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『ガメラ2 レギオン襲来』の素晴らしさを語ってみた


本日、テレビ「キネマ麹町」(TOKYO MX2)で『ガメラ2 レギオン襲来』が放送される。前作『ガメラ 大怪獣空中決戦』の翌年(1996年)に公開された「平成ガメラ三部作」の2作目だ。


1作目でリアリティ溢れる描写とカッコ良すぎる特撮映像で「こういう怪獣映画を待っていた!」と絶賛された映画の続編であるが故に、公開前から相当期待されていたであろう本作。
だが、その期待を裏切ることなく、何倍もパワーアップした作劇になっていて驚いた。


というわけで本日は、映画『ガメラ2 レギオン襲来』は何が素晴らしいのか、その魅力についてキャラクターやストーリーなど具体的に語ってみたいと思う。


●キャラクターについて
普通、「続編映画」は前作の登場人物が引き続き出て来るパターンが多いのだが、本作は1作目の主人公だった米森(伊藤剛志)や長峰中山忍)は出て来ない。
代わりに渡良(永島敏行)と穂波(水野美紀)が新たな主役として活躍している。


中でもヒロインの水野美紀に関しては監督の金子修介がメチャクチャに惚れこみ、なんと彼女が所属していた事務所の社長に直接出演依頼の手紙を書き、周囲の反対を押し切って強引にキャスティングしたらしい。


そして「美しい部分はきちんとフィルムに収めなければ!」と張り切り、ひたすら水野美紀にミニスカートを履かせることにこだわり続け、その美脚を色んな角度からカメラで撮りまくったそうだ。
そのおかげで劇中では不自然なぐらいに穂波のミニスカ映像が溢れているが、氷点下の北海道ロケでも素足を晒しっぱなしの水野美紀は震え上がっていたらしい。


ちなみにガメラと心を通わせることができる少女:草薙浅黄(藤谷文子)と、なぜか毎回怪獣と遭遇する大迫力(螢雪次朗)が本作にも再登場(三部作全てに出演しているのはこの2人と、あとは自衛隊員の渡辺裕之ぐらいか)。

なお、『ガメラ2』はゲスト出演者が非常に多いことも特徴で、内閣官房長官役を徳間書店の社長が務めていたり(セリフが結構長い!)、獣医学部の教授役が作家の養老孟司だったり、色んな人が出ていて面白い。
中でも特に有名なのが、近年は俳優として大活躍している大泉洋だろう。
「北海道が舞台だから地元の有名人を起用したのかな?」と思いきや、『ガメラ2』の北海道ロケが1996年1月、『水曜どうでしょう』の放送開始は96年の10月なので、まだ大泉洋の名前が広く世間に知られる前に撮影されたようだ。
ガメラ2』には他にもTEAM NACSの安田顕が隕石落下の急報を伝える自衛隊員役で、『水曜どうでしょう』の”ミスター”こと鈴井貴之が札幌市職員役でそれぞれ出演している。


しかし、この2人に比べて大泉の役は「地下鉄の中で逃げ惑う乗客」という完全なエキストラ。
電車内が暗くて顔もはっきり映らず、セリフも一切無し。
おまけに、鈴井の手違いでエンドクレジットに名前すら載っていない。
この件をずっと根に持っていた大泉は、20年後に『シン・ゴジラ』のイベントで樋口真嗣と会った際、「『ガメラ2』が僕の映画デビューだったのに、画面が暗すぎて影しか映ってないんですよ!」などと不満をぶつけたところ、「影だけでも大泉さんって分かるからいいじゃん」と言われたらしい。

●ストーリーについて
今回の敵は「宇宙怪獣」ということで、ストーリーにもSF要素が目立つ。脚本を書いた伊藤和典は「リアリティを持たせるためにレギオンの生態をきっちり考えた」とのこと。


ギオンが北海道を飛び去った後、穂波(水野美紀)の部屋に渡良(永島敏行)と帯津(吹越満)が集まって以下のような会話を繰り広げる。


「レギオンの体組織が半導体にそっくり」 → 「半導体はシリコンで出来ている」 → 「シリコンは土を分解して生成」 → 「その過程で酸素が発生する」 → 「レギオンは酸素を発生させることで草体を育て、同時に地球の生態系を狂わせるつもりか」 → 「シリコンをエサにしているからレギオンの体は半導体みたいな組織に進化したのだろう」 → 「この体の構造だと、レギオンは電磁波でコミュニケーションしているのかも」 → 「だから電磁波の強い場所を狙って攻撃してくるのか」 → 「もしそうなら、レギオンは大都市を目指す可能性が高い」


まさにSF小説ばりの緻密な設定だが、あまりにも難しくて演じている水野自身もよく理解できなかったらしく、このシーンの撮影直後に「今のセリフの意味が分かった人、いますか〜?」と周りのスタッフに問いかけたという(笑)。


なお、この部屋のセットには金子監督の私物も持ち込まれていたようで、本棚には萩尾望都の『アロイス』や、アーシュラ・K・ル=グウィンの『ゲド戦記』シリーズなど、ファンタジー作品が多く並んでいる。


金子監督曰く、「穂波はこういう本が好きなんですよ。…いや、こういう本が好きな女の子がいたらいいなあって(笑)」とのこと(監督の願望だったらしい)。


なお前半の展開は、北海道に隕石が墜落した直後から通信障害など謎の事件が次々と起こり、やがて「すすきの」に巨大な植物(草体)が出現し、街がパニックに!
そこへガメラがやって来て、草体を破壊し退却。その後、地下からレギオンが現れ、夜空に飛び去る。
そして仙台市街地に新たな草体が出現し、再びガメラがこれを破壊しようとするも間に合わず、爆発の威力で仙台が消滅…という感じで進んで行く。

「仙台消滅」のシーンは今観ると色々問題がありそうだが、当時は仙台市民から喜ばれたそうだ。それどころか青森の観客から「なんで青森に来ないんだ?札幌の次は青森だろ!」と苦情が出たらしい。


そして物語はこれ以降、急激にミリタリー色を強めていく。
金子監督自身も「脚本を読んだ段階で”これは戦争映画だ!”と思った」とコメントしているし、前作以上にミリタリー・テイストが全開になっている点が本作の特徴だろう。


90式戦車、87式偵察警戒車、F-15J戦闘機、AH-1S対戦車ヘリコプター、CH-47J大型輸送ヘリコプターなど、自衛隊の全面協力による”本物”を使った戦闘描写は圧巻だ。


市街地を爆走する戦車もミニチュアではなく、自衛隊の演習場敷地内に電話ボックスや道路標識を設置して撮影している。

ちなみにこのシーン、当初は押井守監督に依頼していたが、『攻殻機動隊』の仕事が忙しくて参加できなかった(その後、押井監督は「俺が撮っていればもっと美しいアングルになったのに…」と愚痴っていたらしい)。


●特撮について
ガメラ2』の特撮を担当したのは、前作に引き続いて樋口真嗣である。
ガメラ 大怪獣空中決戦』で観客の度肝を抜きまくった超絶的なミニチュア技術が今回も炸裂している。
中でも、オープンで撮影したすすきのデパート破壊シーンは、「本当にミニチュアか?」と思うほど迫力満点!
破片が偶然カメラに当たるところとか、何度観ても素晴らしい!


他にもレギオンガメラの対決シーンや、レギオンの攻撃で大爆発するビルや戦車など、特撮的な見どころは数え切れない。


そんな中で特に僕のお気に入りシーンは、「仙台へやって来たガメラが市街地を歩いている時に渡良の車とすれ違う」という場面だ。↓

実は、これとほぼ同じシーンが『シン・ゴジラ』にも出て来る(たぶんオマージュ?)。
しかし、『シン・ゴジラ』が「本物の風景を撮影してCGのゴジラを合成」しているのに対し、『ガメラ2』の方はCGを一切使っていない。


では、いったいどうやってこんなシーンを撮ったのか?その秘密は、アニメの撮影で使われる「マルチプレーン」という手法だ。


マルチプレーンとは、背景画の上にいくつかのセルを重ね、それぞれを違う速度でスライドさせることで2Dの映像に奥行きや立体的な効果を与える手法のことだ。

アニメではセルに「電柱」や「看板」や「ビル」などの絵を描き、それを動かして撮影しているのだが、『ガメラ2』ではそれらを全てミニチュアでやっているのが凄い!


具体的な撮影方法は、まずガメラ(着ぐるみ)をでかいターンテーブルの上に乗せ、ゆっくり回転させながら撮影カメラを近づけていく。


同時に、「電柱」や「看板」や「ビル」などのミニチュアの速度を変えながら(手前の電柱は速く、奥のビルはゆっくりと)動かし、あたかも「車とガメラがすれ違っているように」見せているのだ。


僕は最初にこのシーンを観た時、「さすがアニメの世界で生きてきた人は発想が違う!」と感心したのだが、樋口監督は次のようにコメントしている。

手前のものほど早く動いて、奥のものほどゆっくり動くという実際の現象を分解して、これをセットの中で再現するにはどうすればいいのか…と考えたんですよ。


単純にセットを組んでその中で動かすと不自然に見える。それがすごく嫌だったんで、まず奥の方のスピードを変えて、次に手前の電柱を速く動かして…。


スピードをコントロールしているうちに段々「あ、こんな感じかな?」と。試行錯誤していたら最終的にああいう形になっていたという。


スタッフからは「立体アニメみたい」って言われて、自分でも「確かにそうだな」と思いました。でもそれは結果的にそうなっただけで、アニメのやり方を意識していたわけではありません。

う〜む、自分の中のイメージを具現化しようと色々試していたら自然にこうなった、ということか…。いや、それはそれで凄いことだけど(^_^;)

というわけで、『ガメラ2 レギオン襲来』についてあれこれ語ってみたが、改めて観ても非常に完成度が高く、まさに「怪獣映画の傑作」と言わざるを得ない。ぜひとも続編を…というか『シン・ガメラ』を作って下さい!


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