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宮崎駿監督『もののけ姫』について書いてみた


本日、金曜ロードSHOW!にて宮崎駿監督の大ヒット映画『もののけ姫』が放映されます。まあ、超有名な映画なんで、いまさら僕が何か解説するとか感想を書くようなこともないんですが、せっかくなので裏話や都市伝説など、いくつかエピソードを取り上げてみましたよ。


●最初は「美女と野獣」みたいな話だった?
映画『もののけ姫』の企画は、ある絵本を元に立案されました。原案になった『もののけ姫』という絵本は、宮崎監督が1980年頃に描いたイメージ・ボードが元ネタで、テレビ・アニメ用の企画書代わりに描いたものだそうです。

そのストーリーは、「森へ迷い込んだ一人の武士が山猫の化け物(もののけ)と遭遇、自分の娘をもののけの嫁にすると約束して命を助けてもらう。けなげな娘はもののけの元へ嫁いで行くが、次第に心が通じ合い…。」という内容で、「もののけ」=「姫」ではなく、「もののけと姫」の話だったのですよ。

”恐ろしいもののけ”と”美しい姫”が、一緒に暮らすうちにやがて愛情が芽生える…という展開で、しかももののけの正体は”魔法をかけられた人間だった”という設定から分かる通り、『美女と野獣』を時代劇に置き換えたものです。当初は「化け猫が人間の姿に戻って姫と結ばれる」というエンディングでしたが、敢えて原典に背いたとのこと。

当初はこの絵本を元に映画制作を検討していましたが、4カ月経っても全く構想がまとまらなかったため、結局この原案を捨ててゼロからストーリーを考え直すことになりました。ちなみに、『となりのトトロ』のネコバスは、この絵本版『もののけ姫』のデザインを流用したものだそうです。


●きっかけはチャゲ&飛鳥
いざ仕切り直しになったものの、「どんなストーリーにすればいいんだろう?」と悩みまくる宮崎監督。そんな時、アーティストのチャゲ&飛鳥から「新曲のPVを作って欲しい」との依頼が来ました。それが『On Your Mark』です。

元々は「CHAGE and ASKA」のコンサートツアーで上映するイベント・ムービーを制作する際、「アニメーションでやりたい」とASKAが言い出し、ジブリ作品の大ファンだったCHAGEが「それなら宮崎さんにやってもらおう!」と提案したらしい。

実はこの時、宮崎監督はチャゲアスのことを全く知りませんでした。しかし、当時『もののけ姫』の企画作りでストレスがたまっていた宮崎さんは”気分転換”として引き受けることに。この『On Your Mark』の制作をきっかけとして、「『もののけ姫』の方向性が見えた」と後に宮崎監督は語っているそうです。

ちなみに、『On Your Mark』の内容は「大規模な原発事故が発生し、放射能で汚染された世界で生きる二人の警察官の物語」という、今考えるとシャレにならないぐらい恐ろしいアニメですが、わずか6分程度のストーリーに凝縮された強烈なメッセージと完成度の高さに観客から大絶賛。急遽『耳をすませば』と同時上映され、あまりの人気ぶりに長編映画化の打診まであったそうです。

尚、本来ならこの『On Your Mark』は先日発売された『宮崎駿監督作品集』に特典映像として収録される予定でしたが、5月17日にASKA覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕された影響でお蔵入りに…。『ジブリがいっぱいSpecial ショートショート』も5月20日付で出荷が停止されてしまいました。う〜ん、残念だなあ(^_^;)


●サンの名前の由来
もののけ姫』のヒロインの名前はサン。この名前は、絵本版『もののけ姫』に登場する姫の名前から付けられました。絵本版には3人の姫が出てきて、それぞれ”一の姫”、”二の姫”、”三の姫”という名前なのです(もはや名前じゃないですねw)。

山猫(もののけ)と結婚するのは”三の姫”なので、ここから「三」=「サン」と命名されたそうです。ちなみに、サンの髪の毛が緑色なのは、”三の姫”が着ていた着物の色が緑だったから。でも、舞台が日本なのに髪の色が緑ってどうなのかな〜(まあ外国にも緑の髪の人はいませんけど)。


●タイトルをめぐって紛糾
屋久島へロケハンに行ったり絵コンテを描いたり、着々と映画の制作が進行していた頃、宮崎監督は突然、鈴木プロデューサーに「タイトルを変えよう」と言い出しました。曰く、「この映画の主人公はアシタカであり、サンではない。『アシタカ聶記(せっき)』にすべきだ」とのこと。

しかし、鈴木さんは「『もののけ姫』の方がインパクトがある」と難色を示し、日本テレビの担当者も「過去の宮崎作品は全て”の”の字がついていた」と鈴木さんを擁護。そこで鈴木さんと日テレは「先にタイトルを出してしまおう」と計略し、宮崎監督に内緒で勝手に『もののけ姫』のタイトルを発表してしまいました。

金曜ロードショーで『となりのトトロ』が放映された後、いきなり公開された『もののけ姫』特報第一弾は大反響(なんと劇場公開より20カ月も前の特報だった)。後からこれを知った宮崎監督は驚いて「鈴木さん!『もののけ姫』でタイトル出しちゃったの?」と問い詰めますが、「はい、出しましたよ」と平然と答える鈴木さんを見て何も言えなかったそうです(笑)。


●引退騒動
1997年3月10日、赤坂プリンスホテルで『もののけ姫』の製作発表記者会見が開かれました。集まった取材陣の数は過去最大規模の700人!当時、宮崎監督は追い込み作業で猛烈に忙しかったのですが、映画を宣伝するためには欠席できません。

そんな中、質疑応答の場面で一人の記者から「次回作の予定は?」と聞かれ大激怒!目の前の作業で頭がいっぱいなのに、次の作品のことなんて考えられるか!とばかりにブチ切れて、「これが最後の監督作品ですッ!」と思わず言ってしまったのですよ。

それを聞いた各メディアは「宮崎駿、引退宣言!」「最後の監督作品!」などと大々的に報じました。このニュースが話題となり、集客効果に絶大な影響を及ぼしたことは疑う余地がないでしょう(当時の日本記録を更新した)。

ただ、宮崎監督はこの後も引退することなく映画を作り続け、しかも新作を発表するたびに「これが最後だ」と繰り返し発言していたため、いつしか「やめるやめる詐欺」と呼ばれるはめになってしまいました(^_^;)


●『もののけ姫』製作中の心境
宮崎監督は『もののけ姫』を制作する際、今までとは全く違う映画を作ろうとしていました。それは「もうこれでジブリが潰れても構わない!」というぐらい本気の覚悟だったそうです(以下、当時の宮崎監督の発言から引用)。

今までの映画は、解決可能な小課題を作って、とりあえず今日はそれを超えたと、それを一つのセオリーにしてきたんですけどね。それだと、現代で僕らがぶつかっている問題と拮抗しないという結論が出たんじゃないかなあ。だから、解決可能じゃない、解決不可能な課題を作るってことになった。こりゃあ胃に良くないですよ(笑)。でも、現代の世の中を見ていると、解決不可能なことの方が多いんですよね。


今まで僕が作ってきたものは、基本的に守るべき人たちがいて、その人間達に支持されている人物が主人公だったんです。でも今回は違う。主人公には守るべき村や、守るべき何かが無いんですよ。要するに、露骨にはやってませんけど、はっきり”お前はいらない”と言われている人物なんです。


今度の映画を、この世の中に生きていて、いわれのない、不条理な、肉体的にも精神的な意味も含めてババを引いてしまった人間達が、どういう風に感じてくれるのだろう、と。それは、今の若者の共通の運命であるはずですから。そういう人物を主人公にして、それがエンターテインメントとして受け入れられるのか、受け入れられないのか。それは作ってみなければわからない。


期待に応えようとしちゃあ、いけないんです。例えば、自然保護に熱心なジブリとかね(笑)。そういう期待がすぐに膨らむんですよ。やたらに癒しの、やさしい映画を作ってくれるジブリとかね(笑)。そういうことが言われ始めると、それを裏切るようなもんを作りたくなってね。普通、1回期待を持っちゃうと、その期待を変更しようとしないですよね。だけど、基本的に裏切り続けるしかないんですよ。そういう、支持してくれる人達の鏡に照らして、自分を見たらお終いだって。


今までは明るい部分で映画を作ってきましたけど、これは明るい部分で作ってませんから。鈴木プロデューサーにも言ってますけど、これでジブリの幕を引くことになってもいいということで、やらせてもらってますから。


ナウシカ』とは全く違いますよ。全然違うものをやっているんだという覚悟は物凄くある。『ナウシカ』では難しいことを散々言ったから、今回は一切言ってないんです。主人公に、極力、立派なことは言わせなかった。これで人間いいんだろうかとか、何でそんなバカなことをやるんだとかね、そういうことすら言わないように。


”森を守ろう”と一言でも言った途端に、全部手垢にまみれたものになってしまう。それは分かり切っていることだから。そういうことで作ってるんじゃないんだと。なんか偉いことを言った少年が見事に達成しました、みたいな話じゃ全然なくて。ようやくこれで生きることができる、これからね、タタラ場のこととサンの間に入って、切り刻まれながら生きるしかない。結局、何も解決していない。でも、主人公はここで生きていくことを決めたんだ、と。……生きるって、そういうことですよね。 (徳間書店もののけ姫はこうして生まれた」より)



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