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映画『キングスマン』ネタバレ感想/評価/解説


■あらすじ『ロンドンの高級テーラーキングスマン”で仕立て職人として働く英国紳士のハリー・ハート(コリン・ファース)。その正体は、秘密裏に正義を遂行する国際的なスパイ組織“キングスマン”のベテラン・エージェント”ギャラハッド”だ。ある日、エージェントの一人が何者かに殺害され、その欠員を補充するためハリーは、貧困地区の若者エグジー(タロン・エガートン)をスカウトする。彼の父は元キングスマンのエージェントで、17年前、その自己犠牲的行為でハリーを救った命の恩人だったのだ。こうして、父の後を継ぐべくキングスマンの過酷な新人試験に挑むことになったエグジー。一方ハリーは、天才IT富豪のリッチモンド・ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)が進めていた恐るべき陰謀の謎を追っていくが、衝撃の結末が彼を待ち受けていた!「キック・アス」のマシュー・ヴォーン監督と原作者のマーク・ミラーが再びタッグを組み、「英国王のスピーチ」の名優コリン・ファースを主演に迎えて贈る痛快バイオレンス・スパイ・アクション!』


※以下の記事はネタバレしています。まだ映画を観てない人はご注意ください。


キック・アス』のマシュー・ヴォーン監督最新作キングスマンを観て来ました。結論から言うと「非常に面白かった!」です。相変わらず、壮絶なアクションと軽快な音楽の組合せ方がぶっ飛んでいて、大笑いしながら鑑賞しましたよ。

キック・アス2』にはあまりノレなかった僕ですが、この映画は良かったですねえ(評価としては、『キック・アス』 > 『キングスマン』 > 『キック・アス2』みたいな感じ)。古き良きスパイ・アクション映画を現代風にアップデートした内容と、全体に漂うブラックなコメディ要素が抜群の相性でしたよ。

まず良かった点から書くと、「メガネとスーツをビシッと着こなした英国紳士が無類の強さで敵をやっつける」という設定がいいですね。007のジェームズ・ボンドもクールでカッコいいんだけど、基本的に女にモテるじゃないですか?つまり「男として魅力があり、最初から強そうに見える」んです。

それに対してコリン・ファースが演じるスパイは、「礼儀正しくて真面目なサラリーマンにしか見えない男が、実はムチャクチャ強かった」という意外性がいいんですよ。最近の例で言えば、『96時間』リーアム・ニーソンみたいに、「一見すると冴えない中年オヤジがド派手なアクションを繰り広げる」ってパターン。

あるいは、『イコライザー』のデンゼル・ワシントンのように、ホームセンターで働く普通のおっさんが、強面のロシアン・マフィアをボコボコにしばき倒すというシチュエーションです。「えっ!この人こんなに強かったの?」という驚きを与えつつ敵を瞬殺するカッコ良さ。これは燃える!

しかもそのアクションが本当に凄まじくてビックリ。『キック・アス』を観た人ならご存知の通り、人間の手足がバンバン千切れ飛ぶような血みどろの地獄絵図が、ポップで楽しい音楽に乗せて延々繰り広げられるという、毎度お馴染みの悪趣味な映像がテンコ盛りなわけですよ(^_^;)

これ、マシュー・ヴォーン監督を知らない人や、『キック・アス』を観たことがない一般のお客さんが予告編だけ見て「なんか面白そう」とうっかり劇場へやって来たら、ド肝を抜かれるんじゃないですかね?あまりにも表現がグロすぎて。まあ、一応R15指定になってますけど……どうなんだろ?

ただ面白いのは、そういうグロい表現が、一部自主規制(?)みたいになっているところです。それは「悪い奴によって体内に装置を仕掛けられた人間の頭部が木っ端微塵に爆裂する」というシーン。要は『スキャナーズ』における「脳みそバーン!」のあのシーンなんですが…。

さすがのマシュー・ヴォーン監督も「アレをリアルにやるのはマズい」と思ったのか、ある”特殊な処理”が施されているのです。なんと、派手に飛び散る脳みそや血飛沫が色とりどりの綺麗な光として描写され、その光景がまるでボーン!ボーン!と連続して打ち上げられる花火のように見えるのですよ。

まさか「爆裂する脳みそ」をこんな風に表現する人がいるとは思ってもいませんでした。『あしたのジョー2』で、初めて光るゲロを見た時以来の衝撃です。しかもバックに流れる音楽が、イギリスの作曲家エドワード・エルガーが作曲した『威風堂々』!とにかくまあ、色々ヒドいですよ。悪意に満ち溢れてて(笑)。

その悪意が頂点に達する名(?)場面が”教会での大殺戮シーン”でしょう。敵のボス(サミュエル・L・ジャクソン)が無料配布している特殊なSIMカードを入れたスマホから「人間を凶暴化させる電波」が発信され、大勢の人間が殺し合いを始める、という場面です。このシーンの凄まじさたるや、まさに人体破壊見本市!

ナイフで手足を切り裂き、オノで脳天をカチ割り、折れたイスの脚で喉を貫き、ライターの火で顔を焼き、小型爆弾で体を吹き飛ばし、あたりかまわず銃を乱射しまくり、弾が尽きたら銃を分解してスライド部分を目玉に突き刺すなど、「よくこんなに人殺しのバリエーションを思い付けるなあ」と感心するぐらい色々な殺戮パターンを繰り出しています。

しかもその時に流れているBGMがレーナード・スキナードの『フリー・バード』という曲なのですが、このバンドは昔からアメリカ南部の白人たちにとても人気があるらしいんですね。で、そのバンドの代表曲を、アメリカ南部の白人たち(差別主義者)が皆殺しにされるシーンで流し続けるっていう、物凄い嫌味なことをしてるんですよ。ムチャクチャですよね(笑)。なお、劇中で流れるのはギターソロの部分です。

基本的に、マシュー・ヴォーン監督の作風を一言で述べるなら、「バイオレンス・アクションと不謹慎な笑いのコラボレーション」ってことになると思います。なので笑える人はいいんですが、そういうのが受け入れられない人にはちょっと合わないかなあと(^_^;)

それから、色んな秘密兵器が次々と登場してたのも面白かったですねえ。つま先から鋭い刃が飛び出す「毒ナイフ付き革靴」や「毒薬入りのペン」みたいなレトロなスパイグッズの他に、「他人の記憶を消去する腕時計」や敵に5万ボルトの電流を流す「スタン・リング」のような近未来的アイテムなど、スパイ映画ならではの楽しいグッズが満載でした。

中でも、一見すると高級紳士傘のように見える特殊銃、通称「ガンブレラ」が良かったです。米ソ冷戦時代は実際にこういった「仕込み銃」みたいなものが開発・使用されていたそうですが、本作では高強度ケブラー製の傘で弾丸を跳ね返し、裏側に設置された超薄型ディスプレイで敵を照準するなど、完全なハイテク兵器と化しています。

なお、小説や漫画やアニメ(『ブラック・ラグーン』のロベルタ)などでは昔からこういう傘は登場してたんですけど、実写では『キングスマン』が初めてなのかな?と思ってたんですよ。ところがなんと、日本のゴスロリ処刑人』という作品ですでに実写化されていたことが判明。

使い方も『キングスマン』と全く一緒で、「傘で防御しながら敵を狙って銃を撃つ」というガンアクションをそのまま映像化していました。しかも『キングスマン』は単発なのに、『ゴスロリ処刑人』の傘はマシンガンのように連射ができる点が優れています(でも、弾倉はどこにあるんだろう?)。

●『キングスマン

●『ブラック・ラグーン

●『ゴスロリ処刑人』

それから冒頭のシーンで『スター・ウォーズ』のルーカ・スカイウォーカーことマーク・ハミルがチョイ役で出演していました。最初全然気付かなくて、「どこかで見たことあるな…」と思いつつ、エンドロールで「マーク・ハミルだったのか!」と(笑)。ちなみに敵のボスはジェダイのメイス・ウィンドゥです(^.^)

あとは、敵のボスの用心棒として登場している”ガゼル”という女の殺し屋みたいな人。素晴らしい存在感でしたねえ!この女、両脚が義足になってて、先端に鋭い刃が装着されているのですよ。この武器を使って繰り出される足技の数々が凄まじい威力で、襲い来る大勢の敵をたった一人で撃退し、胴体を真っ二つに切り裂くなど無敵の殺傷力を見せ付ける場面は必見と言えるでしょう。

ちなみに、ガゼル役を演じたソフィア・ブテラという人は、5歳の頃からダンスを習い始めた本物のダンサーで、2005年からマドンナのダンサー・チームに参加し、2012年まで中心的なメンバーとして活躍したほどの実力の持ち主だそうです。道理でアクションが凄いわけだ(笑)。

というわけで、概ね満足できる内容だったんですけど、ちょっと終盤の展開がね……どうかな〜?っていう部分があるんですよ。要は、コリン・ファース演じるハリーが例の教会のシーンの後で殺されちゃうんです。ええ、そりゃあもうビックリしましたよ。「え?ここで死んじゃうの?」と。てっきりクライマックスの場面で死んだはずのハリーが颯爽と現れて、ピンチに陥ったエグジーを救出するのかと思ったら、実は本当に死んでいたという(笑)。

確かに「若者の成長譚」としてはアリなんでしょう。他の映画でも「才能ある主人公が師匠に出会って修行するものの、その師匠が敵に殺されたため怒りに燃えて仇を討つ」という展開はよくありますから。ただ、それならそれで、ハリーとエグジーの関係性をもっと深めるようなエピソードを入れた方が良かったんじゃないかなあと。

この映画では、ハリーがエグジーをスカウトしてスパイ養成学校に連れて行った後は、主にマーリン(マーク・ストロング)が教育係として指導しているだけで、ハリーがエグジーと絡むシーンはあまり無いんですよね。だからハリーが死ぬ場面も唐突に見えてしまい、エグジー側のドラマ性がいまいち感じられないのですよ。

もちろん、本作は『007』シリーズよりも更に荒唐無稽なスパイ・アクションなので、深いドラマ性は必要ないという意見もあるかもしれませんが、ああいう展開になるならその辺をもっと丁寧に見せた方がストーリー的にも盛り上がったのでは?と思った次第です。

だがしかし!実はこの『キングスマン』には続編の計画があって、次回作にハリーが再登場するかも?と噂されているのですよ。20世紀フォックスによると、「2016年4月から『キングスマン2』の撮影を予定している」とのことで、原作者で製作総指揮のマーク・ミラーも「コリン・ファース再出演の可能性」を示唆しているそうです。

もしハリーが生きているなら、確かに今回のような展開もアリかもしれません。ハリーが死ぬ瞬間もはっきり映っていなかったし、死んだ後の状況もあやふやなままで終わってましたからね。次回作でハリーが復活する可能性は高いでしょう。というわけで続編への期待も込めて、『キングスマン』非常にオススメです(^O^)/


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