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『10 クローバーフィールド・レーン』ネタバレ映画感想/評価


■あらすじ『恋人と口論になり、一人郊外へ車を走らせていたミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は、急な事故に巻き込まれて意識を失う。目覚めると、なぜか薄暗い地下の一室。しかも足を手錠で繋がれ、身動きがとれなくなっていた。そこへ現れた巨漢の男ハワード(ジョン・グッドマン)。ここは彼が作った地下シェルターで、他に腕をケガした若い男エメット(ジョン・ギャラガー・Jr)もいた。彼女を閉じ込めている理由を、外で恐ろしいことが起きているからと説明するハワード。疑いを抱きつつも、ひとまず彼らと共同生活を送るミシェルだったが、やがて次々と恐ろしい真相が明らかに…!2008年の大ヒット・パニック映画「クローバーフィールド/HAKAISHA」をプロデュースしたJ・J・エイブラムスが、同じ世界観を継承する形で製作したSFミステリー・サスペンス!』


※この記事にはネタバレが含まれています。映画を観ていない人はご注意ください!


J・J・エイブラムス監督製作の『10 クローバーフィールド・レーン』を観賞。本作は、8年前に同じくエイブラムス監督が作った『クローバーフィールド/HAKAISHA』と似たようなタイトルであるため、当初は「あの映画の続編か?」と思われていました。

しかし、エイブラムス監督自身が「続編ではないが血の繋がりはある」と微妙なコメントを発表したことで、「じゃあどういう関連があるんだよ?」とファンが困惑する事態に。いったい『10 クローバーフィールド・レーン』は『クローバーフィールド』と関係があるのか無いのか?

まず最初に、前作(?)の『クローバーフィールド/HAKAISHA』について説明すると、2007年7月に全米の劇場で流された予告編では、「ニューヨークが”巨大な何か”に襲われているらしい」という事ぐらいしか分からず、一体それが何なのか、どういうストーリーなのかは一切明かされていませんでした(当初はタイトルすら不明だった)。

しかし、予告編が公開されるやいなや、アメリカではこの謎の映画が多くのメディアで取りあげられ、ネットでも話題沸騰。それが、プロデューサーにテレビシリーズ『LOST』のJ・J・エイブラムスを迎えた『クローバーフィールド/HAKAISHA(原題:CLOVERFIELD)』だったのです。

その内容も非常に変わっていて、「大災害が起きた現場で偶然、一般市民がビデオカメラを回していて、そのカメラを軍が回収した」という設定になっているのです。したがって、普通の映画みたいにオープニングやタイトルなどは一切表示されず、BGMもありません。

さらに家庭用ビデオカメラ(という設定)なので画質は粗く、しかも素人カメラマン特有の終始ガタガタと揺れまくる画面は不安定で見辛い事この上なし(実際は業務用カメラで撮影されており、画面のブレもきちんと計算されたものですが)。

しかし、これらの不安定な映像がとてつもないリアリティを醸し出し、本当に事件の現場を”目撃”しているかのような凄まじい臨場感を生み出していたのです。すなわちこの映画は、全部作りものなのに”あたかも実際に起きた事件のように見せている”という、いわゆる”擬似ドキュメンタリー”なのですよ。

この手の作品は「モキュメンタリー」または「ファウンド・フッテージ」などと呼ばれ、意外と古くから存在していますが、有名なものはやはり1999年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』でしょう。「魔女を題材にしたドキュメンタリー映画」という設定で作られた『ブレア・ウィッチ』は、超低予算(約6万ドル)でありながらも、全米興行収入1億4000万ドル、全世界興行収入2億4050万ドルという大ヒットを飛ばして話題になりました。

これの”魔女”を”謎の巨大生物”に置き換え、数百倍(数千倍?)の予算を投じて製作されたものが『クローバーフィールド』なのです。何より『クローバーフィールド』の凄いところは、擬似ドキュメンタリーの手法を取りながら、いわゆる「怪獣映画」を撮ろうしている点でしょう。

舞台となる地はニューヨーク、ウォール街グランド・ゼロ等が位置しているローワー・マンハッタン地区。ここである晩、パーティーが行われていました。すると突然、大音響と共に建物が大きく揺れ、室内は停電して真っ暗闇に。人々は何が起こっているのか確認する為に屋上へ上がると、正体不明の大きな唸り声とともに、巨大な何かが姿を現した!

…という具合に、『クローバーフィールド/HAKAISHA』には”パニック・アクション”あるいは”ディザスター・ムービー”的な展開も見受けられるますが、本質的には「モキュメンタリーの手法で撮られた怪獣映画」なのです。しかも、日本の「ゴジラ」に多大な影響を受けているらしい。

というのも、製作したJ.J.エイブラムス監督がゴジラの大ファンで、「この映画は日本へ来てゴジラのビニール人形を見ている時に思いついた企画だ」と証言しているのですよ。さらにエンディングで流れるテーマ曲が、ゴジラの音楽を手掛けた伊福部昭のメロディとそっくり!これぞリスペクト!

そんなわけですっかり前置きが長くなってしまいましたが(笑)、じゃあ『10 クローバーフィールド・レーン』はどうなんだ?っていうと、全然違う内容なんですね。まず、「ファウンド・フッテージ」じゃなくて普通のサスペンス映画だし、ほぼ地下シェルターの中のみで展開する「密室劇」なんですよ。

主人公の女性(ミシェル)が交通事故に遭い、気付いたら地下に閉じ込められていて、怪しい男が見張っている中、無事にそこから脱出できるか?という非常にシンプルな物語です。でも僕は『10 クローバーフィールド・レーン』を観る前に、「『クローバーフィールド』のスピンオフ的なストーリーなのではないか?」と思ってたんですよ。

なぜかと言うと、今回メアリー・エリザベス・ウィンステッドが演じている主人公ミシェルの姿が、『クローバーフィールド』でリジーキャプランが演じていたマリーナという女性キャラと、何となく似てるんですよね(服装まで似てるのは偶然か?w)。

●ミシェル

●マリーナ

マリーナは主人公(エリザベス)の友人で、残念ながら物語の途中で死んでしまうんですが、もしかしたらミシェルはマリーナの姉か妹という設定なのでは?と。だとすれば、「続編ではないが血の繋がりはある」というエイブラムス監督の言い方も腑に落ちます。果たして僕の予想は当たっているのか否か?

…と思って観に行ったんですけど、う〜ん…結局当たっているのかどうか良く分かりませんでした(笑)。そもそも主人公のバックボーンがほとんど語られないため、どこでどんな暮らしをしていたのか、姉妹がいるのかいないのか、全然わからないんですよ(もしかしたら身内なのかもしれないけど)。

あと、「外の世界で大変なことが起きて地下シェルターに避難している」という設定から、「巨大怪獣が街を破壊したから地上に住めなくなった?」=「『クローバーフィールド』の後日談?」みたいなことを想像してたんですが、最後まで観るとどうも違うような…。たぶんコレ、続編でもスピンオフでもないですねえ。

「だったら何で同じようなタイトルになってるんだ?」との疑問が出て来るでしょうけど、元々この映画の脚本は違うタイトルのオリジナル・ストーリーだったものを、ダン・トラクテンバーグ監督のデビュー作として目立たせるために、J・J・エイブラムスが『クローバーフィールド』という題名で公開した、と言われているらしい。

なのでまあ、「直接的な関連はほぼ無い」と言っていいでしょう。ただし、『クローバーフィールド』に登場した「スラッシュオ!(Slusho!)」という架空の清涼飲料水と、同じ名前の飲み物が今回も出てるので、世界観は繋がっているのかもしれません。

また、「若い女性が怪しい男に監禁されて脱出するまでの姿を描いた密室スリラー」として観れば、これはこれで十分に面白かったです。登場人物がたったの3人しかいないので話もシンプルだし、ジワジワと狂気が蔓延していく感じが地味に怖い。

特にハワード(ジョン・グッドマン)の”怪しい男ぶり”が強烈でしたねえ。「大気が汚染されて外には出られない」「火星人が攻めて来た」という怪しすぎる説明に、当然ミシェルは「頭がおかしいんじゃないの?」と疑うわけですが、ハワードの言葉を裏付けるような出来事が次々に起こり、「嘘なの?本当なの?どっち?」と疑心暗鬼になっていく。その様子が虚構と現実の境界を揺さぶり、物語をますます混沌とさせていきます。

それから、ストーリーの中で「気になる言葉」や「気になるアイテム」が出て来ると、それらが後半で役に立つという、非常に分かりやすい伏線を張ってあるのも親切で良かったです。冷却スプレーのくだりとか、「ああ、あれがここで出て来るのか」という伏線回収率が凄い(笑)。

賛否が分かれるとすれば、やはりラスト20分の展開でしょうねえ。それまでの雰囲気とは全く方向性が異なる”唐突な転調”に、「え?これってそういう映画だったの?」と驚く人が多数いた模様。「取って付けたようなクライマックスだった」という意見も、あながち間違いではないと思います。「ラストをどう判断するか?」で本作の評価は大きく変わってくるでしょう。

なお、個人的な感覚で言わせてもらえば、ああいうラストなら「予告編でその場面を見せちゃダメだろ」と思うんですよ。「ハワードの妄想だと思っていたら、実は本当に宇宙生物が攻めて来ていた!」という部分が本来サプライズであるはずなのに、事前にオチをバラしてどーすんだ?と。本作に関しては「ポスターや予告編を見るんじゃなかった〜」とつくづく後悔しましたねえ(-_-;)

いや、最初に公開した予告編なら問題なかったんですよ↓

これだったら、地下シェルターの様子しか映っていないし、主人公がどうやって脱出するのかハラハラドキドキ感も伝わるし、「外の世界はどうなっているんだ?」という興味も引っ張ることが出来るでしょう。まあ「画面が地味でインパクトが弱い」と判断したのかもしれません。でも、新しい予告編はほぼラストシーンまで見せちゃってるからねえ…

というわけで『10 クローバーフィールド・レーン』は、「密室サスペンス」で始まり、「ミステリー・ホラー」的な展開でビビらせ、最後は「SFアクション」で終わるという、ジャンルを超越したハイブリッドな映画としてなかなか楽しめましたよ。ただ、こういう映画の場合は、宣伝にもうちょっと気を遣ってもらいたいなあと思いました(^_^;)

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