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クリスチャン・ベイル主演『ターミネーター4』ネタバレ映画感想


■あらすじ『時は2018年。スカイネットが引き起こした“審判の日”をかろうじて生き延びた人間たちは抵抗軍を組織し、大人になったジョン・コナーもその一員として機械軍との死闘に身を投じていた。そんなある日、ジョンはマーカス・ライトと名乗る謎の男と出会う。彼は過去の記憶をなくしており、脳と心臓以外すべて機械化されていた。それでも自分は人間だと主張するマーカスに対し、敵か味方か判断しかねるジョン。しかし、将来彼の父となる少年カイル・リースに身の危険が差し迫っていることをマーカスから知らされ、ジョンはある決意を固める。世界的に評価の高い大ヒットシリーズの4作目にして、初めて未来世界に迫り、人類存亡をかけた壮絶な戦いを圧倒的スケールで描くSFアクション超大作!』



遠い昔、ジェームズ・キャメロンのターミネーターを初めて観たときの衝撃は、いまだに忘れることができない。当時、ほとんど無名の若き映画監督が撮ったその作品は、当初単なる低予算B級映画の一つとしてひっそりと公開された。

しかし、SF・アクション・ホラー・サスペンス・ラブストーリーなど、ありとあらゆる娯楽要素が目一杯つまった『ターミネーター』は、低予算というハンデなどものともせず、実にパワフルでエキサイティングな映像を全編に渡って炸裂させ、観る者の度肝を抜きまくったのである。

それはまさに衝撃の映像体験!すすすすげえ!なんて面白い映画なんだッ!僕の中では、もうこれ以上の映画なんて存在しないのではないかとさえ思ったぐらいだった。

しかし、それから数年後に公開されたターミネーター2を劇場で観た瞬間、二度目の衝撃が僕を襲った!ななななんなんだ、このとてつもないビジュアルは!?ジェームズ・キャメロンは当時、まだ一部の映画でしか使われていなかったコンピューター・グラフィックスを全面的に採用し、「技術的に不可能」と言われていた液体金属T-1000の変形シーンを見事に具現化してみせたのである。

しかも、細部まで練り込まれたそのストーリー展開はオープニングからエンディングに至るまで実に強固なロジックで構築されており、どこにも突っ込む隙が見当たらない。すすすすごすぎるッ!「ヒットした映画の続編はつまらない」というジンクスなど軽くねじ伏せるほどの圧倒的な完成度の前には、ただただ驚愕するしかなかった。以来、『T2』は僕の中で”永久不変の大傑作”として君臨し続けているのである。

そんな”ターミネーター・ファン”がターミネーター4の製作を聞いた時、期待と同時に嫌な予感が頭をよぎったのは、ある意味当然と言えるだろう。なぜなら、本シリーズには過去にターミネーター3という”封印したい黒歴史”が存在するからだ。

大絶賛された『ターミネーター2』の続編として製作された『ターミネーター3』は、2億ドルの大金を投じた超大作だったにもかかわらず、アメリカ国内の興行は1億5千万ドルの大惨敗。観客の評価もいまいちで、「ターミネーターに笑いの要素はいらない!」、「ジョン・コナーがカッコ悪い!」、「女性型ターミネーターって意味わかんねーよ!」などの批判が殺到したらしい。

だが、これはある意味仕方が無いことで、ジェームズ・キャメロンが撮った『T1』『T2』という”不朽の名作”を越えるような映画なんて、そう簡単に作り出せるわけがないのだ。むしろ、勝てる見込みが無いと知りつつ続編の製作を引き受けたジョナサン・モストウ監督は、周囲の強烈なプレッシャーにも怯まずに良く頑張ったものだと感心する。

しかしながら、どんな事情があろうとも観客側には関係ないわけで、『T3』に対するファンの怒りは凄まじく、公開されるやいなや、「こんなのターミネーターじゃない!」と世界中から猛烈なバッシングを浴びるハメになってしまったのである(気の毒だなあ)。

さて、そんな紆余曲折を経て日本公開された『ターミネーター4』だが、オープニング3日間の成績は先行上映の数字を含め、観客動員数79万9653人、興収10億2091万0650円という好スタートを切るなど、日本での『ターミネーター』シリーズ人気はまだまだ健在のようだ。

しかし、本国アメリカではいまいちパッとしなかったようで、オープニング3日間で約4300万ドルの興収。『ターミネーター3』はオープニングで約7250万ドルを稼いだことから考えると、その成績さえも下回る期待外れの結果となっている。観客の評価も賛否が真っ二つに分かれているらしい。実際に観た結論から言うと、映像はなかなか美しく迫力があったが特に目新しさは感じられず、物語の構成にも大いに不満あり、みたいな印象だった。

まず、どう考えても本作の主人公はジョン・コナーではなく、謎の死刑囚マーカス・ライトだろう。このキャラを今後どのように扱うかは判らないが、物語上の出番としては一応今回で終わりらしいので非常に勿体無い。ジョン・コナーやカイル・リースは思い切って脇役に退き、マーカス・ライトを新シリーズ全体を支える主役的ポジションに置いた方が良かったのではないだろうか?

人間でありながら機械の体となってしまった者の葛藤、物語の重要な鍵となる存在、処刑されたはずの2003年から舞台となる2018年までの記憶の空白、どこか十字架を背負っているようなキャラクター背景など、マーカスには主役と成り得る魅力がたくさん詰まっている。

つまり、ターミネーターは『T1』では悪役、『T2』と『T3』はジョン・コナーとともに共同主役。そして今回は、「どのような経緯を経てターミネーターは生み出されたのか」を描くターミネーター誕生秘話として、ターミネーターの内面に迫るために”ターミネーター自身を単独主役”とした方がより面白くなったと思う(すなわち『ターミネーター:ビギンズ』だ)。

一方、映像に関しては、観客を楽しませようとするスケールのデカさが桁違いに凄い。邦画のビジュアルが、せいぜい人気タレントとか、セコい特撮とか、海外ロケとかであるのに対し、本作の撮影やCG技術による圧倒的パワーは半端ではなく、「さすがハリウッド!」と納得の出来栄えである。

しかし残念ながら、新しいビジュアルが何も無い点が致命的。たとえば『T2』では当時最新鋭のテクノロジーを投入し、液体金属ターミネーターがグニョグニョと変形するシーンを作り出した。それはまさに「映像革命」と呼ぶに相応しい衝撃度で、観た人全員が「うわあああ!」と度肝を抜かれたほどの凄まじさだったのである(他の映画製作者たちに与えた影響も計り知れない)。

ところが『T4』に出てくるビジュアルは、どれもこれも以前どこかで見たようなものばかりで面白味に欠ける。色調を抑えたザラついた映像処理は『プライベート・ライアン』や『マイノリティ・リポート』に似ており、大型トラックが爆走する場面は『マッドマックス』を彷彿とさせ、巨大ロボットが襲ってくる場面は『トランスフォーマー』とイメージがダブり、マーカスがスカイネットにアクセスする場面は『マトリックス』を思い出す。

メインコンピューターがマーカスに語りかける場面に至っては、もはやシチュエーション自体が古すぎて「他の映画に似ている」とかいう以前の問題だ(今時、あんな表現使うかね?)。ちなみに、本作の画像処理には”OZプロセス”という新技術が採用されており、『マイノリティ・リポート』の”ブリーチ・バイパス”とは根本的に加工方法が異なるらしい。だが、出来上がった映像が同じように見えてしまっては意味が無いと思う。

また本シリーズは、クライマックスで主人公がターミネーターと最期の決着をつけるパターンが”お約束”となっているが、『T2』の液体金属T-1000や『T3』の女ターミネーターに比べて、全然インパクトがない点も大問題と言えよう。確かに『T4』には、T-600やT-700、バイク型のモトターミネーターや水中型のハイドロボット、果ては巨大ロボ・ハーベスターなど、ありとあらゆる種類のターミネーターが登場して楽しませてくれる。

しかし最後に出てくる敵は、『T1』で見慣れたT-800なのだ。舞台となる2018年では最新型なのかもしれないが、こっちはもう何度も見ているし、今更同じような戦闘シーンを見せられてもなあ……とテンションも下がり気味。攻撃パターンにもこれといった工夫が見られず、やられ方も「ふ〜ん」てな感じでラストバトルなのに全く盛り上がらないのだ。

アクション映画で「尻すぼみ的に敵が弱くなっていく」という展開はどう考えても有り得ないわけで、単に監督が「シュワちゃんを出したかったから」という理由だけで出しているとしか思えない(あるいは観客のニーズに応えたのかも?)。いや、それならそれで別にいいんだけど、もう少し「盛り上がる展開」というものをきちんと考えてもらいたいものだ。

たとえば、ターミネーターを出す順番にしても、ハイドロボット(小型) → モトターミネーター(バイク型) → T-600(人型) → T-700(新人型)と徐々に強くしていき、最後にドカーンとハーベスター(巨大ロボ)を出現させる!とか。本作では中盤で早くもハーベスターを出してしまったために、それ以降の敵が弱っちく見えてしまうという失態を犯している。

ラストに登場して一番強そうに見えるロボットはどれか?となったら、そりゃどう考えてもハーベスターが一番強いだろう(笑)。「ラスボス」 = 「めちゃくちゃデカい」という分かりやすい図式が、映画でもRPGでも重要なポイントだと思うんだけどなあ(いや、実際最後にハーベスターが出てきた場合、どうやって倒すのかは分からんけどねw)。

なお、「シュワちゃんが出なくちゃイヤ!」というファンのためには、その後に出せばいいのである。つまり、こんな感じで↓

ラストバトルでジョン・コナーたちがハーベスターを(どうにかして)倒した後、ヘリに乗ってその場を立ち去る。映画のカメラは、爆破されてボロボロになったスカイネット工場内をゆっくり進んでいく。すると突然、1台のコンピューターが起動し、鉄の扉が開き始めた。そこにはなんと、シュワ型ターミネーターT-800が!既に新型が完成していたのである!ダダンダダンダン!と例のBGMが鳴り響き、目を開けるシュワ。ゆっくりと立ち上がったT-800は、警戒するように周囲を見回す。そしておもむろにカメラを睨み付け、その目が赤く光った瞬間にエンドマークがドン!『ターミネーター5』へ続くッ!!!!!

こういう終わり方なら、ファンも納得するのではないだろうか(ベタだけどw)。なお、『ターミネーター4』のラストシーンはいかにも続きがありそうな、「俺たちの戦いはこれからだ!」みたいなエンディングになっているが、2015年に公開予定の『ターミネーター5 ジェニシス』は全く違うストーリーになっているので、この後の物語が描かれることはおそらくないと思われる。残念!



ターミネーター4 (字幕版)
(2013-11-26)

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