■あらすじ『海兵隊員のジェドは休暇で帰郷し、家族や友人たちと旧交を温めていた。ところが翌朝、街は北朝鮮軍に侵攻され、瞬く間に占領されてしまう。ジェドや弟のマットはじめ、辛くも逃げ出した若者たちは近くの山へ身を隠したものの、わずか1日でアメリカ全土が北朝鮮の手に落ちてしまったのだった。若者たちは、軍経験者のジェドを中心に、北朝鮮にゲリラ戦で徹底抗戦することを決意するが…。米ソ冷戦時代を背景に描かれた84年作品「若き勇者たち」を、「マイティ・ソー」のクリス・ヘムズワース主演でリメイクした戦争サバイバル・アクション超大作!』
本日、WOWOWシネマでクリス・ヘムズワース主演の戦争映画『レッド・ドーン』が放映されます。この映画って、1984年の映画『若き勇者たち』のリメイクなんですよね。『若き勇者たち』は、パトリック・スウェイジ、C・トーマス・ハウエル、チャーリー・シーン、リー・トンプソンなど、当時の若手俳優が揃って出演し、「ソ連がアメリカに侵攻する」といういかにも80年代っぽい”反共描写”を描いたことでも話題になりました。
そんな『若き勇者たち』をリメイクするとなると、さすがに現代ではソ連を敵国に設定できません。そこで当初は「中国軍がアメリカに攻めてくる」というストーリーだったのですが、これに中国側がクレームをつけてきたのです。そのため、急遽悪役を中国から北朝鮮へと変更。しかし既に大部分が撮影済みだったため、画面に映っている中国の国旗や人民解放軍の服装などを全て北朝鮮仕様に修正しなければならなかったらしい(公開スケジュールは遅れまくり、追加費用で100万ドルが消えた)。そんなゴタゴタを乗り越えてようやく完成した『レッド・ドーン』は、見事なまでのトンデモ映画になってましたよ。何と言っても「アメリカが北朝鮮軍に占領される話」ですからね。「んなわけねーだろ!」という全力のツッコミが世界中から聞こえてきそうな設定ですが、これを大真面目に映像化しているところが素晴らしいというかバカバカしいというか。
冒頭、北朝鮮軍が攻めてくるシーンから完全に狂ってますよ。アメリカの大空を北朝鮮軍の落下傘が埋め尽くすという前代未聞のヴィジュアルが炸裂!「親方!空から北朝鮮軍が!」の世界じゃないですか(笑)。このワンシーンだけでも(違う意味で)ドキドキさせられます。「いったいどんな破天荒な内容なんだろう」と。
でも、中身は意外と普通でした。要は「敵に制圧された街を取り戻すために、若者たちがレジスタンスとなって軍隊に立ち向かう」という、オリジナル版に準じた物語なので、映画そのものは真面目な作りになっているのですよ。ただ、「北朝鮮がアメリカ全土を占領する」って設定がおかしいだけなんですね。
逆に感心したのは、銃撃戦や爆破シーンなどのアクション場面が迫力満点に撮られていること。本作を監督したダン・ブラッドリーは、『ボーン・アルティメイタム』や『スパイダーマン3』のスタントコーディネーターを務めていたらしく、アクションの撮影に関しては熟知しているとか。そのため、全てのアクションがことごとくカッコいいのですよ(なのでアクション映画好きは満足できると思います)。特に爆破シーンがリアルで怖い!
あと面白かったのは、敵と戦う主人公たちの立場が、これまでのアメリカ映画とは真逆のポジションになっている点ですね。例えば、キャスリン・ビグロー監督の『ハート・ロッカー』という映画では、イラク戦争に派遣された爆弾処理班の若き米兵が、日々発生する爆破テロに極度の緊張を強いられながら、黙々と爆弾処理する姿を描いていました(もちろん”テロ=悪”という認識)。
いや〜、なかなか凄い作品ですねえ。何よりも驚いたのは、いくらフィクションと言ってもここまではっきり北朝鮮を”敵国”と名指しして大丈夫なのか?という点でしょう(クレームは来なかったのだろうか?)。というわけで公開時は全くヒットしなかったようですけど、意外と見応えがありました(^.^)
●人気記事一覧
・これはひどい!苦情が殺到した日本語吹替え版映画ワースト10
・まさに修羅場!『かぐや姫の物語』の壮絶な舞台裏をスタッフが激白!
・日本映画のレベルが低くなったのはテレビ局のせい?
・町山智浩が語る「宮崎アニメの衝撃の真実」
・「映像化不可能」と言われている小説は本当に不可能なのか?