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「アニメ史上最も作画がすごいシーン」の定義とは?


先日、「アニメ史上最も作画がすごいシーンはここだ」というツイートが話題になっていた。


ツイ主が挙げていたのは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の第7話で、確かに美麗かつ緻密な作画が印象的である。

これに対して、「いやいや、アニメ史上最も作画がすごいシーンならこれだろ!」と色んな人が様々なタイトルを挙げていたのが興味深い。



まあ、こういうのは観る人の主観によって意見が異なるんだろうけど、そもそも「アニメ史上最も作画がすごいシーン」とは、どういう条件に基づいて選出しているのだろうか?

「すごい」の定義も人によって解釈がわかれると思うが、例えば僕の中では「すごい作画」を大きく以下のように分類している。


1:ディテールがすごい
2:動きがすごい


まず1は「絵の緻密さ」を比べたもので、「キャラのディテール」や「背景のディテール」など、「画面内の情報量がどれだけ多いか?」を評価基準にしたものだ。

「キャラのディテール」に関しては、80年代頃までは3段影や4段影を付けまくり「ひたすら画面の密度を上げる方向」に進化していたが、90年代以降は逆に「影なし」というシンプルなキャラへと変わっていった。

一方、「背景のディテール」に関しては、90年代以降もどんどん描き込みが増していき、最近では新海誠のように写真からトレースするパターンも定着し、「キャラがシンプルで背景はリアル」という作風がトレンドになっている。

つまり、「すごい作画」=「ディテールがすごいアニメ」と解釈している人は、近年流行りの「丁寧に描き込まれた緻密な作画」を好む傾向があるのかもしれない。

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そして2の「すごい動き」に関しては、さらに3つぐらいの要素に分類できる。

●派手なアクション
まず1つ目は、メリハリの効いた派手な動きで観客を驚かせる「金田系のアニメ」だ。

70年〜80年代に活躍した伝説的なアニメーター:金田伊功が生み出した奇抜なアクションは、他の多くのアニメーターに絶大な影響を与えた。

みんなが金田の「すごい動き」をマネしたため、いつしか金田系の作画スタイルが業界を席巻していったのである。

現在でも今石洋之小池健新井淳ら凄腕アニメーターたちが金田系アニメを継承しているが、やはり「すごい作画」を選ぶとすれば、その源流の『バース』になるだろう。

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これぞ作画アニメ!という開き直りが潔いw

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●ぬるぬる動く
そんな金田系のシャキシャキした動きに対し、もっと柔らかくなめらかな作画を追及したアニメが、いわゆる「ぬるぬる動く」というやつだ。

元々、ディズニーアニメなどは1秒で24枚の絵を描く「フルアニメ」が主流なのだが、日本の場合は経費と時間を節約するため1秒で8枚(3コマ打ち)の「リミテッドアニメ」が多い。

そんな中、海外と同じく1秒24枚(1コマ打ち)や12枚(2コマ打ち)で作られたアニメを見ると、「おお!ぬるぬる動いてる!」「すごい作画だ!」となってしまうわけだ。

もちろん「作画枚数が多い方がいいアニメ」という意味では決してない。ただ、「すごい作画は何がどうすごいのか?」と問われた時、その根拠を示す上で「ぬるぬる動く」という表現は分かりやすいのだろう。

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AKIRA』は基本2コマ打ちで全てが「ぬるぬる動く」わけではないのだが、”すごい作画”には違いない

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●芝居がリアル
派手なアクションがあるわけではなく、1コマでぬるぬる動いているわけでもない。でも、キャラクターの動きが自然でとんでもなくリアル!

そんなアニメも「すごい作画」と言われているが、数はあまり多くない。なぜなら、人間の自然な芝居を完璧に描けるような優れたアニメーターは限られているからだ。

昔、宮崎駿が『となりのトトロ』を作る際に「リアリティ溢れる芝居を描けるのは近藤喜文しかいない」と考え、アニメーターの近藤を作画監督に指名したところ、高畑勲も『火垂るの墓』に近藤を参加させようとしたため、両者の間で熾烈な”引き抜き合戦”が起きたのは有名な話である。

結局、近藤は『火垂るの墓』に参加することになるのだが、米を茶碗によそう時の、手首に付着した米粒を舐め食べる動作など、高畑アニメが追究する繊細でリアルな描写の実現は、天才アニメーター:近藤喜文の強く鋭い感受性があって初めて可能だったのだ。

他にも、沖浦啓之安藤雅司井上俊之本田雄など、「芝居を上手く描けるアニメーター」は存在するが、派手なアクションに比べると見た目が地味なので、あまり目立たないのが残念である。

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というわけで、「作画がすごいアニメは?」と問われた場合、大抵「ディテールがすごい」とか「動きがすごい」とか、自分の嗜好に合った”すごさ”を基準に選んでいると思われ、そのタイトルは当然バラバラになるだろう。

ただ、「アニメ史上最も作画がすごいシーンはここだ」というツイートに対するコメントを見てみると、『AKIRA』(前半のバイクシーン)、『オネアミスの翼』(ロケット発射シーン)、『マクロスプラス』(板野サーカス)などを挙げている人が割と多く、「すごい作画」のイメージもある程度は共通しているのかもしれない。



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