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『猫の恩返し』をもっと楽しく観るための制作裏話


■あらすじ『ごく普通の女子高校生ハルは、学校には遅刻するし、ゴミ箱の中身をぶちまけるし、最近いいことがない。おまけに、憧れの男の子が別の女の子と2ショットになっているのを目撃してしまい、すっかり落ち込んでいた。そんなある日、たまたまトラックにひかれそうな1匹の猫を助けたハルは、お礼として猫の国へと招待される。そこでハルは猫たちから盛大な歓迎を受け、いつしか“つらい現実より、猫になって楽しく生きたい”と願うようになっていった。しかし、そこへ現れた猫の男爵バロンによって彼女の運命は大きく変わっていく…。偶然猫の国の王子を助けたことから不思議な事件に巻き込まれていくヒロインの冒険を描いたファンタジー・アニメ!』



本日、金曜ロードSHOWにて『猫の恩返し』が放映されます。『耳をすませば』のスピンオフ作品として2002年に公開された本作は、当時邦画のナンバー1に輝き興行収益64億6千万円を稼ぎ出すなど、オリジナルアニメーションとしては破格の大ヒットを記録しました。

また参加した声優も話題となり、主人公の吉岡ハル役を池脇千鶴が務めた他、袴田吉彦、渡辺哲、斉藤洋介山田孝之大泉洋前田亜季丹波哲郎など、豪華俳優陣がそれぞれのキャラクターを魅力的に演じています。ただしこの映画、従来のジブリ作品とはちょっと雰囲気が異なっていまして…。

今までの(『猫の恩返し』以前の)ジブリ映画は、基本的に宮崎駿高畑勲のどちらかが監督を務め、彼らが監督をしなかった『耳をすませば』も宮崎さんが絵コンテと脚本を担当するなど、常に二人の凄腕クリエイターが映画製作の主導権を握っていました。

ところが、『猫の恩返し』は企画段階から複数の意見が取り入れられ、監督も脚本も若手に任せるなど、ジブリとしては異例の体制で作られたのです。いったいなぜ、そんなことになったのでしょうか?

事の発端は、某企業がジブリ「テーマパークのシンボル・キャラクターを作って欲しい」と依頼してきたことから始まりました。

企業側の要望は「猫をモチーフにしたデザインで」ということだったので、「猫ならジブリにもいますよ」と『魔女の宅急便』のジジや『耳をすませば』のバロンなどを担当者に見せたところ、『耳をすませば』に登場しているムタ(ムーン)という太った猫が気に入ったらしく、「この猫を使って20分ぐらいのショートフィルムを作りましょう」という話になりました。

それを宮崎駿に相談すると、「だったらバロンを主人公にした探偵物はどう?」などと言い出し、急遽『耳をすませば』の原作者の柊あおいさんに原作漫画の執筆を依頼。

この時宮崎さんが考えていたストーリーは、「名探偵バロンと猫のムタがコンビを組んで難事件を解決するミステリー冒険活劇」という、『名探偵ホームズ』の猫バージョンみたいなイメージだったのです。

ところが、柊あおいさんが描いてきた漫画を読んだら、「猫の国へ迷い込んでしまった女子高生」という全然違う物語になっていたので宮崎監督ビックリ仰天。しかも内容が盛りだくさん過ぎて、とても20分ぐらいでは収まりそうにありません。

そこで鈴木敏夫プロデューサーが「仕方が無い。70分にしよう」と決断。しかし、宮崎さんは”探偵物”の要素を外された時点で興味が無くなったらしく、この企画から降りてしまいました。そこで、ジブリの若手を監督にする方向で映画化の話が決まったのです。

しかし、スタッフ選びは難航しました。なんせ、宮崎駿高畑勲も関わらない劇場アニメを作るのはジブリにとって初めての経験。前作の『耳をすませば』では宮崎監督が脚本と絵コンテを描いてくれたから良かったものの、今回みたいなパターンは前例がありません。

最終的に監督することになったのは、当時『となりの山田くん』などに参加していたアニメーターの森田宏幸さん。しかし、森田監督は当初、少女マンガが大嫌いだったらしく、インタビューで以下のように語っていました。

「少女マンガって、何が面白いのかわかんなかったんですよ。黒板消しを彼氏の頭の上に落っことして”アッチャ〜”なんて、何が面白いんだろうと。ドブに足を突っ込んで”ありゃりゃ”とか(笑)。でも、周りのスタッフの意見を聞くと、どうも皆は柊あおいさんの原作が好きで、少女マンガとして映画にすることを期待しているらしい。


で、女性スタッフが読んでる少女マンガ雑誌を借りてペラペラめくると、全く同じことやってるんですよ。ドブに足突っ込んで”ありゃりゃ”って(笑)。それでやっと理解できました。これは少女マンガのお約束なんだと。理屈で考えてもしょうがないんだと。それで楽になりましたね」

というわけで『猫の恩返し』の制作が本格的にスタート。しかし、この当時スタジオジブリでは『千と千尋の神隠し』が作られていたため、人手が全然足りませんでした(そもそも『千と千尋』のスタッフ自体が不足していた)。

そこで、やむを得ず外部のアニメスタジオからアニメーターを募り、作業のほとんどを外注に委託したらしい。つまり、『猫の恩返し』はジブリアニメなのに、ジブリのスタッフがほとんど関わることなく作られた映画だったのですよ。

このため、『猫の恩返し』は今までの宮崎アニメとはかなり雰囲気が異なる作品になりました。また、森田監督も従来のイメージを払拭するため、キャラクターデザインに変化を求めたそうです。

森田監督曰く、「宮崎さんの映画に出てくる女の子って、みんな小さくて可愛いタイプばかりですよね?でも僕は背が低い女の子よりも、背が高くてすらっとした人が好みなんで、可愛いというよりも”ちょっとイイ女”というイメージをハルに投影してたんです。宮崎さんから、自分が”いいな”と思うような女の子を主人公にしなさい、と言われていたので、遠慮なく自分の趣味を反映させました(笑)」とのこと。

こうして『猫の恩返し』は無事完成したのですが、もともとは「テーマパークのシンボル・キャラクターを作る」という依頼から始まった企画なので、耳をすませば』とは本来何の関係も無かったんですよね。

でも、猫のバロンやムタなど共通のキャラクターが登場しているため、後に「『耳をすませば』の主人公の月島雫が大人になってから書いた小説」という設定が生まれ、それが公式になったというわけです。

なお、「実は『猫の恩返し』は劇中劇で、ラストに映画を観ている月島雫が登場する」という噂もあるみたいですが、単なる都市伝説なので残念ながらそんなシーンは出てきません(^.^)


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