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映画『ソーシャル・ネットワーク』の疑問や撮影裏話を徹底解説(ネタバレあり)


■あらすじ『2003年の秋。ハーバード大学の学生にして天才プログラマーマーク・ザッカーバーグは、恋人にフラれた腹いせに学内のデータベースをハッキングして、女子学生たちの顔写真を使った人気投票サイトを作ってしまった。そんな彼の技術に目を付けたエリート学生が、学内交流を目的としたサイトの作成を依頼。しかしマークは、親友のエドゥアルドを誘って、ハーバードの学生を対象としたソーシャル・ネットワークのサイトを立ち上げる。するとそれは瞬く間に登録者を増やし、急速に拡大していくのだったが…。日本を含む世界の登録者数が5億人を突破した“Facebook”。数年以内には、登録者数が10億人に到達するとも言われ、いまなお急成長を続けている巨大帝国の裏側と真実に迫る話題作!』



本日、水曜プレミアシネマソーシャル・ネットワークが放映されます。世界的規模で拡大を続けている巨大SNSFacebook」を創設したマーク・ザッカーバーグの知られざる”真実”を描いた本作は、映画サイト「ロッテントマト」で96%の評論家から高い支持を受け、第83回アカデミー賞では編集賞と作曲賞を受賞するなど、多くの観客から賞賛されました。

エイリアン3』で華々しく映画界にデビューしたデヴィッド・フィンチャー監督は、MTV時代に培ったスキルを存分に活かし、『セブン』や『ファイト・クラブ』、そして近年は『ドラゴン・タトゥーの女』などで独特の映像センスを発揮し、ビジュアル派の映画監督として一躍注目を集めたクリエイターです。

ところが、『ソーシャル・ネットワーク』はそれらに比べて非常に地味な映画なんですよね。フィンチャーお得意の映像効果はそれほど目立たないし、サスペンスフルな展開も派手なアクションシーンも無し。ストーリーにも大きな起伏は見られず、基本的に登場人物の会話のみで淡々と話が進んでいくという、極めて抑制の効いたスタイルだったのです。

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じゃあ、つまらない映画なのか?といえばこれが意外に面白くてビックリ仰天。まず本作は、「Facebook」というシステムが誕生する経緯と、その後に起こったトラブルの様子を描く”実話ベース”の物語なんですが、単純な実録ドラマではありません。マーク・ザッカーバーグの友人エドゥアルドの手記を元に、デヴィッド・フィンチャーや脚本家たちが様々な創作を加えたフィクションなのですよ。

特に顕著なのがキャラクターに関する描写で、マーク・ザッカーバーグの言動はかなりの部分で大きく脚色されているらしい。劇中では「他人の話を全く聞かず、常に自分のペースで喋りまくる」とか「相手にいきなりビール瓶を投げ付け、何度も瓶を割ってしまう」などのエピソードを見せることで、ある種”病的な程の社会不適合者”として彼を描いていますが、本物のザッカーバーグはここまで酷いコミニュケーション不全ではないそうです。

しかし、劇中のザッカーバーグがあまりにも”ヘンな人”として描かれていたため、映画公開後にマーク・ザッカーバーグアスペルガー症候群だ」という噂が流れました。アスペルガー症候群とは、興味・コミュニケーションについて特異性が認められる広汎性発達障害の一種で、「知的障害がない自閉症」として扱われています。ザッカーバーグも女子大生たちの気持ちを汲み取ることが出来ず、学生時代にふざけたサイトを開設し、彼女たちの心を傷つけたそうですが、本人が実際にアスペルガー症候群なのかどうかは分かりません。

ではなぜ、主人公をこんなに極端な性格に設定する必要があったのかと言えば、世間一般の人が持っているイメージ、つまり”天才とナントカは紙一重”という類型的なパターンに当てはめることで、「世界中の人とコミニュケーションを取ることができるシステムを開発して大金持ちになったのに、友達にも見捨てられ好きな女の子ともコミニュケーションが取れない孤独な男」という皮肉に満ちた物語を描くためでしょう(実際、そういう映画になっている)。

しかも映画の中のザッカーバーグは、”空気が読めない”というレベルを通り越し、「なぜ君はそんなに怒ってるの?」と他人の心情を理解すらできない、精神的に欠陥のある不幸な青年みたいに描かれているのです。このため、ストーリー全体を通して主人公は”イヤな奴”という印象を観客に与え続けているにもかかわらず、最終的には”切ない結末”へと着地します(PC画面を見つめながら何度も更新ボタンを押し続けるラストシーンが泣ける!)。

すなわち、本作は単なる「天才の栄光と挫折」を描いた物語ではなく、「誰も自分のことを理解してくれない、そして自分も他人に全く共感できない」という悲劇的な境遇に置かれた主人公が、それでも他者との繋がりを求めてコミュニケーション・ツールにすがり続ける切なく哀しいドラマだったのです。個人的には、周りにIT業界で働く知り合いが多いせいか、説得力のある内容に感心しまくり。実際、コンピュータ関連の職場でこういう人珍しくないよね(って偏見かw)。

ちなみに僕はこの映画を観て、”時代の寵児”ともてはやされた堀江貴文ことホリエモンを思い出しました。自身も優秀なプログラマーだったホリエモンライブドアを立ち上げ、IT界のカリスマとして一躍脚光を浴びるなど共通する部分は多い。ただし、マーク・ザッカーバーグが「Facebook」などの画期的なシステムを開発したことで話題になったのに対し、ホリエモンの場合は本業のIT部門でほとんど収益を上げる事が出来ず、主にM&Aによって事業を拡大していった点が大きく異なります。

そして、野球チームやフジテレビなど次々と企業買収に名乗りを上げたホリエモンは、東京地検特捜部に「粉飾決算」の疑いで起訴され、最終的に有罪判決を下されてしまう。このような彼の生き様や言動って、物凄く劇的でドラマチックだと思うんですよ。実際、本人がどんな人間なのか知らないけど、サクセスストーリーの「キャラクター」としては非常に魅力的ですよね。誰かホリエモンを主人公にして「ライブドア事件」を映画化してくれないかなあ。

……と思っていたら、なんと映画化が決まったらしい。ホリエモンは以前、自身のエピソードを脚色した『拝金』という小説を執筆し、ライブドア事件の裏側で起きていた出来事をフィクション型式で描いているのですが、この小説を映画化するのだそうです。

気になるキャストは、堀江貴文役に藤原竜也、そしてインサイダー取引容疑(村上ファンド事件)で起訴された村上世彰役に香川照之が起用されるのでは…と言われているらしい。

もちろん、登場人物の名前や企業名などは全て架空のものになってますけど、事件の経緯は当事者が書いているだけあってかなりリアルに描写されていました。これを映画化したらいったいどんな作品が出来上がるのか、ちょっと楽しみですねえ。

あと、『ソーシャル・ネットワーク』の映画的な特徴としては、「セリフのテンポが異常に早い」ということが挙げられます。これは、脚本のセリフが多すぎたのが原因で、「このまま撮影したら3時間の映画になってしまうぞ!」とスタッフ一同大慌て。

通常なら、セリフを削ったりシーンをカットすることで時間内におさめるものですが、なんとデヴィッド・フィンチャーは「セリフを早口で喋らせる」という前代未聞の荒技でこの問題を乗り切ってしまいました。おかげで、会話シーンが聞き取りづらいのなんの(でも、緊張感があって最後まで退屈しなかった)。

また、登場人物に双子の兄弟が出てくるんだけど、CGで別の俳優に顔だけをコピーしているそうです(あまりにも自然すぎて気が付かない!)。『ベンジャミン・バトン』でブラッド・ピットの顔を挿げ替えた技術をしっかり応用している点が素晴らしい。でも、双子の俳優なんて探せばいくらでもいるはずなのに、なんでわざわざCGを使ったのかなあ?

他の撮影裏話としては、とにかくリテイクの回数が多くて役者は大変だったとか。たとえば、冒頭の会話シーンでは99回もテイクを繰り返し、主演のジェシー・アイゼンバーグも「いっそのこと100回リテイクになればきりが良かったのに、99回目でOKが出ちゃったよ」と皮肉交じりに語っています。

さらに、「食事の場面が上手くいかず、ベーコンチーズダブルバーガーを15個も食べるハメになった」とか「エドゥアルドが激怒するシーンでは30台以上のノートPCを叩き壊した」など、俳優・スタッフ共々苦労の連続だったらしい、トホホ。

なお、『ソーシャル・ネットワーク』の制作に関して一切の協力を拒否した本物のマーク・ザッカーバーグは、公開後に本作を観て次のように語ったそうです。

「公開初日に社員全員で観に行ったよ。事実とそうでない部分が混ざっていて面白かった。特に、映画の中で着ているTシャツは完全に正しい(笑)。全部僕が持ってる服と同じだったよ。サンダルのメーカーまで完璧に合ってる(笑)。でも、基本的な部分で間違っているところが多い。例えば、Facebookを作った理由が”女の子にモテたいから”ってなってたけど、僕と彼女はFacebookを作る前から付き合っているし、別れたこともないんだよ。だから”恋人がいない”っていうのはウソだよね。ただ、映画を観た多くのFacebookユーザーから”感激しました!”という反応があったんだ。この映画を観て、自分で会社を立ち上げたり、コンピューターの分野に進むことを決意する人が出てきたり、そういう影響を与えたことは最高に凄いと思う。その部分だけはね(笑)」


物凄く普通のコメントだ(笑)。やっぱり映画内のキャラクターはかなり誇張されてるのかな?


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