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ネタバレ解説!『ボーン・レガシー』の評価ってどうなのか?


■あらすじ『記憶を失った最強暗殺者ジェイソン・ボーンの存在によってCIAの極秘プロジェクト“トレッドストーン計画”が暴かれようとしていた。国家調査研究所のリック・バイヤーはCIAを守るため、すべてのプログラムを闇に葬り去るべく動き出す。関係者が次々と抹殺されていく中、プロジェクトの“最高傑作”アーロン・クロスは間一髪で逃げ延びる。アーロンは同様に命を狙われた研究者マルタを救い出すと、体調の維持に必要な薬を求めてフィリピンのマニラへと向かうのだったが…。世界中で大ヒットした“ボーン”シリーズ3部作の続編にして、ジェイソン・ボーンの死闘の裏で動いていたもう一つの国家的陰謀を同時進行で描くサスペンス・アクション!』



DVDが発売されたのでじっくり鑑賞してみましたよ。本作は、マット・デイモン主演で大ヒットを記録した『ジェイソン・ボーン』シリーズの新作という触れ込みで公開されましたが、実際には『ボーン』の新作というより、スピンオフって感じですね。

当初は、本家の『ボーン』シリーズを監督したポール・グリーングラスが再びメガホンを取る予定だったものの、制作会社側と対立して降板。マット・デイモンも「ポールがやらないなら僕も出ない」と出演を辞退してしまいました。

結局、過去のシリーズで脚本を手掛けたトニー・ギルロイが、自分で脚本を書いて自ら監督することに。また、主人公アーロン・クロスは『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』や『アベンジャーズ』など、最近大作映画に出まくっているジェレミー・レナーが演じることになりました。

映画の内容は「『ボーン・アイデンティティー』でジェイソン・ボーンとCIAが戦っていた時、その裏側では別の戦いが繰り広げられていた!」というもので、『ボーン・アイデンティティー』の重要キャラが登場したり同じシーンが出てくるなど、いくつかのシチュエーションがリンクしています。

ただし、あくまでも”同時進行の別事件”という扱いにとどまり、アーロン・クロスとジェイソン・ボーンが出会うことはありません。二人が協力してCIAに戦いを挑んでいれば「仮面ライダー1号2号」みたいで面白かったのに(笑)。

さて、本作が公開された時、世間の評価は結構厳しいものでした。曰く、「とんだ肩透かしだった」とか「期待はずれ」とか「こんなのボーン・シリーズじゃない!」等々、過去の三部作が傑作だったこともあり、余計に比較されてしまったのでしょう。

僕がまず気になったのは、見せ方のマズさです。時系列が1方向ではなく、かなり頻繁に過去の回想シーンが割り込んでくるのでストーリーの流れを寸断してるんですよ。主人公だけならまだしも、エドワード・ノートンレイチェル・ワイズまでもが唐突に回想をブチ込んでくるので尚更ややこしい感じに(これは編集の問題かも)。

それから、ドラマが動き出すまで時間が掛かり過ぎてますね。『ジェイソン・ボーン』三部作が、いずれも早いテンポで序盤からグイグイと観客を引き付けていたのに対し、本作は会話シーンがやたらと長くて退屈してしまいます。上映時間が2時間15分もありますが、もっと素早く展開させれば2時間以内に収まったのではないでしょうか?

また、終盤にようやく登場するアクションシーンも、普通に銃を撃って普通に格闘技で倒すのみで、前作のような頭脳戦も見られず残念。バイクチェイスに至っては『ボーン・スプレマシー』のカーチェイスよりも劣化してる有様でした。

建物の屋根の上からヒロインを追いかける場面も、『アルティメイタム』の焼き直しという印象が強くて新鮮さに欠けます。ただ、アーロンが建物の狭い隙間にザーッ!と滑り降りるシーンだけはかっこ良かったかな(この辺を担当したのは前作と同じスタッフらしい)。

あと、CIAの計画が多すぎるのも問題ではないかと。トレッドストーン計画、ブラックブライアー計画、アウトカム計画、ラークス計画、ってどんだけ計画立ててんだよ!それぞれの計画の意図や相互関係がよく分からないから、主人公が何を目指して行動しているのか目的意識が伝わりづらいのです(単に「薬が欲しくて動いている」だけにしか見えん)。ちなみに、各計画の概要は以下のような感じらしい。

トレッドストーン計画
拷問や洗脳で人格を改造し、特殊工作員を養成するCIAの極秘プログラム。工作員は世界各国に潜入し非公式の任務をこなしていたが、アクシデントによりジェイソン・ボーンが記憶を失い組織を離脱する。


・ブラックブライアー計画
トレッドストーン計画のバージョンアップ版。諸外国だけでなく、自国の危険分子すら暗殺対象とし、行政や司法への申請・報告無しで作戦の遂行が可能になった。


・アウトカム計画
特殊な薬物の投与により、人格及び肉体を改造し、強靭な精神と驚異的な身体能力を持った暗殺者を造り出す計画。ただし定期的な薬の摂取が必要。アーロン・クロスはこの計画の最高傑作と称されている。


・ラークス計画
アウトカム計画を更に推し進め、工作員の感情を一切排除して究極の殺人マシーンを生み出す計画。LARX-03(ルイ・オザワ)がアーロンを始末するためにマニラへ乗り込む。

こうして見ると、「ラークス計画」によって生み出された工作員が最強の暗殺者ってことらしいんですけど、映画のクライマックスでアーロンを追いかけ回すルイ・オザワプレデターズのヤクザ)は、レイチェル・ワイズに蹴られただけで死んでしまうので、強いのかどうか良く分かりません。せっかくアーロンとの格闘シーンを期待してたのにガッカリですよ。娯楽映画のカタルシスを狙うなら、二人の直接対決を絶対見せるべきでしたね。

……とまあ、色々と否定的な意見ばかり書いてしまいましたが、映画の出来自体はそんなに悪くないと思います。サスペンス・アクションとしては中の下ぐらいなんじゃないかと。問題はやはり、本作が『ボーン』シリーズの世界観を引き継いでいるという点でしょう。

世界観が同じである以上、”傑作”と謳われた過去のシリーズと比較されることは避けられないわけで、そうなるとストーリー展開、キャラクターの魅力、アクションの素晴らしさ等、どれをとっても勝っている部分がないのは明白なんですよ。そこがちょっと惜しかったかなと。

というわけで、過去の三部作に比べるとだいぶグレードダウンしてしまった感のある『ボーン・レガシー』。既に続編の制作が決定しているようですが、果たしてどうなるんでしょうか?ジェレミー・レナーは好きな役者なので頑張ってもらいたいんですけどねえ。本作はまだ”序章”という感じだから、ここからドラマがスタートすると考えて次回に期待したいと思います(^_^)


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