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『トランスフォーマー/ロストエイジ』ネタバレ映画感想


■あらすじ『かつては地球征服を目論むディセプティコンから人類を守った正義の軍団オートボット。しかし時代の流れと共に政府からの迫害は激しさを増し、オートボットたちは次々と抹殺されていった。テキサスの片田舎で一人娘のテッサと暮らすケイド(マーク・ウォールバーグ)は、ある日奇妙な中古トラックを手に入れる。それは、オートボット軍団の司令官:オプティマスだった。そこへ、オプティマスを回収しようとする謎の組織KSIが登場。窮地に陥ったケイドとテッサだったが、目覚めたオプティマスとテッサの恋人シェーンの活躍で何とか脱出する。ジョシュア・ジョイススタンリー・トゥッチ)率いるKSIは人工トランスフォーマーの開発に成功し、邪魔になったオートボットの排除に乗り出していたのだった。そんな中、全滅したはずのディセプティコンの生き残りが地球に襲来!新たな戦いの渦に巻き込まれていくオプティマスとケイド親子。果たして地球の運命は…!?マイケル・ベイ監督による大ヒットSFアクション超大作シリーズの第4弾!』



公開からだいぶ時間が経ってしまいましたが、マイケル・ベイ監督の最新作『トランスフォーマー/ロストエイジ』を観たので感想を書いておきます。『TF』シリーズはこれでもう4作目なんですけど、マイケルさんは相変わらずの”爆発職人”ぶりを発揮していました(笑)。ただ、ちょっと気になった部分も見受けられたんですよねえ……。

まず、映画の感想を書く前に、マイケル・ベイ映画に対する僕のスタンスを述べておくと、かなり肯定的な目線で観ています。もちろん過去の『トランスフォーマー』シリーズは全て劇場で鑑賞し、『ザ・ロック』、『アルマゲドン』、『バッドボーイズ2バッド』みたいにイロイロ言われてる作品も結構楽しめました。

世間的には「マイケル・ベイの映画は中身が無い」、「ストーリーがクソすぎる」、「アクションシーン以外は全部ダメ」などとバカにされることが多いようですけど(敢えて否定はしませんけどw)、そういうネガティブなところも含めて彼の映画には捨て難い魅力がある、と思うのですよ。

では、マイケル・ベイ映画の特徴とは何か?と問われた場合、「派手な爆発」・「凄いカーチェイス」・「怒涛のアクション」、この3つが必ず盛り込まれているという点に尽きるのではないかと。特に、”爆発”に関しては相当なこだわりを持っており、どう考えても爆発する要素が見当たらない状況であったとしても、「目に付いた物はとりあえず何でも爆発させとけ!」みたいなノリでひたすら突っ走っている印象すら感じられます。

しかも、『トランスフォーマー』シリーズでは更に「ド迫力のロボットバトル」まで加わるわけですから、そりゃあ興奮しないはずがありません。てなわけで、中二男子のハートをガッチリと鷲掴みするカッコイイ映像を次から次へと炸裂させた結果、「シナリオに難がある」と言われつつも過去の3作品はどれも世界中で大ヒットをぶちかまし、とうとう第4作目が作られることになりました。

そんなボンクラ男子の期待を一身に背負った『トランスフォーマー/ロストエイジ』、当然「ああ面白かった〜!」という感想になるかと思いきや……なんか……ちょっと……アレ?こんなはずじゃ………

いや、もちろんマイケル・ベイの作風が変わったとか、そういうことではありません。相変わらず、「派手な爆発」・「凄いカーチェイス」・「怒涛のアクション」のオンパレードで、”爆発職人”としての本領を存分に発揮しており、当然ながら「ド迫力のロボットバトル」も健在でした。しかも各シークエンスのボリュームが増量しまくり、上映時間はなんとシリーズ最長の2時間45分に達しています。うひょおおお〜!

ところが、長い上映時間に反比例するかのように、映画を観ている僕のテンションは徐々に下がり始め、エンディングを迎える頃には座席に沈み込むような体勢でグッタリしていたのですよ。後に残ったのは得も言われぬ虚脱感だけ。「疲れた…。とにかく、ひたすら疲れた2時間45分だったなあ」と、そんな心境でした。

まあ、3D版を観たことも関係しているのかもしれません。最初から最後まで常に画面が動きっぱなしで、凄い爆発やアクションが立体映像で迫ってくるわけですからねえ。冒頭の恐竜が動き回るシーンは「おお!」と見事な3D効果に感激したものの、終盤付近では目の奥が痺れるような感覚になってましたから。いったいどうしてこうなった?と色々考えてみた結果、マイケル・ベイの”サービス精神”に原因があるんじゃないかと思い当たりました。

僕がマイケル・ベイの映画を肯定している理由の一つは、サービス精神が旺盛なところなんですね。彼は、「ファンが自分の映画に何を求めているか」についてはっきりと自覚しています。そして、常に「ファンの期待に応えたい」と考えながら映画を作っている、そこが素晴らしいなと。確かにマイケル・ベイのように、エンターテインメントに特化した制作スタイルは賛否が分かれるでしょうけど、”軸がブレていない”という点においては賞賛すべきだと思います。

しかし、皮肉なことにそんなマイケル・ベイのサービス精神が、本作では裏目に出ちゃってるのではないかと…。簡単に言うと、全ての要素が過剰すぎるのですよ。この『トランスフォーマー』シリーズは、1作目の時点で既に十分派手な映画でした。それが、2作目を作ることになると、当然ながら1作目と同じ程度ではユーザーも納得しないから、もっと派手にならざるを得ません。

更に3作目になったらもう、「思い付く限りの破壊描写は全部やり尽くしたんじゃないの?」と呆れ果てるぐらいにアクションシーンがエスカレートしまくっていました。じゃあ、4作目はどうなる?考えるまでもなく、もっと派手にもっと豪快に、ひたすら盛り上げるしかないわけですよね。今さら後戻りなんてできないから。

だけど、そのやり方には限界があります。いくら目の前においしそうな料理が並んでいても、ラーメンとカレーとハンバーグとステーキとカツ丼を同時に食べられるわけがありません(しかも全部大盛り!)。つまり『トランスフォーマー/ロストエイジ』は、アクション演出の過剰なパワーアップがインフレ現象を起こした結果、とうとう観る側のキャパシティを超えちゃったんですよ。もはや、「お腹が一杯なのにまだ料理を出してくるのかよ!」ってな感じでギブアップ寸前。映画を観終わった僕の心境を絵で表すと、こんな状態になってました。↓

まあ、たぶんマイケル・ベイ自身も気付いてたんでしょうね、「この路線はもう限界だ」ということに。だからこそ、3作目の『ダークサイドムーン』を撮った時に「これで最後」と発言し、再度4作目を撮ることが決まると、主人公たちを一新して”全く新しい『トランスフォーマー』”を立ち上げようと模索したのではないかと。しかし結局、やってる内容は今までと同じで、単に火薬の量が増えただけでした。

そこで「ああ、やはりこれ以上は無理だな」と改めて自覚した、と。既に続編の『トランスフォーマー5』が2016年に公開予定となっていますが、マイケル・ベイは「もう5作目の監督をやるつもりはない」との意向を表明しています。おそらく、この路線でやれることは全てやり切ったのでしょう(そういう意味では、”爆発職人としての技を極めた映画”と言えるのかもしれません。ありがとうマイケル・ベイ!)。

とまあ、そんな感じでマイケル・ベイのファンとしては、かっこいいアクションや爆発シーンが増えて嬉しい反面、「モノには限度がある」ということを思い知った次第です、トホホ。

あとは、劇中に映る”企業のCM”も気になりました。商業映画というものは、規模が大きくなればなるほど多くのスポンサーが協力することになるため、作品内に商品の広告が入ってきます。これは「プロダクトプレイスメント」と呼ばれ、どんな映画でもごく自然に行われているんですが、『トランスフォーマー/ロストエイジ』は商品の見せ方があまりにも不自然で、目立ちすぎるんですよ。

例えば、激しいカーチェイスの途中でトラックに突っ込んだら、大量のビールが散乱して主人公がそれをおいしそうに飲み干すとか。あるいは、敵の追跡から逃れてビルの屋上へ上がったら、なぜか冷蔵庫が置いてあり、中から勝手に牛乳を取り出しておいしそうに飲み干すとか。もう完全に飲料メーカーのコマーシャルじゃん!

今回の映画は中国の企業が多額の製作費を提供しているせいで、前半はテキサスだったドラマの舞台が、途中から突然中国になったり、中国の製品がバンバン画面に映り込んだりしているのです(主人公が中国の大手銀行のキャッシュカードを使ってるし)。一番びっくりしたのは場所の問題で、北京で戦っていたはずのロボットが急に香港へ現れたり、香港にいた人物が重慶へ瞬間移動したり、地理の感覚がメチャクチャなのですよ。

「なぜこんな珍現象が起こったんだろう?」と思ったら、中国の旅行会社がスポンサーになっているからでした。すなわち、「有名な観光地をもっと画面に映せ!」というスポンサーの要望に応えようと無理矢理シナリオを改変した結果、地理的に有り得ない移動を繰り返すことになったらしい。しかし、このアバウトすぎる描写にはさすがに中国の観光協会の方も「ふざけるな!」とブチ切れて映画会社にクレームが殺到し、挙句の果てには裁判で訴えられたそうです(この件については町山智浩さんが詳しく裏事情を解説していました→Youtube)。

まあ、場所に関する問題は「日本を舞台にしたハリウッド映画」でも頻繁に起こっていて、『ウルヴァリン:サムライ』でも九州にいた主人公がいきなり自動車で東北へ移動してたりとか、現地の人が観れば「なんだこりゃ?」と思うようなシーンがいっぱいあります。

しかし、本作は「スポンサーの意向で何の意味も無いシーンを入れ過ぎている」という点が一番大きな問題なのですよ。例えば、スタンリー・トゥッチ演じるジョシュアがエレベーターに乗って逃げようとするシーンでは、偶然乗り合わせた一般市民が、追い掛けてきた戦闘員をやっつけてしまうという謎の展開が繰り広げられるんですけど、ダラダラと長いだけで面白くも何ともなく、その割には全然ストーリーに関係ないという、最悪なシチュエーションになってるんです。

初めて観た時はあまりの不自然さに、「何かの伏線か?」と思ってしまったんですが、後で調べたらこの人、”鄒市明”というプロボクサーで、アマチュア時代はオリンピックで金メダルを獲得するなど、中国ではかなりの有名人なんだとか。つまり、自国の金メダリストをアピールするために、わざわざこんなシーンを入れさせたんですね。

この事実を知った時は悲しくなりましたよ。「どうして、わざわざ金を払って中国のCMを見せられなきゃならないんだ?」と。ビールやボクサーのシーンがシナリオ的に何らかの意味を持っていればまだ納得できるんですが、「本当に単なる宣伝のためだけ」となると、怒りを禁じ得ません。

そんなわけで、『トランスフォーマー/ロストエイジ』はマイケル・ベイが大好きな僕の目から見ても、「これはちょっと厳しいなあ」と言わざるを得ない仕上がりになっていたのが残念でした。映像効果的には間違いなく現時点での最高峰なので、ヴィジュアル目当てで観に行っても損はしないと思いますが、とにかく長い!そして疲れる!この点だけは覚悟しておいた方がいいでしょう(^_^;)


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