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アリか?それともナシか?実写版『寄生獣』ネタバレ映画感想/評価

■あらすじ『ごく普通の高校生・泉新一は、ある時”パラサイト”に寄生されてしまうが、偶然にも脳への寄生を免れ、右腕に寄生される。新一の身体全体の乗っ取りに失敗したパラサイトは、やむを得ず自らを”ミギー”と名乗り、新一に互いの生存のために協力し合うことを提案。こうして、奇妙な共生生活を受け入れるハメになる新一だったが、やがて他のパラサイトに遭遇し、壮絶な戦いに巻き込まれてゆく……。染谷将太橋本愛阿部サダヲ深津絵里浅野忠信北村一輝東出昌大大森南朋國村隼など豪華キャストが集結!岩明均の世界的ヒット・マンガを「ALWAYS 三丁目の夕日」「永遠の0」の山崎貴監督が実写映画化したSFサスペンス超大作!』



本日、金曜ロードSHOW!にて実写映画版寄生獣がテレビ初放送される。これは、昨年11月に公開された『寄生獣』の前編で、明日25日からは第2部にあたる『寄生獣 完結編』が上映予定となっており、いわゆる番宣的な放送だ。

こういうものって普通、ブルーレイやDVDが発売された後に放送するんだけど、本作はまだ発売前なのにテレビで流すという大胆さ。「ずいぶん強気な宣伝だなあ」と思いきや、テレビ用に再編集した「特別版」なんだとか。たぶん、パラサイトが人間を捕食するグロいシーンとか、あちこち切ってあるのだろう。まあ、「ちゃんと観たい人は円盤を買ってね」ということか。

それはともかく、僕はこの映画を劇場で観たのだが、実は観に行く前は少し不安だった。11月29日に公開され、初登場で首位になったものの、オープニング2日間の成績は動員が25万6161人、興収3億4033万7300円とやや微妙な数字。実写版の『ルパン三世』が2日で4億4000万円を稼いでいるのに比べると、少々物足りない印象である(※最終的な興収は20億程度)。

加えて世間の評判も、「なんか実写の寄生獣のCGってショボそうじゃね?」とか「嫌な予感しかしないんだがw」とか「あの原作を実写化なんて絶対無理!」など、良くない意見ばかりが目立ち、ますます不安が募っていたのだ。ちなみに、鑑賞前の時点で僕が気になっていた主なポイントは次の三つ。

1:グロい描写をどこまで再現しているのか?
2:原作とどれぐらい違うのか?
2:クサい展開になっていないか?

というわけで実際に映画を鑑賞した上で、これらの不安要素が「解消されているのか?あるいはダメなのか?」を検証してみたい。なお、僕個人の山崎貴監督に対する印象は、特に好きでも嫌いでもなく割とフラットな感じ。世間的な評価がメッチャ低い実写版『宇宙戦艦ヤマト』については「さすがにちょっと…」と思う部分もなくは無いが、『永遠のゼロ』に関しては「結構面白いじゃん」という感想だった。

また、原作漫画の『寄生獣』については、”原作厨”というほどのフリークではないものの、友人から勧められて読んだらあまりの面白さに全巻一気読みしてしまい、以来現在に至るまで時々読み返す程度のファンではある。……とまあ、一応そういうスタンスでこの実写映画版『寄生獣』を判断・評価していると思っていただきたい。

まず上記の「不安点1」(グロ描写の再現度)に関して。原作を読んだ人は知っての通り、漫画『寄生獣』には人間が喰われたり、手足がバラバラにされるなどグロテスクなシーンが多数見受けられる。実写化において、これら”人体破壊描写”をどうするのか?というのがファンの関心事であり、製作側の課題でもあったようだ。

そもそも映画には「レイティング」というものがあり、映画倫理委員会映倫)の審査によって「その映画を見ることができる年齢制限」が規定されている。

例えば、R-18に指定された映画の場合、18歳未満の入場・鑑賞が禁止され、成人映画と同じ扱いを受けてしまうのだ。このレイティングに指定されると、広告やCMでの宣伝が事実上不可能になり、公開する映画館数も大幅に減少するなど、映画会社にとっては大変不利な状況に陥ってしまう。

しかし原作漫画の『寄生獣』は、手足が吹っ飛び、内蔵が引き千切られ、頭が地面に転がるなど、まさにグロい描写のオンパレード!なので当然ながら、「最低でもR-15指定(15歳未満の入場・鑑賞が禁止)を食らうのは間違いないだろう」と言われていたのだ。ところが、まさかのPG-12(成人保護者の助言や指導があれば12歳未満でも鑑賞可能)にとどまっている。

これを聞いて、「レイティングを守るためにグロい描写を大幅にカットしたんじゃあるまいな?」と不安視してたんだけど観てビックリ!予想以上にしっかりと原作を再現しているではないか!パラサイトとの戦闘シーンはもちろん、人肉を食らうシーンなど、ほとんどのグロ場面を省略することなくきっちりと描いている。クライマックスの”校舎内の大殺戮”も驚くほどのクオリティで映像化しているのだ。こりゃすごい!

どうやら山崎監督は、原作の残虐シーンを出来るだけ忠実に再現するために、レイティングの基準についてかなり勉強したらしい。

いやもう、今回はPG-12の限界点を探るという作業の連続で、たぶんいま日本で一番PG-12に詳しい監督だと思います(笑)。人間を食べる描写はいいけど、そこから肉体を切り離してはいけないとか、相当調べましたよ。プロデューサーにかなり何度も映倫に通ってもらいましたし(笑)。

その努力の甲斐あって、非常に見事な人体破壊シーンを実現していた(逆に、ホラー映画やスプラッター映画などが苦手な人にはちょっとキツいかもしれない)。

次に「不安点2」(原作との差異)に関しては、ストーリーや設定など大小様々な変更が見られる。例えばパラサイトの起源について、原作では空から(宇宙から?)降ってくるのに対し、映画版では海から現れるのだ。これは「人類に対する地球からの警鐘」という意図を、より内的な自己制御として見せるために、”地球(ガイア)の意思”みたいなものを強調する意味で変更したらしい。

この変更に関しては原作者の岩明均さんも納得しているらしく、「そもそも自分が漫画でああいうシーンを描いたせいで、”パラサイトは宇宙からやってきた”と多くの読者に勘違いさせてしまいました。あれは、人間の棲みかに万遍なく到らせようという意図だったんですよ。山崎監督は、パラサイトが”地球産”であることを正確に読み取り、かつ誤解なく明確に表現するために映画版のような設定にしたのだと思います」と述べていることから、ほぼ原作の主旨に則ったものであるようだ。

また、主人公の仲間になる人物(宇田)やパラサイトを見分けられる少女(加奈)など、原作では結構重要だったキャラたちも大胆に省略され、関連エピソードも改変されている。この辺はまあ、「全部入れると3部作でも収まらない」という事情が容易に推測できるため、やむを得ない措置ではあるだろう。

そんな中でも、個人的に最も気になった変更点は、主人公が母子家庭になっているところだ。原作では父親が存在し、夫婦で旅行に出かけた際に現地でパラサイトに襲われ、母親が寄生される…という展開だったが、このエピソードが大幅に変更されている。

映画版では、警察官に寄生したパラサイトAと新一が戦い、致命傷を負ったパラサイトAが母親を見つけて寄生する…という流れになってるんだけど、戦闘直後の現場に偶然母親が現れるって無理がなくない?パラサイトAにしてみれば、たまたま通りがかった人に寄生したら、たまたま自分をやっつけた新一の母親だった、ということになるわけで、(いくら自宅の近所とはいえ)ちょっと有り得ない確率だ。

さらにその後、田宮良子が新一にパラサイトAの居場所を教え(なぜ?)、新一が一人で母親に寄生したパラサイトAを倒しに行く、という謎の展開になっている。この辺も原作とは大きく異なり、話の流れ的にはちょっと納得できない部分ではあった(「なぜ平間警部補は関西弁を喋っているのか?」という点も納得できないがw)。

ちなみに、映画公開前のキャストのインタビューで、母親役を演じた余貴美子さんが「寄生されていても、子供に対する母の愛情が奇跡的にどこかに残っている感じをどう表現するか、そういう演技を心がけた」とコメントしたため、原作ファンから「おいおい大丈夫か?」と不安視されていた。しかし実際に映画を観てみたら、確かに母親の右手がパラサイトAの意思に逆らって動いているようだが、あくまでも「そういう風にも見える」という程度に抑えられていたので一安心。

原作者の岩明均さんも、「寄生したパラサイトと母親の肉体との相性が合わず、拒絶反応(不完全制御)を起こしているようにも解釈できるかな」とコメントしている。結果的に、母親の設定を変更したことでエピソードがシンプルになったのと同時に、”母親と息子の関係性”が強調され、全体のテーマが見えやすくなったと考えれば、まあ許容できる範囲だろう(カットしたことで”物足りなくなった”という意見も当然あると思うが)。

そして、不安点の3つ目(クサい演出)については、単に本作だけの問題ではなく、そもそも山崎監督の作風自体が過剰に観客のエモーションを煽る傾向が強いため、毎回”お涙頂戴”な演出が目立っていることが批判の対象になっていたのだ。しかし、実際に映画を観てみると全く問題は無かった。むしろ、過去の山崎作品に比べるとかなりあっさりした描き方で、『寄生獣』という物語では「これぐらいでちょうどいい」と感じるほどだった。

というわけで、実写映画版の『寄生獣』は予想以上に良く出来ており、「観て損は無い」と言えるレベルに仕上がっていると思う。

もちろん、「主人公やヒロインのイメージが違う!」とか「ミギーが阿部サダヲってどういうことだよ?」とか、色々不満点も無くはないが、漫画を実写映像化した作品としては十分に納得できるクオリティであり、一つの娯楽映画として見ても満足度は高い。ストーリー自体も、原作の4巻ぐらいまでをベースに色んな場面をくっつけたり省略しながら、上手くまとめているのではないだろうか。

今回は二部構成の前編なので話が途中で終わっているのがやや物足りないが、「後編も観たい」と思わせる魅力がある。特に山崎貴監督にしては、珍しく”泣かせる方向”へ持って行ってないのが何よりも良かった(笑)。

問題は、残りのエピソードを完結編だけで全部描き切れるのか?という点だろう。前編は上映時間がたったの109分しかないため、かなりタイトな構成になっているのが気になったが、後編も決して長い尺ではない。2時間半ぐらいの2部作にした方が良かったような気がするなあ(できれば最後まで楽しませて欲しいんだけどね)。


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