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ツッコミどころが多過ぎる映画『藁の楯』ネタバレ感想

■あらすじ『日本の財界を牛耳る大物・蜷川隆興の孫娘が惨殺された。容疑者は8年前にも少女を殺害し、釈放されたばかりの清丸国秀(藤原竜也)。警察の懸命の捜査が続く中、全国紙に“清丸を殺害すれば10億円を支払う”との全面広告が掲載される。観念した清丸は潜伏先から福岡県警に自首することに。さっそく清丸を警視庁に移送するため、SPの銘苅一基(大沢たかお)をリーダーとする5人の精鋭が集められた。タイムリミットは送検までの48時間。だがその行く手には、清丸を仕留めて10億円をいただこうと殺気立つ日本全国民が待ち構えていた…。木内一裕の同名小説を「悪の教典」の三池崇史監督、「ストロベリーナイト」の大沢たかお主演で映画化したサスペンス・アクション超大作!』


※以下、完全にネタバレしてます。映画を観てない人はご注意を!


本日、金曜ロードSHOW!で『藁の楯』が放送されます。公開当時は第66回カンヌ国際映画祭に正式出品されたことでも話題になりましたが、海外メディアの反応はあまり芳しくなかったようで、英映画評論家ジェフ・アンドルー氏は「滑稽なほど過剰な演技に無意味な行為の強調、そうした陳腐な展開が延々と続く」など厳しい意見を連発。

映画誌『CineVue』も、「完全な失敗作」との批評を自社のサイトに掲載し、採点はわずか1点でした。さらにカルト映画専門誌『エレクトリック・シープ(Electric Sheep)』に至っては、「鉛の風船が失墜するようなストーリーだ」と嫌悪感を露わにしたそうです。

一方、『アイリッシュ・タイムズ(Irish Times)』の映画評では「アクションシーンは一級品」、「自由民主主義の理念や陪審制度に、ここまで向き合ったアクション映画は多くない」など、好意的に評価するところもあったらしい。

そして、日本で公開された際も賛否両論というか圧倒的に”否”の方が多かったみたいですけど、まあ確かに微妙な内容ではありますね(苦笑)。ざっくり要点をまとめると、だいたい以下のような感じになるかと思います。

●良かったところ
・日本では実現が難しいスケールの大きな作品に敢えて挑戦している。
・大型タンクローリーが突っ込んで来る派手なカーアクション。
・新幹線の襲撃シーン。
・観客の倫理観をガンガン揺さぶる強いメッセージ性。
藤原竜也の最低最悪なクズ人間ぶり。
三池崇史監督の映画にしては悪ふざけが少ない。


●ダメなところ
・設定がアメリカ映画『S.W.A.T.』に似ている。
・ツッコミどころが多すぎる。
・役者の演技が大袈裟。
・リアリティが皆無。

まず、良かった点を挙げると、邦画では滅多にお目にかかれないスケールの大きなサスペンス・アクションに敢えてチャレンジしている心意気と言いましょうか、意欲的なスタンスが素晴らしい。

例えば新幹線のシーンなんて、普通なら絶対に「日本じゃ撮影できないからやめておこう」とカットされていたはずなんですよ。それを、「日本で無理なら海外だ!」とばかりに本当に台湾まで行って撮影してしまうアグレッシブな行動力!

世の中に人気原作小説を映画化したものはたくさんありますが、原作に書いてあっても(スケジュールとか予算とか)様々な事情で映像化できず、設定を変更したりシーンを丸ごとカットしたり、色々な改変を加えた結果、原作の面白さを損ねてしまった例は枚挙にいとまがありません。

しかし、本作は「日本ではここまでしか出来ないから」という言い訳に逃げず、頑張って忠実に再現してやろうという志の高さが感じられたので、その辺は素直に評価したいと思います。ただ……そうは言ってもやはり看過しがたい部分はたくさんあるわけですよ(-_-;)

最初に目に付くのは、コリン・ファレル主演のアメリカ映画S.W.A.T.に内容が良く似ている点でしょう。『S.W.A.T.』の場合は、SWAT隊に護送される犯罪者自身が「俺を逃がしてくれた者に大金を出す!」と宣言したことで大変な事態に陥るという、『藁の楯』とはほぼ逆の設定になっています。

しかしながら、「必死で凶悪犯罪者を護送する警官と、彼らを狙って襲ってくる大勢の市民」という図式そのものは酷似しているし、「仲間に裏切り者がいる」などのドラマ展開もそっくりなので、(パクリとまではいかなくても)『S.W.A.T.』を知っている人が観れば「同じじゃん」と思ってしまうかもしれません。

あとは、メル・ギブソンが主演した『身代金』という映画にも少し似ている気がしました。『身代金』は、大富豪メル・ギブソンの息子が誘拐され、犯人から身代金を要求されるものの、逆ギレした主人公がテレビに出演し、「犯人を捕まえた者には400万ドルを払う。生死は問わない!」と宣言して大騒ぎになる、というストーリーです。

藁の楯』では、孫娘を惨殺された大富豪が怒り狂って「犯人を殺害した者に10億円を支払う」と全国紙に広告を出して大騒ぎになる…という展開になっていて、まぁ似てると言えば似てますね。

それから『藁の楯』の終盤では、相手の頭に拳銃を突き付け、「目の前の犯罪者を殺すべきかどうか」で葛藤する主人公の姿が描かれていますが、この辺の描写は『セブン』のラストに近いかも(ただし『藁の楯』では「最後まで犯罪者を守る」という信念を貫いているところがポイント)。

さらに映画序盤で、大型タンクローリーが数十台のパトカーに突っ込み、爆発炎上しながら豪快に吹っ飛ぶシーンは、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』でも似たような場面を見たなあ…とか、色んな映画に類似している点が目に付きました。


この他にも「シナリオに説得力が無い」とか「役者の演技が大袈裟すぎる」など多数の問題点が見受けられますが、中でも最大の問題は”リアリティの無さ”でしょう。

よそ見をしている間に犯人に逃げられるとか、いつの間にかいなくなるタクシー運転手とか(ちなみに運転手役は余貴美子。贅沢なキャスティングだw)、うっかり銃を奪われて犯人に撃ち殺されるとか、あまりにもツッコミ数が膨大すぎてとても全部は書き切れませんが、一番気になったのはやはり「防弾チョッキ」ですね。

劇中、SP達は何度も銃撃戦に巻き込まれ、仲間が次々と死んでいくんですけど、なぜか防弾チョッキを着ようとしないのですよ。

しかも主人公だけは防弾チョッキを着ていて、そのおかげで命が助かるという場面をしっかり見せておきながら、その後も他のSPはなぜか防弾チョッキを着ないという謎展開。映画を観た人のほとんどが突っ込んだであろうと思われますが、いまだに理由は分かりません(ちなみに原作では皆きちんと防弾チョッキを着ている)。

先程は「頑張って原作を忠実に再現しようとしている点が良い」と書きましたが、こういう部分は逆に「原作を改変したから悪くなった」と言えるんじゃないでしょうか。せっかく台湾まで行って新幹線のシーンを撮ったのに、どうして防弾チョッキのくだりやラストの展開を原作通りにやれないのか?と。良い面もあるんですけど、ダメな部分がそれを大幅に上回っているような印象でした。

あとクライマックスの展開も凄かったですねえ。やっとの思いで清丸(藤原竜也)を移送した銘苅(大沢たかお)の前に、蜷川(山崎努)が現れるんですけど、周りを大勢の警察官が取り囲んでいるにもかかわらず、全員が何もしないで見てるだけっていう(笑)。

なんで何もしないんでしょうか?この時点で清丸には射殺命令が出ているし、「国家の許可を持って清丸を殺害した者には10億円を払う」と蜷川が言ってるんだから、警察官は法で裁かれることなく、正々堂々と清丸を殺して10億円をもらえるわけですよ。だったら誰かが撃ってもおかしくないでしょう?

そもそも、騒ぎの元凶である蜷川が堂々とあの現場に車で入って来れること自体がおかしい。しかも蜷川を確保しようとする警官に向かって銘苅は「待ってくれ!」と立ち塞がるんですね。そこから二人の長〜い会話シーンが続くわけですが、その間も周囲を取り囲んでいる大勢の警官は何もしないで立ってるだけ。もの凄く異様な光景に見えました(^_^;)

というわけでツッコミどころ満載の本作ですが、さらに金曜ロードショー版では清丸が仲間に裏切られて殺されそうになるシーンとか、出頭した後に警察で襲われるシーンとか、ラストの「どうせ死刑になるならもっと殺しとけばよかった」というセリフなど、結構重要な場面がごっそりカットされているので、ますます意味が分からなくなっている可能性が高いです(気になる人はDVDをレンタルした方が良いかもw)。

なお、この映画で”最低最悪のクズ野郎”を完璧に演じ切った藤原竜也さんは、あまりにもクズな人間ばかりを演じ過ぎたため、「最近クズの役しかこなくなった」と嘆いているそうです↓

ワロタw


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