ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

驚きの実話!エマ・ストーン主演『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(ネタバレあり)

バトル・オブ・ザ・セクシーズ

映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より

ラ・ラ・ランド』でヒロインのミアを演じ、見事オスカーを受賞したエマ・ストーン。そんな彼女が主演したバトル・オブ・ザ・セクシーズは、「とあるテニスの試合」をめぐって繰り広げられた驚きの実話を映画化したものです。

 


バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のあらすじ

時は1973年。女子テニスプレーヤーのビリー・ジーン・キングは、女子選手の優勝賞金が男子よりも少ないことに不満を募らせ、全米テニス協会に抗議したが拒否されてしまう。そこで男女平等を訴え、仲間たちを率いて女子テニス協会を設立。

そんなビリーに、元男子チャンピオンのボビー・リッグスが挑戦状を叩きつける。一度は断るものの、熟考の末、ボビーとの対決を決意したビリー。こうして、29歳の現役女子チャンピオンと、55歳の元王者との”性差を超えた戦い”が実現した…!

 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』とは?

僕は最初、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』というタイトルを聞いて「なんかちょっとB級っぽい映画なのかな~?」と思ってたんですよ。「セクシーたちの戦い」って何なんだ?と(笑)。

しかしこれは「性別間の戦い」という意味で、ビリー・ジーンとボビー・リッグスの「男vs女の試合」に付けられたキャッチコピーとして、当時大々的な告知が行われたそうです。

そして同時に、1970年代に蔓延していた男尊女卑の風潮に対し、「その壁を突き崩す勝負」という意味でもあり、当時の歴史的な顛末と関わった人々の姿を臨場感たっぷりに描いたドラマなのです。 

バトル・オブ・ザ・セクシーズ

映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より(当時の写真)


ビリー・ジーンになり切ったエマ・ストーン

前作『ラ・ラ・ランド』でハリウッド女優を目指すミアを演じたエマ・ストーンは、その美しい歌声や魅惑的なダンスが話題となり、第89回アカデミー賞で主演女優賞を獲得しました。

しかし本作では、ウィンブルドンで史上最多の20回優勝を誇る伝説的女子テニスプレーヤー:ビリー・ジーン・キングを演じるため、4カ月の猛特訓に挑んだそうです。

なんせ、エマ・ストーンは「テニス経験がゼロ」だったので、初歩的な練習から始まり、ウェイトリフティングやランニングなどハードな訓練を毎日実施することに。

しかも、トレーニングを担当したのは、『ボーン・アイデンティティー』などジェイソン・ボーン・シリーズでマット・デイモンを鍛えた凄腕トレーナーでした。その結果、なんと筋肉が7キロも増えてムキムキの体格になったという。

なぜそこまで頑張った?

関係者によると「エマが過酷な肉体改造にチャレンジしたのは、彼女がビリー・ジーンにとても敬意を持っていて、この役をぜひやりたいと熱望していたからだ」とのこと。

さらに、「肉体からビリー・ジーンになり切ることで、ビリー・ジーンの身体的・精神的な強さを体現しようとしていた」らしい。実際、『ラ・ラ・ランド』の後に『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』を観ると、あまりの激変ぶりに驚くこと間違いなし!

なお、映画の公開時にインタビュアーから撮影の感想を聞かれたエマは、「これまで演じてきた中で最も体を酷使した役だったわ(笑)」と答えたそうです。 

ビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)

ビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン


ボビー・リッグスを演じたスティーヴ・カレル

一方、ビリーと戦うボビー・リッグスに扮したスティーヴ・カレルも素晴らしい演技でした。

彼はボビーのことを尊敬していて、完璧にボビーを演じるために徹底的にリサーチを繰り返し、実際にボビーのコーチをやっていた人からテニスの訓練も受けたそうです。

特にボビーの似せ方が凄まじく、顔や髪形などの見た目はもちろん、テニスのプレースタイルや日常の動作に至るまでボビー・リッグスを完全再現!エンディングで本人の写真が映るんですが、あまりにも似すぎていて笑いました(笑)。

ボビー・リッグス

ボビー・リッグス(本人)

敵だけど憎めないキャラ

そんなボビーは、ビリー・ジーンと戦う”敵”であり、女性蔑視の発言を連発する”ヒール”なんですが、劇中では決して”悪い人”として描かれてはいないんですね。

ギャンブル依存症で奥さんから愛想を尽かされ離婚寸前の彼は、女性を批判することで注目を集め、何とかしてもう一度、現役の頃のようにスポットライトを浴びようとしていたのです(ちなみに、奥さん役は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでヒロインのジェニファーを演じたエリザベス・シュー)。

だから、スティーヴ・カレル女性差別発言はパフォーマンスじみていて愛嬌たっぷり、そして同時にボビー・リッグスの抱える”哀愁”も感じさせ、実に魅力的なキャラクターになっているのですよ。

なお、本物のボビー・リッグスも愉快でチャーミングな人物だったらしく、ビリー・ジーンも彼のことを嫌ってはいなかったそうです。 

ボビー・リッグス(スティーヴ・カレル)

ボビー・リッグス(スティーヴ・カレル


女性解放運動とLGBT問題

本作は、女性解放運動(ウーマンリブ)が広まり始めた70年代を舞台に、テニス界に起こった象徴的な事件を通じて女性差別の問題を描いていますが、もう一つ「LGBTの問題」を取り上げていることも見逃せません。

ビリー・ジーンには良き夫がいますが、テニスツアーの途中で美容師のマリリン(アンドレア・ライズボロー)と恋人関係になり、自分自身の”性のあり方”についても考え始めるのです。

このマリリンも実在の人物で、当時の試合映像を見ると、彼女がビリーの夫ラリーと並んで座っている姿が映っているそうです。

マリリン(アンドレア・ライズボロー)

マリリン(アンドレア・ライズボロー)

その後、マリリンはビリー・ジーンのアシスタントになりますが、その頃は彼女たちの関係を秘密にしていたので、周囲の人はマリリンのことを「ビリーの専属美容師」と思っていたらしい。

なぜなら、当時はウーマンリブが盛り上がっていたとはいえ、同性愛はまだまだ世間的に認知されておらず、レズビアンであることも当事者にとっては公にしづらい属性だったからです。

最適なキャスティング

そんな本作で印象的なキャスティングと言えば、専属デザイナーのテッド役を演じたアラン・カミングでしょう。

アラン・カミングは自身がバイセクシャルであることを公表しており、2007年にグラフィック・アーティストの男性と同性婚を挙げたことでも話題になりました。

そして『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』ではゲイの役を演じるにあたって、「このセリフは演技じゃなくて本心から言わなきゃね」と言って特にこだわりを見せたそうです。それがこちら↓

アラン・カミング(テッド)

アラン・カミング(テッド)

「いつか僕らはありのままでいられる。自由に人を愛せるようになる」

物語のラストを締めくくる非常に重要なセリフですが、とてもナチュラルで心に響き、監督を務めたヴァレリー・ファリスジョナサン・デイトンも大絶賛!インタビューで以下のようにコメントしていました。

本当にあの役を彼に演じてもらえたのは幸運だった。あのセリフを真実味をもって観客に聞かせるのは難しかったけど、アラン以上の適任者はいなかったよ。彼だからこそ、あのセリフを説得力のあるものにできたんだ。

なお、このキャラクターも実在の人物なんですが、「本物のテッドはアラン・カミングとは似ても似つかないハゲ頭の大男」だそうです(笑)。

 


ビリーとボビーの試合シーン

さて、様々なドラマを繰り広げた後、いよいよクライマックスでビリー・ジーンとボビー・リッグスの「性差を超えた戦い(バトル・オブ・ザ・セクシーズ)」が始まるわけですが、この試合シーンがあまり盛り上がらないんですよね。

この場面を作る際に監督は、実際にテレビで放送された試合映像を編集して、10分のバージョンを作ってみたそうです。ところが、肝心の試合がイマイチだったらしい。

なぜ試合が盛り上がらかった?

監督曰く、「実際の試合展開はエキサイティングとは言えないものだった。ビリー・ジーンが簡単に勝ってしまったからね。ある意味、とてもつまらない試合だったんだよ(苦笑)」とのこと。

その言葉通り、できる限りドラマチックな試合展開にしようと音楽で盛り上げたり、カメラアングルを工夫したりしていますが、やはり単調な印象は否めません(実話だから過剰に演出するわけにもいかないしw)。この辺はちょっと残念でしたねえ。

 


70年代を鮮やかによみがえらせた映像美

バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の映像は、過去の出来事を描いた”実話もの”に良くある茶色系のルックではなく、赤や青やピンク系を大胆に配色した鮮やかなヴィジュアルとなっています。

これは、第89回アカデミー賞で撮影賞(『ラ・ラ・ランド』)を受賞したリヌス・サンドグレンが撮影監督として本作にも参加しているからで、『ラ・ラ・ランド』で披露した「ミックスライティング」という技法をアレンジし、カラフルかつリアリティのある映像を生み出しました。

ミックスライティングの効果

美術や衣装など表に見えるものは70年代の雰囲気を打ち出しつつ、照明は現代的な空間設計を施し、それを敢えてクリアな撮影で色彩の情報量を増加させることによって、画面に異常な説得力を与えているのです。

それは同時に、「過去の様式にとらわれることなく、新しい価値観や多様性を求める」という本作の主題にも見事に合致しており、だからこそ多くの観客の共感を得られる作品となったのではないでしょうか。