグッタリしている幼児の姿が…!

急いで水をかけて病院に連れて行ったおかげで、幸いにも子供は無事だったものの、もう少し遅かったら大変なことになっていたでしょう。しかも、こういう事例が一人ではなく、映画が完成した時には3分の1ものスタッフが何らかの反復性ストレス障害を発症していたというのだから恐ろしすぎる!いくら作品のためとはいえ、そんなに無理させたらアカンよ…

というわけで、想像を絶する様々なアクシデントを乗り越え、どうにかこうにか『トイ・ストーリー2』は1999年11月の公開日にギリギリで間に合い、無事に上映されました(日本では2000年3月公開)。

つまり、今我々が観ることが出来る『トイ・ストーリー2』は、1年以上かけて作ったデータが全部吹っ飛び、その後どうにか復旧させたものの、上司の「作り直せ!」の一言で再びゼロからやり直し…という紆余曲折を経てようやく完成したものだったんですね。まさかそんなに苦労していたとは…(泣)。今後『トイ・ストーリー2』を観る時は正座して観ます(^^;)



ピクサー流 創造するちから――小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法
エイミー・ワラス エド・キャットムル

※今回の記事を書く際に参考にした本です