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どうして映画監督の紀里谷和明は嫌われるのか?


最近、映画監督の紀里谷和明さんをテレビで見かける機会が増えている。10月29日放送の『ダウンタウンDX』や11月8日の『ワイドナショー』、15日の『行列のできる法律相談所』や16日の『しゃべくり007』、そして22日の『ボクらの時代』など、やたらとテレビに出まくっているのだ。

これは新作映画『ラスト・ナイツ』の宣伝のためなんだけど、テレビで見る紀里谷監督はとても気さくな雰囲気で、「食べる物に全く興味がなく3日間野菜ジュースだけで過ごした」とか、服を4着しか持ってないから「スーツを着てキャンプに行ったり野宿をしていた」等、様々な面白エピソードを披露している。

そんな愉快な紀里谷監督だが、映画監督としては世間から嫌われているそうだ。理由は「日本映画界をバカにしたから」とのこと。いったいどういうことなのか?以前、テレビ朝日系のバラエティー番組『しくじり先生』に出演した際に、自分自身の”しくじり”を赤裸々に語っていたので詳しく検証してみたい。

紀里谷監督といえば、元奥さんの宇多田ヒカルさんのPVを撮ったことで注目され、2004年に長編映画CASSHERN』で監督デビュー、斬新過ぎる映像が大いに話題になったクリエイターである。しかし元々はカメラマンで、映画作りとは何の関係もなかったのだ。

ところが、ある雑誌のインタビューで日本の映画について聞かれた際、「日本で成功してる映画監督は異業種の人ばかりじゃん」、「予算の少なさを言い訳にしてすぐに”日本じゃ無理”とか言いやがる」、「なんで世界に通用する映画を作らないの?」などとボロクソに貶してしまったのである。

当時の紀里谷監督はミュージックビデオの監督として優れた映像をたくさん撮っていたものの、本格的な長編映画の経験は全くのゼロ。短編映画すら撮ったことがなかった。そんなド素人が日本映画を思い切りバカにしたわけだから、当然「なんて生意気なヤツなんだ!」と批判が殺到したらしい。

すると、「だったら映画を撮ってやる!」と言わんばかりに『CASSHERN』の製作が決定。しかも、「『CASSHERN』が日本映画を変える!紀里谷和明が変える!」みたいな煽り文句がドーンと雑誌に載ってしまい、「こいつナメてんのか!?」とますます嫌われる状況に陥ってしまう。

だが、撮影を開始してからも紀里谷監督の暴走は止まらなかった。なんとPVやファッション業界のスタッフを全員引き連れて現場へ乗り込み、「映画は映画業界の人たちが作る」というしきたりを完全に無視したのである。おまけに、業界歴が長い助監督を次々クビにするなど、やりたい放題だったらしい。


これにはベテランの映画スタッフも大激怒。「あいつは何様なんだ!」と不満を爆発させるが、紀里谷監督は全く聞く耳を持たず、「映画なんてPVよりもちょっと尺が長いだけじゃん!」と言い放つ。どうやら「2時間の映画って、3分のPVを40本撮るようなもんだろ?」という感覚だったらしい。

結局、『CASSHERN』は興行収入15億円のスマッシュヒットを記録したものの、映画評論家からはボロカスに酷評されてしまった。これについて紀里谷監督は「某映画サイトの採点は100点満点中15点。”延々と会話し続けるだけの映画だ”と批判された」といまだに根に持っているようだ(ちなみに15点という低評価を下した映画サイトは「前田有一の超映画批評」であるw)。

挙句の果てに「これは映画じゃない」とまで言われ、「宇多田ヒカルのPVの拡大再生産の域を超えていない」と完全否定される始末。これらの酷評を知った紀里谷監督は、「『CASSHERN』で日本映画に新しい風を送り込めるはずだと期待していたのに…」と激しく落ち込んだらしい。


そんな数あるバッシングの中で、「映画として2時間もたない」と厳しく批判していたのが、映画コメンテーターの有村昆だった。しかも有村はこの『しくじり先生』に出演中。「恨みを晴らすチャンス!」とばかりに突然「あの時、僕の映画をバカにしてましたよね?」と紀里谷監督に突っ込まれた有村昆は、「いやいやいや!」と焦りまくり。

そして、「たしかに批判はしましたが、3分のPVと2時間の映画は、全然違うと僕は思ったんですよ。『CASSHERN』はそれまでの日本映画のセオリーや方程式をあまりにも逸脱していたので…」と必死に反論。しかし、それを聞いた紀里谷監督は「そういう批判は、ありきたりの映画批評家から散々言われましたよ!」、「セオリーとか方程式なんてクソくらえだ!」と映画コメンテーターの有村昆に怒りをぶつけたのである。

さらに、「『CASSHERN』を撮った後、ハリウッドから大量のオファーが来ました」、「僕の映画は、日本のワケのわかんない批評家たちにはどうせ理解してもらえないんですよ!」とノリノリで喋る紀里谷監督。一方の有村昆はタジタジ。散々罵声を浴びせかけた紀里谷監督は「いや〜、今日は気持ちいいですね。1回批評家にボロクソ言ってやろうと思ってたんですよ!」と実に気持ちよさそうだった。

今回の『しくじり先生』では、期せずして「映画監督 VS 映画批評家」という直接対決の構図になっている点が興味深い。例えば、有村昆が「『CASSHERN』のクライマックスで、登場人物が自分の気持ちを全部言葉で説明している。ここはもうちょっと工夫すべきだったんじゃないでしょうか?」と指摘。

すると紀里谷監督が、「それは単なるセオリーでしょ?僕もバカじゃないからそのくらいのセオリーは知ってます。でも僕がやってるのは新しい可能性の提示なんですよッ!」と全面的に反論するっていう(笑)。いったい、紀里谷監督のこの自信満々な態度はどこから生まれてくるのだろう?

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ちなみに批評家からは貶されたが、意外と好意的な意見も多いようだ。

紀里谷監督のメンタリティはそのイケメンな風貌とは裏腹に、かなり泥臭くて情熱的、かつ世の中の”常識”に対して反抗せずにはいられない”ロック”な性格であるらしい。中学2年の時に学校を中退して単身アメリカへ渡り、写真や絵画などのデザイン技術を学ぶなど、破天荒すぎる少年時代を送った紀里谷監督は、幼い頃から日本人離れした自己主張を身に着けていたという。

その自己主張の強さは過去の発言を見ても明らかで、言葉の端々から「俺ってすごいやろオーラ」がダダ漏れに出まくっているのだ。以下、それらの紀里谷語録をいくつか取り上げてみよう。


・「映画にはまだまだ色んな可能性がある。俺は常に新しい可能性を追求していきたい。そして、それを潰そうとする社会に対しては徹底的に戦う」

・「条件さえそろえば、俺は『タイタニック』よりも凄いものが作れる」

・「崖っぷちギリギリ。どれだけいけるかしかない、人生なんて」

・「俺はのび太が大嫌い。のび太って文句ばっかじゃん。愚痴ばっか言ってるじゃん、あの人。それをドラえもんが救うだろ?甘やかしすぎだよ。あれは良くない、子供の教育上」

・「俺は”ほどほど”って感覚がわからない。何でも限界までやってしまう。やらないと気が済まない。だから、”ほどほど”が出来る人が本当にうらやましい」


いかがだろうか?どれも自信に満ち溢れた力強いコメントばかりで、言葉だけを聞くとカッコよく聞こえてしまうが、何故かイマイチ納得できないのが不思議である。なんか、言ってることが北村龍平監督と同じなんだよねえ。北村監督も、高校を中退した後、一人でオーストラリアへ渡って映画の勉強をしていたり、紀里谷監督と境遇がよく似ている。そして発言内容も…↓

今の日本には、自己主張せずに人目ばかりを気にするような人間が多すぎる。俺はそういう保守的なセコイ思考を徹底的に拒否して、自分の道だけを追求してやってきた。映画は人間同士で作るものだから、監督自身にパワーとパッションとチャーミングさが無いとダメだ。ハリウッドの映画監督はみんな、見た目からして全然違う。俺は日本では「生意気だ」とか「自信過剰だ」と陰口を叩かれるが、そもそも自信が無ければモノ作りなんてできるはずがない。 「北村龍平監督2004年のインタビュー」より


どうやら北村監督も紀里谷監督も「日本で自分は嫌われている」という自覚はあるようだ(笑)。もちろん、監督が偉そうなもの言いをすること自体は別に悪くない。自信満々な態度も大いに結構。ただ、映画監督というものは、本人の人格がどうであれ、最終的には出来あがった作品で評価される。そうなると「お前の映画はあんなに批判されてるのに、なに偉そうなこと言ってんだ!」となるのは当然だろう。

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映画は一応ヒットしたものの、世間の評価はイマイチ。カスタマーレビューでもメチャクチャ批判されている。

もし紀里谷監督の映画が誰の目にも面白く、ぶっちぎりの大ヒットを記録していれば、数々の強気な発言も説得力が増し、「さすが紀里谷監督だ!」と肯定的に受け入れられたに違いない。しかし、どちらかと言えば賛否が分かれるジャンル映画であったが故に、これらの発言が全て上から目線に聞こえてしまい、「お前はいったい何を言ってるんだ?」と批判が殺到する結果に。

また、日本の文化は”謙虚さ”を美徳とする風潮があるため、紀里谷監督のように自己主張が強すぎる人間は、どうしても世間の風当たりが厳しくなってしまう(バッシングされやすい)。つまり、世の中には古い掟や暗黙のルールがあって、それに従わない者はプレッシャーをかけられるという”同調圧力”みたいなものが働いたのではないかと。

こういう人を見ると「日本で仕事するのが窮屈なんだろうなあ」と感じてしまう。だからこそハリウッドへ行ったのだろうけど、「ハリウッドでいい映画を作れるかどうか?」はまた別の問題なわけで。「現場では自己主張しまくり、テレビに出る時だけ謙虚なフリをする」っていうのが最も現実的な対応策だとは思うのだが、いまさら無理だろうね(^_^;)


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紀里谷監督作品第2弾。『CASSHERN』よりも娯楽性はアップしているものの、自己主張の強さは相変わらず。

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あのジャン=リュック・ゴダールも絶賛したという北村龍平監督の最高傑作。好き嫌いは分かれるだろうが一見の価値あり。

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