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デヴィッド・フィンチャー監督『ゾディアック』映画感想


■あらすじ『1969年7月4日、カリフォルニアでドライブ中の若いカップルが銃撃されるという事件が起こった。警察に通報が入るが、その通報者は最後に“犯人は俺だ”と言い残す。それから約1ヶ月後、サンフランシスコ・クロニクル紙に一通の手紙が届き、7月の事件を含め2件の殺害を実行したとする声明文が書き記されていた。それは、のちに自らを“ゾディアック”と名乗る者からの最初の手紙だった…。「セブン」ファイト・クラブ」のデヴィッド・フィンチャー監督が、全米を震撼させた実在の未解決事件に挑む衝撃のクライム・サスペンス!』



本日、WOWOWシネマにてデヴィッド・フィンチャー監督のサスペンス映画『ゾディアック』が放映される。デヴィッド・フィンチャーといえば”映像派の監督”というイメージが強いが、元々はMTVの出身で、編集や色調に強いこだわりを持ち、デビュー作の『エイリアン3』では(作品の評価は散々だったけど)映画全体を統一する印象深いカラーが注目された。

ところが本作では、デヴィッド・フィンチャー監督お得意の”独特な映像美”や”技巧的なカメラワーク”などがほとんど見受けられない。画面の効果としては物凄くオーソドックスで、物語は終始淡々と進んでいく。人によっては地味な映画と感じるかもしれないし、特に『セブン』や『ファイトクラブ』のような凝ったヴィジュアルが好きな人にとっては「退屈だ」と評されてもしかたがないだろう。

しかし僕は、「地味な映画」というよりは「渋い映画」と呼びたい。たしかに、サスペンス映画として見た場合、(未解決事件なので当然だが)犯人は分からず、事実は不明なままで終わってしまうため、「どうにもスッキリしない」というのも本当だ。だが、本作の見所は”サスペンス的側面”だけではない。この作品は「ゾディアック事件に関わった事で大きく人生を狂わされた男たちの物語」なのである。

ゾディアック逮捕に執念を燃やし、何年にも渡って事件を追い続けたデイブ・トースキー刑事(マーク・ラファロ)。新聞記者としていくつかの新事実を解明するものの、事件にのめり込み過ぎたため、いつしかドラッグとアルコールに依存するようになり、とうとう会社をクビになったポール・エイブリー。彼の場合は演じるロバート・ダウニーJrの私生活がそのまま反映されているようで尚更興味深い(笑)。

そして、イラストレーターでありながら事件に強い関心を持ち、自力で暗号を解読し、数々の手掛かりを調べながらついに「犯人に最も近い」と称される人物にたどり着いたロバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)もまた、ゾディアックのせいで”家庭崩壊”という災難に見舞われた一人である(自業自得という気もするけどw)。

この3人以外にも実に大勢の人が事件に関わっており、それらも含めて”ゾディアックに翻弄される人々の姿”を描いている点こそが本作の真骨頂だと言えるだろう。尺が長いとか展開がダルいとか色々批判も多いようだが、個人的にはかなり楽しめた。つーかコレ傑作じゃね?


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