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完全ネタバレ解説!『ダークナイト ライジング』ラストシーンの真相

バットマンブルース・ウェイン)は生きているのか?それとも死んでいるのか?論理的に検証してみた。


どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

さて、以前『ダークナイト ライジング』のレビューを書いた際、とある方(仮にAさんとします)からコメントをいただきまして、その内容は「主人公のブルース・ウェインは最後に死んだと思う」というものでした。

どういうことかと言うと、映画のクライマックスで爆弾を抱えたバットマンブルース・ウェイン)が飛行ビークル(ザ・バット)に乗って海の彼方まで飛んでいきそのまま爆発。

しかし、後に自動操縦装置が修復されていたことが分かったり、ネックレスが紛失していたり、「死んだように見えたけど実は生きているのでは?」と思わせる手掛かりを残して映画が終了していたため、僕は普通に「まぁ生きてるんだろうな」と解釈してたんですよ。

ところがAさんはこれに異を唱え、「ブルースが生きているように見えるのはクリストファー・ノーラン監督の策略に違いない」と持論を展開。

エピローグでアルフレッドがブルース・ウェインと再会するシーンに関しても、「あれはアルフレッドが見た悲しい夢(生きていて欲しいという妄想)であり、現実の光景ではない」と独自の解釈を主張し、あくまでも「ブルースは死んだのだ」と言って譲りません。

そこまで言われると、僕も「そういう解釈も有り得るのかな…?」という気になったんですが、これって結局「自分はこう思う」という主張に対して「いや、そうは思わない」の応酬になるだけだから、いつまで経っても平行線を辿るだけで”答え”が出ないんですよね。

「一つの映画のラストをめぐって解釈が分かれる」というのは割と良くあるパターンなんですけど、それは映画の中に複数の解釈ができるような”曖昧な表現”があるからです。特にクリストファー・ノーラン監督は「観客に判断を委ねる」という方針をとっているため、映画の中に描かれている状況だけを見ていても正しい答えに辿り着けません。

では、一体どうすればいいのか?

「映画の外の情報を積極的に調べる」のです。具体的に言うと、僕はまず監督や出演者のインタビューを確認しますね(例えば監督が「あれは実は○○なんだよ」と証言していれば、それでもう問題は解決するので)。

もちろん、映画の中で描かれている表現のみでその意味を考えることは基本ですが、物事の本質を見極めるためにはそれだけでは足りないのです。脚本や絵コンテ、関係者のコメントなどの周辺情報を複合的に精査することで対象となる作品への理解度を深め、その上で映画内部に込められたクリエイターの意図を的確に汲み取ることが重要なのです。

そのために、ネットに出ている発言やインタビュー動画、雑誌なら『キネマ旬報』『SCREEN』『映画秘宝』『DVD&ブルーレイでーた』あたりは最低限押さえておきたいし、それ以外にも『映画芸術』『Cut』『日経エンタテインメント』など、映画情報が載っている書籍はたくさんあるので要チェック。

今回は他にも『Cinefex日本版 No.27 -ダークナイト ライジング-』や『メイキング・オブ・ダークナイト・トリロジー』などを読みました。これらの本は「どのようにしてこの映画が作られたのか」を詳しく紹介してあるので資料的な価値が高く、十分に謎を解き明かす手掛かりになるでしょう。

そんな感じで映画を観た後に上記の本を片っ端から読み漁ったんですけど、一番興味深かったのは『ユリイカ』ですね。『ユリイカ』の2012年8月号でクリストファー・ノーランを特集しており、各作品の考察やノーラン監督のロングインタビューなど、本当に「1冊丸ごとクリストファー・ノーラン」みたいな感じだったので非常に読み応えがありました。

この本の中でノーラン監督は「自分の意思を明確に伝える方法を常に試行錯誤し、そのため私はいつも入念に説明を脚本に書き込んでいる」と述べています。その言葉通り、『ダークナイトライジング』の脚本にはラストのアルフレッドと会うシーンで、「ブルースのネックレスを身に付けて座っているセリーナ」と書き込まれていました。

しかし実際に映画を観ると、ネックレスがブルースのものかどうかなんて判別できないし、そもそもピントが外れている(わざと外している)せいで、セリーナの顔さえはっきり映っていないのですよ。つまり、こんなことを脚本に書き込んでも観客には伝わらないのです。では、ノーラン監督はなぜわざわざこんな説明を書き加えたのでしょうか?

実はこれこそが、ノーラン監督が仕組んだ”真相を解明するための手掛かり”だったのです。あのシーンは確かに、一見するとアルフレッドの夢のように見えなくもない、曖昧な表現で描かれていました。そのためにAさんも(ノーラン監督の目論見通り)あれを”夢”だと勘違いしたのでしょう。しかし、脚本に記された情報と照らし合わせることによって、”隠された真相”が浮かび上がってくるのです。

では、ノーラン監督がわざわざ脚本に「ブルースのネックレス」と書いた意図とは何なのか?

あれがもしアルフレッドの夢ならば、セリーナが例のネックレスをしている意味がないし、そもそもセリーナが登場する必要すらないわけですよ(アルフレッドの気がかりはブルースのことだけなので)。

つまり、「”夢”だったらわざわざ書く必要のない情報を、敢えてシナリオに書き加えている」という揺ぎ無い事実が、間接的にあのシーンが現実であることを証明しているのです(この脚本を購入した人も「ラストの疑問が解けて大満足です!」と喜びのコメントをレビューに載せていました↓)。

さらに、アメリカで発売されている公式ノベライズ版では、このシーンでブルース主観の文章も記載されているそうです。アルフレッドとブルースが会話を交わす程度ならギリギリ「アルフレッドの夢」と考えられなくもありませんが、ブルース側の視点から心境を語ったとなれば、これはもう完全にアルフレッドの夢では有り得ないでしょう。したがって、「アルフレッドのシーンは現実」=「ブルースは生きている」という図式が成り立つわけです。


また、上記の雑誌に掲載されたインタビューの中で、撮影を終えたばかりのクリスチャン・ベイルが次のような発言を残していました。

今回は、まずブルースの原点に大きな苦悩があったという事実が描かれていて、彼がそれに向き合う必要があることを思い出させる内容になっている。問題は、いつまでその苦悩に自分の人生を支配されたままでいるのか?っていうこと。彼はその問いに答えを出し、自らを苦悩から解放して次のステージに進まなければならないんだ。

いかがでしょう?”自らを苦悩から解放して次のステージへ進もう”とポジティブな思考を持っている人間が、「爆弾を抱えたまま死んでしまおう」なんて考えるでしょうか?完全に真逆の発想ですよね。つまり、ブルースは最後の最後まで生きる希望を失わず、新しい人生へ踏み出すために前向きに行動していたのです。

ちなみに、『Cinefex No.27 ダークナイトライジング』を読むと、本文の最後に「死んだと思われたブルース・ウェインだったが、驚きのハッピーエンドで幕を閉じる」などと書かれていました。はっきり「ブルースは生きている」と書いてはいないものの、どうやら本を作った人も「ブルースは死ななかった」と解釈しているようですね。本書はクリストファー・ノーランが監修しているので、これもまた『客観的な事実』の一つと言えるでしょう。

さて、上記のような解釈を説明したところ、再びAさんから「じゃあ、バットマンはいったいどうやって脱出したんだ?」と反論がありました。

飛行ビークル(ザ・バット)には自動操縦装置が組み込まれ、さらに緊急脱出装置が設置されているとなれば「簡単に脱出できるんじゃないの?」と思うんですが、Aさんは「仮に座席を射出して脱出できたとしても周りは全て海だし、近くで核爆発が起こっているし、どう考えても無事にゴッサムシティまで帰還できたとは思えない」と納得していない様子。なるほど、言われてみれば確かにその通りかもしれません。しかし、この疑問点に関してもちゃんと説明が付くのです。

もともとノーラン監督は『ビギンズ』を制作する前にワーナー側の重役たちと話し合い、現実主義的な方向性を提案していました。そこで「バットマンの世界に登場する物は全て合理的に説明がつき、明確な存在理由がなければならない」と力説したのだそうです(あまりにも現実性を突き詰めたため、当初はバットモービルさえ出て来ないバージョンも検討していたとか)。

しかし、スタジオ側から返ってきた答えは、「バットマンはとてもクールでかっこいいマシンに乗っていなければならない」という、従来型のヒーロー像から全く進歩していない、非常に保守的なものだったらしい。ガッカリしたノーランは、それでも諦めずに少しでもリアルでハードな物語にマッチするよう、”軍事テクノロジーを流用して作られたスーパーマシン”という設定を考えました。こうして、シリーズ随一のタフさを誇るバットモービル:タンブラーが誕生したのです。

そして、続編の『ダークナイト』ではタンブラーが更なる進化を遂げました。ジョーカーの攻撃を受けて大破したタンブラーのフロント部分から、突然飛び出す謎の物体。これこそ、タンブラーに搭載された緊急脱出装置であり、攻撃も可能な特殊二輪車バットポッドだったのです。タイヤが車軸ごと回転するシステムにより真横へスライドできるなど、通常のオートバイでは不可能な動きが可能となり、武装としては前輪部分に80mmブラスト砲とロケットアンカーを備え、特にブラスト砲は自動車やタンブラーを吹き飛ばすほどの火力を誇る、まさに究極の脱出装置!

実は、この”緊急脱出装置型モービル”という設計思想こそが、「バットマンはザ・バットからどのようにして脱出したのか?」の回答に当たる部分であり、謎を解き明かす手掛かりなのです。映画の中では描かれていませんが、「ザ・バットはバットポッドを格納できる」「緊急脱出機能がある」という裏設定がちゃんと存在しているのですよ。(「Wikipedia」より↓)


僕はこの映画を観た後に『バットモービル大全』という本を買ったんですが、この本は初代『バットマン』から『ダークナイトライジング』までに登場したバットマンのスーパービークルについて、写真や図解・設定資料・アートワークなど、あらゆるヴィジュアルを網羅し、マシンの魅力を徹底的に解説した大変読み応えのある冊子なんです。タンブラーが大好きな僕にとっては、クリストファー・ノーラン監督がタンブラーのデザインにどのような意味を込めたのか、キャラクターや世界観ともマッチングさせるためにどのような工夫を凝らしたのかなど、様々なエピソードがどれも興味深くて非常に楽しめました。

さらに、劇中ではバイク・タイプのバットポッドしか登場しませんが、他にもバットボートのように海上を高速で移動できるタイプや、潜水機能を持った「ナノ」と呼ばれる小型のバットポッドなど、様々なバリエーションが存在するとのこと。つまり、ザ・バットにこのような秘密機能が搭載されていたからこそ、ブルース・ウェインは脱出することが可能だったわけです。

実は、これと同じ状況は映画版『バットマン』の中で既に描かれているのですよ。その映画とは、ジョエル・シューマッカー監督、ヴァル・キルマー主演のバットマン フォーエバー』。劇中、バットウイングに乗って海上を飛んでいたバットマンは、突然リドラーの攻撃を受けて大ピンチに陥ります。そこですかさず緊急脱出装置を作動させ、本体からコクピットを分離し、そのまま潜水艇に変形したバットウイングを操縦して反撃開始!という場面がしっかり描かれていました。

このように、バットマンが操縦するハイテク・マシンは、「緊急時にはコクピットが小型脱出ポッドとなって本体から分離し、そのまま高速移動できる」という独自の設計思想が採用されており、「移動中の飛行物体からどうやって脱出したのか?」に関しては、もうほとんど答えが出てるんですよね。

なので、”脱出方法”については今さら疑問の余地は無いと思いますが、実は本当に問題にすべき点はそこではありません。最大の疑問は「いつ、どのタイミングで脱出したのか?」というところなんです。念のためにクライマックスの流れをもう一度確認してみましょう。

●映像1:バットマンがザ・バットに乗り込んで飛行を開始する

●映像2:飛行中のバットマン

●映像3:橋の上を越え、海の彼方へ飛んでいくザ・バット

●映像4:覚悟を決めたバットマン

●映像5:残り時間はあと5秒!

●映像6:不安そうに見つめるブレイク

●映像7:爆発!

初めてこのシーンを観た時に「ん?」と思いました。最後にバットマンの姿が映ってから爆発までの時間が、あまりにも短すぎるんです。こんな短時間で脱出できるのか?たとえバットポッドで脱出したとしても、核爆発に巻き込まれて死んでしまうんじゃないの?まあ、「映画内時間」は実時間と違うのでカウントダウンの5秒よりは多少長いかもしれませんが、それでも十分に余裕があるとは思えません。いったいバットマンはいつ脱出したのでしょうか?

「直前にビルが爆発しているからその瞬間に脱出したのだろう」という説もありますが、ビルの爆発後もザ・バットを操縦しているバットマンの姿が映っているので、少なくとも橋を越えてから海に出るまでは脱出していないと考えられます。つまり、「ブルース生存説」を支持する人にとっての最大のウィークポイントは、バットマンが脱出するための時間がほとんど無い」という点なのですよ。

しかし、ラストシーンを何度も見直すうちに、あることに気付きました。映像4でのバットマンは、良く見ると「ちょっと後ろを振り返るような仕草を見せてから正面を向いている」のです。さっき橋の上を通過したばかりだから再度後ろを確認する必要はないのに、なぜこんな動きをしているのか?さらに、注意深く映像を観察すると、実はこの場面には”あるもの”が映っていないことが判明したのです。それはいったい何か?

バットマンがザ・バットを操縦しているシーンでは、コクピットの外の景色が必ず映っていました(映像2)。空を飛んでいるわけだから空の景色が映るのは当たり前なんですけど、なぜか最後(映像4)だけは外の景色が映っていない。いや、映せなかったのです。なぜならこの時、バットマンは脱出用のバットポッドに乗って海上を爆走していたのですから!そう、バットマンは既にこの時点で脱出を果たしており、ゴッサムシティに戻っている真っ最中だったのですよ。

では、どのタイミングでザ・バットから離脱したのか?もう一度、バットマンの行動を確認してみると、映像3でザ・バットが映った直後にカットが切り替わっていることから、この瞬間に脱出していた可能性が高いでしょう。

そして映像4で「よし、これで核爆弾を遠くへ捨てることができた」と安心するバットマンの顔が映ります(振り返ってザ・バットを確認していた)。この時、ザ・バットは猛スピードで海の彼方へ移動し、一方のバットマンは猛スピードで逆方向へ移動していると思われ、二つの距離はどんどん遠ざかっています。こうしてブルース・ウェインは爆発に巻き込まれることなく無事に帰還できた…というわけです。

僕の考察は以上ですが、『ダークナイト ライジング』のラストを普通に解釈すれば「ブルース・ウェインは生きている」という結論になるのは当たり前で、クリストファー・ノーランの映画としては”仕掛け”が少ない方なんですよね。

たとえば、『インセプション』のラストでは「コマが止まるか止まらないか」のタイミングで映像をカットし、結論を観客の判断にゆだねるという手法を採用していましたが、あれも映画の中に”正解を導き出すための手掛かり”を施していたことが分かっています(子役のキャスティング、衣装、指輪など)。

そして『ダークナイト ライジング』では、エピローグの「アルフレッドとブルースが再会するシーン」で、わざわざセリーナを同席させ、しかもネックレスを着用している、という点が”手掛かり”になっていたのです。

この場面のポイントは、ルフレッドが驚いてないということ。普通なら、死んだと思っていた人がいきなり目の前に現れたら驚きますよね?しかもアルフレッドはその前のシーンで、ブルースのお墓の前で号泣してたんですよ(この時点では「死んだ」と思っているから)。

それなのに、カフェでブルースの姿を見ても、軽く会釈をしただけでその場を立ち去ってしまうのです。いったい、どうして驚かなかったのか?それは、彼がネックレスに仕込まれた発信機の電波を辿ってここまで来たから。

つまり、ブルースが生きているということを事前に知っていたからなのです。それを説明するために、ノーラン監督は「セリーナが(発信機付きの)ネックレスを着用している」とわざわざ脚本に書いたのですよ。

このように、クリストファー・ノーラン監督の作品には、”正解を導き出すためのヒント”が必ず組み込まれています。映画をじっくり観れば分かるものから、「そんなの言われても分からないよ!」というレベルのものまで様々ですが、とにかく映画のどこかに手掛かりはあるんです。

「夢か?それとも現実か?」と観客に判断を委ねるような内容であっても、ノーラン監督の頭の中ではハッキリと”正解”が決まっており、あとは観客がそれに気付くか気付かないか、というだけの話なんです。なので、今後はそういう”仕掛け”や”手掛かり”に注意して観賞すれば、もっと映画が楽しめるんじゃないでしょうか。

※追記
クリストファー・ノーラン監督は初期の傑作『メメント』の頃から「観客に判断を委ねる」という方針を貫いています。ただし、撮影する時は自分の中で”正解”を決めているにもかかわらず、その”答え”をインタビュー等で話すことは決してありません。

2000年のヴェネツィア国際映画祭で『メメント』を上映した時、記者会見で「映画の中の疑問点」について聞かれたノーラン監督は、うっかり”答え”を喋ってしまいました。その直後、弟のジョナサン・ノーランに「兄貴が答えたら、それが”正解”になってしまうだろ」「今後は絶対に自分の解釈について答えちゃダメだ。作品の曖昧さが台無しになってしまう!」と注意されたそうです(「ノーラン・ヴァリエーションズ クリストファー・ノーランの映画術」より)。

そのため、以降は敢えて自分の考えを公表していませんが、例えば最新作の『TENET テネット』でも「ニール(ロバート・パティンソン)の正体」について解釈が分かれているように、劇中に謎を解く手掛かりを残しつつ「判断は観客に委ねる」というスタンスをとってるんですよね。そういう部分も、ノーラン監督の作品を楽しむポイントの一つと言えるでしょう。


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