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『カメラを止めるな!』のネタバレはどこまでOKなのか?


※今回の記事はネタバレしているので未見の人はご注意ください。


どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

さて、みなさんはもう『カメラを止めるな!』を観ましたか?この映画はわずか300万円の超低予算で作られ、キャストは無名の役者ばかり…という完全なインディーズ映画です。

ところが、たった2館の公開からスタートしたにも関わらず、SNSや口コミで人気に火がつき、あっという間に全国累計269館に拡大!観客動員120万人、興行収入16億円を超える大ヒットを記録しました。

いったいどうしてこんなに成功したのか?と言えば、もちろん「ものすごく面白いから」なんですけど、それだけではありません。本作を観たほぼ全員が「これは絶対にネタバレしちゃダメだ!」と口を揃えて言ってるからなんですよ。

普通、面白そうな映画を人に薦めるときは、ある程度ストーリーを説明したりするものじゃないですか?でも『カメラを止めるな!』の場合はそういうこともNG。完全に「ネタバレ厳禁映画」なのです。

”ネタバレ厳禁”とはすなわち、映画の構成自体に何らかのサプライズが仕掛けられていることを意味し、それをバラされると面白さが激減する…、要はそういう類の映画なんですね。

昔、ブルース・ウィリス主演の『シックス・センス』が公開された時も、「ネタバレ絶対ダメ!」と言われ、「何それ?」「どういう内容なの?」と気になった観客が劇場に押しかけ大ヒットしました。

つまり、人は「ネタバレするな」と言われると好奇心を刺激され、確認せずにはいられなくなってしまうわけですが、では”ネタバレ”とは、どの程度までがネタバレと定義されるのでしょうか?

僕が『カメラを止めるな!』を観て個人的に気になったのがこの部分で、人によってネタバレの許容範囲がバラバラなんですよ。

公式にアナウンスされているストーリーは「とある廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたスタッフたちが本物のゾンビに襲われる」という、たったこれだけです。

これだけなら普通にゾンビ映画の一種ですが、もちろんこれだけではありません。映画を観た人ならご存知の通り、前半の「ゾンビ映画パート」が終わってからがむしろ”本編”なのです。

つまり『カメラを止めるな!』は厳密に言うとゾンビ映画ではなく、「ワンカットでゾンビ映画を撮ろうと悪戦苦闘しているスタッフたちの姿を面白可笑しく描いたコメディ映画」なんですね。

僕は事前情報をほとんど何も入れない状態で観に行ったので「なるほど!そういうことだったのか!」と楽しめたんですが、鑑賞後に映画評論家の紹介記事などを読んだら、この辺を普通にバラしちゃってるんですよ。

「いやいや、それはネタバレじゃないの?」と。

某映画解説者は「ゾンビ映画のパートには不自然な”間”とか変なシーンがいくつもあるけれど、実はそれらは伏線で、後半のシーンでもう一度撮影現場の様子を見せながら全部の伏線を回収していく」と本作を紹介していましたが、そこまで言っちゃっていいのかなあ?

たとえば僕が初めてこの映画を観た時、ゾンビ映画のパートで確かに不自然さを感じたものの、その時点ではまだどういう方向に話が転がるのか分からないから真剣に観てるわけですよ。

で、”最初のエンディング”が流れて「1カ月前」のテロップが出たところで初めて「ああ、そういうことか!」と映画の構造に気付いたわけです。もしこのネタが事前に分かっていたら、サプライズを1個損することになるんじゃないですかね?

一応、映画解説者の言い分としては、「予告編でもこの辺について触れているし、別にネタバレじゃないだろう」ってことらしいんですが、そもそも予告編自体がネタバレしてると思うんですよ。

通常、映画の予告編は”専門の会社”が作成するため、必ずしも監督の意図が反映されるとは限りません。もし上田慎一郎監督が予告編を作っていたら、そこまでは見せていなかったでしょう。そういう意味でも「どこからどこまでをネタバレの範囲に含めるか?」は難しい問題だと思います。

ちなみに先日、上田監督が報道ステーションに出演した際、番組中に流れた予告編を見て、「映画を観てない人は分からないと思いますが、今のはちょっと危ないですね〜」と微妙な表情をしていたのが印象的でした(笑)。

というわけで、『カメラを止めるな!』のネタバレについて色々考えてみたんですが、本作は「映画製作の裏側を描いたコメディ映画」という部分をネタバレされても十分に楽しめる作品であり、「笑って泣ける最高の娯楽映画」という本質に変わりはありません。

中でも僕が特に感激したのは、37分ワンカットの映像を本当にワンカットで撮っていることです。もちろん”長回し撮影”自体はよくある技法で、特に珍しいものじゃないんですよ。

でも、アルフレッド・ヒッチコックブライアン・デ・パルマみたいに「人物がカメラ前を通り過ぎるタイミングでこっそりカットを割る」とか、そういう”疑似ワンカット”を使っている監督もいる中、実際にワンカットで撮影したことの意義は大きいと思います。

上田監督自身、撮影前は「あまりにも大変だからカットを割って”ワンカット風”に編集しようか…」などと弱気になっていたそうですが、スタッフから「何言ってるんですか!ワンカットで撮りましょう!」と言われて腹を括ったらしい。

そこには、「俺たち金は無いけど”やる気”と”根性”だけは誰にも負けないぜ!」という熱い心意気みたいなものが感じられ、そういう作り手たちの情熱が単なるフィクションを超えた”ドキュメンタリー”としての面白さすら生み出していたと思うのですよ。

無名の俳優や若手のスタッフたちが、血だらけ汗だらけになって必死に映画を撮っているその姿は、完全に映画の内容とシンクロしてるんです。全員が一丸となって頑張る、そのひたむきな姿に感動せずにはいられません!いや〜、本当に素晴らしい映画でした(^_^)


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