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武田梨奈主演の空手映画『ハイキック・ガール!』ネタバレ感想


■あらすじ『美しい高速ハイキックを得意技とし、男子顔負けの強さで道場でも一目置かれる女子高生空手家の土屋圭(武田梨奈)。しかし、師匠の松村からは地味な型の稽古ばかりを命じられ、苛立ちが募っていた。自分の強さを証明したいと焦る圭は、“黒帯狩り”と称して腕に覚えのある空手家たちに戦いを挑んでは、得意のハイキックで次々となぎ倒していった。師範の松村は「強くなるためだけが空手ではない」と圭を非難する。だが「型稽古は実践で役に立たない!」と反論する圭は、やがて格闘界のアウトロー集団“壊し屋”にスカウトされることに。しかしそこには、彼女のまだ知らない恐るべき陰謀が待ち構えていたのだった!』



最近、テレビ等で良く見かける武田梨奈という女優さんをご存じだろうか?名前は知らなくても、「かわいい女の子が頭突きで瓦を割るCM」と言えば思い出す人も多いだろう。以前からドラマやCMで活躍していた彼女は、このセゾンカードのCMで本格的にブレイク。可愛らしい姿からの「頭突きによる瓦割り」という、インパクト抜群の映像で一気に話題となり、実写映画版『進撃の巨人』に出演決定、さらには海外のメディアからも注目されているらしい。本日は、そんな武田梨奈ちゃんが初主演した映画について書いてみる。

映画『ハイキック・ガール!』はその名の通り、高校に通う少女がキックやパンチを繰り出し、ガチンコで空手をする映画だ。しかも「空手の型は実戦で本当に役に立つのか?」「役に立たなかったらどうするのか?」という空手家にとって一大事のテーマを、ワイヤーもスタントもなしで本気で実践して見せた驚くべき作品なのである。

「思い切りリアルな本物の格闘シーンを撮りたい!」と考えた西冬彦監督が初志を貫徹した結果、「1本芯の通った」というよりも、「芯しか見あたらない」異色のアクションムービーが完成した。こんなとんでもない映画を撮った西冬彦とは、一体いかなる人物なのか?

西監督は、早稲田大学在学中に20本以上の自主制作映画を撮り、卒業後は映画配給会社ギャガ・コミュニケーションズで『少林サッカー』や『マッハ!』などの買付を担当。しかし、「世界の映画を輸入するばかりじゃダメだ!日本から世界へ輸出できる本物のアクション映画を作らなければ!」と決意し、退社後は映画『黒帯 kuro-obi』の企画と武術指導で本格的に映画を作る側に回った。

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空手家:中達也主演の空手アクション映画!本物の空手家同士が繰り広げる壮絶な対決が見どころ

『ハイキック・ガール!』はそんな西監督が自ら原作・脚本・プロデューサーを務めた初監督作品である。「制服姿の女子高生がリアルファイト」という、誰もが考えつきそうで実際の映像化は著しく困難なモチーフに、真正面から正々堂々とチャレンジしているのがすごい。

前作『黒帯 kuro-obi』で、本物の空手師範代を役者に仕立ててリアルファイトさせた西監督は、今回の映画でも「本物の武術」と「本物の格闘家」にこだわり抜いている。そのこだわりの最たるものが主人公の存在感だろう。

本作で主人公の土屋圭を演じた武田梨奈は、正真正銘の現役女子高生(撮影当時)だ。しかしその正体は、琉球林流空手道「月心会」にて武道を学ぶ、空手歴8年の黒帯少女である(段位は二段)。さすが10歳から空手を習っているだけあって、急造の役者には真似できない緊迫感溢れる雰囲気が漂いまくり。

さらに、その実力は全国防具空手道選手権大会や全関東選手権大会など、数々の大会にて優勝を収めるほどの実績の持ち主で、本作でも非常にハイレベルなテクニックを披露している(余談だが、過去にモーニング娘。のオーディションを受けて落ちたことがあるらしいw)。

そんな武田梨奈の師匠:松村を演じるのは、日本空手協会師範:総本部指導員の中達也。13歳より和道流空手を始め、拓殖大学空手部監督、目黒学院高校空手道部師範を経験。空手歴31年、段位は六段。全日本大会で何度も優勝を収めるなど、実力は折り紙付き。『ハイキック・ガール!』本編における存在感も抜群で、まさに”本物”にしか出せない圧倒的なオーラが満ち溢れている。

一方、主人公たちに敵対する”悪者”を演じる人たちも、格闘技界では一目置かれる面子ばかりがズラリと並ぶ。刺客の一人”空拳”を演じる八木明人は、国際明武舘剛柔流空手道の3代目館長だ。空手歴29年で段位は六段。前作『黒帯 kuro-obi』では主演も務めている。 

そして、武田梨奈と対決する”壊し屋軍団”の一員として”悪の女子高生”リンを演じるのは、”空手界のアイドル”小林由佳ちゃん。芦原会館西山道場に所属し、2005年全日本女子空手道選手権大会でチャンピオン、第3回ワールドカップで銅メダルを獲得するなど、可愛らしい顔からは想像もつかない圧倒的な強さで空手業界を震撼させた最強美少女である。ストーリー前半で武田梨奈と”ハイキック対決”するシーンはファン垂涎の素晴らしさ!

また、”壊し屋”の一人として出演しているのが元DEEP女子ライト級チャンピオンの渡辺久江だ。総合格闘技ムエタイ、キックボクシング等、数々の武術に挑戦し続けており、ついたあだ名が”格闘ジャンヌダルク”!かっこいい!

このように『ハイキック・ガール!』に出演している人達は、ほぼ全員が現役の空手家または格闘技の達人ばかりなのだ。西監督は「マジで突きや蹴りをあて合うならば、キャストには格闘技に精通した強者たちを起用するしかない」と考えたらしく、並み居る出演者の顔ぶれからして、この映画がいかに”リアルな格闘シーンありき”で作られたものかがよくわかる。

その他の出演者は以下の通り

●美里ゆう/グラビアアイドル(糸東流伝統空手 7大会連続優勝保持者)
秋元才加/AKB48メンバー(合気道二段)
●杉山綾/アクション女優 ジャパンアクションエンタープライズ所属(旧JAC
神尾佑/俳優(極真空手二段)
前田瑠美/女優(極真全日本女子チャンピオン・極真空手二段・太極拳五段・伝統空手五段)

さらに、画面にちょっとしか映らないようなエキストラに至るまで空手有段者を配置するなど、本作は常識では考えられないほど”純粋な役者”の数が少ない。その結果として”全員演技がヘタクソ”という弊害が生じているものの、「格闘シーンにおけるリアリティ」は間違いなく向上している。なんせ、本物の格闘家が本当に殴ったり蹴ったりしているのだから!

こういう映画を撮る場合、大きく二つの選択肢があると思う。一つは「俳優に格闘技の練習をさせる」パターン。そしてもう一つは「格闘家に演技の練習をさせる」パターン(もちろん”演技が上手いアクション俳優”を確保できればそれにこしたことはないのだが、なかなか難しい)。

一般的には前者の場合が多く、キアヌ・リーブスにカンフーの特訓をさせた『マトリックス』などはその成功例だろう。ただし、2〜3ヶ月程度のトレーニングでは大した技術が身に付くはずもなく、『マトリックス』でもせいぜい”なんちゃってカンフー”の域を出ていないのは明白だった。

一方、後者の場合はそもそも世の中に”演技がヘタな大根役者”というものが普通に存在しているので(笑)、いくらでも問題を回避する方法はある。例えば、演じるキャラを「真面目で無口な青年」という設定にしてしまえば良い(『マッハ!』のトニー・ジャーは元スタントマン)。これなら、多少不自然ではあるが、演技のヘタさがバレにくい。あるいは、もっと極端に「病気等でしゃべれない」という設定にしてしまうのもアリだろう。

または、「殺し屋」という設定にすれば、「殺し屋とは無口なものだ」という前提があるから、セリフが少なくても違和感は無い(例:『スパルタンX』のベニー・ユキーデなど)。多少演技力が不足していても、その結果迫力ある格闘シーンが撮れるのであれば利用しない手はない。

『ハイキック・ガール!』もまさに後者の方法を選択したわけだが、ただしやり方がちょっと極端だ。なんせ、主人公以外をほぼ全員殺し屋(壊し屋)という設定にしてしまったのだから。このため、「主人公が向かって来る敵をひたすらやっつけていくだけ」の映画になってしまった。

当然、ストーリーは支離滅裂で敵の目的は不明だし、松村の背景もはっきりしないし、途中からは主人公が何のために戦っているのかすら良く分からなくなっている有様。だが、「本物の格闘家を使って本物のアクションを見せる!」というワンアイデアだけで一点突破してしまったその意気込みだけは賞賛に値すると言えるだろう。

というわけで、『ハイキック・ガール!』の見どころの一つは、ヒロイン役の武田梨奈(月心会)と小林由佳芦原会館西山道場)による一騎打ちだ。制服女子高生同士のまさにリアル・キャットファイト武田梨奈ちゃんはタイトル通り、前蹴り、横蹴り、後ろ回し蹴りなど、変幻自在な蹴り技を得意とする。そもそも防具(硬式)空手の月心会では、視界の狭さをカバーするため、回転系の蹴り技が発達しているらしい。

一方の小林由佳ちゃんはフルコンタクトの芦原会館だが、こちらもまた蹴り技(というより脚さばき)に定評がある。中でも、後ろ下段蹴りから後ろ回し蹴りへ変化する高速コンビネーションが実に見事。スローモーションで見るとつま先が上を向いており回転内回し蹴りを応用していることがわかる(変則内回し蹴り?)。

ただ、土屋圭のキャラがかなり性格の悪い女の子に設定されているので、小林由佳ちゃんと対決するシーンが「下級生をいじめている意地悪な先輩」にしか見えないのは困った問題かもしれないが(笑)。あと、劇中では由佳ちゃんの髪型がいまいち可愛く見えないんだよねえ。普段の髪型の方が良かったのに(参考までに動画を貼っておきます↓)。

あと、壊し屋の一人”跳華”のアクションも見逃せない名場面である。残念ながら、武田梨奈ちゃんとの直接対決シーンは無いものの、松村の道場に殴り込みを掛け、屈強な大男どもを高速回転ハイキックで次々となぎ倒していく場面は圧巻だ。

演じる杉山綾ちゃんは格闘家ではなく、ジャパンアクションエンタープライズ(旧JAC)に所属するスタントウーマンなのだが、クルクルと物凄い勢いでバク宙しながらガンガン蹴りをブチ込むその姿は、本物の格闘家にも全く引けを取らないド迫力!

彼女が披露するエクストリーム・マーシャルアーツ(XMA)は、実践的な格闘技というよりも、客に見せるためのアクロバット・パフォーマンスとしての意味合いが大きいため(アクション女優なのだから当然だが)、若干他のシーンに比べて違和感がある。

しかし、「あの〜、道場破りに来ちゃいましたあ〜」と言いながらメイドカフェのコスプレで道場に乗り込んで来る姿と、凄まじい勢いで高速キックを炸裂させる姿とのギャップが凄過ぎて、目が離せない名シーンに仕上がっているのだ。必見!(練習風景の動画です↓)

さらにこの映画は、フルコン、伝統派、硬式、沖縄古流など、空手の様々な流派の特徴がてんこ盛りで、なおかつムエタイ合気道・テコンドー・中国拳法・カポエイラ・キックボクシングなど、ありとあらゆる格闘技が堪能できる点も格闘技ファンにはたまらない仕様となっている。

注目の格闘シーンは「マジ当て」ゆえに迫力十分な上に、監督お気に入りのシーンはスローモーションで二度三度とリプレイするフェチぶりだ(スローを多用しすぎて肝心のアクションが間延びしているのは少々いただけないが)。しかも映画的な流れやテンポを一切無視した格闘シーン偏愛構成は完全に観客置いきぼりで、”マニアの域”としか言いようがない。そしてスローで見ると、蹴りや打撃が本当に当たっていることがはっきり確認できてブッたまげる。普通、映画でこんなことやらないよ!

まあ確かに、『マッハ!』や『トム・ヤム・クン』など、リアル・ヒッティングを売りにした映画は他にも存在する。しかし、そういう映画でも頭部への直接的な打撃は危険過ぎるため、撮影の際には目立たないようなヘルメットを被り、その上からカツラを装着してアクションに挑んでいるのだ(通称ヅラメット)。こうすれば、見た目は少々不自然になるものの、役者の危険性を大幅に軽減できる(『マッハ!』の撮影は、ムチャをしているように見えて、実は意外と安全対策には気を使っているのだ)。

ところが、『ハイキック・ガール!』では、どう見ても無防備な頭部に対して、ダイレクトにキックやパンチを叩き込んでいるではないか。当たった瞬間「グワ〜ン!」と衝撃で頭が揺れるシーンをスローで見せられる度に、「大丈夫なのかッ!?」と心配せずにはいられない。西監督曰く、「道場の稽古で意識が飛ぶのは良くあることですよ。場所が撮影現場に変わっただけで、空手家にとっては普通のことです」と全く気にしている様子はない。いやいや、ダメだろ(^_^;)

中でも一番衝撃を受けたのが、主人公の腕を燃やしながら攻撃を繰り出す必殺技”炎の手刀”だ。言っておくけど、これCGじゃないんだよ!武田梨奈の右腕に灯油をかけて、本当に火を付けてるんだよ!いくらアクション映画の撮影だからって、スタントマンでもない女子高生に普通こんなことやらせるか?完全にどうかしてる!

そんな”真正アクションバカ”の西監督、映画の後半シーンでは自ら”壊し屋”の一人に扮して大熱演。上半身裸で「うへへへぇ〜」と舌なめずりをしながら女子高生(武田梨奈)に襲い掛かるその姿は、監督でなければ即逮捕間違いなしの見事な変態ぶりで観客もドン引きだ。

さらにその後、武田梨奈ちゃんの本気の蹴りを、嬉々として何度も顔面に食らい続けるなど、非の打ち所の無いドM気質を堂々とアピール。「体を張った真剣な演技」と言えば聞こえはいいが、本物のマゾでなければ決して出来ない所業であろう。一緒に観た友人は、「誰だ、あの気持ち悪いおっさんは?監督はよくあんなヤツをキャスティングしたもんだなあ」と呆れ果てていたが、「いや、あれが監督なんだよ」とは最後まで言えなかったです…

というわけで、映画『ハイキック・ガール!』は「本気の格闘技」と「武田梨奈の魅力」を存分に堪能できる素晴らしい作品である。最大の欠点は「ストーリーが全然わからない」ということだが、見事なアクションシーンの前には取るに足らない問題だ。格闘技ファンならとりあえず観て損は無いだろう。つーか観ろ!

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