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『トータル・リコール』2012年版映画感想(ネタバレ)


■あらすじ『大きな戦争によって荒廃した近未来。生き延びた人類は、裕福な人々とそれ以外の貧しい労働者という二極化が進んでいた。工場労働者のクエイドは、希望のない単調な毎日に嫌気が差し、巷で評判の人工記憶を試してみたいと思い立つ。それは好きな記憶を自分の脳にインストールして楽しむものだったが、あまりにもリアルな体験のため、中毒者が出るなど社会問題化し、当局によって非合法化されていた。そんな人工記憶を扱う“リコール社”を訪ね、憧れの“スパイ”を選んだクエイド。しかし記憶を植え付けようとした瞬間、突如警官隊の襲撃を受け、取り囲まれてしまう。ところが彼は、無意識のうちに驚くべき戦闘能力を発揮して警官隊を殲滅。自分のしたことが理解できず混乱したまま帰宅したクエイドはさらに、今度は妻ローリーから思わぬ襲撃を受ける。再び驚異的な防御反応で難を逃れたクエイドはやがて、謎めいた美女メリーナと出会い、驚愕の真相を告げられた…!』



フィリップ・K・ディックの短編小説『追憶売ります』をポール・バーホーベン監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で1990年に映画化した『トータル・リコール』。本作は、それをレン・ワイズマン監督、コリン・ファレル主演で再映画化したSFアクション超大作です。

僕は前作の『トータル・リコール』が大好きなので期待しながら観たのですが…。う〜ん、悪くはなかったです。でも、全体的なイメージが『ブレードランナー』や『マイノリティ・リポート』など、過去のSF映画と似すぎていて既知感ありまくりだったのは「ちょっとどうだろう?」と思ったりしました。

まあ、”フィリップ・K・ディック繋がり”と考えれば納得できなくもないけど(笑)。ただ、手の中に埋め込む携帯電話や、首にはめるタイプの”変装グッズ”など、面白そうなアイテムはいくつか出てくるのに、”見せ方”があまり面白くないんですよねえ。

例えば、本作では主人公が手の中に埋め込まれた装置を、刃物で切って取り出すシーンがあります。しかし自分で手を切り開いて機械をズルズルと引っ張り出す映像は、多少グロテスクではあるものの、それほど面白いわけではありません。


それに対してオリジナル版では、シュワちゃんが自分の鼻の穴に奇妙な器具を突っ込み、”どう見ても鼻の穴よりもでかい発信機”を、苦悶の表情で無理矢理引きずり出すという前代未聞の衝撃映像が炸裂!当時、初めてこの場面を劇場で観た僕は凄まじいショックを受け、それから20年以上経った今でもこのシーンが脳裏に焼き付いてしまい、どうしても忘れることができません(トラウマだw)。

それから、検閲ゲートを通過する際、主人公は見つからないように変装するんですが、リメイク版では首に掛けた装置からホログラム映像的なビジョンを投影、という方式を使っています。まあ、スマートでかっこいいんですけど、あまりインパクトは無いんですよねえ。

一方、オリジナル版ではシュワちゃんが太ったオバさんのマスクを被って登場。もう、この時点で怪しさ満点なんですけど(警備員が完全に疑ってるw)、正体がバレた途端、「ウィーン!ガシャンガシャン!」とマスクが割れて中からシュワちゃんが顔を出す、という驚愕の展開に!

更にそのマスクを放り投げると大爆発を起こして辺り一面が大パニックになるなど、昔の『トータル・リコール』は”変装グッズ”だけでもこんなに観る者をワクワクさせる面白さに満ち溢れていたのですよ。

なので、バーホーベンの作風を知っている身としては、「なんか物足りないなあ」と感じてしまうんですよね(ちなみに、本作ではオリジナル版で”怪しいおばさん”を演じたプリシラ・アレンと似たような人が出演し、同じセリフを喋っている)。

その他、ロボットのタクシー運転手と会話するシーンが無かったり、火星の地表に放り出された主人公の目玉が飛び出そうになるシーンが無かったり、そもそも設定が大幅に変更されて火星が舞台じゃなくなっているのです。

いや、設定が変更されるのは別にいいんですよ。いいんですが、前作は「火星に移住した人間が環境の変化でミュータント化している」という設定があったからこそ、”おっぱいを3つ持った女”などが登場していたわけじゃないですか?

それなのに、本作では特に理由も無く、地球の街中を”おっぱい3個女”が普通に歩いているのですよ。それはちょっと設定的にどうなのかと。じゃあ、あのおっぱいは美容整形なのか?ああいう”ファッション”が流行ってるのか?とか、色々気になるんですよねえ。まあ、オリジナル版よりも美人になってるから別にいいけど(笑)。

なんか不満ばかり書いてるのもアレなので良い点も書いておくと、まずビジュアルが素晴らしい。『ブレードランナー』に雰囲気が似ているとはいえ、細部まで作り込まれた屋内セットや背景合成が混沌とした未来都市をリアルに表現しており、非常に見応えがありました。

また、地球の中心を巨大なパイプ・シャフトが貫き、ヨーロッパとオーストラリアが巨大エレベーターで繋がっている、という設定も面白い。トンデモSFの部類に入りますが、他のSF映画ではあまり観たことがない大胆な映像が印象的です(地球の裏側まで10分足らずで行けてしまうのはさすがに早すぎるような気もするけどw)。

それから、中盤のカーチェイスも迫力満点。”空中を浮遊する車”を使ったカーアクションは他の映画でも観たことありますが、本作は嘘臭さが少なく、適度な現実感を保ったまま近未来のアクションを描いているのがいいですね。

しかも、序盤の追跡劇や終盤のエレベーター・シーン等、どれもこれもが平面的なバトルにとどまらず、上下左右の構造を活かした”立体的なアクション”に仕上がっているのが凄い。その他、ガンアクションなどもカメラワークがいちいち凝っていたりで、アクションシーンに関しては全般的に満足できましたよ。

あと良かったのは女優さんかな。前作でシャロン・ストーンが演じた役を、今回はケイト・ベッキンセイルが演じてるんだけど、鬼嫁ぶりがハンパない!もう、最初から最後までひたすら主人公を追いかけ回してるんですよ。どんだけ旦那に恨みがあるんだ(笑)。また、前作のレイチェル・ティコティンの役を演じているのはジェシカ・ビール。レイチェルさんには申し訳ないが、美人度は格段にアップしております(笑)。


というわけで、リメイク版の総合評価としては「まあまあ面白いSFアクション映画」という感じでしょうか。個人的にはポール・バーホーベン版の「エロ・グロ・バイオレンス」が三拍子揃った作劇が好みなんですけど、「あんな下品な映画はイヤ!」という人には、アクを抜いてスタイリッシュに変貌したリメイク版をオススメしておきます。


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