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映画『アンストッパブル』と実際に起きた列車事故はここが違う!(ネタバレ解説)


■あらすじ『ペンシルヴェニア州ブリュースター。この日、初めてコンビを組むことになった勤続28年のベテラン機関士フランクと、職務経験4ヶ月の新米車掌ウィル。それぞれ私生活でも問題を抱える2人は、険悪な雰囲気で旧式機関車1206号に乗り込むことに。その頃、同州のフラー操車場では、運転士によるブレーキ操作ミスで、最新鋭の貨物列車777号が無人のまま走り出してしまう。39両の大編成で全長約800メートルを誇るそれは、極めて危険性の高い化学物質とディーゼル燃料を大量に積んでいるため、急カーブで転覆すれば大惨事に発展することは必至だった。あらゆる手立てを講じるも敢えなく失敗に終わる中、全ての命運を託されたフランクとウィルは1206号の機関車両を777号の最後尾に連結させ、ブレーキでその暴走を停止させるという無謀な手段に全てを懸ける…!大惨事の未然防止に命懸けで挑む姿とその運命の行方をスリリングに描いたタイムリミット・パニック・アクション超大作!』


本日、金曜ロードSHOWにて『アンストッパブル』が放映されます。「二人の男が暴走した列車を止める」という、たったの一行で説明できてしまうシンプルなストーリーを、半端な捻りなど一切加えず、直球勝負で真正面から描き切った痛快娯楽作品ですよ。

公開当時、劇場で観た僕は「少しはサブプロット的なエピソードも入ってるのかな?」と思っていたんですが、本当に列車の話だけで全編を乗り切った実に潔い作劇に感嘆しました。

この映画の大きな特徴は、フィクションではなく実話を元にストーリーが作られている、という点でしょう。モデルになった列車事故は、2001年5月15日に発生した「CSX8888号暴走事故」(別名クレイジーエイツ事故)です。

オハイオ州トレドにあるCSXトランスポーテーション鉄道の貨物操車場で、入換え操作中のディーゼル機関車8888号が無人のまま暴走し約100kmも走り続け、全米のニュースで報道されるなど大騒ぎになりました。

映画で描かれている事故の原因や関係者の対応などは、実際の出来事とほぼ同じだそうです。事故の発端は、入れ替え中の機関士が前方のポイントが間違っていることに気づき、超低速走行にしたまま機関車を降りてしまったこと。

その後、ポイントを切り替えて戻ろうとしたら機関車が加速して乗り込めず、そのまま暴走を始め…(積み荷も同じく”溶融フェノール”だったらしい)。ラストで機関車を止める方法も事実と映画は同じ。

このように、実話をベースとしてリアルなドラマを描いた本作ですが、逆に事実と異なる部分も多かったようです。特に、列車を止めるために実施された”作戦の数々”は大きく脚色されているらしく、実際の段取りは以下のような感じでした。

(1)警察が、機関車の緊急停止用非常スイッチを狙撃して列車を強制的に停止させることを管制室に提案。フィンドレイの踏切で警官2名が、少しでも当たるようにと至近距離からショットガンで狙撃したが、スイッチはわずか3cmの幅しかない小さなもので、さらに列車の速度がこの時点で時速43マイル(約70km)という想定以上の速さだったため、失敗した。


(2)周囲に人気のないダンカークの待避線の切り替えポイントに機関士ジョンが先回りし、管制室の合意の下、ポイントを切り替えることで安全な場所でワザと列車を脱線させようと試みる。しかし時速50マイル(約80km)というあまりの速度にポイントが跳ね返され、失敗した。


(3)暴走列車の逆方向から進行中だった別の貨物列車Q96号(勤続28年の機関士ジェシー・ノールトンと新米車掌テリー・フォーソンが乗務中)に対し、「暴走列車が通過後、待避線から本線に合流、暴走する列車の後部に機関車を連結し、ブレーキをかけて停止させよ」との指示が管制室からなされた。


指示通り、待避線に進入後、バック走行のまま時速100kmのスピードで暴走列車の追跡を開始した。バックでの運転で、進行方向の状況が見えないQ96号機関士ジェシーの為に、後方(進行方向では前方)に車掌テリーが無線を持って立った。


ケントンの急カーブまで残り時間7分を切った頃、ようやくQ96号は追いついたが、スピードを緩めると引き離される恐れがあったため、やむを得ずそのままのスピードで連結を試みる。通常は、徐行運転で連結する為、成功するかどうか危ぶまれたが、見事に連結は成功し、二人とも無事だった。

上記の(1)に関しては、実際には二人の警官が数発発砲しただけだったのに対し、映画では十数名の警官隊が横一列に並んで一斉射撃を行う、という派手な描写に変更されていました(列車が穴だらけになるよ!)。

さらに(2)に関しては、映画ではレールに脱線させるための装置を取り付け、強引に脱線・停止させようとしたものの、脱線装置が壊れて失敗、という描写になっています。

そして、暴走車の前方に別の機関車を走らせ、徐々に減速させるというアイデアは、映画では「ベテラン機関士のジャドが運転する機関車7375号を777号の前に回りこませて減速させようと試みる」というシーンになっていました。

その結果、7375号は速度を落とし切れず転覆後に爆発・炎上し、ジャドは脱出できないまま死亡するという展開に…。しかし実際には、準備した機関車は使用されず、このような大爆発も起こらなかったそうです(もちろん死者も出ていません)。

また、子供たちが乗った列車とギリギリですれ違うシーンや、主人公ふたりの列車との衝突回避シーンなども映画のために付け加えられたものでした(『新幹線大爆破』にも同様の場面あり)。

そして、映画ではブレーキを使って急カーブをクリアしましたが、実際にはそこまで列車は進まず、カーブの手前で止まったらしい。なお、カーブの路線付近に見える石油タンクや化学薬品貯蔵タンクなども存在せず、全て危機感を煽るための演出だそうです。

その他、ヘリコプターで列車に乗り移ろうとするシーンや、フランクが貨車の上を渡り歩くシーンなども実際にはありません(さすがにあれは危ないよw)。

あと、全く同じ場所を舞台にするのは色々と問題があったり、また鉄道会社の協力も得にくかったようで、ペンシルバニア州のフラー操車場からバージニア州スタントンまでの路線が舞台となっています(鉄道会社の名前も架空の企業、主人公の二人も別名)。

こうして比べてみると結構違いますね。まあ、”事実に限りなく近いフィクション”って感じでしょうか。

ちなみに、『サブウェイ123』の時と同様、今回もまた無意味にパトカーがクラッシュするシーンが出てきますが、トニー・スコット監督は警察に何か恨みでもあるのかなあ(笑)。

というわけで、トニー・スコットデンゼル・ワシントンのコンビや映画のネタ自体に新味は無いものの、それが逆に抜群の安定感を生み出し、最後までハラハラドキドキさせられました。

「最終的に列車を止める方法はやっぱりそれしかないのね」という感じではあるんですけど、実話を元にしている以上、あまり突拍子もない展開には出来ないので致し方ないのでしょう。

残念ながら、本作がトニー・スコット監督の遺作となってしまいましたが、非常に見応えのあるエンターテイメント作品として高い完成度を誇っていると思います。


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