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ブラッドリー・クーパー主演『リミットレス』ネタバレ映画感想


■あらすじ『作家志望のエディ・モーラは、出版社と契約を交わしたものの、一行も書けずに追い詰められていた。そんな時、元妻の弟と出会い、開発中だという新薬を譲り受ける。それは、通常は20%そこそこしか使われていない人間の脳を100%活性化させる夢の薬だった。半信半疑ながらも服用してみると、これまでの記憶は全て甦り、あらゆる情報の整理統合は瞬時に出来てしまい、小説さえもあっという間に書き上げてしまった。やがて大量の薬を手に入れたエディは、株で大儲けし世間の注目を集める。そんなエディに、大物投資家カール・ヴァン・ルーンが巨額の投資話を持ちかけるのだが…。アラン・グリンのベストセラー『ブレイン・ドラッグ』を「ハングオーバー!」シリーズのブラッドリー・クーパー主演で映画化したSFサスペンス・ミステリー!』


※この記事はネタバレしてます。未見の人はご注意ください


本日午後のロードショーリミットレスが放映されます。「もしも人間の脳の機能を100%使い切ることができたら…」というSFサスペンス映画で、一言でいうと「ハリウッド版『世にも奇妙な物語』」ってな感じのストーリーでした(アイデア的にはリュック・ベッソン監督の『ルーシー』にも似ている)。

低予算ではあるものの非常にテンポが良く、ダレる場面も少ないのでそれなりに楽しめる「割と面白い映画」だと思います。ただ、悪くはないんですが、ちょっとツメが甘いなあとも感じました。

この映画における最大のポイントは、「主人公の頭が物凄くいい」ってことなんですけど、同時に作り手側にとっては”弱点”とも言えるんですよ。いったいなぜか?

基本的に映画というものは、2時間程度の決まった尺の中で主人公の行動を見せなければならないため、シナリオが極限まで絞り込まれています(必要でない場面はとことん削り、時には必要な場面さえも省略しなければならないことがある)。

しかし、色んなものを省略しすぎた結果、シナリオの整合性までも失われ、観客からは「なんでそんな展開になるの?」とか「ご都合主義だ!」とか批判されてしまうこともままあるわけです。

そんな場合でも、主人公が普通の人間だったら(あるいはバカだったら)、「たまたまうっかりしてたんだろう」みたいな言い訳もできるんですけど、今回のように「メチャクチャ頭がいい主人公」という設定にしてしまうと、そういう言い訳が通用しなくなるんですよ。

つまり「薬の力で物凄く頭が良くなっているはずなのに、なんでそんな失敗するんだ?」という”普通の映画では気にならないような部分”が気になってしまうのです。

また、面白いストーリー展開を実現するには、「主人公を何らかの災難に遭遇させる」っていうのがドラマ作りのセオリーなんですが、あまりにも頭が良すぎる主人公は滅多な事で失敗をしないので、”ピンチになる”という状況を作り難い。そこで映画の作り手側としては、どうにかして主人公を困難な状況に追い込もうとするわけです。

しかし、本作の場合は話の持っていき方が強引すぎて説得力がありません。どう考えても、「この主人公ってバカなんじゃないの?」としか思えない展開が満載なんですよねえ。つまり、”頭がいい”という基本設定自体が崩れちゃってるんですよ。

たとえば、「ヤミ金から借金をしたために後々までトラブルに巻き込まれる」というのは良くある話なんですけど、この映画では、主人公が薬を飲んで頭が非常に良くなっているわけだから、”そういうところから金を借りる”という行為自体が物凄く不自然なわけです。

頭脳明晰状態の彼ならそんなヤバいところから借金しなくても、効率的に金を得る方法はいくらでも考え付くはずでしょう(少なくともお金を返す算段ぐらいは計画するだろうし)。何の考えもなくヤミ金から金を借りるなんて、”メチャクチャ頭がいい”どころか、明らかにバカでしょ?

これがもし「主人公は薬を手に入れる前から既に多額の借金をしていた」という設定だったら、「後で借金取りに襲われて薬を奪われる」という展開でも問題ないと思うんです。しかし、映画では薬を手に入れた後にヤミ金から金を借りる、という流れになっていて、そこに合理的な理由付けが見当たりません。これはやっぱり納得できないなあ。

また、主人公はヤミ金の襲撃に備えて警戒厳重なマンションに住んでいるくせに、護身用の銃も持ってないというのは、いくらなんでも危機管理意識が低すぎるでしょう。先のトラブルを予想すれば、もっと大勢のボディガードを雇うとか、自分の身を守ることに真剣になって然るべきなのに、ほとんどノープランなのは解せません。

結局、最初に述べたように本作は「主人公が物凄く頭がいい」という設定を上手く使いこなせていないんじゃないかな?と思うんですよ(設定は面白いけど中身は普通のサスペンスになってる)。それが非常に残念でしたね。

さらに、主人公に絡む重要人物としてロバート・デ・ニーロが出てるんですが、あまり活躍してるとは言い難い。どうせなら、主人公に敵対するラスボスとして、色んな攻撃を仕掛けるキャラクターにすれば良かったのに。それならサスペンス的なドラマも盛り上がったと思うんだけど。

つまり「メチャクチャ頭のいい男 VS 最強に頭のいい男」という対決モノにすれば良かったんですよ。

敵が繰り出す様々なトラップを、主人公があっと驚く奇抜なアイデアで切り抜けるとか、”先読み困難な頭脳戦”を次々と繰り広げていれば、もっと面白い映画になったかもしれないのに、もったいない!

あともう一つ気になったのが、「主人公が小説家を目指している」という基本設定です。てっきり「薬の力で書き上げた小説がベストセラーになって大金持ち!」みたいな展開になるのかと思ったら、その後小説の話は一切出ずにほったらかし。有名小説家になるんじゃなかったの?

※追記
小説については、「12ヶ月後の上院議員事務所に出てきますよ」というご指摘をいただきましたが、そうだとしても「設定を十分に生かし切れていない」という印象は変わらないので、この作品に対する僕の評価は同じです(^.^)

リミットレス (字幕版)
(2012-03-07)

こちらはインスタント・ビデオです。1クリックでレンタルできますよ。

LUCY/ルーシー [Blu-ray]
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン (2015-07-23)

「人間の脳を100%活性化させたらどうなるか?」系の映画ですが、こちらはアクションがメインです。

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