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三池崇史監督/実写映画『逆転裁判』感想(ネタバレあり)


■あらすじ『20XX年、政府は凶悪犯罪の増加に対応すべく、わずか3日で判決を言い渡す“序審裁判”制度を導入した。ある日、新米弁護士・成歩堂龍一の上司・綾里千尋が、長年追いかけていた事件に関する新たな証拠を見つけたとのメッセージを残し、何者かに殺害される。ところが逮捕されたのは、千尋の妹で霊媒師の卵・綾里真宵だった。真宵の無実を信じて弁護を引き受け、幼なじみで冷徹な天才検事・御剣怜侍と激しい法廷バトルを繰り広げる成歩堂。しかし、やがて15年前に起きた”DL6号事件”が今回の殺人事件と深く関係していることを知る。果たして成歩堂は事件の謎を解き、恐るべき真実を暴き出すことができるのか!?近未来の裁判所を舞台に、新米弁護士が難事件に挑む姿を、ゲームの世界観を完全再現するキャラクターと派手な演出で鮮やかに描き出す痛快法廷ミステリー!』



本日、WOWOWシネマで実写映画『逆転裁判』が放映されます。名作ゲームシリーズと誉れ高い同名人気ソフトを原作とし、『ヤッターマン』、『十三人の刺客』等で知られる鬼才:三池崇史が監督を務め、『相棒シリーズ 鑑識米沢守の事件簿』の飯田武櫻井武晴)と『カイジ2〜人生奪回ゲーム〜』の大口幸子らが脚本を書くなど、万全の態勢で実写映画化された『逆転裁判』。

主人公の新人弁護士、成歩堂龍一には成宮寛貴、そして成歩堂の幼馴染で最大のライバル、冷徹な天才検事と評判の御剣怜侍斎藤工が扮し、他にも桐谷美玲檀れい余貴美子石橋凌小日向文世など、有名俳優が多数出演している点も見どころです。

映画の原作となるゲームは2001年にカプコンから発売されました。ゲームボーイアドバンス用のソフトとしてリリースされた『逆転裁判』は当初は6万本という控え目な売り上げでしたが、やがて口コミで面白さが伝わり、続編の『逆転裁判2』では18万本、『逆転裁判4』ではなんと53万本という人気シリーズに成長。

そして、ニンテンドーDSへの移植や廉価版の発売など、継続的な再リリースによってシリーズ全体の累計出荷本数は260万本を突破しました。更に、そのゲーム性は海外でも高く評価され、ついに全世界で440万本というとてつもない記録を打ち立てたのです。

個人的な話になりますが、僕はこの『逆転裁判』シリーズが大好きなのですよ。元々アドベンチャーゲームとミステリー小説が好きだったので、ファミコンの時代から『ポートピア連続殺人事件』や『神宮寺三郎シリーズ』などをプレイしまくっていました。

ただ、そういうゲームは”殺人事件”を扱っている関係上、暗くて殺伐とした内容のものが多かったんですね(人が死んでるわけだから当然だけど)。

ところが、『逆転裁判』は違いました。人が死んでるのに雰囲気が明るい!破天荒なキャラクターたちが繰り出すギャグの数々がハチャメチャで面白く、しかも事件のトリックが意外としっかり作り込まれていて、ミステリー好きも充分に満足できる内容だったんですよ。

これは、『逆転裁判』を作った巧舟(たくみしゅう)さんが熱狂的なミステリーファンで、「最高に面白くて魅力的なミステリー・ゲームを作りたい!」と切望し、企画やシナリオに加え、成歩堂龍一の声までも自分で演じるなど、徹底的にこだわり抜いたからでしょう。更にお笑いだけじゃなく、泣かせるストーリー展開も見事で最後は感動しまくり!もう、一発でハマってしまいました。

以来、『逆転裁判』(GBA)、『逆転裁判2』(GBA)、『逆転裁判3』(GBA)、『逆転裁判4』(ニンテンドーDS)、『逆転裁判:蘇る逆転』(DS)と立て続けにクリアーし、ついにはスピンオフ作品の『逆転検事』(DS)や『レイトン教授VS逆転裁判』(DS)まで手を出すほどの熱中ぶりに自分でもびっくりです(『ドラクエ9』すらクリアしてないのにw)。

で、そんな僕が今回映画版を観たわけなんですけど、逆裁ファンの意見としては「ゲームのキャラクターを良く再現しており小ネタも盛り込まれていてそれなりに楽しめる」という感じ。一方、単なる映画ファンの意見としては「設定が特殊すぎる割には説明不足で観客置いてけぼり。登場人物に感情移入しづらくギャグもサブい」って感じでしたねえ。

まず、冒頭からいきなり不親切です。主人公の成歩堂龍一が何かの裁判をやってるシーンからスタートするんですが、どういう事件なのか劇中で語られることはほとんどありません。実はこの場面、ゲーム版の第1話「初めての逆転」というエピソードで、殺人事件の容疑者として逮捕された友人:矢張政志のために、新米弁護士の成歩堂が初めて弁護を引き受けるという重要なストーリーなんですよ。

ところが、映画版では時間の都合で大幅カット。わずか30秒で判決が下されてしまいます。後の展開にも関わる”考える人の置時計”というアイテムが出てくるんだから、もうちょっと丁寧に描写して欲しかったところですね。

また、同時進行で御剣怜侍の裁判の様子も映しているんですけど、こちらもまた潔いぐらいのダイジェストぶり。でかいチョンマゲが目立つ異様な風体のぬいぐるみを見せるだけであっさり終了しています。この場面はゲーム版の第3話「逆転のトノサマン」というエピソードで、人気特撮テレビ番組『トノサマン』の撮影現場で起きた謎の殺人事件を審議する裁判なんですが、本編の事件とはあまり関係ないので短縮された模様。

しかし、物語の中であんなに大きくトノサマンを扱うのなら、もう少しトノサマンについて説明するシーンがあっても良かったんじゃないかなあ。

更に、綾里真宵の母:綾里舞子の交霊シーンに至っては、もう完全にホラー映画です(笑)。いや、死者の霊と交信するわけだから怖いのは別にいいんですよ。問題は、これらの重要なエピソードがオープニングの数分間だけで簡単に端折られてること。

ただでさえ「序審法廷制度」という特殊な設定を盛り込んでいるのに(映画版では「序審裁判」)、その他にも「霊媒師」とか「トノサマン」とか、次々と色んな用語が出てきたら観客の混乱は増すばかり。それなのに説明シーンが少なすぎるんじゃないの?と疑問に思ってたんですが、意外な理由が判明!

実はコレ、三池監督がワザとやっていたらしい。今回監督が目指したのは、「ゲームを知っている人と知らない人が一緒に映画を観て、観賞後にゲームを知っている人が知らない人に、”あの裏には実はこういう出来事があって…”と得意げに話せて、少し優位に立てる」というもの。

つまり「映画の中では描き切れていないことが、ゲームの中で詳しく解説されている」という具合に、映画自体がゲームの一部になれるようなスタンスで本作を作ったのだそうです。う〜ん、そうだったのか。でも”ゲームを知らない人だけ”で観に行った場合はどうなるの?映画は映画として、誰が観ても楽しめるように構成し直すべきだったんじゃないかなあ。

たとえば、ゲームを映画化した作品として『バイオハザード』などは割と上手く作ってあったと思うんですが、なぜ『バイオハザード』が成功したかと言えば、元々のゲーム版が「ホラー映画を意識した構成」になっていたからなんですね。

徹底して映画的なカメラアングルにこだわったり、ホラー映画にありがちなストーリー展開を踏襲したり、初めから「映画のようなゲーム」をイメージした作りになっていました。だから、ゲームをそのまま映画化しても問題なかったわけです。

しかし、『逆転裁判』のゲームは全く映画を意識していません(まあ、それが普通なんだけど)。アドベンチャーゲームとして極めてオーソドックスであり、ゲームとしては非常に面白いんですが、これをそのまま映画化しても”面白い映画”が出来るわけではないのです。なので、映画用に構成を作り変えて然るべきなのに、三池監督はどうも「ゲーム版の完全再現」を目指したらしく、かなり原作に忠実に映画化してるんですよ。ちなみに、インタビューでは以下のように答えていました。

「『逆転裁判』は映画的要素が一切ないゲームだが、それを映画化したときにゲームを知らない人がどういう反応を示すのか?という部分に興味があった。自分にとっては冒険だったよ」

なるほど、冒険したかったんですね(笑)。でも、本作の場合は原作が特殊すぎるので、素直に映画用として改変した方が良かったのでは?つまり、シナリオはオーソドックスな「法廷サスペンス型」にして、ゲーム中のBGMをガンガン流し、キャラを思い切り作り込めば、『逆転裁判』の世界観を再現しながらミステリー映画としても成立できたんじゃないでしょうか。残念ながら、一映画ファンとしては「人にはお薦め出来かねる作品」と言わざるを得ませんでしたよ、トホホ。

では、ゲーム版のファンの視点から観た場合はどうなのかと言うと、キャラの再現度が素晴らしく、小道具や舞台背景などにも非常に力が入っていて、製作者のこだわりが感じられました。キャラに関しては成歩堂くんが特にいいですね。まさかあの髪型をそのまま再現するとは(笑)。もうちょっと髪にボリュームがあれば完璧でしたよ。矢張と御剣もかなり似てる。サイバンチョもいい感じ。狩魔はちょっと恰幅が良すぎるけどまあまあかな。

逆に「う〜ん…」ってなったのが桐谷美玲さんが演じた真宵ちゃん。予告編の段階から違和感はありましたが、実際に観てみたらやっぱりコレジャナイ感が炸裂してました(笑)。個人的には多部未華子さんあたりが良かったんだけどなあ。

檀れい演じる千尋さんも、悪くはないんですがちょっと老けてる(笑)。僕のイメージでは瀬戸朝香さんがベスト。イトノコ刑事も線が細い。もうちょっとゴツい感じのおっさんで……村田雄浩とか。でもまあ、キャラに関しては概ね満足度は高かったです(タイホくんがあそこまでフィーチャーされてるとは思わなかったけどw)。

あと、気になったのがギャグの内容ですね。映画版では誰かがボケると法廷の全員がズッコケるという、吉本新喜劇風の古典的なギャグが何度も繰り返されていましたが、『逆転裁判』のギャグってそうじゃないんですよ。基本的には、周りにいるヘンなキャラのボケに対して成歩堂くんがツッコミを入れる、というスタイルなんです(成歩堂くんが突っ込まれる場合もあり)。

そう考えると、映画版はボケ役の人が少ないような…。真宵ちゃんやイトノコ刑事はゲーム版だとかなりのボケキャラなんですが、本作では普通の人に近いんですよね。小日向文世演じる灰根もシリアスで悲しいキャラになってたし。もう少しコメディ・リリーフを増やした方が良かったかも。全体的に暗い雰囲気になってたのが気になりました。特に”サユリさん”のシーンは「本当に同じ映画か?」と思うぐらい恐ろしかったです(この辺は三池監督の作風なので仕方ないのかなあ)。

それから、証拠品などを提示する時に空間へ画像を投影する『マイノリティ・リポート』みたいな表現も映画版のオリジナルですね。ゲームでは単に証拠品を見せるだけなんですが、映画では映像そのものを「くらえ!」と叫んで相手に投げ付けるという、より派手な演出に変更されていました。これはこれでアリだと思います(完全にSF映画になってるけどw)。

ちなみに、エンドロール中に後日談が流れるシーンは、ゲーム版と同じで良かったなと。ラストショットが成歩堂くんの異議あり!」でビシッと終わるところもゲーム風でかっこいい!

というわけで敢えて点数をつけるとすれば、「法廷サスペンス映画」として観た場合 ⇒ 30点、「逆裁ファン向けムービー」として観た場合 ⇒ 65点、みたいな感じでしょうか。僕はゲームを全てプレイし、世界観やお約束を理解していたので結構楽しめましたが、全くゲームを知らない人が観た場合、おそらく前半の15分ぐらいで心が折れてしまう可能性があります。なので、最低でも1回はゲームをプレイしてから観た方がいいでしょう…って、そこまでして観る人いないよなあ(笑)。でもゲーム版はマジでオススメなので、機会があればぜひどうぞ(^_^)


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