ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

実写映画『ライアーゲーム-再生-』ネタバレ感想/解説


■あらすじ『ファイナルステージから2年。前作で消滅したはずのライアーゲーム事務局は謎の復活を遂げ、天才心理学者・秋山深一への復讐に動き出した。そんな中、女子大生・篠宮優のもとにライアーゲームへの招待状と現金1億円が届く。窮地に陥った篠宮は秋山に助けを求め、2人は協力して勝利を目指すことに。今回プレイヤーたちが挑むのは、“イス取りゲーム”。総勢20名の参加者たちが、総額20億円を賭け、最後の一人になるまでイス取り合戦を繰り返していく。そして、そんなゲームを操る、最年少事務局員アリスと謎の主催者オメガ。騙し合いか?それとも助け合いか?極限の心理戦が今始まる!甲斐谷忍の人気漫画を原作に、テレビドラマと映画で人気を博した「ライアーゲーム」シリーズ劇場版第2弾!』



本日、土曜プレミアムで『ライアーゲーム-再生-』が放映されます。個人的には原作のマンガが大好きで全巻読破済み。過去のテレビドラマ版も全部観て前作の劇場版『ファイナルステージ』も非常に楽しく鑑賞しました。で、今回の『再生(リボーン)』なんですが、「再生」と銘打っているだけあり、主人公(秋山)以外のキャラクターを一新して「今までとは違うシリーズを再構築しよう」という意気込みが感じられます。まあ、実写版『ライアーゲーム』の物語自体は前作で一応完結しているので、続きをやるには一旦リセットをかけた方がやりやすいのでしょう。

ただし、完全に新キャラばかりではなく、『ファイナルステージ』で戦った坂巻マイ(濱田マリ)がプレイヤーとして再登場しています(立場的には原作版におけるフクナガのポジションか?)。そしてもう一人、シーズン2のセミファイナルに参戦していた安川ノリヒコ(春海四方)も今回再挑戦。

また、フクナガ(鈴木浩介)とヨコヤ(鈴木一真)は映画冒頭でいきなり何かの勝負をやってるんですけど、結局フクナガは負けてしまい、イス取りゲームには参加できません(このシーン、テレビ放映版ではバッサリカットw)。谷村光男(渡辺いっけい)も明らかに前作より出番が少ないのが残念でした。

ちなみに、シーズン1の「少数決ゲーム」「リストラゲーム」「密輸ゲーム」に出ていた大野亘(坂本真)がワンシーンだけ登場しています(帝都大の大学院に秋山の教え子として通っているらしい)。

と、こんな感じで大幅にメンバーが入れ替わっているんですが、その中でも一番注目すべき人物はやはり神崎直(戸田恵梨香)に代わって新しいヒロインを務める篠宮優(多部未華子)でしょう。「なんで神崎直が出ないんだよ?」とファンの間では色々不満も上がったみたいですけど(『SPEC劇場版』とスケジュールがかぶったとか色々事情があるらしい)、個人的には多部ちゃんの方が原作のナオにイメージが近いと思っていたので、このキャスティングは正直嬉しかったです。

ただ、新ヒロインを出すからにはストーリーの序盤で背景や性格をしっかり描かなければいけないはずなのに、ほとんど説明がないままいきなりゲームに突入しているのはちょっといだだけません。たしかに『ファイナルステージ』も同じ流れだったんですが、前作は主人公とヒロインがテレビ版から引き続いて出ていたので説明を省いても問題なかったんです(初見の観客には不親切ですけど)。

しかし、今回はヒロインが変わったわけだから、「彼女と主人公の関係性」や「主人公が彼女を助ける理由」などを説明しないと彼らに感情移入できないはずなんですよ。映画の構成自体は前作と変わりないんですが、キャストを変えたことで今までの方法論では成立しなくなっているのがマイナスではないかと。

結局、新ヒロインに共感できないまま物語が進行することになってしまいました。秋山はいつも通りの秋山だったんですけどねえ(毎度お馴染み、松田翔太ケレン味溢れる渾身のドヤ顔がたまりませんw)。

そして、今回秋山の前に立ち塞がる強敵は、張本タカシ(船越英一郎)と桐生ノブテル(新井浩文)。原作では張本とヨコヤが登場しますが、映画版ではヨコヤに代わってオリジナルキャラの桐生が参戦しています。桐生はヨコヤに比べてワイルドというか、かなり凶悪なイメージになってました。しかし、それ以上に張本の変貌ぶりが凄い(完全に別人ですよw)。船越さんの過剰な演技も一見の価値有り。

それから、小池栄子が演じる月乃エミというキャラは、原作に登場したアベユキヨと同じ役柄なんですが、どうして名前を変えているのかと言うと、映画では原作と違う行動を取っているため、マンガを読んだ人が観ると終盤の展開がバレてしまうからではないかと思われます(でも、原作を知っていれば大体予想はつきますけどね)。あと、要潤が演じる赤城コウタも原作に出て来ますが全然違うキャラになってました(要潤でなくてもよかったような)。

一方、「イス取りゲーム」は原作版を映画用に上手くアレンジし、面白さを維持したまま分かりやすく再構成してあったと思います。なんせマンガの方は、「イスの確保」・「メダルのやり取り」・「チーム編成」・「親決め投票」など、複雑な要素が絡まり合い、非常に高度な頭脳戦を繰り広げているわけですから、そのまま映画化したら誰も理解できない可能性があるわけです。それを一般の観客にも分かりやすく、しかも知的な戦略をしっかり楽しめるように見せているのですから大したものだと感心しました。

というわけで、篠宮優などキャラクターの描き方に少々不満点はありますが、実写版『ライアーゲーム』の魅力は「スピード感溢れるサウンド」と「大逆転のカタルシス」にあると思っているので、中田ヤスタカの音楽と秋山のキメ台詞「お前の負けだッ…!」を聞ければ、自分的にはもうそれだけで目的の8割以上は達成したも同然なのですよ(笑)。

なので前作を楽しめた人なら、本作もまずまず楽しめるんじゃないでしょうか(内容は前作の方が面白かったけど)。ちなみに、今回もエンドロールの後におまけ映像がありますので、気になる人は最後までご鑑賞ください。


以下、ネタバレを含めつつ不満点などを書いてみます。


●無意味な登場人物が多い
今回フクナガは映画冒頭でヨコヤとの勝負に敗れたため、「イス取りゲーム」には参加しません。ところが、その後なぜか事務局側の人間として行動し、ゲームを観戦する立場になっているのです(負債と相殺するためらしい)。ヨコヤに関しては、前作のラストで”改心”してしまったために参加できないのは仕方がないと思います。

しかし、フクナガは原作でしっかり(敗者だけど)このゲームに参戦していたので、同じような展開にすることも可能だったと思うのですが、なぜそうしなかったのか。「キャラクターを一新するため」というのであれば、そもそもフクナガを登場させる必要がないでしょう?出すなら出すで、せめてゲームの進行状況を観客に分かりやすく解説するとか、何らかの役割を持たせて欲しかったなあ。

あと、芦田愛菜の起用も全く意味が無くてガッカリ。「なぜ子供が事務局員なの?」という疑問はこの際無視するとしても、ストーリー上それほど重要でないキャラがあんなに目立っては違和感が増すだけですよ。江角マキコの無駄使いぶりもハンパない(まさかあそこまでセリフが少ないとはw)。

●篠宮優のキャラがブレすぎる
神崎直に代わって登場した新ヒロインの篠宮優ですが、どうも立ち位置が中途半端というか足元がグラグラしてるんですよね。ナオが「バカ正直」とあだ名される通り、最初から最後まで行動が一貫していたのに対し、優はゲーム開始直後に月乃エミを無視したかと思ったら次のシーンでは彼女を助け、更にその後秋山を裏切ったりまた仲間に戻ったり、終始心理状態が不安定なんですよ。

前作『ファイナル・ステージ』の場合は、ナオが何度も他人を信じてその度に裏切られる行為を繰り返し、それを見ていた他のプレイヤーは次第に心が動かされていく、という流れになっていました。だからこそ、最後に赤リンゴが揃った時にカタルシスがあったわけです。

ところが本作の場合は、篠宮優が仲間を裏切ったら逆に裏切られて可哀想、という流れになってしまい、クライマックスの「皆さん、お互いに助け合いましょう!」という呼びかけが空々しく聞こえ、全く心に響きません。そのせいで、最後に勝者が敗者にメダルを渡す場面も「はあ!?」ってな感じで物凄く安っぽいシーンに見えちゃうんですよ(白スーツの男やお姉ちゃんはいつの間に改心したんだ?)。残念ながら、本作のラストシーンにはいまいちカタルシスが無かったです。

●篠宮優は役立たず?
一番の問題は、ヒロインである優の言動がゲームの勝敗にほとんど関与していないという点でしょう。前作のナオは、秋山に協力してリンゴを運んだり他のプレイヤーにメッセージを伝えたり、勝利を収めるためにメチャクチャ働いていました。

それに対して篠宮優は、序盤は「このままじゃ負けちゃう!」と焦って右往左往するだけだし、(後半は色々作戦を実行しますが)ガヤたちの協力を得られたのも結局は利害関係が一致しただけだし、「優がいたからこれが成功した」というものが無いんです。

敢えて彼女の功績を挙げるなら、張本グループを改心させたこと(それもかなりのご都合主義w)ですが、あの時点で既に桐生の座るイスは無くなっており、秋山の勝利は確定していたのです。つまり、張本が改心しようがしまいがゲームの勝敗には何の影響も及ぼさないんですよ。原作では、最後にガヤが一致団結して”ヨコヤをイスに座らせない”という驚きの作戦を実行していますが、マンガ版の方が分かりやすくてインパクトがありましたね。

これまでの『ライアーゲーム』っていうのは、秋山とナオの信頼関係がドラマの軸となり、裏切られても人を信じ続けるナオの姿に廻りのプレイヤーが感化され、最後は人を信じる心が勝利を導くという展開でした。そして2人が互いに互いを高め合い、共に成長していく姿を描いていたのです。

ところが今回からは、「秋山が篠宮優の成長を手助けする」という物語へシフトして、しかも肝心の優が全然成長しているように見えないんですよねえ。もしかして、続編を作りながら徐々に成長させていくつもりなのかな?

ライアーゲーム事務局のやる気が感じられない
今回のライアーゲーム開催の目的は「秋山への復讐」ということらしいのですが、どう考えても事務局が本気で秋山を潰そうとしているようには見えません。事務局側の人間として出てくるのはおばちゃん(江角マキコ)と子供(芦田愛菜)だけだし、プレイヤーの中にも刺客らしい人物はいないし、ゲーム内容も特に”秋山狙い”というわけじゃないし。

前作までの秋山には「事務局の壊滅」という大きな目的があったのに、本作ではゲームをやる”大義”がなくなっています。だからこそ、「秋山vs事務局」という構図をはっきり見せるべきだと思うのですが、そうなっていなかったのが残念。事務局もっと本気出せ!


●人気記事一覧
これはひどい!苦情が殺到した日本語吹替え版映画ワースト10
まさに修羅場!『かぐや姫の物語』の壮絶な舞台裏をスタッフが激白!
日本映画のレベルが低くなったのはテレビ局のせい?
町山智浩が語る「宮崎アニメの衝撃の真実」
「映像化不可能」と言われている小説は本当に不可能なのか?


このブログについて(初めての方はこちらをどうぞ)
トップページへ