■あらすじ『2006年2月28日、ニューオリンズで543名もの犠牲者を出した凄惨なフェリー爆破事件が発生する。捜査を開始したATF捜査官ダグ・カーリン(デンゼル・ワシントン)は、その的確な捜査能力を買われ、FBIの特別捜査班への協力を要請された。
彼は政府が極秘に開発した“タイム・ウィンドウ”と呼ばれる映像装置を見せられる。それは、過去の特定のエリアを自由に見ることが出来る驚くべき監視システムだった。
ただし、この装置には現在から“4日と6時間前”の映像をリアルタイムで再生することしかできず、事件に関係ある場所を確実にスキャンするためにダグの判断力が求められたのだ。
そして、遺体として発見された謎の女性クレアが事件の鍵を握っていると確信したダグは、この装置で彼女の自宅を映し出し、4日と6時間前の生きていた彼女を監視する。
だが、ある違和感にダグは疑念を抱く。「まさか…この装置は…」“4日と6時間前の過去”と現在をめぐる、想像を絶する真実が明らかになる中、ダグはクレアを救う決意をする。
既に殺されている女性を救い出し、既に起こってしまった爆破事件を防ぐ事はできるのか?「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジェリー・ブラッカイマー製作、「マイ・ボディガード」のトニー・スコット監督、そしてアカデミー俳優のデンゼル・ワシントン主演で贈るSFタッチのサスペンス・アクション超大作!』
本作『デジャヴ』はネタバレ厳禁な映画なのですが、”ネタバレしないとほとんど何も書けない”という内容でもあるため、敢えてネタバレ有りで書かせていただきます(まだ映画を観ていない人はご注意下さい!)。
冒頭、賑やかな水兵たちやその家族がフェリーへ乗船する幸せそうな様子をスローな映像で見せながら、その直後フェリーが大爆発!
地獄絵図と化した現場へ両手をあわせ祈るように現れるデンゼル・ワシントンの登場シーンまで、セリフを一切排した約10分以上続くリズミカルな流れは映画的な驚きに満ち溢れ、「さすがトニー・スコット!」と感心せずにはいられません。
“スノーホワイト”と名付けられた最新のハイテク監視システムは、建物の中にいる人まであらゆる角度から覗き見る事が出来る“究極の盗撮マシン”です。
デンゼルさんは「重要な捜査だ」と称して被害者女性のシャワーシーンや着替えシーンを真剣な眼差しで覗きまくり(アカンやろw)、少しずつ事件の手掛かりを見つけていきます。前半のスリリングな展開は抜群に面白く、ワクワクドキドキ手に汗握りました。
こうした「最新鋭のハイテク装置を駆使して一人の人間を徹底的に監視する」というストーリーだけ聞けば、同じトニー&ブラッカイマー・コンビが撮った『エネミー・オブ・アメリカ』を思い出す人もいるでしょう。
実際、途中までは『エネミー・オブ・アメリカ』同様、サスペンス・アクションの様相を呈しており、リアルなSF映画だと思ってたんですよ。
「メモが送れるなら、人間だって送れるハズだ!」という無茶な理屈で後先考えずにタイムトラベルする主人公もどうかと思いますが(元の世界へは戻れないわけだし)、サスペンス・アクションからいきなりSFアドベンチャーへ切り替えるという強引な展開にも、「常識的に考えておかしい」と突っ込まずにはいられません。
実はトニー・スコット監督は、「もっとリアルで現実味のあるサスペンス映画」を作ろうとしていたようなんです(当初のシナリオにはタイムトラベルする展開は無かったらしい)。しかし、脚本家が強引にSF的な方向へシフトしようとしたため、かなり議論になったとか。結局、脚本家の意見を取り入れて前半はサスペンス、後半はSFという妙な映画が出来あがった…というわけです。
これに対し、僕の周りの人達は「まあ、製作がジェリー・ブラッカイマーだからしゃーないか」の一言で片付けてしまいました。
ジェリー・ブラッカイマーといえば、『アルマゲドン』や『パールハーバー』など「いかがなものか?」と思うような映画を製作してきた名物プロデューサーであり、そういう意味では“広い心”で受け入れられるかどうかが本作を評価する最大のポイントになるのかもしれません。
そして、後半はさらにブラッカイマー節が大炸裂!爆発、銃撃、カーチェイスのつるべ打ちで、クライマックスまで一気呵成に突っ走る!中でも、頭部に特殊なバイザーを装着し、「別の時空の風景を見ながら車を走らせる」という前代未聞の暴走シーンは衝撃でした。
総評としては、「これぞエンターテインメント!」という感じで、非常に満足度が高かったです(前半と後半で完全に別の映画になってますけどw)。
そんな本作の真骨頂は、何と言ってもラストシーンでしょう。ヒロインとフェリーの乗客を助けるため、主人公は車に乗ったまま爆死します。ところが、嘆き悲しむヒロインの目の前に再びデンゼル・ワシントが登場!
SF映画やマンガでよくある「同じ時間へタイムスリップしたらもう一人の自分に出会った」という状況を逆に利用する大胆不敵なラストに驚愕しました(”主人公は死んでいるのにハッピーエンド”っていうオチが凄い)。「オープニングシーンがそのままエンディングに繋がっている」というドラマ構造もタイトルの『デジャヴ』を彷彿させていいですね〜。
なお、映画の冒頭場面で「死体袋から携帯電話の着信音が鳴る」というシーンが出てきますが、「あの袋に入っていた死体はダグだったのか」と考えた人も多いんじゃないでしょうか?しかし脚本家によると、あれはダグではないそうです。
あれがもし(タイムトラベルした)ダグの携帯電話だとすれば、この世界に全く同じ携帯が二つ存在することになり、「電話をかけたらどっちの携帯に着信するのか?」「映画ではなぜ死体の方にだけ着信したのか?」などの疑問や矛盾が発生するため、常識的に考えて違うだろうと(つまりあの死体は、爆破テロで死亡した不幸な犠牲者の一人だった…というわけ)。
ちなみに、今回久しぶりにヴァル・キルマーを見たんですが、劣化具合がヒドいですねえ(苦笑)。首周りはブヨブヨだし、お腹はタプタプだし、『トップガン』の頃の面影は微塵も感じられません。いったい、何をどうしたらあそこまで体脂肪率が増えるのでしょうか?『ヒート』の頃はカッコ良かったんだけどなあ(-_-;)
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