■あらすじ『嵐の翌日、デヴィッドは異様な”霧”に懸念を抱きながら息子と共にスーパーマーケットへ買い出しに出掛けた。すると濃い霧は人々でごった返すマーケットに迫り、ついには町全体を飲み込むように覆っていく。客がマーケットに缶詰状態となる中、霧の中に不気味な怪物が出現!一方、骨董品店の女主人:カーモディは狂信めいた発言で人々の不安を煽っていく。やがて霧の中のモンスターたちが襲撃を開始、店内は大混乱に陥った!原作者スティーヴン・キングとフランク・ダラボン監督が「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」に続いて再びコンビを組んだ驚愕のサバイバル・ホラー。霧(ミスト)の中に待っていたものは何か?映画史上かつてない、震撼のラスト15分!』
※今回の記事は完全にネタバレしています。映画を観ていない人はご注意ください!
「後味の悪い映画」、「バッドエンド」、「最悪の結末」、「鬱映画」などで検索すると、かなりの高確率でヒットする作品、それがスティーヴン・キング原作・フランク・ダラボン監督の『ミスト』です。
本日の午後のロードショーでは、そんな『ミスト』が放送されるので、観る際はそれなりに覚悟してご覧ください(笑)。ちなみに、他のバッドエンド映画の代表格としては、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と『セブン』がツートップと言われています。
この『ミスト』、僕は映画館で観たんですよ。『ショーシャンクの空に』の原作者スティーヴン・キングとフランク・ダラボン監督が再びタッグを組んで新作を撮った!という触れ込みに釣られてノコノコ観に行ったわけです。で、観終わった直後の感想は、皆さんの予想通り「うわあああ、こ、これはヒドい…!」って感じでしたねぇ。
いや、映画がヒドいんじゃなくて、物語の結末がヒドいんです。映画自体はとても良く出来ていると思いました。クリーチャーの造形や恐ろしい雰囲気、極限状態に追い詰められた人間達の愚かな行動など、キャラクターの描き方やドラマ展開、映像表現の数々は実に見事です。ただ、ラストがヒドい…
ストーリー的には物凄くシンプルで、ある日、街に霧が発生した → やがてその霧はどんどん大きくなり、街全体を覆い尽くす → たまたまスーパーマーケットに買い物に来ていた主人公 → すると突然お爺さんが「霧の中に何かいる!」と叫びながら飛び込んで来た → 霧の中から”見た事も無い不気味な生物”が出現 → 全員、スーパーマーケットに閉じ込められてしまう……と、ここまでが序盤の展開。
この後はひたすらスーパー内部での描写が続き、「出て行こう!」「いや、ここにいるべきだ!」など異常な事態に直面した”人間同士の醜悪な言い争い”に終始します。
そして徐々に精神的に追い詰められた人々は、「神の裁きが下されたのよ!」と煽る宗教かぶれのオバサンの言うことに耳を傾け始める。この辺の展開がちょっとダルいんですよね。特にオバサンの”演説”が長くて苦痛(このオバサンが撃ち殺された瞬間、アメリカの劇場では盛大な拍手が湧き起こったとかw)。
まあ、スーパーのガラスを破って”でかい昆虫”みたいなものが飛び込んでくるハラハラドキドキシーンもあるんですが、『スターシップ・トゥルーパーズ』のバグズの大群に比べたら全然大したことなかったり。
”霧の中のもの”を描くのではなく、”得体の知れない何かに翻弄される人間の姿”を描くことがメインなので当然なんですが、これだけなら「ふ〜ん、まあ割と普通のパニック・ホラーだよね」という評価で終わっていたでしょう。
だがしかし!この映画の真価は、キャッチコピー通り「ラスト15分の衝撃的な展開」によって初めて発揮されるのです。徹底的に追い詰められた主人公のデヴィッドたちは、スーパーからの脱出を決意。車へ乗るまでの僅か数十メートルで数人が化け物に食い殺され、残ったのはデヴィッドと息子を含め5人だけ。
一行はデヴィッドの家へ向かうも、すでに化け物の巣窟と化しており、奥さんも死亡していました。あてもなく彷徨ううちにガソリンも底を尽き、救援の道を断たれた彼らが最後に選んだ道は…
拳銃には弾が4発しか残っていなかったため、デヴィッドは息子を含めた仲間4人を射殺。そして半狂乱となったデヴィッドは車を飛び出し、化け物に喰い殺されようと大声で叫び続けます。
ところが、あれほど大量に発生していたモンスターの姿がどこにも見当たりません。いったいどういうこと…?その数分後、急に霧が晴れ、辺りが鮮明になっていきました。そこでデヴィッドが目にしたものは…
おびただしい数の難民と兵隊、アメリカ陸軍のジープ、戦車の姿でした。陸軍は火炎放射器で怪物を焼き払い、スーパーも無事に解放されていたのです。茫然と立ち尽くすデヴィッド。
そんな彼の前をトラックが横切ります。その荷台にはスーパーを飛び出した子供とその母親が乗っていました(あともう少し耐えていれば、デヴィッドと彼の息子も助かっていたのか…?)。結局、デヴィッドは無事に救助されましたが、彼はいつまでも絶叫し続けたという…
とまあ、こんな映画を観たら気分が落ち込むのも当然ですよねぇ。物語の中で息子がデヴィッドに対し、「僕を化け物に殺させないで」と語りかけるシーンがあるんですけど、普通に解釈すれば「化け物から守って」になるところを、「化け物ではなく、デヴィッド自身の手で殺させる」という感じに歪めて描いているところが凄い皮肉。
このラストシーンに対する意見としては、「ふざけんな!」とか「思ってたのと違う!」とか、様々な感想が出ていたようですが、概ね「嫌な気分になった」という意見が大勢を占めているようですね。
こういった反応は『セブン』と同様に「後味の悪さを追求したエンターテイメント」としては完全に正しく、作り手側にしてみればまさに「してやったり!」という感じなのでしょう。すなわち、怒ったり”鬱な気持ち”になった時点で監督の思うつぼなんですよ、トホホ。
この物語のポイントって何かと言うと、「あともう少しだけ待っていれば助かったのに!」と観客に思わせているところなんですね。でもそれは”結果”を知っているからであって、登場人物が置かれた状況を考えた場合、もう少し待てば助かるかどうかなんて分かるはずもありません。そういう状況をわざと作った上で、主人公に最悪の選択を実行させるという、シナリオの意地の悪さが秀逸すぎるでしょコレ(苦笑)。
つまり、映画『ミスト』の凄いところは、何が正しくて何が間違っていたのか、明確な正解を提示していないところなんですよ。トラックに乗った親子を見ると「あ〜、すぐにスーパーを出ていれば助かったのか〜」と一瞬思ってしまいますが、それはあくまでも結果論であって正解は誰にも分からない。そういう曖昧さを残しているところがミソなのです。
曖昧な点と言えば、この映画って事態がどうなっているのかもさっぱり分からないんですよね。そもそも霧の中から出てきた化け物は何なのか?と。
米軍が秘かに実験していた「アローヘッド計画」によって異次元の空間と我々の世界が繋がってしまい、霧と共に化け物が穴から溢れ出した…みたいな噂話が漏れ伝わってくるだけで状況が一切わからず、ラストも軍が穴を塞いだのか?問題は解決したのかしていないのか?その辺の事情が全く不明なまま終了してしまうのです。
そういう、モヤモヤした幕切れまで含めて「後味の悪い映画」と評されているのだとは思いますが、それにしてもこのラストはどうなのかなぁ…。
ちなみに原作小説の方はここまで悲惨な終わり方ではなく、主人公たちは無人のガソリンスタンドで燃料と食料を補給した後、車に乗って再び走り去る…という結末になっていました(助かったかどうかは分かりません)。
これはこれでいいと思うんですけど、フランク・ダラボン監督は「もう少しインパクトが欲しい」と考え、映画版オリジナルのラストを思い付き、原作者のスティーヴン・キングに電話で内容を伝えたところ、「素晴らしい!僕が思い付いていたら絶対にそのアイデアを採用してたよ!」と絶賛したそうです。ダラボン監督によると、この結末は「どんなに絶望的な状況になっても最後まで希望を捨てるな」という前向きなメッセージだったらしい(う〜む……本当だろうか?)。
ちなみに本作は当初、ダラボン監督の意向でモノクロ版での製作・上映が検討されていました。「原作の不気味な雰囲気を再現するには、カラーよりもモノクロの方が相応しい」と考えた監督は映画会社に提案するものの、「今の時代にモノクロ映画なんて作っても客が来ないだろ!」と却下されてしまったそうです。
しかし、どうしてもモノクロ版を諦め切れなかった監督は、公開後にカラーからモノクロへと再編集しました。そしてDVD化の際に本編はカラー版、特典映像としてモノクロ版が収録されることになったのです。つまり、モノクロ版こそが監督が本来作りたかった『ミスト』であり、”真のディレクターズカット”なのですよ。残念ながらブルーレイには入っていませんが、DVDの『コレクターズ・エディション』には特典ディスクとしてモノクロ版『ミスト』が付属しているので、興味がある方はぜひどうぞ。
※ちなみに、オチを観た多くの人が「え?マジで!?」と衝撃を受けた映画は他にもたくさんあるんですが、その中から個人的にオススメな作品をいくつか挙げてみました。どれもこれも”とんでもないラスト”が待ち受けているので、興味がある方はぜひご覧ください。 ↓
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